「たまゆら~hitotose~(TVアニメ動画)」

総合得点
74.8
感想・評価
1107
棚に入れた
5085
ランキング
855
★★★★☆ 3.8 (1107)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.8
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

「おかえりなさい」の街

 特に大きな出来事があるわけでもなく、いわゆるゆるい日常系の作品なのだろうが、単に
日常の楽しげな様子を描くだけでなく、日々の生活の中で少女達の抱える悩みや葛藤を
描いているのが、作品に深みを与えている。
 悩み自体は大人視線から見てしまうとそれほど深刻なものではないのだが、当の本人達に
とってはそれなりに大きなものなのだろう。
 特に将来に対しての悩みが多いのだが、作品中において確固たる目標を見つけるのでは
なく、「こうなれたらいいなあ」ぐらいのスタンスで終わるのがこの作品らしい。
 楓、麻音、ちひろのような引っ込み思案気味な娘達は、友達との交流や前述のような
問題を思案することにより、少しづつ積極的になっていこうという姿勢を見せるが、この
作品はそういった少女達の成長譚要素もある。この「少しづつ」というのもこの作品
らしい。
 また悩みや葛藤は少女達だけでなく、志保美りほを始めとする大人も抱えているような
描写が垣間見られたが、これがいいアクセントになっていた。楓達からすると人生の先輩である
存在だが、大人だって悩みがあるんですよね。

 そして、この作品で大きかったのが舞台である広島県竹原。
 先に書いておくと、自分自身は竹原に行ったことがないので、以下の文章の竹原の印象は
あくまでこの作品を通して見た竹原です。
 竹原はかっては日本のあちこちに見られた原風景的要素が強く、どこか懐かしさを
感じさせる。
 OPテーマや竹原の駅の入り口のプレートにある「おかえりなさい」だが、この竹原が
持つノスタルジーが初めて足を踏み入れる人にも馴染みにあるような場所に感じられるの
だろう。まさに「おかえりなさい」の街という感じ。
 単に懐かしいだけでなく、竹原に住む人々のやさしさなども描かれて、凄く暖かい
気持ちにさせられる。
 この竹原という街の魅力が、作品内で随所に描かれており、竹原という街自体が主役と
いった方がいいかもしれないぐらい。
 最近、作品舞台を特定地域に明確に設定した作品が増えてきています。個人的には
制作側、視聴者、舞台となった地元の方のいずれも不満が無ければ、歓迎すべきことだと
思いますが、ここまで竹原推しが強いと観光PRビデオを見ているような気になって
しまったことも事実。

 竹原と並んでノスタルジーを感じさせる存在に、楓が持つフィルムカメラがある。
 デジカメ全盛の今にあえて出てくるフィルムカメラは懐かしさを象徴する記号的存在で
あるが、そればかりではない。
 このカメラはかって父が持っていたもの。早く父を亡くしてしまった楓だが、それでも
父から思い出や思いなど色々なものをもらっており、このカメラはそれを象徴するものに
感じられた。
 また、単にカメラという機器を受け継いだだけでなく、カメラを使って思い出を記録する
という父から楓に対して行っていた行為を、今度は楓が友人や家族達に行うという、思いの
受け渡しもなされていた。この辺は最終回でうまいこと描かれていたように思える。
 フィルムカメラは撮影直後は画像を確認することができず、更にデータの受け渡しも
簡単にはできない。実際に使用する分には不便に感じていたが、この作品において、現像の
注文と受け取り時におけるマエストロとのやりとり、できあがった写真を友人や家族と
一緒に見るという行為は、既に小イベントとして成立しており、フィルムカメラが持つ
コミュニケーションツールの強みを感じさせた。
 他の作品に言及してしまうが、この作品の放映時期(2011年10〜12月)の翌シーズンに
放映された「あの夏で待ってる」の8ミリカメラもここで揚げたような効果があったように
感じた。

 キャスティングに関して、割と現在人気のある声優さん中心の印象でしたが、目を
引いたのが、麻音の両親が古川登志夫さんと平野文さん。
 「うる星やつら」の諸星あたるとラムちゃんですが、あたるとラムちゃんが熟年になって
いたら、こんな感じなのだろうか?と勝手に想像したりしちゃいました(笑)。

 最後に凄く個人的、かつ自分の体験ではない話を一つ。
 昔、友人が彼女と初日の出を見ようと、大晦日の夜中に車を走らせていたところ、
暗いあぜ道で車が田んぼにおっこちてしまったことがありました。
 結局、凍えながらレスキューを待ち、その間にすっかり陽が登ってしまったということが
あったのですが、最終回を見ていたら、それを思い出した。
 作品自体とは関係ない話ですみません。

投稿 : 2012/06/06
閲覧 : 227
サンキュー:

8

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