2022年度に放送されたアニメ映画一覧 67

あにこれの全ユーザーが2022年度に放送されたアニメ映画を評価したーデータを元にランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月03日の時点で一番の2022年度に放送されたアニメ映画は何なのでしょうか?
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年代別アニメ一覧

70.6 26 2022年度アニメランキング26位
ONE PIECE FILM RED(アニメ映画)

2022年8月6日
★★★★☆ 3.8 (104)
388人が棚に入れました
世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は“別次元”と評されていた。そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。物語は、彼女が“シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出す。「世界を歌で幸せにしたい」とただ願い、ステージに立つウタ。ウタの過去を知る謎の人物・ゴードン、そして垣間見えるシャンクスの影。音楽の島・エレジアで再会したルフィとウタの出会いは12年前のフーシャ村へと遡る。
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

父として娘として

賛否両論ある劇場版ですね。

ワンピースのアニメって結構引き伸ばしが多いのです。
原作の1ページや数コマを30分で引き伸ばしたりなど、そうした点を見ると劇場版はそうしたのがなくサクサク進むのでワンピースの劇場版って結構好きです。

因みに、この劇場版は……現在のワンピースがワノ国編を最後に最終章に入ります。
その切り替え時期であり、原作でも謎が多いシャンクスがピックアップされてる事で物語の伏線になっているかもしれないって意見も多く重要な劇場版との噂ですね。

さて、今回の映画は……前回のスタンピードに比べると勢いや戦闘シーンや出演キャラに劣る今作では、海軍の3大将にビッグマム海賊団にCP0、ローやバルトロメオやコビーなども登場します。

アドの歌が話題を呼んでいる作品ですが、歌は個人的にはあまり……これは正直、ファンの方やこうした演出が好きな方には受けるかもしれません。

でも、私は普段アニソンを聴くか、サムネを見て貰えたら解る通りナナニジの曲とか聞いていているだけなんで、私には曲は刺さらなかったですね。
ファンの方、ごめんなさい(><)*。

ライブシーンもよくは動いてました。
しかし、これも好みで普通にアイドルアニメのライブの方が好きかな?

後、今回はワンピースに何を求めるかで評価事態が大きく左右する気がします。
全体的な印象としてはワンピースらしくはない気がします。

しかし、今回は考えさせられた部分や感動する部分もあり感情移入をしてしまう。
物語は凄く刺さりました。
ワンピースらしくはないけど、親子がテーマの1つであり私には新鮮でした。

劇場版のキーキャラのシャンクスの娘のウタ
彼女のポジションに驚いたのです。
{netabare} まさかのルフィ達に対立する立場として出て来ます。 {/netabare}

{netabare} 今作には敵と言うのが明確に存在しません。まっ、敵と言うなら魔王?
ウタも敵のような演出なんですが、中々憎めないキャラでした。{/netabare}

海賊に居場所や家族を奪われたり、海軍にも助けて貰えない民間人達が幸せを感じられるのがウタの歌です。
彼女の歌に心を救われた民間人達は、やがて彼女に依存してしまう。

{netabare} そんな彼女が沢山の人の救いに答えようと取った手段が彼女の能力世界に自分の歌を聞いてくれる人達を閉じ込めて何不自由ない平和な夢世界で幸せに生きてもらうと言う選択肢でした。

民間人が平和な世界を望んだから!
仕事や勉強をしないで生きれる世界を望んだから!
何不自由ない世界を望んだから!
彼女の歌をずっと聞いていたいと望んだから!{/netabare}

彼女は……気持ちに答えたかった。
でも、それを知った民間人は「帰りたい」と言う……あれだけ嫌がって居た現実世界に!

ウタはまた悩んでしまう。
{netabare} だから何も考えないでいいように更に楽しくなればと!
民間人を夢世界でお菓子や人形に変えてしまう。{/netabare}

私も思います。
自分達が望んで後から現実世界に帰りたいなんて勝手過ぎるって…
皆が望んだから力になってあげたかったのに……

でも、違う……
確かに平和な世界で争いもなくて病気もしない世界で一生遊んで暮らせるのは素敵だし幸せの1つだと思う。

けど、{netabare} ウタがした事はただの幸せの押し付けです。
自分の思う幸せに沢山の人を閉じ込めて守ってあげるよって幸せを押し付けて…… {/netabare}
もぅ……それは幸せじゃないよ。
{netabare} 幸せは押し付けたり押し付けられたりするもんじゃないもの…… {/netabare}

{netabare} 現実世界のウタが眠ってしまうと能力がリセットされ夢世界から民間人が現実世界に戻ってしまう。
皆の幸せを守る為に、現実世界のウタはネズキノコと言う眠れなくなるキノコを1人で食べるだけの日々を送ってました。{/netabare}

睡眠をしない彼女は近々死んでしまう……
{netabare} でも、彼女は死んでもいいと考えてます。
何故なら彼女が死んだら夢世界は永遠にキープされ全員が夢世界で一生暮らせるから。{/netabare}

私には彼女が{netabare} 死を覚悟してまでも誰かの幸せを守ろうと1人寂しそうにキノコを食べる姿に心が締め付けられました。{/netabare}
こんなにいい子なのに道を間違えてしまった……きっと彼女は優し過ぎたのだ……
だから、私はウタに同情してしまいました。
きっとこの子も被害者なんだ……

彼女はシャンクスに捨てられた過去がありました。
その理由はシャンクスが親だから選んだ選択肢でした。
大人は子供に事情を知らせないで勝手な事をする。
子供の為に例え恨まれようが、嫌われようが……

子供の頃は私にはそれが解らなかった。
多分、子供の私が見たら大人は勝手だ!何も説明しないで子供の為だとか言う言葉で蓋をして!
子供だって真実を知りたいし理解したいし納得したいんだって……力になりたいって。

でも、少し大人になった私には解る。
子供の気持ちは解る。
大人だって昔は子供だから……
それがわかった上でも知らなくていいんだ。
子供に悩んで欲しくないし心配かけたくないんだ。
不安も心配も悩みも抱えなくていいんだよ。
そんなものは成長すと嫌でも悩んでしまう日がくるから、その時までは、元気に楽しく遊んで欲しいって思う。
その方が楽しいでしょう?って

だから、シャンクスも{netabare} ウタに事実を隠して自分が憎まれ役になりながら元気に歌っていて欲しい。
いつか海の上で元気な彼女の歌声を聞くのを楽しみにして選んだ選択肢なんだと思いました。{/netabare}
親だから大切な子供だから別れたのだと。

ルフィはウタの友達で幼なじみ。
{netabare} でも、ルフィは最後までウタを攻撃する事はしませんでした。
「戦う理由がねぇ」彼のセリフですが、ルフィは解っていたのでしょうね。
ウタが間違えた方向に進んでいる理由も彼女が誰よりも優しい人間だと言う事を。{/netabare}

そして、ついにウタの前現れたシャンクス。
{netabare} でも、彼はシャンクスや赤髪海賊団はウタを攻撃しません。
ウタは現実世界の民間人の身体を使い赤髪海賊団に攻撃させますが、シャンクス達は何もしません。
攻撃も防御もせずにひたすら殴られ続ける。

多分、それは痛くないからです。
シャンクス達のした事って大人としては正しいと思います。 {/netabare}

しかし、親としては間違えだと思います。

{netabare} 例え子供の為でも、そこにどれだけ正当な理由があろうと、ウタを子供を置いていくなんてやってはいけない事です。
そうする事で本当に傷ついたのはウタでした。
ウタの心の傷に比べたらどれだけ痛くないか……彼女の心の傷は……痛みや悲しみや寂しさや辛さの方がどれだけ痛いだろうか?{/netabare}

多分、シャンクス達はそれが解るから親として当然の報いである思っているのかもしれません。
ウタも1年後にはシャンクス達の秘密に気づいていたみたいですが、それでもシャンクス達を許せなかったのでしょうね。
だから、シャンクス達は少しでも気が済めばと考えたのかもです。

{netabare} そんな中、海軍が一般人に発砲します。
ウタは夢世界では最強ですが、現実世界では血が流れすぎない様に泣きながら両手で止血するしか出来なくて……
夢世界でも発砲シーンはありましたが、それは直ぐに直せてたけど {/netabare}
やっぱりウタの現実世界の姿を見たら、この子は本当に優しい子なんだと感じました。

赤髪海賊団の{netabare} 「大事な娘の大切な人達を奪わせない」 {/netabare}ってカッコイイ理由だなぁ〜と思いました。

そうして、ウタの歌声によりトットムジカ……
{netabare} 魔王が降臨。
魔王はかなり巨大でしたね。
デザインはなんか……変な人形みたいな感じで魔王感はありませんねww {/netabare}

しかし、この巨体に総力戦で当たります。
巨体だとアニメだとスリラーバークのオーズ以来かな?
あれよりもかなり迫力ありましたね。

アニメでは過去にない連携ですね。
作戦組んで指示通りに攻撃はなんかワンピースの戦闘の中では新鮮味がある気がしました。

今回はシャンクスとウタの親子の絆もそうでしたが、もぅ1組…… {netabare} ウソップとヤソップですね。
この親子共演は初ではないでしょうか?
最初は指示出しがウソップが若干遅れ気味でしたが、段々とタイミングが重なり始めるのに親子の力を感じました。 {/netabare}

最後のルフィの攻撃とシャンクスの攻撃。
シャンクスは父として、ルフィは友達として……
私はこの作品を見るまで、もしも誰かが道を謝れば止めるものだと思っていました。

だから、最初はルフィもウタを止めるために説得していたしシャンクスも娘を止める為に来たのだと思っていました。

しかし、止める、では50点です。
{netabare} 「娘を救いに来た」{/netabare}とシャンクスが言ってました。

間違えた時に止めるだけでは意味がない。
{netabare} 救う事に意味があるのだと。{/netabare}
止めると間違えた道は進まなくなるけどそれだけ……

{netabare}救う事が出来るなら別の道へシフトさせてあげられる。
苦しんで悲しんで選んだ道ならそうした事から救い出すのが、家族であり友達ではないでしょうか?{/netabare}

だから、ルフィは{netabare} 友を救うために{/netabare}
シャンクスは{netabare} 娘を救う{/netabare}為に
一撃を放つ。

シャンクスはウタに薬を渡す。
{netabare} それを飲めば眠りにつきウタは死ななくてすむ。夢世界の皆も帰ってこられる……でも、夢世界に心が囚われているとウタが寝ても能力がリセットされずに皆が出られなくなります。
{/netabare}

シャンクスは多分…… {netabare} それでも薬を飲んで生きて居て欲しかったと思います。
やっぱり血の繋がりはなくても父親であり娘だから生きて欲しいって…… {/netabare}

でも、ウタは歌いたいと言う

皆を現実に呼び戻す歌を……
{netabare} 自分の命よりも皆を優先してあげられる。
夢世界が皆の幸せだと勘違いした彼女の姿はどこにもなくて…… {/netabare}

争いばかりで平和な世界じゃなくても、悩みながら苦しみながら時には道を踏み外して、泣きたくても泣けない事もあれば、泣くしか出来ない様な、今日もどこかで泣いたり命を落としたりする様な救いようのない世界にも、幸せはあって……
そんな世界だから幸せを強く感じたり出来るのかもしれませんね。

だから、彼女は歌う。
{netabare} その決意にシャンクスは何も言わない。
娘の決意を尊重する姿も親として姿を感じる事が出来ました。{/netabare}

歌の後に海軍がウタの引渡しを要求してくる。
{netabare} シャンクスは娘を守る為に覇気で海軍大将以外を気絶させるし、黄猿や藤虎もビビるらせるレベルでした。
戦わずして勝つ!とはまさにこの事ですね。{/netabare}

ウタは争いを嫌うから…… {netabare} シャンクス達からは仕掛けないけど、ウタを連れていくなら容赦はしない。{/netabare}
シャンクスらしい決意ではないでしょうか?

最後は……多分、ウタは…………

EDは止め絵でしたが{netabare} 懐かしい場所やキャラが沢山出ていたし、ウタの歌がどれだけの世界の人に聞かれて居るのかが良く伝わるEDで{/netabare}よかったですね。

最後まで見ると誰も本当は悪い人なんていなくて……
守りたい者の為にそれぞれが戦ったのだと感じました。

今回のテーマは「親子」「幸せ」ではないでしょうか?
親子の絆の強さや形、誰かにとっての幸せとは?など沢山沢山考えた作品でした。

ワンピースは人気作品で感動の名シーンも多いと聞きます。
でも、私はワンピースで良い話だなぁ〜くらいの感じは経験ありますが、感情移入や泣きそうになる事はありませんでした。
多分、ファンの方がキレてしまう発言でしょうね。(このレビュー1つで私色々なファン層の方に怒られそう……ごめんなさい)

しかし、私はそれくらいに今作は感動するものがあったと思います。
正直、最初はあまり期待してませんでした。
スタンピード程の人気キャラのオールスターでもないし注目はシャンクスくらいでキャラが全体的に弱いと思ってましたので、しかし見終わってここまでの物語に仕上げて来たのかと関心でビックリしてしまいましたw

また、見たくなる様な話でしたね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

海賊アニメとしても音楽アニメとしても異色

【まえがき】
ひとり語り多めの長文なので折りたたみw
{netabare}『ONE PIECE』は私にとってはハマる要素が多いはずなのに何故か入り込めない不思議なコンテンツ。
原作未読。劇場版鑑賞は本作が初めて。TVアニメも10年以上観ていないはず。

私は『パイレーツ・オブ・カリビアン』全作観る程度には海賊好きですし、
昔、観たエピソードも弱きを助け強きを挫く王道で、感動的だとも思いました。
が、キャラデザが合わないのか、
にしても涙腺脆すぎでしょ?啼泣だけが泣きじゃない。との感性の違いなのか。
観てはハマり切れずを繰り返す内に、自分は『ワンピ』とは縁が無いのだろうと距離を取っていた感じ。

だから私も最初はAdoさんが歌唱した本作の主題歌を耳にしても「うっせぇわ」って感じで聞き流していたのですが、
聞いている内に段々とウタに洗脳され、この歌かっこいいな♪となり、
脳内でヘビロテする中毒症状が現れたので、
Dolby Atmosでこじらせてみようと劇場に飛び込んだ次第。

尚、一部で、ウタの歌ばっかしで物語がおざなり。
タイトルや事前情報から、シャンクスが掘り下げられると期待したのに裏切られた。
といった雑音も耳に入った上で、ウタのライブに行くつもりで挑めばいいんでしょ?
と天邪鬼に天邪鬼で返す、捻くれた姿勢での鑑賞となっているのでご容赦下さいw{/netabare}


【物語 3.5点】
監督には谷口 悟朗氏を三顧の礼で迎える。

海賊作品としては異色。
原作者の「伝説のジジィ描くのに疲れちゃった」との意向を汲み(←おいおいw)
ヒロインおよび敵役でルフィの幼なじみの歌姫少女が「ルフィ、海賊やめなよ」と、
“大海賊時代”を否定する“新時代”の理想を語ってくる異例のシナリオが展開。

ベクトルの違うウタの能力には、
作品世界の序列やセオリーをリセットするシナリオ効果があり、
従来の能力インフレ下では出番無さそうなキャラにもワンチャンあり。
オールスター企画との相性は良好だった印象。


音楽アニメとしても異色。
通常、音楽で押す作品を観たら、やっぱり音楽っていいな~♪となる単純な私ですが、本作の場合は
{netabare}大海賊時代で疲弊した一般市民の想いを代弁したウタが、歌の力により、
ライブで感じる幸せが永久に続く、ウタウタの精神世界に人々を連れ去ろうとする攻防。{/netabare}
というプロット。
私もライブ会場からの帰り道、これ終わったら現実に戻るのか……と抱いた寂しさを思い出してみたり。
近年、動画配信等で、面倒なリアル社会との関わりを飛ばしてアーティストが才能をダイレクトに世界に広める良い時代になったなぁ~と思っていましたが、それも度が過ぎると考え物だなと思い直してみたり。
こんな苦い余韻が残る音楽アニメはチョット記憶にありませんw


構成は冒頭いきなりウタのライブ→寸劇→ライブと続く。確かに歌の猛攻w
ただライブばかりで物語が削られているというのは少し感覚が違うと思いました。
ウタの歌はウタウタの実の能力であり、ライブシーンは言わば戦闘エフェクト。
アクションアニメで技が飛び交うのは自然な成り行き。
『マクロス』でも視聴する感じで挑めば折り合えると思われます。

とは言え、キャラめっちゃ多いな~と思ったのも事実(苦笑)
どちらかと言えば、ウタも含めたキャラたちの能力描写に物語の尺が食われる、
お祭り作品あるあるな感覚の方がシックリくるかと。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・東映アニメーション

ライブ空間を再現した劇場体験には臨場感があり、
鑑賞者もウタウタの世界へと誘う引力があります。

それ以上に、本作は現実とウタウタ双方の世界にまたがるファイナルバトルの作画は、360°法則無視。
諸々の境界が溶けて行くようなフリーダムな作風。
これなら、{netabare}ルフィがシャンクスに再会したら麦わら帽子を返してシリーズが完結してしまう
というジレンマも越えて“共闘”も可能ですw{/netabare}


【キャラ 3.5点】
今回はシャンクスより“娘”のウタの話と開き直るのは良いのですが、
ウタの物語として見ても、シャンクスの掘り下げ不足と感じます。

(※核心的ネタバレ){netabare}ウタを傷付けないために真実を隠し罪を被ったという点。
ゴードンは真実を告げる勇気がなかった大人の弱さとしても、{/netabare}
シャンクスはそこまで弱い海賊なのかな?という疑問が残りました。
この辺りについてはルフィの幼馴染としてのウタより、
“シャンクスの娘”としてのウタの描写により力を入れることで、
シャンクスの“父性”の詳述から、彼の言動の真意を理解することで、納得したかったです。
具体的には20歳のシャンクスおよび赤髪海賊団にウタが愛されていく過程がもっと欲しかったです。


【声優 4.0点】
ヒロイン・ウタ役は名塚 佳織/Adoの演者と歌い手の分担。
クセのある歌い手にいたずらっぽい声質で合わせる名塚さんの対応力が光る。
ルフィに対する「でたぁ、負け惜しみ~」には、
幼少期から外の世界と隔絶されて育ったウタの変わらぬ無邪気さと狂気性が混在しており印象深いです。

ウタの育ての親・ゴードン役には津田 健次郎さんを据え盤石。
脇に置くべきゲストタレントを重要キャラに起用する間違いは犯しません。


ルフィ役・田中 真弓さん、シャンクス役の池田 秀一さんなど、
他作品では、失礼ながら流石に往年のパワーはない?と感じることもあるベテラン声優陣ですが、
『ワンピ』だと元気いっぱいですね♪
大御所だからとスタッフが遠慮しないこと。作品自体にパワーがあること。
ベテランを活かす秘訣です。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は中田 ヤスタカ氏。同氏はウタが歌う主題歌「新時代」も提供。
ウタの振り付けにはPerfumeでも組んでいるMIKIKO氏を起用し、
タッグでウタのライブシーンの“攻撃力”を磨き上げる。

ウタ歌唱担当にAdoさんと聞いた時は毒キツ過ぎない?と懸念しましたが、
鑑賞後は、天使の歌声から{netabare}魔王の召喚{/netabare}まで振れ幅の大きさをカバーするには彼女の表現力が不可欠だったと納得。
低音域の唸り声には“パンチ力”がありました。

その他、ウタの歌は、
海賊を流儀ごとねじ伏せるMrs. GREEN APPLE提供の「私は最強」
澤野 弘之氏提供の闇落ちソング「Tot Musica」などの挿入歌群。
EDは秦 基博さん提供の「風のゆくえ」で締める全7曲の豪華絢爛な“作曲村”方式。

興収狙うならフェス感があって上策なのでしょうが、
作曲村はテーマの一貫性が保てないと感じ私は正直苦手です。
(自分が中田氏が全部担当したらどうなるか聞きたいだけという説もありw)


【付記】
次『ワンピ』を観るのは何時になるかは分かりませんが、
今度はキャラを絞って伝説のじじぃに挑む無難な海賊バトル作品をチョイスしたいですw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
ネタバレ

ソース さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

谷口悟朗とAdoを求めて...

自分は「ワンピース」に関して、造詣が深くない。知識は東の海編,映画数本を見たレベルである。しかし、今作が興行収入を伸ばし話題作であるという点,監督が谷口悟朗さんであるという点やAdoさんを起用しているという点など惹かれる部分が多かった為、視聴した。

結論から言うととても面白かった。自分の知識が浅いため、存じ上げないキャラも居たがさほど問題はなかった。



物語序盤はウタがめちゃくちゃ歌うので「あれ?これAdoさんのライブの映画だっけ?」と一瞬思ってしまった。自分は楽しめたが、人によってはもうここら辺で嫌になっている場合もあるのかな〜と感じる。


中盤、 {netabare} ウタの能力が判明するが、この能力がいわゆる「セカイ系」を彷彿とさせる能力であることが分かる。 {/netabare} 正直この展開には驚かされた。ワンピースでこれをやりますか〜という感じ。

自分はVery Good!!と思ったが、ワンピースガチ勢の皆さんの中にはここら辺でう〜ん...という感じになる人がいるのだろうか。

また {netabare} ウタの能力や思想が判明したときに、エヴァンゲリオンや谷口悟朗監督作品で言う所の「ガン×ソード」のカギ爪の男,「コードギアス」のラグナレクの接続 {/netabare} などが脳裏をよぎった。「監督が谷口悟朗さんだから...」と釣られて今作を見た側面がある自分からしたらニヤニヤといったところであった。

00年代に名作を多く作った谷口悟朗監督だからこそ、この展開が出来たのかしら?


そして終盤
{netabare}
・ウタとシャンクスの別れの真実
・胸熱過ぎる、現実世界とウタワールドでのシャンクス達,ルフィ達の共闘
・まどマギを彷彿とさせるトットムジカのキャラデザ(意識してたと予想する)
・「ウタは俺の娘だ。」 by シャンクス
・ウタのラストの歌唱
etc.
{/netabare}

終始激熱で、さらに思わず涙が出てしまう展開もあり...ちょっと舐めてたなと感じた。多少詰め込み気味に感じる部分もあるが、大変満足出来る作品であった。



どうやら賛否両論あるようだが、個人的には今作に何を求めているかで評価がだいぶ変わるよな気がする。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

70.4 27 2022年度アニメランキング27位
夏へのトンネル、さよならの出口(アニメ映画)

2022年9月9日
★★★★☆ 3.6 (82)
296人が棚に入れました
あの日の君に会いに行く。

ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。
ただし、それと引き換えに……

掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。

これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語。

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の共同戦線~ビニール傘をかして返してもらうまでの時間~

この作品は私が、ずっと楽しみにしてた作品の1つです。
原作を知ってる訳でもありません。
私はよくアニメ映画を見にくのですが、その中に必ずある映画告知でよく流れていたからです。
その時に、面白そうと感じたのが「夏へのトンネルさよならの出口」です。

2022年10月も凄く気になる作品がありますが、見に行きたいなぁ(*´˘`*)ニコッ
見たらきっとレビュー書いてると思います。




さて、私がこの作品に感じた事を書いていきます。
物語は、ウラシマトンネルと言う外と中では時間の流れが違うトンネルを発見する。
そのトンネルを潜ると欲しい物が何でも手に入る。
その対価として100年歳をとる。

そんな都市伝説的なトンネル発見した主人公とヒロインはお互いの願いの為にトンネルを攻略する共同戦線を張る!


主人公 カオル

彼の願いは「妹を取り戻す事」
妹のカレンは優しい女の子でした。
彼女は人の幸せを心から願える女の子です。
彼女の夢は「人が幸せになる世界にする事」
この幼い年齢でこの願いは凄いw

この歳だと、普通に可愛いぬいぐるみとか、欲しいゲームとか、願いませんか?
自分が恥ずかしくなるww

主人公のカオルの願いは「カブトムシが欲しい」コレコレ!コレが子供の夢よww

ある日、兄妹喧嘩をしてしまいます。
カオルは妹に「大嫌い」と言われて「大嫌い」と返して家を出ます。
妹はすぐに「嘘!大好き!いってらっしゃい!」と返すのですが、兄はそれも無視します。

彼が帰ると妹は木から落ちて事故死してました。
兄と仲直りしようとして兄の欲しいカブトムシを取りに行ったから起きた事故でした。

うん、これって結構キツいよね。
喧嘩なんて当然します……
でも、喧嘩をして永遠に会えなくなるのは……
私も似た経験あって中学生の時の思春期におばあちゃんと喧嘩しました。
その後、数日後におばあちゃんは亡くなってしまいました。

二度と謝る事もなく一緒に暮らしてる訳でも無かったので、それから言葉も交わさずに……
今でも心残りです。
だから、カオルの気持ちって凄く解ります。

彼が妹を生き返らせたいってのも凄く解る。
正直、多分、ずっと心残りになると思う。
いつになっても、「あの時なぁ〜」ってなります。

それに彼は妹が自分と仲直りしようとしての事なら尚更……
何を犠牲にしても叶えたい願いだと思いました。



アンズ

彼女の願いは「特別な才能が欲しい」
彼女のお爺さんは、漫画家でした。
しかし、売れる事もなく借金してまでも漫画を描き続けた。

そんなアンズも漫画を書く楽しさをお爺さんから教えて貰って彼女も漫画家になりたいと願うも踏み出せないでいました。

父に「お爺さんと同じになるつもりか!」と原稿をビリビリに破かれたそうです。
だから、彼女は漫画家になりたかった。
お爺さんを反面教師扱いする両親を見返したかった。

でも、自分の漫画は、どうしても普通にしか見えなかった。
出版社に持ち込んでもダメだと思い込んでしまう。

でも、自分も何か残したいと考えていました。
それが、彼女にとっては漫画でした。

実は私は彼女に凄く共感出来ました。
私も産まれて来たからには「世の中に何かを残したい」と思ってしまいます。
せっかく産まれてきたのですから私が私個人が生きていた証を……

で、私が他にも共感出来たのは自分の作品を自分の線引きで出版社に持ち込めないって点です。
自分の作品は普通だから……勿論書くがわからすれば面白いから書いてるけど、世の中には更に面白い漫画は沢山ある……だからこのレベルではダメだと……

実は、私も物語を書いていました。
今は書いてませんが……当時は、文庫本作家になってみたいなぁ〜とw
電撃大賞とかに出したいなぁ〜と思って書き上げたりしてましたが、結局は私も同じ理由で足踏みしてました。
文才も言葉も拙いのでw

結局、彼女は最後に編集に持ち込むので私なんかとは全然違うのですけどねw
で、アンズと私って多分、そんなに年齢変わらないです。
2005年になってたから1つか2つ先輩かな?
でも、同年代の子だと考えたら凄いなぁーって本当に思いますね。


だから、彼女の気持ちって色々共感出来ちゃいました。


ウラシマトンネル攻略 8月2日

攻略前日……アンズから自分の漫画を出版社に持ち込んだら気に入って貰えたそうなんです。
担当さんが付いて一緒に漫画を作りませんか?と提案されたのだと。

相談されたカオルは攻略の延期を持ちかけます。
それはウラシマトンネルの中と外では時間の流れが違うので数時間で数年経つ……すると多分、この漫画家への道は失われる……

しかし、カオルは1人でウラシマトンネルへ行きます。
アンズが気付いた頃には手遅れでした。

カオルのした事って正しくはあると思います。
共同戦線だからって最後まで付き合う必要はないし、トンネルは願いを叶えるのではなく、失った物を取り戻すトンネルだからです。
つまり彼女の才能は手に入らない。
それなら、尚のこと自分で掴んだ才能とチャンスを手放してまで一緒に来る必要はないのです。


でも、カオルはその反面考えが足りなかった。
アンズが自分の漫画が気に入られた時に相談したのは一緒に考えたかったのだと思います。

2人で共同戦線を辞めて2人で共に過ごす時間と、一緒にウラシマトンネルで妹のカレンを取り戻して3人で過ごす時間

その為なら、全てを投げ出してでも一緒に居たかった。
彼女は恋をしていたのです。

特別な才能が欲しかった彼女は、今はカオル特別な存在になりたかったのでしょうね……

でも、彼の決意は硬かった。
カレンダーを8月2日から破り捨ててました。
それは、それから先の時間は彼にはないからです。
更にはメールも全て消して、携帯も捨てて……
だから、決意の強さが伝わりました。


カオルは妹に再会します。
妹と兄の失われた時間。
カオルも子供になってました。
つまり時間が戻ったのです。

妹は自分が捕まえたカブトムシを兄にプレゼントします。
あの日、兄と仲良くする為に捕まえようとしたカブトムシ。

2人は幸せそうに話をする。
けど、カオルは気づく。鏡に映る自分の姿は高校生である事に……

そこに捨てたはずの携帯がメールの着信音を鳴らします。
そこには消したメールが全て復活してました。

ウラシマトンネルは無くした物を取り戻すトンネルですが、これでは言葉足らずです。

ウラシマトンネルは大切な物を取り戻すトンネルってのが正確だと思います。

過去の時間に戻ったって事は、元の時間の世界の大切な物を失ったと言う意味です。
だから、携帯もメールも戻った……そして自分の気持ちも。

妹も大事だけど妹と同じくらい好きな人……

実はカオルとアンズの2人はトンネルの外から中へのメールは届かないと実験していました。
しかし、今はメールが届いた。
それは、アンズの時間軸から無駄だ……届かない……そう知ってても送らずにないられなかったメール

経過する時間の中、アンズが送り続けたメール。
そのメールは、カオルが失った時間に送られたメールです。
だから、失った物としてトンネルを通じて彼に届いた。

彼は現実世界に戻るために走り出す!
カレンは知っていたのかもしれません。
兄が別の時間軸の兄だと……だから背中を押した。

カレン「大好きだよ!いってらっしゃい!」
自分に囚われてないで、気にしないでって彼女なりの優しさで。
喧嘩した時に本当に言いたかった言葉を添えて。

彼女の願いはなんだったけ?
「人が幸せになる世界にする事」
彼女が生きた時間のアンズは、引きずってる……カオルの事を……夢を叶えて連載を持っても彼女は笑えなかった……カレンの言う、人が幸せってのはアンズも含めてです。
だから、兄の背中を押した。
兄の幸せを考えられる強さを持ってるから。

私は死んだ人に生きてる人が出来る事って多くはないって思います。
でも、カレンにカオルがしてあげられる事がある。

それは現実世界で幸せになる事です。
人の幸せを願える妹の兄に出来るのは自身が幸せになり好きな人を幸せする事だと思います。
何故ならそれがカレンの願いだから……その1歩になる事が彼女に唯一してあげられる事なのかな?と思いました。

そうして、カオルとアンズは十三年ぶりに再会する。
13年……ウラシマトンネルの時間差……
13年間、ずっと待ち続けてくれたアンズ。
彼が戻る確信なんてなかった。
それでも、彼を待ってくれていた。
本物の愛なんでしょうね。
好きな人にそこまで待って貰えるカオルが幸せ過ぎますねw

理由はどうであれカオルは13年間アンズに心配を掛けて悲しませてきました。
これからの時間は、全力でアンズを幸せにしてあげて欲しいですね(*´˘`*)ニコッ

正直、この作品、ウラシマトンネルの調査中に大幅カットされてるような描写もあるけど、私に共感出来る事が多い作品でビックリしました。


因みに、ココに出てくる大人は最低の象徴として描かれています。

酔って暴力を振るうわ、息子が体調を崩すと心配すらしないで暴言暴力を振るう父親。

娘の夢を反対して原稿を破るわ、田舎に転校させ1人で暮らして頭冷やせとか言う両親。


この2人の出会いに……「親なんか居ないわ」「いいねそれ」って言葉があります。
最初は、カオルのいいね発言にビックリしましたが、これは2人が友達ではなく理解者であるんだろうなぁ〜と見ていて感じました。
ウラシマトンネルの共同戦線もお互いの利害が一致してるからでしょうし、お互いに理解者から恋人になるまでが描かれているのかな?とw

さて、この作品のタイトルって、「夏へのトンネル」はカレンの死んだ夏への入口、「さよならの出口」ってカレンへの未練を断ち切る為の、さよならの出口なんですね。
劇場版みた後に気づきました。
ある意味タイトルで盛大なネタバレされてるけど意外と気づけない上手いタイトルですね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ウラシマ効果と願いの狭間で浮き彫りになる若気の至り

【あらすじ】
{netabare}欲しいものが何でも手に入る「ウラシマトンネル」
鹿との衝突事故により電車が止まるくらいの田舎を舞台に、
{netabare}亡き妹・カレンと幸福な家庭{/netabare}を取り戻したい高校生男子・カオル。
{netabare}漫画で世界に爪痕を残せる才能{/netabare}が欲しい女子高生・あんず。
二人が願望の代償として世界を捨てるに等しいウラシマ効果をもたらすトンネルを前に、
“共同戦線”を張る内に、距離が縮まる同名ライトノベル(未読)の映画化作品({netabare}83{/netabare}分){/netabare}

【物語 4.0点】
監督・田口 智久氏。

実写「デートムービー」も意識して、主人公の少年少女二人に焦点を絞り原作を再構築。
ヒロイン視点補強を試みて、二人の出会いなどの節目を詳述するため、
三度にわたる駅のシーンをアニメオリジナルで追加し、ボーイ・ミーツ・ガール成分増量。

「ウラシマトンネル」になかなか飛び込めずに事前調査を重ねる二人。
浦島太郎が予め竜宮城に行った後の顛末を知ってしまったら、
亀に乗るのにメッチャ逡巡して物語が停滞するでしょうがw
これが青春を生きる高校生二人なら、人生経験の少なさもあって不安定なアイデンティティや居場所のなさ。
“共同戦線”に下心や恋心はないのか?など整理できない自分の気持ち。
モヤモヤが些細な衝撃で暴発しかねない危なっかしさ。
若さは逡巡すらメインストーリーとして魅力十分な甘ずっぱいドラマに昇華させます。

トンネルの先を描いた終盤も、既視感は覚えるものの見応え十分。
何を言ってもネタバレになりますが敢えて一言だけ叫ぶと、
{netabare}気づくのおせーよ{/netabare}ってことでしょうか。


ガラケーがスマホに駆逐される前の時代が舞台とあって携帯メールが活躍するシナリオ。
連絡事項に改行スペースを重ねてスクロールさせ末尾に{netabare}「塔野くんてちょっとエッチだよね」{/netabare}と本音を仕込む技もベタですがあざといです。
ケータイ共々爆発して下さいw


【作画 4.5点】
アニメーション制作・CLAP

草薙(KUSANAGI)提供の細密な背景に押し負けない映像作りで、夏を始めとした季節感を好表現。
同スタジオの前作『ポンポさん』でも多用した、
色トレス(近景等の色彩に人物の主線の色を合わせる)も駆使して、
世界と登場人物の一体感をアップ。

小物に“演技”をさせる演出も上々で、
特に上記アニオリシーンで“助演俳優賞”級の活躍をしたビニール傘については、
描き込みが面倒な透明色にもめげずに二人の仲を橋渡し。
終盤の{netabare}錆{/netabare}の描写も良い仕事してました。

ただ私としては“助演俳優賞”は笑顔を彩ったヒマワリに授与したい心境です。

ケータイ画面やビニール傘が濡れる心情演出も文学的。
CGで構築された水面もまた波紋で揺れる男女の言動を反映する“役者”ぶり。


【キャラ 4.0点】
主人公の高校生男子・塔野カオル。
携帯プレイヤーは音楽鑑賞じゃなく外界の音を遮断するために使う系。
家庭に安寧の場所はなく、斜に構え、田舎で朽ち果てつつある典型的な疎外感を抱えた主人公少年。
世界から外れかかっている彼のメンタルこそが「ウラシマトンネル」を招き寄せた
という作中での考察、一理あります。

ヒロインの女子高生・花城あんず
東京から田舎に転校して来た、これまた典型的な孤高の黒髪ロングJK。
寄らば斬る(むしろ{netabare}殴り倒すw{/netabare})
そんなテンプレでツンツン、デレデレされたって俺は萌えないぞ。
……と頑なになっていた私ですが、彼女が{netabare}カオルに初めて自作漫画を読まれ論評{/netabare}されるシーンの足芸で、
あっさり萌えて陥落しましたw

それ以上にあんずにグッと来たのは世界に爪痕を刻むと決意する強さ。
特に{netabare}絵で物語る漫画がなくなるはずがない{/netabare}と熱弁する件。
「特別」を目指すヒロインのカッコ良さには異性としてではなく人として惚れ込みます。


【声優 3.5点】
実写とアニメの中間領域を志向し、メインキャストは俳優をオーディションで選出。

主人公・カオル役の鈴鹿 央士さんは声優初挑戦。
スタッフ陣はナチュラルなボイスがハマり役と好評していますが、
私は走って息切れるシーンの演技にしても、自然さより経験不足を感じてシックリ来ませんでした。

声に人生が滲み出る演技だなとも感じはしましたが、
哀しみ故に荒れた生活を送るカオルの父役の小山 力也さんにはまだまだ及ばない印象。

その点、ヒロイン・あんず役の飯豊 まりえさんは、声優経験もありまだ安定感がありました。

それでも、脇に回った畠中 祐さん&小宮 有紗さんじゃ駄目なんでしょうか?
という私の疑問をかき消すほどの演技ではなかったかなと。

ただし、カオルの妹・塔野カレン役の小林 星蘭さんは子役時代のスキルも生かした幼女ボイスで上々。
塔野家の天使に免じて評点は基準点+0.5点で。


【音楽 4.0点】
劇伴は富貴 晴美氏のフィルムスコアリング。
氏のBGMは管弦楽の迫力でねじ伏せるよりも、ピアノを中心に心情にそっと寄り添う方が味わい深いです。
本作でも遅効性の恋に繊細な音色がマッチしていました。

主題歌、挿入歌はeill。
アップテンポな劇伴ソング「プレロマンス」では二人の恋愛未満を的確に射抜き、
主題歌バラード「フィナーレ。」では濡れるリスクが増える相合傘の利点を恋愛面から力説。
一番刺さったのは既存曲のアコースティックアレンジとなった「方っぽ」
世界から外れそうな位の喪失感が痛切で抉って来ます。


【付記】
イケメン俳優&朝ドラヒロインをキャスティングして、
実写恋愛映画の如く、カップル集客も目論んでいるという本作。
ですが初週鑑賞時、まばらな観客は私も含めてアニメ&ラノベファンと思しきソロの男性ばかりで、
デート中のカップルなんて一組も見当たりませんでしたw

プロデュースが滑っている以上、上映期間も長くはないと思われるので、
興味がある方は、夏が消え去る前に、お早めに劇場に行くことをオススメします。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

ありがとうの入口

この話は転校生が来た話
個人的には嫌いでは無い

元々小説の存在は知っていて、いつかは買おうと思っていたのですが、先延ばし先延ばしにしてたらアニメ映画をやるというではありませんか。しかも結構作画が良さそう。見るしかないですよね
そんなこんなで見た本作ですが、個人的には嫌いでは無いです
もちろん(というと失礼に聞こえるかもしれませんが)「超好き!」という訳では無いのですが、予想していた中(俳優さんたちが声優をやるような映画という意味)では結構良い作品でした

異世界ほどファンタジーではありませんが、完全に物理法則をガン無視しているため、「現実的な作品しか私は見ないんだ!」という方には厳しいかもしれませんが、特にこだわりがない方は見ても良いかもしれません。

主人公がいわゆるダウナー系ですので、「こんな根暗な奴が主人公だったらコッチまで気分が沈むわ!」という過激派も厳しいかも。

アニメ映画ですので、やはり内容が凝縮されています。原作が激厚小説とは言わずとも短編とはとても言えないようなボリュームなため、アニメ映画という形が正解だと私は思いました。これでTVアニメだったらどんなにグダっていたか。

完結します。恐らく今後追加されるストーリーはないでしょう。あるとしても物語の本筋にあまり関係のない所か二次創作のどちらかでしょう。(と言ったが入場者特典をしっかり読んでいる)

悪かった点としては全体的に内容が薄い

{netabare}
見かけない女子高生(花城あんず)に傘を貸した主人公(塔野カオル)の学校に花城が転校生としてやってくる。父親から逃げた主人公が偶然発見した祠は時間の流れが極端に遅くなる代わりに願ったものが手に入る「浦島トンネル」だった。ついてきた花城に事情を話し2人の秘密(共同戦線)とした。調査を重ねる毎に二人の仲は深まる。家族から忌避されてる漫画の才能を手に入れたい花城の元に編集部が来た事を知った塔野は死んだ妹を取り戻すために単独でトンネルに入り妹に会う。そこで届かないはずのメールが届き花城がまだ待っていることを知る。自覚した塔野は花城にメールを送り13年越しに再開しキスをする

「有り得ない」とひと言で切り捨てることも可能ですが、私は本作を嫌いには慣れませんでした。主人公含め登場人物みんな(父除く)好き、ということもあり素直に面白かったと表現できます。
ヒロインが可愛い恋愛アニメはどうにも嫌いになれない、の典型例だと思います

見る前は「どうせトンネルはただのトンネルでトンネルのジンクスを経て人間として成長する、的なやつだろう」と思っていたのですが、まさかのガチファンタジー。ただのトンネルではなく、怪奇現象そのもの。これには甘く見ていた私もびっくり目を見開いて話をちゃんと楽しもうと決心しました。

合理的、というと少し違いますが、下手に人情を重んじるキャラではなく非常に助かりました。ちゃんと妹の為に身を犠牲にしようとしたのも好感が持てますし、花城ちゃんを置いて行ったのも非常に好感が高い。あと、花城ちゃんが後を追いかけなかったのも非常に良い

とはいえ13年以上帰ってくるか分からない人を思い続ける、なんて現実では相当有り得ませんが、まぁ浦島トンネルがある時点で「なんでもありだね」という結論に至ってしまうため、あまり深く考えないようにしましょう

話は変わりますが、妹の幻覚によってメッセージを受け取るあのシーン。非常に優秀ですよね。失ったものを取り戻す、という浦島トンネルでメッセージを受け取ったということはそのメッセージ、ひいては花城ちゃんを失った、ということ。そして「失った」、ということは同時に「得てた」という示唆であり、それに気づいた主人公が自覚をする、そして妹にあの日言えなかった「行ってきます」を言う。
この行ってきます、がマイナスなものではないことは明白ですが、過去にすがるのではなく未来に対して行ってきますと言うのは非常に素晴らしい。そしてその失った妹は「行ってらっしゃい」と言った。これは主人公の中での「失った妹」が過去に縋っていると自覚していた現れ、だと私は思っています。
果たして妹が言ったから自覚したのか、自覚があったから妹が言ったのか、恐らくそこを言及する必要はないでしょう。
なにせこの話は「未来」へ向かう話ですから。
{/netabare}

好きではありませんが嫌いでもありませんので時間があるときに見てください。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5

69.9 28 2022年度アニメランキング28位
劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~(アニメ映画)

2022年6月10日
★★★★☆ 3.7 (49)
186人が棚に入れました
「劇場版でも異世界だ!」

教室に突如現れたワームホールによって、
異世界転移をさせられた2くみの面々。
彼らがたどり着いた地は暴走した
ゴーレムが支配する荒れ果てた世界であった。

そこで出会ったのは、
めぐみんと似た雰囲気を持つ少女型ゴーレム、
スバルを知る(?)杖をついた男性、
そしてターニャと同じ軍服を着た女性。

様々な運命が複雑に絡み合いつつも
元の世界に戻ろうとするアインズ、カズマ、
スバル、ターニャ、尚文達は、
無事にアッセンブルすることができるのか!?
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

デフォキャラスピンオフ劇場版は異色ですが面白い。無料なら。

 これを映画館に行ってお金を払っていたら、サブスクでも有料コンテンツなら評価はそんなに良くないかもしれません。しかし、無料で見られるなら普通に面白いです。特にスピンオフのデフォ作画なので見せ場があまり作れず、飽きが来る前に休憩(私は風呂に入ってきた)できるので、楽しく見られました。

 物語そのものは良くできていると思います。が、ある種フォーマットにそった物語に各キャラを配置していったような作りです。奥行きを期待することはできませんんし、感動もそこそこです。作品の性質から言って結末の予想も大きな意味ではつきました。
 ただ、300年の時間というのにちょっとだけ感情移入したので、{netabare} だったらまた次に訪れる孤独はどうなるんだろう、 {/netabare}という想像をしてしまい少しいろいろ考えてしまいました。

 ただ、あのキャラのいつものアレをああいう風に使う… {netabare} カズマのスティールを散々見せて追いて、最後の悲しい終わりから救う {/netabare}というのは面白いアイデアでした。

 EDのあの人は誰?というのは現状調べてませんが思い当たる人がいないです。まあ、劇中の2人も良くわからない人だったので特に気になりません。何かの遊びなのでしょう。

 やっぱり力関係というか人気関係では(当時)オバロ、このすば、リゼロ、幼女戦記、盾の勇者の順番なのかな?キャラの活躍度という意味で。リゼロと幼女は微妙ですけど。

 スピンオフで約2時間の作品を作れるというのは、ここに登場する作品の人気、レベルの高さなのでしょう。残念ながらリゼロは1期と2期1クール途中断念なので強くなったエミリアたんの設定を良くしりませんけど。

 ということで、珍しいデフォキャラのスピンオフアニメで2時間の劇場ものでした。ぜひ「ぷれあです」×「かげじつ」で劇場に足を運んでも満足いく作品の制作、お願いします。

 ストーリーはオリジナルキャラの物語が良かったですが劇場版としてはそこまで高く評価できませんので3.5。キャラも同様です、スピンオフだし3.5。作画は普通にいいですがまあ、これも劇場版としては3.5以上は無理です。声優、音楽も調整として同じでいいでしょう、オール3.5ですね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

意外と時間が経つのが早かったが・・・

【レビューNo.5】(初回登録:2023/1/1)
2022年作品。
当方配信で(怖いものみたさで)視聴しました。

正直途中で飽きるだろうとあまり期待はしていなかったのですが、
意外にも完走しました(笑)

大筋としては、メンバーが更に別の異世界に飛ばされ、そこでドタバタ劇
を繰り広げるというものですが、
{netabare}
・きちんと一本のシナリオで仕上げていた
 やり方としてはショートシナリオを数本オムニバス形式でやる方法も
 あったと思うのですが、それじゃTVの延長線だよねと。
 そこは劇場版らしく1本の長編で。
 シナリオは笑いあり最後に感動ありと、意外としっかりしてました。
・グループごとに別の場所に飛ばされた
 あれだけのメンバーを一度に捌くのは大変です。
 なので、4グループほどで同じ異世界ながら別の場所に分断して飛ばす
 ことにしました。そしてそれぞれのグループを個別に見せていくことに
 より、場面に変化が生みだすと共に、また少人数にすることにより個々
 の存在をより際立たせる工夫がなされていました。
最後はみんなが合流して力を結集して、ラスボスを倒して元の世界に戻って
めでたしめでたしと。
まあ尺は十分あったので、(平等ではないが)各々それなりに見せ場は
あったかと思います。
{/netabare}

「無謀な挑戦」というのが頭にあったので、それを覆してくれたのは
よかったかな。企画モノにしてはひとつの可能性を示してくれたと
思います。
ただ劇場版ということを考えた場合、「これ劇場でお金払って観たいか?」
って言われれば、正直そこまでではないかなっと。
そして続編を観たいかっといえば、「1つ観たらもう十分」って感じです
かね。その辺りが今後の課題でしょうか。実際興行収入はどれ位あった
のか?大コケでないことを祈りますが。
本作自体は配信で観る分には、そんなに悪くなかったと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

名無し さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

面白さは星5

キャラと設定の扱いが素晴らしく、それぞれのアニメ本編よりも解釈が深いらしく、ネタやリアクションは丁寧に丁寧に作られており、どれか1作品を見たことがある人には大手を振ってオススメできる作品です。

その上で不満点を書くのであれば、3点あります。まず、映画にするにはボリュームが足りず、テレビアニメの延長線と言うような具合なところが不満点です。自分はお家でレンタルで見たので、そこまで不満は無いのですが、ふとレビューを書く上で、「そういえば映画なんかこれ…」と気づいてしまったのです。
次に、声が被っているシーンがあり、何度も巻き戻して聴いてみると、そこもすごく面白くて、もったいないなぁとおもいました。映画館ならサラウンドスピーカーになると思うので、聴き取りやすいとは思いますが、聴き逃した方はいるんじゃないでしょうか?
最後に、オリキャラについて。映画全般に言えることですが、アニメ作品映画化に伴う問題点は、映画オリジナルキャラの扱いです。アニメの続編に出す場合、映画のネタバレ回想を流すか、説明がないけどそこにいるか、テレビでは扱わないかのどれかになります。最後の選択肢の場合、映画で命を断つか、テレビ世界と分断するかのどちらかになり、その配慮はできてていいのですが、名探偵コナンにも言えることですが、それだったら見る理由が薄くなり、そういう映画は嫌いです。オリジナルキャラで展開するくらいなら、慎重勇者組を出して欲しかったですね。正直もう会わないなら、世界が滅ぼうが、救われようが影響は無いですから。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 0

69.1 29 2022年度アニメランキング29位
グッバイ、ドン・グリーズ!(アニメ映画)

2022年2月18日
★★★★☆ 3.6 (67)
198人が棚に入れました
東京から少し離れた田舎町に暮らす少年・ロウマ。
周囲と上手く馴染むことができないロウマは、
同じように浮いた存在であったトトと二人だけのチーム"ドン・グリーズ"を結成する。
その関係はトトが東京の高校に進学して、離れ離れになっても変わらないはずだった。

「ねえ、世界を見下ろしてみたいと思わない?」

高校1年生の夏休み。それは新たに"ドン・グリーズ"に加わったドロップの何気ない一言から始まった。
ドロップの言葉にのせられた結果、山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、
無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えていったドローンを探しに行く羽目に。
ひと夏の小さな冒険は、やがて少年たちの“LIFE”生き方を一変させる大冒険へと発展していく。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.9

2回目。内容が絞り切れないのは、言いたい事が希薄だから。

 初見の翌日、2回目見ました。そうかあ…ドローンと風景を見下ろす、つまり劣等感から脱して、世界を見下ろせ…という意味ですか。
 それと、友人論…15歳の冒険を共にする「真の友人」ですねえ。でも、だったら、やっぱりチボリは余計な気がします。


 ドロップの{netabare} 死別{/netabare}です。「最後の冒険」の意味と関連しますが…うーん…せっかく「15歳の」という成長過程の意味で「思春期の冒険」の意味を入れようとしたのに、{netabare}病死 {/netabare}だと意味性が変わってくる気がします。
 そこは勇気をもって、別離の理由を別に置くべきでは?恋愛をどうしても入れたいなら、チボリとドロップの結婚とかでもいいじゃないですか?やっぱり最近のアニメはこの点が安易です。よほどの理由がない限り、感動ポルノにしかなりません。

 しかも、振り返りの時期ですけど、やっぱり高校時代に振り返るのではまだまだ同じ状況です。もっと年齢が行ってから「15歳の意味」を振り返らないのは良くなかったです。そこもドロップの設定が邪魔をしている気がします。

 クマなあ…クマ。「スタンドバイミー」の「鹿」と対応しているのはわかります。同作では自分だけの経験・発見という意味性があったんだと思いますが、本作のクマは何を象徴しているのでしょう?3人だけの冒険の意味性でしょうか?

 この作品、クマとかチボリとか山火事とか尺が不足なんじゃなくて、テーマが絞りきれていないんだと思います。学校のシーンとチボリ全カットで、劣等感なんてセリフと回想だけでいいじゃないですか。極端なことを言えば3人の冒険中の会話劇だけでもいいくらいです。
 90分という尺を精査して削り切ったでしょうか?尺不足じゃなくて削り足りてないと思います。

 それと作品を精査しましたが、{netabare}国番号違いの電話番号{/netabare}、電話番号があそこにつながる、そこにたまたまドロップがいる、そして、そのドロップが2人と出会う…全部偶然みたいですね。いっそのこと、ならばそこはファンタジーを入れればよかったのに、と思います。それにしてもこの電話ボックスの意味が弱いですねえ…。

 それと星ですねえ。見下ろすがテーマなのに、見上げちゃいましたねえ…星の下では平等的な意味や、人間の小ささなどの意味にもとれますが、どういう意味でしょうか。やはり友情は美しい、なんでしょうか。それとも醜いようでも世界は美しいかもしれません。

 とにかくアナロジーがはっきりしないのは、テーマ性・メッセージ性が絞り切れていません。15歳の最後の冒険が見下ろす…劣等感の克服につながるのか?恋愛が登場した意味は?なぜ {netabare}病気{/netabare}を持ち出したなどなど、やはり完成度が低い映画だなあという印象でした。

 もう、頭が否定的になっているのでこれ以上は書きませんが、やはり私には何も刺さらなかったです。背景美術も私はそれほど魅力的に感じませんでした。



以下、1回目のレビューです。

劣化スタンドバイミー。何を伝えたいのか全くわからないです。

 ほぼ話の骨格は「スタンドバイミー」です。細部や動機は違いますけど、それは問題ではないでしょう。秘密基地と仲間、不条理な環境と疎外感、そして冒険へ。そして成長後に訪れる知らせ。そういったものすべてが「スタンドバイミー」でした。
 
「線路を歩く」というセリフがありましたので、制作者側もそこは意識しているのでしょう。つまり、結末に何も見つからないけど、冒険した意味をかみしめる映画です、という一つの骨格があります。

 まあ、元の話がいいので当然そこはある程度良い話になるに決まっています。そこをどう評価するかですね。「スタンドバイミー」を見たことが無い人にはいいと思いますが、正直比較するのが古今東西の映画でトップクラスの名画なので、どうしても大きな減点要素です。
 最近「リコリスリコイル」で例のオマージュがあったので、見直したばっかりなので余計ですね。

 なにより死の理由ですね。「スタンドバイミー」であの最悪の環境で育った悪ガキだった彼が {netabare}弁護士になって喧嘩の仲裁をして刺されるという意味性と、病気では全然違います。「線路」と「死を探す冒険」は人生そのものです。そういう重要な要素が拾えてないので換骨奪胎になっておらず、意味性がすっぽりと抜け落ちてしまっています。 {/netabare}

 で、まあそこに別の意味性を加えるために、何を重なるかですが、もう一つのストーリー、チボリという女の子への恋心の話です。しかし、ここは弱いですねえ…観客がチボリに恋しないと成立しない気がします。あるいは風景写真に対する情熱のようなものが必要でしょう。「美しい」が何を象徴しているかがはっきりしません。友情…なのかなあ…そうなると、チボリの意味性が希薄になってしまいます。

 国際電話の意味とか、電話ボックスが何を象徴するのかとか、そもそも話の偶然性の要素とかまあ、なんか煙に巻かれたというか、スタンドバイミーにしないために、無理に作ったストーリーというか…
(そういえば、ドロップは相手が誰かをどうやって知ったのでしたっけ?後で確認しますけど、1回目視聴時は拾えてません。偶然だとしたらご都合主義もいいところすぎです。可能性としては、{netabare}ドロップが相手が国番号を間違えたことに気が付いて、チボリと連絡を取って仲良くなって素性を聞いて… {/netabare}うーん、あり得ないですねえ…)

 しかも、平成になって成長が無くなったせいか、ノスタルジーという感情が成立しなくなっています。もちろん、個々人には生まれ育った環境がありますが、わざわざ田舎暮らしを設定しなければ舞台が作れない時点で、この企画・脚本が何を描きたかったのが見えてきません。つまり旧世代の作家の作劇法から脱しきれていない気がします。

 田舎を脱出したいというモチベーションなのか、東京という幻想なのか、更に先にある世界なのか。空港を見せたということは、ある程度、世界への広がりは意識したんだと思いますが、この話で世界に夢を見られるのかは、ちょっと疑問でした。
「空の青さを知る人よ」でも扱いあぐねていましたが、なぜ今の時代になっても田舎をモチーフにするのかは、情報の均一化や東京への憧れの意味性が無くなってきたことから言って、難しい問題だと思います。

 日本を脱出する、というならそこはもっとちゃんと描かないと、国名で言葉遊びをしているだけに見えました…というより、コーラにしても国番号にしてもジャストアイデアであって、そこにメッセージ性が全くありません。

 要するに伝えたいことがまったくないように見えました。だから、キャラが立たないのだと思います。

 総評すると、描きたい何かがあって作ったというより、何か作らなければならないから、スタンドバイミーを下敷きにしたエモい話を無理無理創り出したという感じの作品に見えます。
 ストーリー、キャラともに2点以上はつけられません。作画・音楽もあまり目立った良さはないし。まあ、声優さんがどうこうではないですが、オール2かなあ…満足度からいえば更に低いかも。

 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

【辛口コメント】世界や自分の大きさを受け止めて少年は成長していく

【物語 3.0点】
1クールアニメ企画を劇場版に押し込んだような窮屈な構成。


少年期の悩みの大半は、理想とする自分と現実とのギャップから来るのだと思います。
踏み出せないのも、世界の大きさに直面し、自分の矮小さを思い知るのが怖いから。


田舎の男子高校生3人組"ドン・グリーズ”による、夏のある日の冒険を通じて、
共感できる葛藤を掘り起こす。

その他、永遠に思える少年時代とリアルでは有限な時間など、
興味深い青春要素が宝箱の如く詰まってはいるが、整理しきれず。

エピソードをメイン3名から、さらに主人公ロウマ1人の視点に絞って突破を試みるも、
半端に示唆した他キャラの過去等が未消化感を残す。
(トトの東京デビューの現実など、掘り下げ不足と感じる要素は、スピンオフ小説に回る。)

アイルランドだの、アイスランドだの、スケールのデカイ話を勿体ぶりつつ、
近所の裏山よりは遠い場所を徘徊する”冒険”が、
キッカケ程度ならまだしも、メインエピソードとしてダラダラ続くのも微妙。

この何気ない掛け合いの積み重ねこそが青春ということなのでしょうが、
1クールの1話の中でやるならほどよい脱線でも、
1本の映画の中でやられるとストレスが溜まります。
終盤{netabare}アイスランド編やそこに至る過程{/netabare}が短すぎたので余計に。
{netabare}「きらきら星」{/netabare}合唱シーンに尺を費やすくらいだったら、
例えばロウマが資金作りのために牛糞処理に精を出すシーンでも詳述してくれた方が、
私はまだ感動できたと思います。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・MADHOUSE

背景美術はリアル志向。
主要な冒険の舞台となった森林は、夏でも緑の色彩が控えめな本邦のジメジメした雑木林。
田舎って本当に道から数歩外れると原始林に迷い込むので危ないですし、クマも出ます。

この土台の上に終盤、満を持して披露される{netabare}アイスランド・黄金の滝{/netabare}は圧巻。


その他、適宜CGも交えて躍動するチャリンコ、キックボード、安物ドローンなどが、
免許取る前のガキンチョの目一杯を体現。

表情描写も口には出さないけど微妙だと思ってる、ノリ気じゃない。
漏出する本音も捉える上々の作画。


【キャラ 2.5点】
中途半端にサブに残したヒロインが主人公の焦点をぼかす。


理想の自分を大きく持ちすぎて黒歴史を重ねて来たトト。
(例えば{netabare}タイトル回収{/netabare}とか)
自分を卑下しすぎて他人に見えている長所を見逃しがちなロウマ。
(ユグドラシルのお浸し……是非、賞味したいですw)
二人に心のままに生きるよう背中を押すドロップ。

メインの少年キャラ3名はシンプルにまとまり良好。


ノイズに感じたのがロウマとトトの中学時代の同級生・チボリ。
過去のマドンナポジションとしてはありだと思いますが、
広い世界を意識させる存在がドロップと被ってしまうのが難儀。
サブの少女が眩しすぎて、メインのドロップがかすんでる感。

監督・脚本・いしづか あつこ氏によると、
当初、憧れのヒロインを助ける少年3人のプロットを構想したが、
男の子ならではの話を書こうと思い、思い切ってヒロインをメインから外したとのこと。

であれば、さらに思い切ってドロップかチボリ。
“ヒロイン枠”はどちらかに集約して欲しかったです。


【声優 4.0点】
ロウマ役・花江 夏樹さんVSトト役・梶 裕貴さん。
繰り広げられるトークは、傍から見れば森に迷い込んだ少年たちの奇声なのでしょうが、
当人たちは真剣に人生に迷って叫んでいる。
よく通るCVで葛藤を好表現。

転機をもたらすドロップ役の村瀬 歩さん。
女声の如き天使の少年ボイスで二人を導く。

サブに回されたヒロイン・チボリ役には花澤 香菜さん。
先駆けて旅立った世界から、少年と鑑賞者の心を溶かす甘いボイス。

……そうか、結局、俺はこの冒険に女っ気がなくて、
ざーさんボイスの女の子と冒険したくて、文句を垂れているだけなのか?(苦笑)


【音楽 4.0点】
劇伴担当・藤澤 慶昌氏。
これ!と決めた明快なメインフレーズを散りばめて、刷り込んで、
ここぞの場面でガツン!と回収して決めに行く、清々しい構成。

その他、ふんだんに挿入される英語詞のバンド曲群にも、
チャリンコ全力疾走をクライマックスに押し上げる勢いがある。

ED主題歌は[Alexandros]「Rock The World」
サビの歌詞でメインテーマをジャストミートする優秀な主題歌。

ここまでなら4.5点以上ですが、
{netabare}「きらきら星」{/netabare}合唱したのでやっぱり0.5点減点で(←しつこいw)


【感想】
『よりもい』スタッフ陣の作品とのことでしたが、
また違った物を見せてくれた時に『よりもい』引きずって鑑賞して折り合えなかったら嫌だなと、
『よりもい』の記憶はなるべく消しての鑑賞。

が、スタッフが想像以上に『よりもい』意識したと思われる構成で、否応なしに『よりもい』を参照せざるを得ず。
終始ぬかるみに足を取られたような劇場鑑賞でした。

ですが絶景に青春解明の一説と心には残りそうな一本。
観るのであれば、音響共々、劇場じゃなきゃ絶対に後悔するのは間違いないので、
興味のある方は、劇場へ急ぎましょう。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 25
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

Dont Gray!

この話は田舎でクラス高校一年生の話

まぁなんでしょ。正直期待はしてませんでした
主役は花江夏樹さん、梶裕貴さん、村瀬歩さん。
そしてヒロイン役に花澤香菜さん。
超がつくほどの大物を...それもメインキャストに...
まぁメインの男性声優三人は女性ターゲットでしょう。
炭治郎にエレンに日向君、と見事なまでに女性向け。(異論は認めます)

さてそんなこんなで期待値ゼロ(用法間違い)で始まった本作、結論から申し上げますと「雰囲気だけ」
内容としては「よりもい」に近しいものを感じました。同じ監督だから偏見が入ってることには入ってるのでしょうが、ヒューマンドラマというか人間模様を中心に書いている、という点では共通していると思います。
まぁ、あちらは北極に対して、本作は日本。さらにあちらは女子高生4人に対して、本作は男子高生3人です。違うと言えば違うのですけど。

個人的にはあまり好きではありません。
特にキャラ。よりもいは面白かったのですが、本作のキャラの自分勝手が過ぎていて好きになれませんでした。花澤香菜さんだけはまだ良かったのですが、それ以外は正直…
{netabare}村瀬歩さんが一番無理ですね。なんですかあのキャラ。セリフはイタイし、発想はイタイし、考えはイタイ。頭の中お花畑がふさわしい人で心底嫌になります。{/netabare}

{netabare}ロウマとトトが「ドングリーズ」というグループをつくり、逆張り花火大会を例年してたんだけどそこにドロップが参加、ドローンを奮発するも風に流される。同時刻に起きた山火事の犯人はドングリーズだとクラスメートに言われ身の潔白のためにドローン探しの旅に出る。その途中で友情UPそしてドロップの短命を知る。ドローン発見。帰還。ドロップ死。遺品の中に宝の地図。アイスランドに旅立ちドロップが言ってた「黄金の滝と公衆電話ボックス」を探す。見つけた。その電話番号が昔かけた間違い電話の電話番号であることが判明し、とんでもない奇跡の確率を認める

という話。まぁなんでしょ。無実を証明するためにドローンを回収しようするのも意味分かんないですし、律儀に通行禁止を守ったり、なんかいきなりアイスランドに行ったり、もうよくわかんない(泣)

トンデモない確率だとは思います。偶々電話番号を間違えて、しかもその事に偶々気づかずに、それっぽい単語がその時だけ出て、その間違えた先に偶々日本人がいて、偶々その日本人が人生の一番の宝ものを探していてその単語を聞いて、声と電話番号だけで個人を特定し、更に近づいて友達になり、ものすごく良いタイミングで死んだ。奇跡ですね(投げやり)
あとあんだけ珍しい場所なんですからネットかなんかに絶対情報あると思うんですけど…無いんですかね。だとしたら相当すごくないですか?主人公達。確率的に無いことは無いと思うのですが、まぁ無理でしょう。ご都合主義にも程があります。いしづかあつこさんは割と「確率的に少しでもあるなら通る」という節がありますよね。偶々かもしれませんが。
{/netabare}

基本スタッフは「よりもい」の方ですね
監督・脚本はいしづかあつこさん
キャラデザは吉松孝博さん。
劇伴は藤澤慶昌さん。
アニメ制作はMADHOUSEさん。

作画は良く、情景描写が上手く表現されていたと思います。特に自然の描写が最高峰でした。おそらくいしづかさんがこだわったんでしょうが、とても良い結果となったのでそこは感謝したいです。
声優は…まぁ…あまり好きではないです。なんでしょうね。

誰が一番幸せを見つけたか
ということで締めます

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

68.9 30 2022年度アニメランキング30位
映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝 (アニメ映画)

2022年4月22日
★★★★☆ 3.7 (15)
43人が棚に入れました
ある日、野原家にしんのすけの“本当の母親”を名乗る女性とひとりの子供が現れる。その女性によると、5年前、産婦人科でしんのすけとその子が取り違えられたというのだ。俄かには信じがたい事実に戸惑うみさえとひろし。しかしその夜、謎の集団が現れ、女性としんのすけは連れ去られてしまった――。
二人が連れてこられたのは、人里離れた忍者村。そこでしんのすけは地球を脅かすとんでもない事件を目撃してしまう。
果たして野原一家はどうなってしまうのか!?
そしてしんのすけが見たものとは一体――!?!?

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

モノボケの術、親心、ドサクサの術、なんでもかんでも忍法

 ちえみが、息子ちんぞうを連れて忍びの里から逃げてたです。野原家に行き人ちんぞうを守るため人形を操り、しんのすけを自分の子と偽り接触したため、野原家が巻き込まれるお話だったデス。しんのすけ奪還に奮闘するひろし、みさえがやっぱり面白いです。ひまわりも活躍実は、していたことがわかるです。 かすかべ防衛隊いつもの面々も、らしかったです。
忍者に対してその場しのぎ?しんのすけらしいいい加減適当な行動が忍術において、ここではすべて通用してしまうところが、どこか面白おかしいです。
 ここでの、ポイントはニントル、地球のおヘソ、もののけの術になるです。これが終盤でどういうなるのか?注目です。また、個性的な名前の悪者も相変わらずな感じです。

 でもやっぱり、野原一家の家族愛といった点も面白おかしながら、どこか時にはジンと来るところもあったのが良かったです。しんのすけを思うひろし、みさえの親心も見どころの一つだと思ったです。
 子供向けアニメとして、十分楽しめる内容だったと思うです。2023年上映予定は、具体的にわからないけど、クレしん初となるかもしれないしん感覚かもしれないです。
 OPのパペット、EDの何気ない子供らしさのあった演出は、悪くなかったです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

68.4 31 2022年度アニメランキング31位
ぼくらのよあけ(アニメ映画)

2022年10月21日
★★★★☆ 3.6 (16)
53人が棚に入れました
西暦2049年の夏。阿佐ヶ谷団地に住む小学4年生の沢渡悠真は、もうすぐ地球に大接近するという彗星に夢中になっていた。そんなある日、沢渡家の人工知能搭載型家庭用ロボット・ナナコがハッキングされてしまう。犯人は「二月の黎明号」と名乗る未知の存在で、宇宙から1万2000年の歳月をかけて2022年に地球にたどり着いたもののトラブルで故障し、阿佐ヶ谷団地の一棟に擬態して休眠していたのだという。二月の黎明号から宇宙に帰るのを手伝って欲しいと頼まれた悠真たちは、極秘ミッションに乗り出す。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

団地は未知と交流する方舟

人類がどんどん宇宙に出る程じゃないけど、AIロボットが実用化される程度には近未来の日本の夏。
団地暮らしの少年らが、宇宙から飛来した人工知能を、故郷へ返すため奮闘したりする、
同名コミック(全2巻・未読)の劇場アニメ化作品。

【物語 3.5点】
宇宙より来る未知のAIと最初に遭遇するのはAIである。
AIが心に類したものを持つ時、AIは人間に禁断の嘘を付く。
{netabare}団地屋上に貯めた水分子は量子コンピュータの媒体として最適。水は燃料でもある。{/netabare}
宇宙空間に浮かぶ団地!

これらの要素にビビッと来る人、
あとは団地マニアには是非オススメしたいJAXA協力の青春SFジュブナイル。


ただ構成がもう一つスッキリせず突き抜けない感じ。
本作もまた数万年単位の壮大な宇宙の交流を妨げるのは、
子供や、その親御さん同士の些細な人間(およびAI)関係のもつれ。
という定番メニューを揃えますが、人間関係の進展が小出しで、ややゴチャ付いている感。
連載なら徐々に解決でも良いのですが、一本の映画でやるなら、
もっと山は少なく、高くした方が明快でシナリオも盛り上がったと思います。

映画化に当たり大きな流れを作るためにアニオリで、
早くAIを宇宙へ送らないと取り壊しが決まっている団地が解体される。
というタイムリミットを設定したのは妙案でしたが、
その煽りで、人間ドラマの小山が、いっそう添え物に押しやられた感じ。

佳作青春SFだったけど、もっと感動作に出来たはずという悔恨も残りました。


【作画 4.0点】
アニメーション制作・ZERO-G

ミッションの鍵となる複雑な水の表現処理には実績のあるスタジオで土台は安定。

“オートボット”や各種デバイスを担当したデザイナーからも、
2049年の近未来社会を表現しようとの意欲が伝わって来ます。

特筆したいのは、“虹の根”コンセプトアートを担当した、みっちぇ(miche)氏。
幾何学的なデジタルアートで構築された惑星の風景は、スクリーンで一見する価値あり。


【キャラ 4.0点】
“オートボット”のAI・ナナコと喧嘩が絶えない小4・沢渡悠真らの主人公少年グループ。

そこに、悠真グループの少年・岸 真悟の姉・わこ世代が抱える、
小5女子のカーストとイジメの構図が持ち込まれ波乱要素に。

ここまでならよくある子供たちの若気の至りですが、
ここから親世代の過去も巻き込んでいくのが意欲的。

何歳になったって人類は未熟であることを描けているからこそ、
AIの嘘が説得力を増すのです。


【声優 4.0点】
主人公・沢渡悠真役には俳優・杉咲 花さんがまずまずの少年ボイスを披露。

アフレコに当たり、コロナ禍で大人数の収録が困難な中でも、
相棒のオートボット・ナナコ役の悠木 碧さんと杉咲さんの同時収録にはこだわったという本作。
子役→声優の経験がある実力者が、主役の俳優をリードする関係を死守。

俳優・タレントでも、一定以上の演技を引き出している作品には、こういう制作エピソードが必ずありますね。
口酸っぱく言いますが、俳優・タレントを広告塔、お客さん扱いで名前借りしているだけの作品と、そうでない作品は、観ていればハッキリと伝わって来ます。

それにしても、悠木 碧さんの「いわゆるロボット系の子を演じる際は、その子がどのくらい高度な文明で作られているかによってロボ度のさじ加減を調整しています」
とのキャストコメント。高度すぎて、わけがわからないよ(笑)
宇宙船“二月の黎明号”役のベテラン・朴 璐美さんと合わせてAIへと超越する声優さんの神秘を実感します。

脇は“クラスの敵”河合 花香役の水瀬 いのりさんVS岸 わこ役の戸松 遥さんの修羅場など、
ほぼ声優陣で固め盤石。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は横山 克氏。
十八番のストリングスを軸にした心情曲から、
ピアノ&ギターの団地ノスタルジー、シンセ和音とオーケストラによる大宇宙表現まで幅広くカバー。
青春物も良いですが、横山 克氏のBGMは、もっと宇宙に出るべきだと再認識。

ED主題歌は三浦 大知さんの「いつしか」
伸びのあるハイトーンボイスで、しっとりと聞かせる壮大なバラード。
タイアップに合わせて、ロケ地となった杉並第二小学校の生徒が書いた本作試写会の絵日記風感想を取り込んだコラボAMVを公開する粋な対応。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9

ato00 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

エンドロールに驚かされる

2022年公開、120分の長編劇場アニメ。
漫画原作の割には、真面目成分多めです。
主人公たちは小学校高学年だから、少々幼い感じ。
年相応の悩みを抱えながら平凡に暮らしています。

そんな彼らの元に降ってわいた宇宙からの来訪者。
舞台が近未来だから、AIとの絡みも興味深いです。
全体に素直なストーリーなので、120分ながらあっという間に見終えることができました。
ただし、内容が薄味なので、あまり記憶に残らないかな。
ひと夏の宇宙的不思議感覚を味わうのに適している作品ではないでしょうか。

全く前情報なしで観たので、主人公の男の子の声に違和感がありまくりでした。
さもありなん、まあまあ若い女優さんとのこと。
それに比べ、他の方の演技が自然なこと。
エンドロールですべてを理解しました。

津田健次郎さんの脱力系の声は何となく納得。
その他、花澤さん、水瀬さん、戸松さん、岡本さんとそうそうたる面々。
中でも驚いたのは、ナナコ役の悠木碧さん。
AI役もできるんですね、彼女。
薄めながらも良い味を出されておりました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

あと さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ひと夏の不思議でちょっぴり切ない青春SFジュブナイル

近未来SFジュブナイルという超面白そうな設定からは特には膨らまず、特に冒険はしません。近未来だけどノスタルジックな雰囲気で小学生たちの日常シーンはとても良いですね…。
内容としてはひょんなことから関わることになる宇宙探査機を子供たちが頑張って助ける、という感じでびっくりする場面展開が何個も起きるわけではなく、小難しいような話もないので子供がサクッと見て夏を感じるような映画ですね。仲のいい友達との夏休みの忘れられない思い出を、ただ青臭く夢を見る。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 0

68.3 32 2022年度アニメランキング32位
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 (アニメ映画)

2022年6月3日
★★★★☆ 3.6 (61)
194人が棚に入れました
ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反抗作戦に打って出た。アムロ達の乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受ける為にベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロ達であったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか…?

ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

大戦の片隅で

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
映画館で観てきました。一応、TV版も見直したのですが、これはもう別物ですね(笑)

作画はとても良いです。映画館で観るべきアニメだと思います。

ストーリーには賛否あるでしょうね。私は、わりと好感をもって観ました。まあ、富野ガンダムを期待すると、大分期待はずれでしょうね。

本作は、安彦ガンダムらしい、古くさくて、人間くさくて、心あたたまる、これはこれで素敵なガンダムでした。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
「戦争は上層部が起こし、最前線が戦い、民間人が傷つく」

そんな事実が、妙に「今、この瞬間」と重なった。ヒトラーをなぞらえて語ったマ・クベ。民間人の犠牲を全く気にしないゴップ。2人が引き起こそうとした「核戦争」を、1兵士(ククルス・ドアン)が止めようとするのである。

あのシーンなんて、本当に「今」、、、いや、もしかしたらやってくるかもしれない「ごく近い最悪の未来」を見ているようだった。

もちろん、安彦監督は、今のこの状況を想定して作ったわけではなくて、人間が持つ、普遍的な部分を描いたら、妙に時勢とマッチしてしまったのだろう(というかそれは、富野監督が描いた原作からであるが)。

本作の主人公はククルス・ドアンなのかもしれないが、やはり、私自身はアムロ・レイを主人公として観た。

TVシリーズの流れの中では、ガルマを倒して、アムロが母と再開した後であり、ランバ・ラルが死ぬ前に位置するのが、この「ククルス・ドアンの島」である。

TV版は正直、「箸休め」的な部分が大きく、安彦監督も「ファーストガンダム最大の心残り」としたエピソードであるが、その焼き直しには完全に成功していたと思う。

アムロの成長を考えていくとき、最初は「成り行き」で戦ったアムロだが、徐々に「ヒロイズム」に囚われていき、それを、ランバ・ラルに叩き直されるという大きな流れがある。

優しく、虫も殺せないような「少年」だったアムロは、戦争の中で、否応なく「兵士」になっていく。戦争の中では、「大人」になる前に、「兵士」に成らざるを得ないのだ(2話前の、母との再会話から)。

そんな悲しい現実の中、アムロが「少年」から「兵士」に生まれ変わっていく途中に、「人としても少しずつ成長している」ことを、安彦監督はこの「ククルス・ドアンの島」を通して描きたかったのかなと思った。

本作のアムロは、かなりポンコツに描かれている。

モビルスーツの操縦は上手いだけで、畑仕事も満足に出来ない15歳の普通の少年。はじめ、アムロは何にも出来ないので周りからも認められない。

彼が認められたのは、「水道修理」と「電気修理」。水道修理で高所からロープで降りていったのは、間違いなく、アムロが兵士として身に付けたスキルと根性だろう。「電気修理」で生きた機械いじりは、ガンダムに乗る前からのアムロの特技である。

つまりこの2つによって周囲から認められ、受け入れられたのは、「ガンダムに乗る前のアムロの人生の肯定」と、「ガンダムに乗った後のアムロの人生の肯定」ではないだろうか。

アムロはガンダムに乗らなければ多分、父親のような技術者になったのだろう。もしくは、機械いじりが好きなだけのオタクか。

そんな人生と、「連邦のエースパイロット」としての人生の、どちらが幸せなのかは分からないし、それを考えることにも意味はない。

それを望むかどうかは別にして、時間は確実に流れ、その時間の中で得た経験は全てが自分の中に蓄積されている。兵士として得た人殺しの技術も、使い方を変えれば人を救ったり守ったりできる。

本作の中で、アムロがガンダムで生身の敵兵を踏み潰して殺すシーンがある。前後の流れからしても、アムロの性格からしても、違和感のあるシーンだったが、あの優しい安彦監督が満を持して作った本作である。きっと何かの意味はあるのだろう。

TVシリーズで本作の1話前にあたる「時間よ、とまれ」で、アムロは生身の敵兵を殺すことは出来なかった。それがなぜできたか?

「時間よ、とまれ」との最大の違いは、「守るべき者が居たか」ではないだろうか。「時間よ、とまれ」ではガンダムが単独で動いていたが、本作には、カーラやマルコスといった、「守るべき者」がいる。彼らを守るためには鬼にでもなれるというのは、ククルス・ドアンから学んだことではないだろうか。

思えばアムロが初めてガンダムに乗った動機は、「生き残るため」であり、「身近な人を助けるため」であった。そういう初心を思い出した、とするのは、やや恣意的な解釈だろうか。

本作で敵を踏みつけたのは、近くにマルコスがいたからだろう。下手に兵器を使えば、跳弾や崩落などでマルコスを巻き込む可能性がある。直前に、ビームサーベルでコックピットだけを貫いたことからも、マルコスを守るために戦っていることが分かる。

少年だったアムロは、ドアン達との日常の中で人間として成長し、また、兵士としても成長していた。

では、その先に見つめるものは何か。

最終的には、「武器を捨てること」だろう。

ククルス・ドアンは、完全に地に足がついた「大人」として、アムロの前に現れる。ドアンは一流の兵士であり、多くの人を殺したが、その先でも、「素敵な大人」になれた。

今はまだ銃を置くべき時ではない。でも、その時が来たら武器を捨て、穏やかに暮らすこと。

ククルス・ドアンは、アムロにとっての目標となる大人であり、散々人を殺してきた自分もそうなれるという希望だったのかもしれない。その象徴が、最後の「染み付いた戦いの臭いを捨てる」という、「とても良いこと」なのだ。

ちょっとだけ残念だったのは、もう少しロボアクションが観たかった(特に、サザンクロス隊との決戦)ことと、ラストでアムロがガンダムを使って畑を作るシーンくらいは欲しかったかなというところ。数秒でも良いし、なんなら、ホワイトベースから見下ろした背景として、(人力で作った円の畑の中に)ガンダムの指で引っ掻いたような直線的な畑がある、くらいさりげなくても良いからさ。それは、本作の作風にもテーマにも合った、素敵なシーンになったと思うんだけどな。

まあ、本作は、とにかく「ガンダムらしく」はない。ただ、ハッピーエンド好きな私としては、こういう素敵なラストは嫌いじゃない。

賛否両論あるだろうが、私含め、オッサンのガンダムファンは、批判はしても離反はしない。負け続けても応援し続ける阪神ファンみたいなもんである。多分、一生ガンダムファンなのだ。

大事なことは、こういう、新しい、綺麗なガンダムを、若い世代がどう受け止めるかだと思う。是非、若手の意見を聞いてみたい。

余談だが、今日、映画館で私の隣に座っていたのは、可愛らしい女子中学生の2人組だった。個人的には、今回の映画鑑賞でそれが一番嬉しかったりした(いや、JCの隣に座ったことじゃなくてね(汗)。そういう若い女性ファンがこんなコアな作品を観てくれている、ガンダムを好きでいてくれることがね、嬉しかっただけですよ。アセアセ)w
{/netabare}

【余談~舞台挨拶中継から素敵なシーンを~】
{netabare}
ライブビューイングで見られたので、いくつか素敵なシーンを。

①視聴前に司会の方が、「カメラでの撮影はお控え下さい。もし見つけた場合には、高濃度のミノフスキー粒子が散布されます」と、洒落た注意をしたこと。

②森口博子さんの挨拶中にお客さんのスマホが鳴ってしまったのに、すかさず、「大丈夫ですよ。本番前で良かったですね」と、笑顔でフォローしたこと。

③本作でセイラさん役をした潘めぐみさんが、お母さんの潘恵子さん(ララァ)のスカーフを巻いて登壇していたこと。

④マルコス役の内田雄馬さんが、司会の方から「内田裕也さんです」と紹介されたが、笑いながら「大丈夫ですよ。名前だけでも覚えて帰って下さい」と、笑いに変えていたこと。

⑤もうこれでガンダムは最後、とする安彦監督に、古谷さんが何度も「僕はまだ15歳のアムロをやりたいです」「作画に悔いがあるなら、それは次回作で」と、何度も次回作を勧め、安彦さんも困りながらも何だか嬉しそうで、最後には「もう先のことを考えられる年ではないのですが、実は、この中で私が一番年上ではないんですよね(古川登志夫の方が一歳年上)」と、少し前向きになっていたこと。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 21
ネタバレ

カミタマン さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5

北緯29°24’11″ 西経13°29’18″

2022/10/13 初投稿

「ククルス・ドアンの島」ですと?
ファーストガンダムの話数稼ぎの捨て回のイメージを持っていました。
実は隠れた神回なのか?

早速,テレビシリーズ版を見てみた。
やはり,昔の作品は映像的に忍耐を強いられると感じながら見ていると・・・
どうやら,そういう問題では無いようです^^;
ザクもガンダムもデレているのか変に鼻の下が長いとかいろいろ,設定と異なって描かれているように感じます。
たとえば,苦し紛れのエピソードでシナリオが完成するのにかなり時間を要したのかもしれません,あるいは絵コンテが出来上がるのがかなり遅かったのかも知れません,そういった事情から,とにかく作画にかけられる時間が相当限られていたのかも知れません。それか制作スケジュール的にやむを得ずガンダムについて全く分かっていない外注先に作画を依頼したのかも知れません。調べてみたら作画監督はこの1話しか担当回がありませんでした。
とにもかくにもこの回のガンダムを見ていると,なんか悪い夢でも見ているような気分になってきます。
一視聴者がそう感じるのですから,ガンダムの中核を担うスタッフが見たらトラウマ物であることは予想に難くありません。

どうやらこの作品,四十数年の時を経て,このトラウマと向き合った作品なのだと思います。そういった意味で,富野監督では無く,直接作画に関わっていた安彦氏が総監督を務めているというのも納得出来ます。「自分が作画監督としてあの回を作り直したい!」そんな思いが出発点ではないかと思われます。


なんてことを考え,映画版視聴
酷評注意につき畳んでおきます。読む人は心の準備をしてからクリックして下さい。あくまで個人の感想なので,苦情は受け付けません。反論は高評価のレビューの投稿でお願いします。
{netabare}
率直に言って安彦監督の思いがちょっと強すぎて,空回り気味に感じました。
リアルに書こうとするあまり,逆に違和感が・・・

アムロ:ひ弱な少年のイメージなのですが骨格がしっかりして筋肉も書いてあるのでなんかマッチョアムロになっています。
ブライトさん:テレビシリーズと軍服の色が違います。おそらくリアルに連邦軍での階級を意識しての変更だと思いますが服はキャラクターの体の一部なので髪の毛の色が変わったレベルの違和感を感じます。
セイラさん・ミライさん:これも監督の好みを入れてリアル方向に振ったせいでしょうか?なんかイヤらしく感じます。二人でアイコンタクトを取ってほほえむシーンなんてすごく下品に感じます。

感覚が古く感じるというか・・・例えるなら,昭和の感覚で現代的な絵を描こうとしているような感じです。あくまで個人の感想です。

作り直そうとして,結局作画的に上手くいかなかったように感じます。
本当にあった呪いのアニメレベル,「ククルス・ドアン」それは決して触れてはならない呪いとでもいうのだろうか?

この作品設定面でブライトさんの軍服以外にも大きな違和感を覚える点が有りました。
スレッガーさんがホワイトベースに搭乗している点,しかもジムまで配備されています。おそらくテレビシリーズ中でジムの登場はジャブロー,スレッガーがホワイトベースに来るのもジャブロー。そもそもオデッサの戦いでMSはほとんど使われていないはず,たぶんホワイトベースのMSとオルテガとガイアのドムくらいしか投入されていないように思います(違ったらゴメンナサイ・・・)
ある意味,オリジナルwの「ククルス・ドアンの島」よりも設定を無視しているかも知れません。

作画畑の監督さんなので作画が良ければいいだろうという感覚なのかも知れません。

ああ・・・相当ひどいこと書いてしまった。作品に関わった皆さんごめんなさいm(_ _)m
{/netabare}


以下おまけコーナー

具体的な地名と地図が出てきたので
グーグルアースでカナリア諸島を見てみました。
なんと「ククルス・ドアンの島」=アレグランサ島 発見!!
ちゃんとクレーター(火口)も灯台もあります!!ちなみにレビューのタイトルは灯台の座標です。物語の舞台に適した島を一生懸命探して決めたんでしょうね!なかなかいい島を見つけたと思います。これは結構な評価ポイント。
そしてたぶん1年戦争当時の地球連邦政府の首都はダカール。
確実に言えるのはZガンダム37話の時点では間違いなくダカールです。
https://www.youtube.com/watch?v=TO4yosfZXxE
首都がラサに移るのは時系列的にはもっと後だと思うのですが違ったらごめんなさい。
物語のセリフから推測するに,連邦軍は首都ダカールに迫ったジオン軍を北に追いやり,ジブラルタル海峡を制圧し前線をヨーロッパまで押し上げようとしていると思われます。
首都がダカールだとすると,ククルス・ドアンの島がカナリア諸島にあるので割と近いと言えなくもないです。(少なくとも遠くはない)なので連邦軍がアレグランサ島の残置諜者の神経をとがらせるのも無理有りません。
あ,でもゴップ元帥が通過するためって言ってたり,その後オデッサの戦いに連れて行くためベルファストに呼ばれたり,割と連邦軍も適当か?ベルファストが連邦勢力圏でジブラルタがジオン勢力圏,連邦の首都がダカール。ジオンの勢力圏はどんな設定になってるんだろう?設定オタクの富野監督なら緻密に設定を考えていそうだけど,この作品はどうなんだろう?

この話テレビシリーズでも劇場版でも最後は唐突にアムロが
{netabare}「あなたに染みついた戦いの臭いを消させて下さい。」的なことを言ってドアンのザクを海に捨てます。{/netabare}
これって,テレビシリーズの20年後に富野監督が描いた,宇宙世紀物の最終到達点であるターンエーガンダムの行き着いた先と同じではありませんか!戦力の不保持による平和の実現。40数年変わらぬガンダムの基本理念を見た思いです。


予言の書にならなければ良いのですが・・・
ロシア軍の侵攻が始まってから常に気になっているのですが,ガンダムではオデッサ(オデーサ)の戦いで核兵器が使用されます。(幸いアムロに撃墜されますが)現在の国際情勢を見るとリアルすぎて恐ろしくなります。
ガンダムの放映当時,オデッサはソビエト連邦の都市だったんですよね。ロシア軍の侵攻以来ソ連時代に戻りたくないというウクライナの方々の思いをひしひしと感じます。ウクライナの平和と核戦争が起こらないことを祈り,このとりとめのない文を終わりたいと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ニュータイプという言葉も出てこない地に足のついた素朴なガンダム

『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」(視聴済)を素材に
正味18分程度→100分超にリブートした長編作品。

【物語 4.0点】
一貫して戦時下の人間の業を描いていく『ガンダム』ですが、
ククルス・ドアンの頃はまだアムロも民間人から戦争に深入りする途上。
スレッガーさんなどの“潤滑油”も健在。
悲劇も積み重なって、オールドタイプじゃもう地球はもたない。
人類はニュータイプに進化すべき云々と理想が語られるのも、もう1クール程あとの話。

誰も戦争を望んでいないのに、巨大な組織の一員として戦争に巻き込まれる惨状を自嘲しつつも、
敵味方の立場を越えて、良心に従い、自然を顧みたりすれば、まだ人類はやり直せる。
一筋の光明にすがれる佳作エピソードが詰まっているのがファーストガンダム前半部。


こうした要素に光を当てるため、本劇場版は拡大した尺の多くを島での生活描写に注ぎ込む。
あとは地球圏をたらい回しにされるホワイトベースの立場の解像度アップを企画した政治的背景の詳述などがメイン。
もちろんバトルにも見どころはあるものの二の次といった印象。

長い人生、戦時など一瞬。地に足をつけて、動植物や子供を育む人間活動こそ重要。
ドアンの達観に価値を見いだせるかで明暗は分かれそう。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・サンライズ

決して美女イケメンばかりでない顔立ちが並ぶのも相変わらず。
が、その心情描写は深く、人間観察する価値が大いにある。

特にブライト艦長の円な瞳に中間管理職の悲哀が滲んでいるのがジワジワ来ます。

レビル将軍ら上層部によるホワイトベースへの命令も政治力学上の合理性あってのこと。
が、直下の中間管理職らからすればそれは無茶振り。
そんな事情を胸にしまって部下に当たれば不機嫌だの何だの陰口を叩かれる。
さらにブライトさんも少し前に{netabare}親父にもぶたれたことない少年に手を上げた{/netabare}後ろめたさも引きずっていて……。
戦時の人間組織を解析する脚本の意図を、
ブライトさんの顔立ちがしっかり拾っているのがもう可笑しくてw
そんな彼が心情を吐露できるのはミライさんだけ。
これはもう結婚するしかありませんねw

絵コンテがいぶし銀のいい仕事していると感じます。


古くからのSFには、当時のSF設定が時代遅れになるという課題がつきまとうもの。
だからといって、アナログっぽい計器や分厚いモニターといったオリジナルのコックピットに、
急に空中ディスプレイが乱舞するのも興ざめ。
本作はその辺りのバランスも考慮してオールドファンに訴求。
ブライトさんもカステラみたいな有線受話器に口角泡を飛ばしますw

ベルファストの連邦軍描写からは、
大艦巨砲主義を引きずった旧態依然が、持て余し宙に浮いたホワイトベースの苦難を示唆。

ドアンのザクによるスラスターをフル活用した格闘戦。
ザクの白兵武器は“ヒート”ホークであることを納得させられる加熱描写。
など詰めるところは渋く詰めて来る。


【キャラ 4.5点】
主人公アムロ・レイ。
ガンダムでの激闘、両親との軋轢と、ここに至るまでに既に大きな負荷がかかっていることが、回想で示唆される。
が、この段階ならまだ、島で人間活動をする描写を通じて、土と心を耕せば、
まだ普通の人間の少年として再生できる可能性も示される。

ドアンの島の子供たちもモブではなく
一人ひとり、より明確な人格を持ったキャラとして再構築され、
各々が一年戦争の縮図を体現。
さらにドアン家の“母親役”の少女カーラや、
アムロと同年代の少年マルコス辺りは、
アムロに世話を焼き、突っかかることで、
人間アムロの要素を掘り起こす引き立て役としても機能。


サブがメインを引き立てるという意味では、
元ネタでは顔が出なかったザク強襲部隊。
本作では“サザンクロス隊”としてキャラが確立。
戦場でしか生きられない戦闘狂をドアンにぶつけたりすることで、
ドアンの生き様を際立たせる。


ガンダムがまだ“白いやつ”呼ばわりで留まっているのも前半部ムード。
この島で“白い悪魔”と呼ぶべきは、気まぐれな挙動で人間たちを翻弄するヤギのブランカでしょうかw

ただ真に喰えないのは、狐のマ・クベと狸のゴップの化かし合い。


【声優 4.0点】
『ガンダム』も後継声優が馴染んでいく中、
オリジナルから残っているホワイトベース隊はアムロ・レイ役の古谷 徹さんや、
カイ・シデン役の古川 登志夫さんくらいに……。
このお二人も、本作が最後のガンダムと公言する安彦 良和監督と同様、いつまで見られるのか……。

一方、島の子供たちの役には新人の抜擢も目立つ。
特にカーラ役の廣原 ふうさんは錚々たる顔ぶれの中でも、
ドアンに対する複雑な感情などを表現する堂々たる演技。

ドアンは声優界にも種を蒔いています。


【音楽 3.5点】
劇伴担当は『THE ORIGIN』以来の服部 隆之氏。
昭和を彷彿とさせる金管をアレンジし、
「ガンダム大地に立つ」など往年のBGMリバイバルの土台を整える。

ED主題歌は森口 博子さん「Ubugoe」
『Z』後期OP「水の星へ愛をこめて」の頃からは、流石に声質が変わってはいますが、
齢50を越えて尚、純度の高いボーカルを維持する辺りはお見事。


【感想】
本作もIMAXだの4DXだの様々な規格に対応して興行。
ですが私はこの映画に迫力やアトラクション性などを求めるのは何か違うと思い、
平日夜の閑散とした小規模スクリーンで静かに見届けました。

だから劇場で是非とは敢えて言いません。
BDは既に販売リリースされてますし、各人の目的に応じた方法で、島に潜入すればよいかと。

ニュータイプだけが『ガンダム』じゃないと再認識させられた。
渋い余韻が残った劇場鑑賞でした。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 16

67.8 33 2022年度アニメランキング33位
バブル(アニメ映画)

2022年5月13日
★★★★☆ 3.6 (81)
275人が棚に入れました
世界に降り注いだ泡〈バブル〉で、重力が壊れた東京。
ライフラインが断たれた東京は家族を失った一部の若者たちの遊び場となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた。
ある日、危険なプレイスタイルで注目を集めていたエースのヒビキは無軌道なプレイで重力が歪む海へ落下してしまった。
そこに突如現れた、不思議な力を持つ少女ウタがヒビキの命を救った。そして、2人にだけ特別な音が聞こえた・・・。
なぜ、ウタはヒビキの前に現れたのか。2人の出会いは、世界を変える真実へとつながる。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人魚になった長門有希。素直に見るとかなり面白いです。

 23年9月 3回目の視聴をしました。人魚姫のオリジナルをちょっと調べたところ、王子を殺せば人魚に戻れる、という設定があるようですね。そう考えると、ラストシーンの説明はわかるような気がします。

 そして、世界に降り注いだ泡は反文明的なものの象徴、そして、聞こえすぎる主人公の「聞こえすぎる」とは、おそらく本質が分かるということか、人の気持ちがわかるということでしょう。
 ウタの歌が聞こえたはボーイミーツガールの構造ですが、ポイントはなぜウタにアイデンティティが生じるとそこが特異点のようになるかです。

 メタ的にみれば、世界でいち早く「バブル崩壊」が起きて失われた30年=時が止まったのが東京ですから、そのレイヤーでみれば分かりやすいアナロジーです。
 が、文明の終わりをウタが守ったととると、宇宙意思が地球を滅ぼそうとしたけど、ウタとヒビキが出会うことで地球を守った…でも、いずれは滅びるけど、今はもう少し時間を貰ったととも取れます。

 ただ、そういう考察は一回忘れて、長門有希(「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラ)=情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースが、人魚=ウタであると、素直にとるのが自然な鑑賞の仕方かなあとも思います。1回目は綾波レイとの類似性を考えましたが、設定とキャラ的には長門有希です。

 滅びと再生のサイクルという大上段の設定があるし、泡沫(うたかた)という言葉の通り、命など宇宙から見れば微々たるものですが、それでも恋愛はしようよ、ということ。いつかどんな形かわかりませんけど、ウタとヒビキはどこかで再会するでしょうという、ある意味ハッピーエンドの人魚姫とも言えます。

 そしてこうやってとらえると、東京が再生してもおかしくないでしょう。文明など所詮は泡沫です。

 あまりテーマにこだわりすぎて「宇宙人魚姫」という恋愛物語を忘れてしまうとこの本作をとっつきにくく、つまらないものと捉えてしまいまそうです。せっかく人魚姫を強調しているのだから、素直にそう見るとかなり面白い映画だと思います。
 もちろん含意としていろんな考察はできますし、その方面から見るのも正しいとは思います。2回、3回見ても十分深さがあると思います。

 評価は22年5月で4.0でしたが、4.3に。ストーリーを3.5から4.5に。キャラは4.0から4.5に。作画・声優・音楽は評価変えず。
 


 以下 1回目のレビューです。

 泡と渦は破壊と再生。未来の人魚姫は綾波レイ?

 ネトフリにやられて悔しいですが、迷いに迷って再び会員に…うーん。まあ、先に結論をいうと悪評が多かったですが私はかなり面白かったです。ですので、良しとしましょう。ということで1回目視聴しながらの感想です。

 新海誠との類似性の指摘もありますが、どちらかといえば、本作の映像的な見どころは構図の取り方だと思います。そして映画的な意味においてはまったく似ているように見えませんでした。

以下ちょっと項目ごとに整理してみました。

{netabare}ディストピアもの
東京ですから過去例は沢山あります。こういうSFの場合、舞台設定なのかテーマ性があるのかが問題です。

 小松左京の首都消失やラーゼフォン、アキラなどの類似に見えます。が、私はどちらかと言えば本作は飛ぶこと…重力からの解放、エアギアとの類似性を強く感じました。空を飛ぶ夢というのは不安の表れまたは解放への憧れです。

泡と渦
 バブル…泡がなにを象徴するのか。ぱっと見では経済の崩壊=日本の自信が砕け散ったバブル崩壊=東京が廃墟とかさなります。

 渦が象徴するものは破壊と再生…フィボナッチ数を意識していますので、自然に含まれた法則ということでしょうか。ですが、本作はちょっと禍々しい意味に使ってましたね。銀河=渦は滅びと再生。一番初めに見せていた銀河の集合はボイド構造=「泡」構造という超銀河団、宇宙の大規模構造の世界観ですから泡と渦=宇宙。つまり滅びと再生という意図はわかります。

人魚姫
 出会いの時の「人魚」のセリフと泡を重ねると、人魚姫の結末。つまり風の妖精になるということでしょうね。溺れるところを助けられたし、しゃべらないですし、触ると泡がでる。歌は人魚ではないですが、ローレライを想起します。これは冒頭の20分くらいで読み取れます。と思ったら、普通に人魚姫を本で出しましたね。
 人魚姫=異文明との第1種接近遭遇…コンタクトとかメッセージなだと。知識を得る、しゃべれる…ではなかったですね。そこにフォーカスはあたりませんでした。宇宙意思だと長門有希ですけどね。後述しますが綾波レイとの類似性を感じましたが、心情的な部分では長門有希も入ってたかなあ。

 もう1つ。腕を失ったウタが、抱き合っているヒビキとマコトをうらやましそうに歌が見ていましたね。嫌な予感しかしません。

 つまり、泡と渦という対立構造と人魚姫で、ウタは宇宙の意思ということなんだと思います。


パルクール
 パルクールは立体的な動きですから、肉体回帰と重力からの解放…3次元=リアルの象徴なのかもしれません。
 ちょっと背景のビルですが、アキバ的な萌え映像が廃墟に描かれていましたね。これもちょっとエヴァの結論であるオタクからの脱却を言っていたのかもしれません。
 

 なお、人魚姫の本を出したり、パルクールのルールの説明や親がいないという事をセリフでしゃべってました。これはやらなくても普通にわかります。つまり余計な説明であって、視聴者を信頼していない、という気がします。映画のレベルを上げたいと思うならここは説明しないほうが良かったですね。


エヴァとの類似性
 ジョウロの水やりはスイカになればエヴァの加治さんですねえ。そういえばヒロインの青髪=人ならざるものはエヴァを想起します。重力異常の映像などシンエヴァの影響が感じられます。第2次降泡?(コウホウ)現象。東京の水没。
 なんといっても最後綾波レイは自然とのふれあい、人間の生活を知ってそして消えて行きました。(ニワトリ追いかけてましたね。農業のシーンと重なります。)
 ウタが象徴するものは非常にシンエヴァの綾波に近い気がしました。

{/netabare}

雑感
 本作の廃墟は映画の流れで言うとどうでしょう。
「君の名は。」のように東日本大震災を象徴しているのではないと思います。環境破壊の「天気の子」はあるかもしれません。でも私はどちらかといえばシンエヴァ…3次元への回帰。つまり恋をせよということ。そして文明と経済という価値からの脱却だとおもいます。

 音に過敏ということは人と違うということ。生きづらい世の中をバブルが救ってくれた。静かな東京つまり文明からの脱却で居場所が出来た。道具を持ったアンダーテイカーに勝つということは肉体への回帰ということ。ボーイミーツガール…コミュニケーションで心が芽生える。

 アンダーテイカー=墓堀りですね。既存の価値観にうずもれて行く。機械に頼る。経済重視。勝つための手段を択ばない。動画に投稿すアピールする。未来がないということ。現代的な価値観の否定ですね。

自主性重視。大切なもののために命をかける。

 草食化とポリコレで恋愛が出来なくなった。触れる事が出来ない男女。アナユキではないですね。肉体で触れ合えない。純粋な恋ですけど悲劇でもあります。シザーハンズとか死神坊ちゃんと黒メイド的かなあ。

 そして、自信を失った日本は経済や文明という既存の勝ちから離れることで居場所ができる。

 まあ、ちょっとBL的な演出が余計かなあという気もします。

 新海誠が「君の名は。」で、2011年の東日本大震災でいままでの世界系的な物語や別れによる涙を否定しました。「天気の子」で東京の終わりと「青春の衝動」を描きました。
 ここにシンエヴァ的な2次元からの卒業=3次元へ。

 本作は東京が終わった後の新しい価値観はなにか?経済と文明ではなく肉体と自然への回帰。そして女の子を迎えに行け…というふうに理解しました。

結末
{netabare}  人魚姫である以上結末は必然でしょう。風の妖精=自然と溶け込んだということだと思います。いつかまた会おうは、ヒビキが宇宙になるときなんでしょうね。
 ちょっと我慢してましたけど、最後のウタのカップでうるっと来てしまいました。うーん。最後並走していたあの泡がウタっぽい演出でしたけどあれはちょっと余計だったかなあ。{/netabare}


 作画はもちろんこのレベルの映画ですからほぼいう事はありません。演出はViVyぽかったですね。


 欠点としては、ストーリー内の時間の幅が短くて、ちょっと壮大感がなかったですね。あとウタへの感情移入できるエピソードがせめてもう1個あればなあ…。

 いろんな映画のオマージュは沢山ありますが、それは現代においては仕方がないです。けど、少なくとも新海誠の下手な模倣ではないと思います。ストーリーは面白いし、テーマ性もアップデートしていると思います。

 映画見ながらレビューしたので、ネトフリ会員中にもう1回見ると思います。




で、追記です。2回目…とはいっても気になった部分を重点に。

{netabare}  テーマ性は1回目のレビューの通り。整理すると、東京の喪失=失われた日本の30年。経済、文明で日本は廃墟に。
 虚業である動画配信や2次元コンテンツがはびこる。個人のメシや必需品=経済に支配されてその戦いに明け暮れる。
 東京タワー=昔の日本、東京の象徴の破壊から始まる

 破壊と再生=渦と泡…宇宙の理が入った感じですね。

 パルクール=3次元=自由。価値観からの解放。2次元からの脱却自然回帰。というか何か新しいものを見つけようぜ。

 ただ、工事現場を描いていました。そしてエンディングで日常に溶け込むウタ。うーん。未来の東京はまた逆戻り?それとも新しい東京を作るということ?あの画面は意味が分かりづらかったですね。


 2回目みて思ったのが、東京タワーで怒りに触れた…というよりウタとの出会いな感じなんでしょうか。あのあたりが言葉足らずですね。ウタ=歌とヒビキ=聞くことができる、と言う名前からいって2人はあそこで出会っと見るのが映画的文法の気がします。

 ただ、そこは宇宙のなんらかの存在であるウタがなぜヒビキのところに来たかが説明不足です。
 ここに意味性があるかどうか。未来の人魚姫=綾波プラス長門が消えてなくなる部分。2次元からの解放ではあると思うんですけど、それだけか。なぜ東京なのか。東京が世界で最も歪んだからか。

 最大の欠点はやはりウタが描けてない。ウタとヒビキの心を通わせるエピソードが弱いです。冗長な部分があるのでカットすれば時間をそんなに変えないで、エピソード作りができたはず。

 この2つ。ウタとヒビキに関して設定的な出会いの理由と、ストーリーの骨格としてのラブストーリーが弱かったと思います。

 ということでちょっと評価は下げておきます。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

【コメント辛目】若者の無茶を危険だと止めずに見守るのが大人の役割

劇場版公開前に武田 綾乃氏(『響け!ユーフォニアム』原作小説など)のノベライズで物語を押さえた上でのドルシネ鑑賞。

【物語 3.5点】
アニメーションの力を信じる余り、説明を削ぎ落とし過ぎて、鑑賞者が落下(フォール)する恐れ。

プロデューサー・川村 元気氏が荒木 哲郎監督作を一般層にも認知させたいと立ち上げた企画。
「降泡現象」により重力崩壊&水没した東京を舞台に、
近年のアクション映画で定番となったパルクールを、
より過激に競技化した「バトルクール」を軸に鑑賞体験をアトラクション化し、万人受けを狙う。

その上に現代版『人魚姫』を展開するが、
脚本・虚淵 玄氏によるSF設定の根幹も、主人公&ヒロインが恋に落ちる過程も、
言葉にせずにアニメーションで伝えようとするため、
一般受けを目指しながら、結局、何気ないカットから考察するマニア層じゃないと喰らい付けないミスマッチ感。

例えば泡(バブル)の正体についても……(※核心的ネタバレ)
{netabare}バブルは歌のネットワークで繋がったシャボン玉型の地球外生命体。
泡群体全体で一つの意志を共有した生命を形成。
宇宙を漂い、進化し過ぎた文明、生態系を発見しては浄化(リセット)し、宇宙の均衡を保つ。
調整者の役割を感情を有さず淡々と担う。
泡一つ一つは生物の細胞のような物で本来自我はなかったが、
その中の一つの泡が東京タワーにて泡群体の歌を捉えた少年・ヒビキを意識し自我と感情が芽生えヒロイン化(後にウタと呼称)。
ヒビキにいなくなって欲しくないウタは、泡群体の「お姉さま」たちに浄化の執行を猶予してもらう。
が、ウタ自身も、自我と感情いう“エラー”を生じたガン細胞みたいな物で、抹消の運命にある。
が、ラスト、{netabare}ウタは泡群体に自らの意志の優先を認めさせ、ヒビキと人類を残す判断を泡群体全体の意志に書き換える。(赤泡→青泡。バブルと人類の共存){/netabare}{/netabare}
などと小説版では詳述されますが、劇場版では映像での示唆が大半。

【作画 4.5点】
アニメーション制作・WIT STUDIO

浮遊する瓦礫や列車を飛び回り、時に足場が崩れたり、
泡(バブル)に至っては、踏んでみるまでどの方向に重力が働くか、弾けるか分からないスリル。
さらに水面に落ちたら生きて帰れない渦潮「蟻地獄」。
そこをパルクールでとなると高度なカメラワークが必須。
が、ここはWITも勝手知ったる立体機動。
自主練でスキルを積み上げたヒビキ、猫を彷彿とさせる野生児・ウタとスタイルを描き分けつつ、
東京のビル群をかいくぐる「バトルクール」映像はスクリーンで体感する価値あり。

ヒビキ&ウタが一言も交わさなくとも、共にパルクールで汗を流す内に、
恋に落ちていくアクション動画も、アンテナを張った人には感知できる。


泡(バブル)、球体、細胞、目玉焼き、星々、泡宇宙。

渦、巻き貝、ヒマワリ、ブラックホール、銀河系。

相似形による考察材料の明示はできているので、
誘導に従い思索すれば、方向性は間違えないとは思います。

【キャラ 3.0点】
水没した東京に不法滞在し「バトルクール」に興じる若者たち。
それは外の世界での生き辛さ故。

が、その若者たちの生き辛さに具体性が乏しく共感度がイマイチ。
唯一、主人公ヒビキについては、{netabare}街の喧騒が耐え難い程の聴覚異常からの母との離別{/netabare}と回顧されるが、
生き辛さというより、先天性疾患からくる特殊例という誤解が生じやすいキャラ設定。
注意深く見ればラスト……{netabare}復興工事により東京に喧騒が戻る中、ヘッドフォンを外したヒビキ{/netabare}から、
ヘッドフォンも外部の音を遮断するというより、
周囲とのコミュニケーションを絶つためのツールだったと察知はできますが……。

若者たちの乱心を「バトルクール」の競技ルール整備を通じて発散させたのが
元カリスマ・パルクール競技者のシン。
レビュータイトルは若者の無謀を見守るシンの語りから。
マコトさんとの会話シーンは小説版だとさらに深いのですが、
劇場版では最低限のやり取りに削減。う~む……w

【声優 3.5点】
メインは俳優タレント陣。

脇は宮野 真守さん、梶 裕貴さん、畠中 祐さん、千本木 彩花さん。
荒木監督作品の主役声優同窓会の様相。


ヒビキ役の俳優・志尊 淳さん。
自己表現が苦手だけど、詰まった心情が滲み出る声色を最大限活かそうと、
クライマックスの収録にて、実際に{netabare}床に散らばった泡を集める{/netabare}動作を入れながらアフレコするなど、
俳優としてのチャンネルから演技力を引き出そうと苦心。

ウタ役のシンガーソングライター・りりあ。さん
演者とEDも含む歌い手の一致。
さらに声優初挑戦の彼女が演技を体得していく過程と、
野生児から言葉を覚えていくウタちゃんの生態とのリンクを狙った思い切った抜擢。

その他、マコト役の広瀬 アリスさんも大人の味を出そうと奮闘してはいましたが……。

正直、例えば主演・畠中さん、ヒロイン・千本木さんの『カバネリ』夫妻じゃダメなんでしょうか?
との私的欲求を払拭するまでは至らず……。
千本木さんのウサギ役の少年ボイスが明快で、マスコット感が良好だったので尚更そう感じました。

【音楽 4.0点】
劇伴担当・澤野 弘之氏。
相似形を並べる作画同様、シンプルに4音で構成された学校のチャイムから発想したという
泡(バブル)のハミングをメインフレーズとして各楽曲、楽器に割り振り一貫性をフォロー。
長尺パルクールでは、適宜、楽器パートを抜いたり付加したりしながらメロディを繋ぎ、没入感を持続。

劇場版OP主題歌はEveがUta(りりあ。さん)をゲストボーカルに迎えた「Bubble」
トランスをアレンジした疾走感溢れるメロディの中に物語の核心を捉えた歌詞を乗せる。
動画配信中のAMVの作品要約が優秀なのも相変わらず。

ED主題歌はりりあ。さんの{netabare}「じゃあね、またね。」{/netabare}
本編完走してから曲名知って欲しい気もするので敢えて伏せておきます。


【感想】
鑑賞中、大人たちが若者の無茶に向き合う関係性を見ていて、
日本の都市における子供の遊び場、公園の少なさを嘆くニュースを思い出しました。
泡(バブル)は最後、{netabare}異端児を新たな自我として許容し新生しました。{/netabare}
共同体に冒険する異分子が発生した時、受け入れて新陳代謝できねば社会はやがて壊死する。
破壊と再生の物語から、そう問われているようにも感じました。


【余談】
本作もまたコロナ禍により難航した企画。
緊急事態宣言で東京の街中から人が消えたのも、東京五輪の感染対策にバブル方式が採用されたのも本作の企画後。
ついでにEveが『呪術』OPで一発当てたのも本作タイアップ決定後だったそうで。
現実の数奇を感じるエピソードです。

それよりも私は、アニメーションによる伝達能力の過信、相似形多用による迷宮入りのリスクなど、
川村 元気氏が新房 昭之監督作品を一般層に紹介し損ねた印象の『打ち上げ花火~』のデジャブが(苦笑)
私も小説版先に読んでなければ危なかったと思いますw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 23
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

泡沫の夢

東京が泡に沈んだ話

もちろん楽しみにしてました。と、いっても作画も主題歌も声優も監督も見てなかったのですが、なにより劇伴が澤野弘之さん!!!!!!!!(強調)
普段全くと言っていいほどヨウツベを使わなく、今現在私が登録しているのは「澤野弘之」「ガンダムチャンネル」「プラバン」の3つです。それくらい好きな澤野弘之さんが劇伴を担当される、ということで「よっしゃじゃあ見てやろーじゃないか」
結論から言いますが、「澤野弘之さんの必要あった?」もちろん澤野弘之さんだからこその効果も十二分ありましたが、正直キルラキルやプロメアの様なド迫力なバトルもなく、UCや進撃の巨人の様な壮大な場面もなく、澤野さんでないといけない!みたいなのは感じ取れませんでした。

まあ劇伴だけで作品を語っちゃいけないですから、これからは内容にも触れます
正直そこまで好きじゃない。別に嫌いでもないですが、神かカスか問われれば迷わずカスの方を選択するくらいには面白くなかった。
主人公の成長物語ともとれるし、パルクールアニメともとれるし、社会的構図を模している(後述)ともとれるし、人格的要素(後後述)ともとれるため、多角度から見れる作品、といえなくも無いがそれのせいで内容がひっじょうに薄い。意図的に普遍を作ったのでしょうが、個人的には刺さらず、表現方法としては褒められるものかもしれませんが、物語的な面白さで言うなら下。
ピカソの「女」の表現の面白さは理解してもだからといってあんな高額な理由が分からない(個人談)のと同じ感じです。最近の絵師の構図とか何も無いただのイラストの方が価値があると思う(個人談)のと同じですね

そこまでお勧め出来ませんので暇な方は澤野さんの名前だけ覚えて見てください

{netabare}
謎の泡により物理法則がめちゃくちゃになった東京にて命懸けのパルクールで賭けをする主人公は少女(ウタ)に命を救われる。なんやかんやで人として成長した主人公はウタが泡現象の元凶故にの中心地へ行ったと聞き、ウタを取り戻し、泡現象を終わらせる。同時に元凶であるウタも消失したが主人公は今もパルクールをしている

あんだけやっといて結局「少年が世界を巻き込んで成長をした」という何とも新海な作品。いや新海誠は全く関係ないんですけどね。

(個人的に)非常に薄い(と感じた)内容ですが、考察がしやすい作品だったかな、という印象。上手く言葉に出来なかったのですが、nyaroさんのレビューが非常にわかりやすく言語化してくださっているため、是非ご覧ください
https://www.anikore.jp/review/2238363/
{/netabare}

澤野弘之さんと作画を見に行きました

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3

67.4 34 2022年度アニメランキング34位
僕が愛したすべての君へ(アニメ映画)

2022年10月7日
★★★★☆ 3.4 (35)
142人が棚に入れました
両親が離婚し、母親と暮らす高校生の高崎 暦(たかさき こよみ)。
ある日、クラスメイトの瀧川和音(たきがわ かずね)に声をかけられる。
85番目の並行世界から移動してきたという彼女は、
その世界で2人が恋人同士であると告げる・・・。
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

本当の幸せとは……

この作品の最初の印象は「難しい」「ややこしい」「堅苦しい」の第一印象でした。
しかし、見始めて直ぐに気づきます。

確かに、この方法なら、見る順番で結末が変わると言われるのもわかりました。
そうなると……映画と映画のつなぎ方とクライマックスの見せ方がこの作品の評価の鍵になるかと……

しかしながら、こちらから見ると最初は中途半端で主人公が1言目の意味もよく解らず……この辺りは、もう1つの物語で説明されてます。

さて、最初は「パラダイムシフト」とか世界線とか入れ替わりとか小難しい事ばかり……
いゃいゃ、私は恋愛アニメを見に来ていて科学アニメを見に来てるんじゃないんだよ(><)*。
って思ってましてたが、しっかり恋愛してくれましたね。

この作品の学生時代に込められているのは「出会い」と「世界観」ですね。
ヒロインの瀧川との出会いや、この世界で行われてる研究や認識されてる現象など。

寧ろ恋愛は社会人になってからです。
だから、社会人の恋愛を描いた作品ですね。
恋愛って言っても幸せはしっかり書かれてはいますが、少女漫画の様なドキドキ感はないかな?

でも、リアリティのある恋愛かな?と思いますw
少女漫画の様なセリフを言う人も私の周りには居なかったし、少女漫画の様な展開の恋愛は残念ながら未経験ゾーンですよ(*꒪꒫꒪)
アニメの様な綺麗な恋なんて中々w

だから、この作品の出会い→カレカノ→告白→結婚→子育て→孫誕生→歳をとる

人の恋の生涯を短くもしっかり描いて居たのは評価点!

物語で私が感じたのは……

「おじいちゃん」

{netabare}これは主人公の暦がパラダイムシフトを身をもって経験する事で視聴者にわかりやすく説明する事が出来てるエピソードだったと思います。

後、おじいちゃんの死は主人公の暦が母親を選ぶ事で発生します。
母の実家に行った暦の役割は飼い犬のお散歩です。

別の世界線では逆に飼い犬が死んでいます。
それは暦が父を選ぶ事で発生します。

おじいちゃんの死は暦が犬の散歩当番となり、おじいちゃんは運動不足で体調を崩して亡くなったのかな?と思いました。
犬の散歩がおじいちゃんの運動であり日課だった。

逆に、ワンちゃんの死は、おじいちゃんが散歩をしているから健康的で元気でした。
しかし、おじいちゃんです。
力が衰える……ワンちゃんは成長して大きくなり力も強くなる、おじいちゃんは不意をつかれワンちゃんの手網を放してしまう……そして道に飛び出して亡くなってたのかな?と思いました。

このように、1つの選択肢の中に夫々の分岐点がある事を視聴者側に説明しています。
正直、このエピソードで、タイムシフトが、どう言う物か、この世界で言う選択がどう言う意味を結果をもたらすのか……凄くわかりやすかったです。 {/netabare}


「婚約」
{netabare} 和音と結婚した後の暦「俺は誰と結婚したんだろ」には、えっ!!!!!となりました。
世界線移動がいきなりのタイミングで行われるから……ややこしい……
目の前には愛した人が居るけど、もしかしたら、それは別次元の愛した人と同じ人物であり他人でもあるかもしれないと考えたらなんだろ……なんか違う気もするかもしれない。{/netabare}

「事件」

{netabare} 暦と和音と息子でお出かけをした時に事件が起きます。
その事件で息子は亡くなってしまう。
そこへ、パラダイムシフトをしてきたのは息子に会いたくて息子の元にパラダイムシフトをして来た別世界の和音。

これは気持ちは解る。
自分の子供……いゃ、大切な人の死なんてのは回避したい……

子供を失った和音は世界線を移動して息子が生きている世界線で息子と生きていこうとする。
2度と失いたくないから……彼女は多分息子を失い参ったのだと思う……心が……気持ちが……
向こうの世界の暦が手伝ったらしいけど多分、暦は見てられなかったんだと思う。
日々弱る彼女の姿に……

だから、彼女を息子に一目合わせたかった。
息子を守れななかったと自分を責める彼女に元気になって欲しいから……

けど、それは息子が生存した世界の和音が息子の死に直面した世界線に行く事を意味する。
同じ場所に同じ人間関係は留まれない。

けどさ、気持ちは解るけど、ダメだと思う。
確かに現実なんて受け止められないし人の死なんて当然……辛くて悲しくて苦しくて涙が止まらない……でもダメなんだよ。

例え、相手が自分でも死なんて悲しみの重みを誰かに背負わせるなんて……
何より死んでしまった息子の存在を生きてきた証を否定しちゃう……別世界で個人なんだ。
自分の息子が居なくなって別世界の息子を代わりにしちゃっダメなんだと思いました。

息子の「ママはどこ?」には心が痛かったなぁ。
目の前のママは別世界のママでやっぱり解るんだよ。
小さな仕草や笑い方や喋り方、色々な事から子供は感じとれるんですね。

でも、裏を返せば、例え別世界の自分でも自分の代わりにはなれないと言う事ですね。{/netabare}



「手紙」

{netabare} 孫も産まれ幸せに暮らす中、和音の元に手紙が届きます。
別世界の和音からです。
別世界の和音から、その世界の暦が栞と言う幽霊に恋をしていると聞かされます。

だから、和音に暦をその幽霊に会わせてあげて欲しいと言います。
コレが君恋のエピソードなので詳しくは伏せます。

和音は暦に幽霊に会いに行く様に背中を押します。
私はこの選択が凄いと感じました。

自分の好きな旦那を別世界の恋人の元へ送り出す。
正直、別世界なんて知らないし無視も出来たと思う。
好きな人を他の女性の元に送り出す?
仮にも恋敵ですよ!
私なら出来ないです……最低であり薄情だし心が狭いし束縛乙と思われるかもしれません。

でも、やっぱり私には出来ない……もしも気持ちがそちらに向いたら?
もしも自分の知らない人になっていたら?
何か起きるかもしれない……そうした不安や心配から私はそこまで強くはなれない……

しかし、和音は何故、その選択が出来るのか……
多分、同じ選択が出来る人達は世の中に沢山いると思う。
どうして、そんな事が出来るのか私は考えて見ました。
多分それは「本当にその人を想ってるから」です。

暦も和音も全ての暦と和音を愛していると発言してました。
それは暦を全ての世界の暦を愛していから背中を押せた。
その世界の暦は自分に気持ちに向いては居ないけど、そんな暦も愛している。
それだけで背中を押せる勇気になる。
恋愛って凄いなぁ〜ってなりましたw {/netabare}


「交差点の幽霊」

{netabare} 再会を果たします。
しかし、暦は幽霊が誰なのか……解らない。
認識出来ても別世界の暦の記憶を知らないから……
そんな時に、病が暦を襲う……
薬を飲もうとするも薬のケースを落としてしまう……手を伸ばしても届かない……このままでは…………

そこに1人の老婆が薬を拾ってくれる。
助かった、暦は不意に質問する「今、幸せですか?」と……その答えは「幸せ」{/netabare}


「ただいま」

{netabare} 暦が帰ると和音が待っていました。
多分、心配だったんだろなぁ〜色々とw
送り出せるのは不安や心配がないからじゃないもんなぁ〜 {/netabare}


【この作品を見終わって……】

君愛と僕愛、見る順番で結末が変わるって言うけど……私はこちらの作品、僕愛がラストの方がいい気がしました。

なんか、幸せを感じる事が出来た。
勿論、それがテーマだけどなんか……
丸く収まってる様な……そんな気がしました。
後、主人公の全ての世界線の自分と大切な人達への気持ちが込められたセリフがあるのですが、それが終わりって感じがして、見終わって「おわったなぁ〜」と感じたので

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

探し物が見つからない?→並行世界間移動(パラレル・シフト)したからに違いありません

「パラレル・シフト」が観測、数値計測され実用化されていく近未来の日本。
SF設定を引き立て役、障害の壁役に据え、恋する男女の生涯を描いた
原作小説『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(未読)を、
二作同時公開でアニメ映画化。

私は『僕愛』→『君愛』の順で同日劇場鑑賞。


【物語 3.5点】
『僕愛』から見るとちょっと切ないbitter LoveStory
『君愛』から見ると幸せなsweet LoveStory

見る順番で結末が大きく変わる恋愛映画として宣伝されていたこの二作。
人を愛することがシナリオのテーマなので間違ってはいないのでしょうが……。

やはり本質的にはカップルに訴求するのではなく、
並行世界や“虚質空間”などの設定に時めくSF少年(“大きなお友達”の私なども含む)
科学アドベンチャーシリーズなどのテキスト型ゲーム及び、
そのアニメ化作品等を履修したような層にアピールする内容だったかと思います。
移動した並行世界の遠さを計測数値化して、危険性だの言う展開などワクワクします。

カップルどころかお客さん自体もまばらな劇場にて私は、
プロモは五流の日本映画界がまたやらかしたか~と歯噛みしていましたw


見る順番のオススメもアニメファン向けに噛み砕くと……

『僕愛』→『君愛』の順番は、とりあえず展開が欲しい1クールアニメの短距離走に馴染んだ人向け。
『僕愛』を本編、『君愛』を解説編、スピンオフとして消化する感覚で捉えれば楽しめます。

『君愛』→『僕愛』の順番は、大作ギャルゲーのプレイヤー向け。
『君愛』にて、難解なSF用語を土台から地道に解説された後、ある選択肢で痛い目を見たりする。
『僕愛』にて、設定解説も生かした伏線回収がなされ、全ての選択肢が報われるグランドエンディングを迎える。

私は中長距離走の方が性に合うので、『君愛』→『僕愛』の順番で観れば良かったと少し後悔しました。


脚本の方は2作とも坂口 理子氏が担当。
『僕愛』から見る人にとっては伏線になる要素を『君愛』から見る人にとっては解答になったりする。
しかも{netabare} 恋愛、結婚、子育てから人生の終末{/netabare} まで描く人生記を限られた尺に押し込む。
2作で複雑に絡まり合ったシナリオを、苦慮を感じさせながらも、まずまずの脚本でまとめる。


【作画 3.0点】
『僕愛』はBAKKEN RECORD、『君愛』はトムス・エンタテイメントで分担。当然、監督も別。

個人的にはこの分業体制が悪手だったと悔恨します。
2つのスタジオによるパラレル映画制作は世界初!などとアピールしてくるわけですが、
今まで誰もやってこなかったのはメリットがないからだと思います。

シナリオ解説の都合上『僕愛』で見た場面を『君愛』でも見るシチュエーションがあります。
1つのスタジオ・監督の元で統率していれば、同じカットでもアングルを変えた作画にしてみたりして工夫して再提供することもやり易い。
でも、2つのスタジオで分担していると、共作相手が制作した映像をそのまま拝借する位しかできない。
『僕愛』で数時間前に鑑賞した映像を、『君愛』で重複して見せられる時間。
睡魔に襲われるくらい退屈でした。

最近では『もういっぽん!』の柔道描写にも好感できるBAKKEN RECORD。
本作でも作画自体は、難解なSF設定の表現も含めて健闘。
応援したいスタジオだけに、意欲が報われる企画を望みたいです。


【キャラ 4.0点】
『僕愛』のヒロインはポニテのメガネ娘JK・瀧川和音。
外面は、頭脳の明晰さの面で主人公少年・暦をライバル視している内に……という典型的なツンデレ属性。
が、突如、{netabare} 並行世界から来ましたと{/netabare} などと言い出す辺り、やはり本作はSF。

主人公、ヒロインとも高校時代より成人してからの方がくすぐったい関係。
{netabare} 研究に熱中するあまり数式を下着姿の互いの肌に書き合う{/netabare} 件、中々エロティックでしたw
年を重ねるごとに味わいが滲み出てくる関係性が、
何気ない日々に幸せを噛み締める本作の隠し味になる。

この方向性に序盤から鑑賞者を誘導するのが、暦の祖父・康人。
愛犬・ユノと共に「パラレル・シフト」上も重要になるキャラですが、
その教育方針で、暦の人生にも影響を与えたという意味でも大切な存在。

個人的に老人が味を出している人物相関には外れはありません。


【声優 3.5点】
主人公・暦役の青少年期を宮沢 氷魚さん。ヒロイン・和音役の青少年期を橋本 愛さん。
鍵となる少女・栞役に蒔田 彩珠さん。
メインキャストは若手俳優陣で固める。
総じてまずまず無難に声を当てて、恋愛映画観るようなカップルを釣り損ねた感じ。
正直、暦の幼年期を演じた田村 睦心さんのようなアニメ声優陣で見たかったという私の願望を払拭するには至らず。

ただ老年期は暦を西岡 德馬さん、和音を余 貴美子さん。
『火曜サスペンス劇場』でも始まるのかwというベテラン俳優陣が演じ、独特の渋みを醸し出す。


【音楽 3.5点】
劇伴担当は2作とも大間々 昂氏。
ピアノとストリングス、アコースティックギターの素朴な日常、心情曲が中心。
ただ挙式で{netabare} メンデルスゾーン「結婚行進曲」{/netabare} はベタ過ぎてビックリしましたw
本作だけでなく『水星の魔女』でも意外なSF対応力で魅せる大間々氏のサウンド。
今後SF・ロボットアニメでの活躍にも期待したいです。

『僕愛』主題歌は須田 景凪さん「雲を恋う」。他、挿入歌あり。
(『君愛』はSauty Dogが担当。こちらの役割分担はアリだったかと。)
須田さんは今期TVアニメ版『スキロー』OP「メロウ」でもそうなのですが、
ありふれた日常から幸福を抽出するのに適した歌い手。
その観点から『僕愛』での起用も、用法用量を守った正しい活用法かと。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

初手僕愛推奨

結論はタイトルの通りです。

どうせといっちゃなんですが、どうせ二作品見るんでしょうから順番のおすすめだけ。
個人的には「僕が愛したすべての君へ」を最初に見ることを強くおすすめします。
広告で言っていた「見る順番で結末が大きく変わるとしたら」は嘘です。
内容は結局どっちから見ようが変わりませが、結局は印象の問題です。印象の問題なのですが、私が感じるにかなり大きな違いが生まれると思っています

ちなみに私は僕愛から見ました。ナイトシアターが「僕愛21:30」「君愛21:25」という連続で見せる気のないスケジュールだったので、急いで2日かけて見ました。

さて、上記の理由を言います。
具体的ポイントを言うとネタバレになるのでぼかしますが、理由は大きく5つあります
1.ヒロインに対する印象の差
所詮私らは人間ですので、最初に知った情報や印象に偏る傾向があります。僕愛から見ると君愛のヒロインも受け入れることができるのですが、おそらく君愛から見ると君愛のヒロインに肩入れしすぎて僕愛のヒロインを受け入れることが難しくなると思います。別に肩入れが悪いというわけではないのですが、個人的に僕愛のヒロインが好きなので依怙贔屓しています。僕愛から見れば両ヒロインを愛せると思います
2.主人公の印象の差
所詮私らは人間ですので、最初に感じたことに偏る傾向があります。僕愛の主人公のほうが個人的に好きです。主人公の声を担当している松村さんは俳優だそうで正直全く上手くないのですが、僕愛の方があとに収録したのか、それとも声質的にそっちのほうが適していたのか定かではありませんが、君愛ほどひどくはなかったのが印象的。さらに主人公は異変が起きたときも大げさに驚き慌てふためくことがなかったため、僕愛のほうが好き→つまり作品に対する印象も良い。ということです
3.内容の順番
おそらくというか、なんというか。時系列(?)は君愛のほうが先です。ですので2本目で「あ、これは君愛で言ってたやつか」となるか「あ、僕愛のあそこはそういうことだったのか」という差でしかないのですが、個人的には後者のほうが作品として楽しみやすいと思っているので僕愛を最初に見ることをおすすめします
4.描写の差
描写的にも差があります。僕愛では必要最低限しか説明しておらず、僕愛を見れば自然と君愛が見たくなるように誘導されているのですが、君愛はいらない説明が多く、なんなら単独で完結してるとも言える作品となっています。その際には僕愛は補足的な立ち位置になるのですが、とはいえ補完するだけの映画に対して良い印象を持てるかという話です。なので僕愛から見て両作品の印象を上げようという話
5.設定に対する説明度の差
僕愛と君愛。世界観や設定用語は共通しています。が、頻度はもちろん違います。おそらく君愛のほうが深く難しいでしょう。概念的にも理論的にも少し難しいかもしれません。なので僕愛で概念を大体把握(理解はしなくても構いません)して君愛で深く突っ込んでいく、というのが良いと思います。

以上の理由で僕愛からみることを強くおすすめしていますが、あくまでも私の意見です
「どうしても君愛から見たい」や「時間的に君愛からしか見れない」という方は君愛からみてください。
何度も言いますが結局どっちから見ようが内容は変わりません。印象の差でしかないため、そこまで深くこだわらなくても良いです。

{netabare}
母親について行った主人公は高校にて進学校特有の雰囲気に圧倒される日々を送っていたが、ある日80以上先の平行世界から来たというクラスメイトの少女に呼び止められ、「あっち」では恋人だったらしい。なんやかんやあったけど、どうやら少女の演技だったらしい。少女に惚れた主人公は告白しまくって振られまくって新技術を発見し結婚し子供を産む。色々あったが孫も出来、余命が言い渡された。覚悟した翌日の朝、知らない予定が入ってたので指定された場所に行ったが特に何も無かった。しかし偶然助けてくれた老婆が今幸せであることを知り、なんだか嬉しい気持ちになった

これ結構深いですよ
階級や外見に囚われず中身を重視しましょう、という傾向が高まっている現代に対して本作は「存在そのものに愛を」と言っているわけです。まぁ主人公がそう感じているだけで別にそれを啓蒙している訳では無いのでそこまで怯えなくても良いのですが。
その人が例え自分の知っている人で無くなったとしても、その本質は何も違わないし、自分が愛していた人であることには変わりないので、変わらず愛し続けよう、と。これは恋愛の愛というより隣人愛の愛の方が近いですかね。いや恋愛の愛なんでしょうけど。(別に宗教を否定するつもりは無いのですが、)私には隣人愛がよく理解出来なかったため本作に共感は出来ませんでした。しかし、そのテーマは面白いなと思いました。原点回帰的なテーマかと思いきや、新しい観点で勝たられる恋愛もので、少し驚かされました。
そういう点ではもう何度か見たいと思わせる良作だと個人的に思います

ま!本音としてはヒロインが物凄く可愛いてのが大きいんですけどね!!!!!
とんでもないウソをつくくせに詰めが甘いの心臓に悪いですよ。「ウ゛」てなります。

タイトルも優秀ですよね。君愛と対比させることで、疑問を浮かばせながら内容はまさかのSF気味という。しかも君愛に関してはかなり難しい。本作に関しては大分深い。
想像だにしなかった奥深さと、この代名詞です終わるタイトルが良い相性です。個人的に体言止めは好きな技法ということもあって更に刺さってます。

{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3

67.1 35 2022年度アニメランキング35位
君を愛したひとりの僕へ(アニメ映画)

2022年10月7日
★★★★☆ 3.3 (34)
136人が棚に入れました
両親が離婚し、父親と暮らす小学生の日高 暦(ひだか こよみ)。
ある日、父の勤務先で佐藤 栞(さとう しおり)という少女と出会う。
お互いに恋心を抱くようになる暦と栞だったが、親同士が再婚することを知らされる。
ふたりは兄妹にならない運命が約束された並行世界への駆け落ちを決断するが・・・。
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

たった1つの愛を貫いて

父が働く研究所で出会った所長の娘の栞
2人は一緒に過ごす事に惹かれてゆく。
そんなある日、暦の父と栞の母が再婚すると言います。


2人は両思いでした。
しかし自分達の父と母が結婚する……
2人は兄妹になる……逃げようと暦が提案します。

【中学生の駆け落ち】

{netabare} 中学生で駆け落ちは発想が甘くも子供ぽい。
やるなら卒業後でしょう……お金が貯めたりもしなきゃだし焦る事はないと思う。
正直、子供ぽい発想かな?
子供ぽくて可愛いけどね。
自転車で遠くの街までペダルを回して、お金は慎重に使わないとダメなのに途中アイス食べたり、デパートのベッドコーナーにダイブしたり、夢を語ったり、野宿のつもりか茂みに座って夜を明かそうとして諦めたりw

やってる事が可愛いw
見てて楽しかったw
青春ぽいかな?多分楽しいだろなぁw
大人になったら出来ないよw
あんな楽しい駆け落ちが出来るのは子供ならではかな?
で、諦めて帰ってくるのも可愛いw

そこで、栞はパラダイスシフトを提案します。
2人の両親が離婚しなかった世界なら再婚しないからそちらの世界にシフトして結婚しようと提案します。

2人のパラダイスシフトは成功するのですが……
栞は横断歩道を渡っている所にシフトします。
彼女は、初めてのパラダイスシフトに状況を理解するまでに時間が掛かります。
横断歩道の先には仲良く歩く両親……
彼女は足を踏み出します。
そこへ車が彼女に衝突する{/netabare}


【真実と結果】

{netabare}暦は元の世界に帰ってくる。
多分、パラダイムシフトは一時的なもので永遠には居られないのだと思います。
彼の横には一緒にパラダイムシフトした栞が居ました。
彼女は息をしていませんでした。

父は言います「両親が再婚してもその子供同士も結婚できるんだよ。だから逃げなくてもよかったんだ。」
これは悲しい……知ってれば幸せになれたのに……

義兄妹で結婚出来るって、どれくらいの割合の人が認識してるんだろ?
私は知ってました。
でも、多分……彼らの歳なら知らないかな?

実は私は高校生の時に調べたんです。
それで、義兄妹でも結婚出来る事を知りました。
だから、多分普通に暮らしてたら知らないかもしれません。
私も調べるまで知りませんでした。

何故、調べたかですか?
それはですね♡
アニメのキャラが義兄妹で結婚してたから出来るのかを友達と調べたんですw
ドキドキの展開じゃないですよ(*꒪꒫꒪)

暦か栞も調べてよ(´・ω・`)

で、栞は正確には死ではなく脳死……
暦は自分のせいだと自分を追い込む……けど、父も栞の母も暦を責めません。
彼は2人に自分を責めて欲しかったのだと思います。
その方が少し楽になれる気がする・・・

でも、2人が責めない理由も解りますし、暦のせいではないからです。

暦が嫌がる栞を無理矢理連れ出した結果なら暦の責任です。
けど、2人でやった事です。
だから、彼だけの責任じゃない……
だから、2人は責めない……栞も責めなかった。

暦は必ず栞を助け出す!と研究者の道に足を踏み入れます。
しかし、数年後……脳死した彼女の身体が死を迎えた。 {/netabare}

【再会】

{netabare} 交差点の幽霊……
栞が亡くなった交差点で彼女は幽霊として存在してました。
彼女は脳死した後から居ましたが、身体が死しても残っていました。

彼女は1部の人と暦にしか認識出来ませんが会話する事が出来ます。
誰も居ない交差点で1人の男性が叫んだり喋りかけたり……不審者にしか見えないですねw
けど、暦は周りの目より栞を優先したかったんだと思います。
彼に取っての大切な1人の女性を…… {/netabare}

【タイムシフト】

{netabare} 暦は和音に出会います。
別の世界線での暦の妻であり、今の世界線では協力者……
彼女と共にタイムシフトの方法を探し出す。

栞の死は暦と出会う事で引き起こされる。
それなら暦に出会わなければ彼女は死ななくて済む。
その代わりにタイムシフトで意識を戻したら今の世界の暦の身体は脳死状態になります。

それでも、栞がこの世界で幸せになれないのが許せないと言います。

だからって出会いをなかったら事にはしないで欲しいと思いました。
栞も泣いちゃってましたよね。
出会いがなくなるのは、その幸せだった時間を失う事になる。
その否定は残酷です。

幸せってなんですか?
私は栞を見ていて、暦と出会った事も幸せだと感じました。
暦と過ごした時間も……確かに結果死んでしまいました……でも、彼女は本当に幸せになれなかったのでしょうか?

栞はずっと交差点に囚われていました。
地縛霊のようにその場に……
それでも、誰かを恨んだりはしてないし、死は辛かったはずだけど彼女はずっと笑顔だった。
周りに災いを齎す訳でも無ければ、時々会いに来る暦と楽しそうに会話が出来ていた。

それで幸せだったとは言わない……
けど、幸せになれないとは思わない。
幽霊の彼女にとっての小さな幸せがそれだったんじゃないかな?
1度だけ栞は暦に「私の為に暦君の時間を使わないで」と弱音を吐きます。
セリフは少し違うかも(*꒪꒫꒪)

これさぁ、私が栞の立場なら同じ事言う……
自分が死んでいて、その事を何とか覆そうとしてくれるのは凄く嬉しい!
私が好きになった人は間違えじゃなかった!
幸せだ!この人に出会えてよかった!好きになれて好きになって貰えてよかった!

でも、生きてる人と死んでる人は交われない。
死んでる自分より、もっと自分の周りに目を向けて自分にも目を向けて欲しい。

好きな人の人生を死んだ自分の為に使い続けて、会いに来てくれても笑顔は見せてくれない……酔っ払って愚痴って、研究で疲れた顔をして悲しい顔してさ……そんなの辛すぎるよ。

好きなのは同じ……暦が栞に幸せになって欲しいように栞だって暦に幸せになって欲しい。
生きてるんだから!
楽しく生きて友達を紹介してくれたり、恋人紹介してくれたりさ、結婚して子供連れて来てくれて、孫を連れて来てくれてさ。

幸せだよって言って欲しい。
多分、羨むとは思う……けどさ安心はするかなって思います。

だから彼の「栞が幸せになれないこの世界が許せないんだ」ってセリフには少し疑問に思ってしまいました。

それでも、それだけ1人の女性を愛せる事は凄い事だと感じました。

ただ、暦の立場に立つとやっぱり諦められない気持ちも解るかな……
結局、暦は栞が好きなのもあるけど、本当はそうする事が償いになればって思ったのかな?とも思いました。

これは彼が罪悪感を払拭する為の物語でもあるのかな?て

そして、暦には生きているから時間が流れる……
けど、栞の時間な止まってる。
この先、暦が息を引き取る日が来た後……彼女は一人ぼっちになってしまう。
彼女を覚えて認識出来る人間が居なくなる。
そう考えたら寂しいなぁ〜って

でもさ、「好きな人の幸せを本気で願う」って凄いって思います。

好きな人の隣を歩くのは自分でありたいって思うし、好きな人を幸せに出来るのは自分でありたいって思う。
けど、例えそれが自分じゃなくても……好きな人に幸せであって欲しい、その選んだ未来で幸せになれる可能性が広がっているなら、選びたい選択肢だったんだと思います。

恋愛って不思議なんです。
恋愛には間違えがあるけど、正解はないんです。
恋愛で間違えとは歪んだ愛とか好きな気持ちで相手を不快にさせるけど……

誰かを幸せにするのは正解がないから人は沢山の選択肢の中から模索しながら幸せを願うのかもしれません。

だから、暦の偉んだ幸せもその1つだと思います。
栞も後に「幸せ」と答えてましたし。
ただ、やっぱり出会いを無かった事にはしないで欲しかったかなぁ〜って私は思いました。

だって、好きな人に出会った事が死のトリガーなんて、やっぱり寂しいです。{/netabare}


【約束】

{netabare} 暦は栞と1つ約束をします。
タイムシフトした日の10時に栞を迎えにくると……
本来、暦と栞が絶対出会わない世界での絶対に果たされない約束……タイムシフトをして出会わない訳ですから知らない人との約束なんて絶対果たせる訳がないのです。

「絶対出会わない世界」を覆すのが奇跡
奇跡って実は簡単に起こせるのです。
しかし、奇跡は1人で起きることはあるけど、1人では起こせません。

それは誰かを思いやる心です。
和音が暦を思いやり手紙を残して、別世界の和音が受け取り、この世界の(意識的にはタイムシフトしたけど記憶のない暦)暦の背中を推して、栞が暦を思いやる気持ちと暦が栞を思いやる気持ちが「出会い」と言う奇跡を起こした。

「出会い」には必ず意味があります。
それが良い意味合いか、悪い意味合いかはわかりませんか必ず意味があります。
そもそも出会いをなかった事にするなんて出来る訳がないのです。
暦の仮説も対したことありませんねw {/netabare}


【出会い】

{netabare} タイムシフトした暦は意識的に栞の前に現れ「結婚しよう」と告白します。
死後の世界でかな?
多分、来世かな?

私は「死んだらどうなるのだろ?」と考えた事がありました。
多分、身体は無くなるけど、今ある意識は死んだら本当に無くなるのだろうか?
私は無くならない気がします。
死んだら意識は睡眠中の様な状態になりまた別の身体でまた人生をスタートさせるのかな?と思っています。

だから、栞も事も来世で幸せに暮らすんじゃないかな?と思います。


そして、この世界線でも暦と栞は再会します。
ただ、会話しただけですが…
暦は栞に何かを感じたみたいですね。

彼女は昔、人の助けになりたいと話してました。
そして名前を聞かれた時に「名乗る程の者ではありません」と答えたいと……
ようやくその言葉を言えたのが知らない人の暦 {/netabare}

【作品を見終わって】

この作品、私は「僕愛」から「君愛」を見ましたが個人的に「君愛」からみた方が言い気がしました。
両方とも確かに話しは繋がるものの順番は「君愛」からの方スムーズに思いました。

こちらはラストが駆け足に見えるのですよね。
終わり方が、 凄い勢いで終わる感じがしました。
だから、君愛を最後にすると……見終わった後に「あぁ!終わったのか……」って感じがしました。
終わった事に気付かされるイメージでしょうか?

ただ、見ていると気持ちイイです。
「君愛」の伏線が「僕愛」にあるし「僕愛」の伏線が「君愛」にあるし、どちらからみてもなんだろ……未完成のジグソーパズルにピースを埋めていくみたいな、ここはこう言う事があったのか!こう言う事か!と納得出来る部分は多いかと思います。

2つで1つのような作品で、お互いの作品をネタバレせずにダイジェストの事く挿入歌を入れて流してくれるのも中々いいですね。

1作でも楽しめる作品ですが、片方見て「面白かった」「後片方みるか悩む」って感じなら見るのをオススメします。
自分に合わないって人はオススメしません。
そんな感じの作品でした。

個人的に、私に合ってるのはこっちかな?
感情移入もしやすかったです(*꒪꒫꒪)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

初手僕愛推奨

僕愛のレビューで言っていることとほぼ変わりません。

結論はタイトルの通りです。

どうせといっちゃなんですが、どうせ二作品見るんでしょうから順番のおすすめだけ。
個人的には「僕が愛したすべての君へ」を最初に見ることを強くおすすめします。
広告で言っていた「見る順番で結末が大きく変わるとしたら」は嘘です。
内容は結局どっちから見ようが変わりませが、結局は印象の問題です。印象の問題なのですが、私が感じるにかなり大きな違いが生まれると思っています

ちなみに私は僕愛から見ました。ナイトシアターが「僕愛21:30」「君愛21:25」という連続で見せる気のないスケジュールだったので、急いで2日かけて見ました。

さて、上記の理由を言います。
具体的ポイントを言うとネタバレになるのでぼかしますが、理由は大きく5つあります
1.ヒロインに対する印象の差
所詮私らは人間ですので、最初に知った情報や印象に偏る傾向があります。僕愛から見ると君愛のヒロインも受け入れることができるのですが、おそらく君愛から見ると君愛のヒロインに肩入れしすぎて僕愛のヒロインを受け入れることが難しくなると思います。別に肩入れが悪いというわけではないのですが、個人的に僕愛のヒロインが好きなので依怙贔屓しています
2.主人公の印象の差
所詮私らは人間ですので、最初に感じたことに偏る傾向があります。僕愛の主人公のほうが個人的に好きです。主人公の声を担当している松村さんは俳優だそうで正直全く上手くないのですが、僕愛の方があとに収録したのか、それとも声質的にそっちのほうが適していたのか定かではありませんが、君愛ほどひどくはなかったのが印象的。さらに主人公は異変が起きたときも大げさに驚き慌てふためくことがなかったため、僕愛のほうが好き→つまり作品に対する印象も良い。ということです
3.内容の順番
おそらくというか、なんというか。時系列(?)は君愛のほうが先です。ですので2本目で「あ、これは君愛で言ってたやつか」となるか「あ、僕愛のあそこはそういうことだったのか」という差でしかないのですが、個人的には後者のほうが作品として楽しみやすいと思っているので僕愛を最初に見ることをおすすめします
4.描写の差
描写的にも差があります。僕愛では必要最低限しか説明しておらず、僕愛を見れば自然と君愛が見たくなるように誘導されているのですが、君愛はいらない説明が多く、なんなら単独で完結してるとも言える作品となっています。その際には僕愛は補足的な立ち位置になるのですが、とはいえ補完するだけの映画に対して良い印象を持てるかという話です
5.設定に対する説明度の差
僕愛と君愛。世界観や設定用語は共通しています。が、頻度はもちろん違います。おそらく君愛のほうが深く難しいでしょう。概念的にも理論的にも少し難しいかもしれません。なので僕愛で概念を大体把握(理解はしなくても構いません)して君愛で深く突っ込んでいく、というのが良いと思います。

以上の理由で僕愛からみることを強くおすすめしていますが、あくまでも私の意見です
「どうしても君愛から見たい」や「時間的に君愛からしか見れない」という方は君愛からみてください。
何度も言いますが結局どっちから見ようが内容は変わりません。印象の差でしかないため、そこまで深くこだわらなくても良いです

ストーリー
{netabare}
父親について行った主人公は父親が働く研究所で少女と出会い、過ごしていくうちに恋心を抱く。少女の母と主人公の父が再婚することを知った2人は逃避行するためにパラダイムシフト(並行世界移動)をするが、直後事故で少女死亡。それにより並行世界を跨って少女の霊が出現。学生時代クラスメートだった少女の献身的な助力により解決。そのまま主人公は目を覚まさなかった。

はぁ。難しいですね!端折ったから難しいのか端折っても難しいのかは私の国語力の問題ですが、難しいことには変わりありません。
平行世界で共通概念的存在となった「少女」の偏在のの根本たる事象を個人と結び付けて固定することで範囲を狭め、尚且つその個人を因果関係の深い主人公による少女の「消滅」を持って「救い」とする。
私の解釈が間違ってなければ概ねこんなでしょう。僕愛は僕愛でテーマの理解がちょっとだけ難しいですが、本作はそもそも何が起きたを理解するのが難しいですね。これがTikTokで流行っているとは...Z世代(?)も捨てたもんじゃありませんね。ていうかどうやって流行ってんでしょうか...動画投稿ソーシャルネットワークサービスでどうやって小説が流行るんでしょう...まあいいや。

タイトルも優秀ですよね。僕愛と対比させることで、疑問を浮かばせながら内容はまさかのSF気味という。しかも本作に関してはかなり難しい。僕愛に関しては大分深い。
想像だにしなかった奥深さと、この代名詞です終わるタイトルが良い相性です。個人的に体言止めは好きな技法ということもあって更に刺さってます。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

とって付けた感の連作。こちらの出来は悪いと思います。

「僕が愛したすべての君へ」とセットの作品です。本屋で表紙が並んでいて、仕掛けがあるのは当然気が付きます。SF好きとしては即時購入し読みました。
 私が読んだのは「君」→「僕」の順番です。正直、作品の出来に差がありすぎて正しい順番というのはわかりません。

 正直言えば本作の方は、導入部分の展開と女の子のキャラデザは可愛いですが、しかし、ラブストーリーとしての出来も良くないし、SFとしての展開・結末も非常に取って付けたような感じです。

 まずラブストーリーとしては、少女との交流はいいのですがその幼い恋心に一生を殉じるという主人公のマインドに乗れません。まして「僕が愛した」のヒロイン、和音が登場しているだけにモヤモヤします。一応気が狂った…ということなのかもしれませんが、それが理由だとすると非常に弱い気がします。
 まして、2人の女性に殉じる主人公では、ラブストーリーの価値が減じてしまいます。

 それと、SFとして並行宇宙の話で来ていたのになぜタイムリープを入れたか、ですね。しかも、その解決において、栞が行った先の栞ってどうなるの?という疑問が解決されていない気がしました(理屈があるかもしれないので、もう一回本を確認してみますけど)。
 そして肝心のカタルシスがどうも何の感動を入れたいのかがわかりませんでした。


 本作をみると「君を愛したひとりの僕へ」を思いついて、企画段階で話として短いのと、世界観の出来がいいのに、もったいないので長編化、2分冊へ…という感じでしょうねえ。

 アニメの出来はTVアニメのまあまあ出来がいい程度です。で、評価ですけど、連作としての評価は厳しいですね。取って付けた感…蛇足感が凄いです。
 単独でみればSFの概念については面白いので、3.3くらいです。連作のマイナス評価で3.0になりました。

 気が付かない仕掛けや伏線がないかなど、見落としがないか本で確認はしますけど。今のところです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

66.5 36 2022年度アニメランキング36位
映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ (アニメ映画)

2022年4月1日
★★★★☆ 3.4 (54)
225人が棚に入れました
偏屈で無口な変わり者・小戸川。個人タクシーの運転手として街を流しながらも、なるべく他人と関わらないように、平凡な日々を過ごしていた。ところが、ある日、思い掛けず、『練馬区女子高生失踪事件』に巻き込まれてしまう。さらに、小戸川の周囲からは、「一人暮らしの部屋から話し声が聞こえた」など、不穏な証言も。事件は、億を超える巨額 の金、目的不明の半グレ集団、売り出し中のアイドル、カリスマ化されていく大学生など、様々な事物が絡み、 収拾不可能なほど混沌としていく。

ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

【評価辛目】公式ファンブックを映像化したような微妙な劇場版総集編

【物語 2.5点】
キャッチコピー"真実は、藪の中。"

この”藪の中”という表現の由来は芥川龍之介の同名短編小説。

※「藪の中」あらすじ概要……{netabare}平安時代。藪の中から侍の遺体が発見される事件。
検非違使(役人)が容疑者の盗人、遺体の侍の妻、目撃者、
さらには死んだ侍の霊を巫女に霊媒させて集めた証言集の形式。
事件の発端は盗人による侍の妻への強姦願望だが、
それぞれが自分が暴かれたくない心の秘密を優先させ、
食い違う証言をするため真相が見えないまま終わる。
文学研究における謎の“考察”が熱を帯びてしまったため
真相は“藪の中”といった言い回しが現在まで定着するに至る。{/netabare}

TVアニメが想定以上の話題作に。
急遽、劇場版も作りたいが興行成功のためには時間を空けるのは不味い。
よって新録プレスコ(作画の前に収録)も、新規カットも用意するコストと時間が限られる。
それでいて、既存ファンだけでなく新規にも訴求したい。

無茶振り企画をまとめる苦肉の策として「藪の中」の証言集形式を当てはめた。
というのが劇場パンフレットの脚本・此元 和津也氏の”証言”などからの私の推理。

証言集形式も悪くはないが、会話劇としてのTVアニメの良さは消えてしまう。
強引な企画で崩れた劇場版総集編の典型だと感じました。


構成は事件後、警察取調室での、主人公のタクシードライバー・小戸川への事情聴取。
クライマックス前の時点に”調査報告書”を集める謎の集団が
カフェ等で実施した各キャラへのインタビュー。
二つの時点の証言集によるTVアニメ総集編が大半。

あとは終盤にTVアニメラストで勿体ぶられた結末の追加カットによる方向性の示唆と、
さらなる謎の提示が少しだけ。
TVアニメ版のちょっと先を把握することはできるがモヤモヤは残る。

そのためだけに劇場鑑賞料金&2時間の価値はあるのか?は要自問。
私は不満を抱きつつも、元が良かったのと、
何より『オッドタクシー』が好きだったので退屈はしませんでしたが。
感覚としては、気に入ったTVアニメ視聴後に、公式設定資料集等で、
ストーリーやキャラを振り返って余韻に浸るのに近いです。


尚、"初乗り歓迎”と宣伝されていますが、
TVアニメ未視聴者に本劇場版を鑑賞させても、
“田中革命”は尺不足で弾かれる。
など、結局、TVアニメ見なきゃ分からない。
後からTVアニメ見ても、驚きが激減する。
正真正銘の悪(あく)じゃん!と思うので、悪の反対の方は全力で止めましょうw

小戸川交通は個人タクシーなので初乗りできるのはTVアニメ版の一台だけですw


【作画 3.5点】
新規カットはラスト数分と、各キャラの証言シーンくらい。

証言する各人物の挙動にはキャラクター性が現れておりファンならニヤニヤできます。


【キャラ 3.5点】
概ねTVアニメ版の多くのキャラを網羅するが
報告書作成時点で拘束されていた{netabare}今井{/netabare}など、
あと付けの証言集形式による歪みで取りこぼしたキャラクターもあり。

インタビューにより私が一目置いたのはドブ。
証言者の事情によって、何なら積まれた金額によって証言内容は変わると、
主観的な証言の限界を指摘した上で語り始める知的な言動。
やはりドブはケンカ強いだけの脳筋ヒヒではない懐の深さがある。
アルパカが囚われたのも金と暴力だけじゃないです。


【声優 3.5点】
特徴的なのが聴取に当たった捜査員、報告書作成者のノーキャスト。
あたかも鑑賞者がインタビュアーの一人称視点で証言を集めていくような誘導。
これも「藪の中」及び同小説の映画化作品・黒澤 明監督『羅生門』と同様の構図。

この観点からエンドロール後の{netabare}実写カット。
私は、リアルのTVアニメ考察勢≒調査報告書の作成首謀者と考察します。
YouTubeオーディオドラマにて、事件物ノンフィクション取材のため
盗聴していたタエ子ママたちは実行部隊かなと。
脱線しますが、ラストの(※核心的ネタバレ){netabare}小戸川生存{/netabare}ルートも、
TVアニメファンの願望を具現化した形なのだと思います。
この辺りも公式ファンブック的な構成かなとw
『オッドタクシー』実写化だけはないと信じたいですw{/netabare}


三矢ユキ役の村上 まなつさん。
冬アニメでは明日ちゃんも演じた方と意識したら乾いた笑いが止まりませんでしたw
田舎娘も色々ですw


【音楽 3.5点】
こちらも主題歌「ODD TAXY」がリミックスされエンドロールで流れる程度で新要素は最低限。

ただ劇場大音響で唐突に鳴り響く
インド映画風?カポエラのリズムは分かっていてもツボにハマりますw


【余談】
公開館を絞り込み、公開週週末・劇場館アベレージ1位を達成した本作。
私が行った平日午前の客入りも上々でした。
数年間、丹精込めて制作した力作が閑古鳥という惨状が続いた
今年前半のアニメ映画の中では、成功した興行だと思います。

小戸川は不器用だけど、スタッフはドブくらいのやり手ですw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 16
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ほとんど総集編

偏屈で無口な変わり者・小戸川。個人タクシーの運転手として街を流しながらも、なるべく他人と関わらないように、平凡な日々を過ごしていた。ところが、ある日、思い掛けず、 『練馬区女子高生失踪事件』に巻き込まれてしまい、小戸川の周囲からは、「一人暮らしの部屋から話し声が聞こえた」など、不穏な証言も。事件は様々な事物が絡み、 収拾不可能なほど混沌としていく。それでも、ある計画の実行をきっかけに、事態は一気に収束。いったんの結末を見た。……かに思われた。事件後、かかわっていた人々が、口々に証言する。見えていた出来事の裏の裏。本当はそこで、何が起きていたのか…を。それらを繋ぎ合わせることで浮かび上がってくる、事件の新たな輪郭。一人のタクシードライバーが体験した、“人生を一変させるような出来事”がカタチを変え、未来へと続く運命の歯車が再び揺さぶられていく。というあらすじ。


登場人物のインタビュー方式で総集編として内容を振り返っていく。
ラスト10分ほどでようやく気になるシーンで終わったアニメ放送以後が描かれている。あえて描かずに想像力を搔き立てたままでも良かったけど、これはこれで描いてくれて安心かな
以下は完全な備忘録ネタバレ
{netabare}真犯人の和田垣さくらが小戸川の運転するタクシーを見つけて乗るところで終わったアニメ放送。どんな手でもって殺人はねえ。国民みんな戸籍登録されているはずだから天涯孤独でもない限りどこかのタイミングでばれちゃうでしょ。
座席に座ってどこにも行かないと告げ、おもむろにナイフを取り出して運勝負だねということで刺そうとする。その模様は詳しく描かれていないが、どうやら彼女は逮捕されたらしい。
無事に白川さんと動物園デートしてイチャイチャしてるし、EDでは花見も。あれ?柿花としほちゃんが同じ場所に存在してるぞ?美人局の被害者・加害者の関係で気まずくない?
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

新訳 オッドタクシー 真の結末 運の強い小戸川しかり

 TV放送の回想を小戸川以外の目線、インタビュー形式で振り返るです。
 実は全てまるで小戸川の見た人の姿は、こうだったです。あのとき救われた小戸川が、いつもの日常に戻り意味ありげな客が乗ってきて、どちらまでだったな終わり方だったです。
 新たな形の今回は、さらに少しプラスして、真のラストを迎えるお話だったです。小戸川どうなったかなぁ?です。

 最初見たとき、誰かがあの関係者とインタビュー?して回想、違う語りで振り返っているしかないようにしか見えなかったです。映画で知っているお話またか?と思ったです。

 終盤で新作カットがでてきて、あの小戸川の一連の行動と並行して進んだ事件の真相が分かりやすくなると思ったです。
 サスペンス要素に本当の終止符が打たれるのです。その結末は一瞬で、あれがどうなるか?私には分からなかったです。
 小戸川が、何事もない平和なラストに進みです。EDでそれがちょこっとわかるけど、具体的に危険をどう回避したか?結局分からなかったです。

 サスペンスな要素が、何だかんだ乗り越えられたことで、ややモヤモヤした感じが晴れたように思えたお話だったようで感じた「オッド・タクシー」です。相変わらず、落ち着いているというのか?不愛想で淡々とした小戸川が、いい感じでしたです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀 第一章(アニメ映画)

2022年9月30日
★★★★★ 4.1 (6)
41人が棚に入れました
田中芳樹の大長編SF小説「銀河英雄伝説」を、Production I.G制作により新たにアニメ化した「銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)」のフォースシーズン「策謀」。2018年のファーストシーズン「邂逅」(第1~12話)、19年のセカンドシーズン「星乱」(13~24話)、22年のサードシーズン「激突」(第25~36話)に続く物語で、フォースシーズン全12話(第37~48話)を3章に分けて上映するうちの第1章。

最高権力者となったラインハルト・フォン・ローエングラムの善政による改革が進み、国民からの支持を集める銀河帝国。一方の自由惑星同盟は、“不敗の魔術師”と称されるヤン・ウェンリーらの活躍も空しく、政府の腐敗による国力の低下が著しかった。両国間の勢力バランスに変化が生じる中、第3の勢力であるフェザーンの自治領主ルビンスキーは、自由惑星同盟を見限り、大きな陰謀をめぐらせていた。ラインハルトは、その企みを知りながらも自身の野望のため利用しようと考え、ヤンも同盟に最大の危機が迫りつつあることを予感していた。

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
劇場版『Gのレコンギスタ Ⅳ』「激闘に叫ぶ愛」(アニメ映画)

2022年7月22日
★★★★☆ 3.7 (9)
39人が棚に入れました
資源の枯渇した地球を救うエネルギーである「フォトン・バッテリー」。地球では製造することのできないエネルギー装置の供給源へ向かうため、地球圏を離れたベルリ・ゼナム、アイーダ・スルガンらが乗艦するメガファウナは、ついに目的地である金星宙域にあるビーナス・グロゥブに到達する。地球への帰還=レコンギスタ作戦を目論むジット団との戦いを経て、アイーダは、「フォトン・バッテリー」の生産と供給を独占している団体「ヘルメス財団」のラ・グー総裁との会談の機会を得る……。

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

やっぱりなんで戦っているのかよく分からなかった

Gのレコンギスタ劇場版。
第4部である本作、「激闘に叫ぶ愛」は放映版の19話から22話を元に再構成したものとなっています。
元としているのが放映版のたった4話分で、尺としておそらく劇場版の方が長くなる感じですね。
逆に劇場版視聴後の今となっては、放映版をどうやって短くしていたのかと思えるくらいギュッと詰まった内容だったように思います。
この辺りは、私は放映版視聴時は完全についていけず、惰性で見続くていたようなところですね。
放映版はストーリーを追うことに諦めて、ググりながら見ていましたが、第4部は大幅に追加カットがあったらしく、一応、ストーリーをググりながらでなくても追えるようにはなっていました。

ヴィーナスグローブからフォトン・バッテリーを運ぶ輸送船『クレッセント・シップ』に、メガファウナが接触した続きとなります。
クレッセント・シップと共に、ヴィーナスグローブへ目指す一行だったが、そこにヴィーナスグローブの考えに賛同しない集団、ジット団が現れ襲撃にあう。
この突然現れたジット団や、前作で暴れていたドレット艦隊、既存の4つの組織があり、かなりごちゃごちゃしてきます。
ただ、放映版に比較すると、本作ではドレット艦隊は不在となり、新たに出てきたジット団とのいざこざを一つの章として捕らえることができ、見やすくなっていました。
でもやっぱり前提として、なぜ戦っているのかがよくわからない。
アメリアとキャピタルの対立はまだわかるのですが、ジット団がクレッセント・シップを武力制圧しようとした流れがわからず、メガファウナと戦うことになった流れはもっとわかりませんでした。
ヴィーナスグローブには司法機関がないのだろうか。

相変わらず、よくわからない戦闘を繰り返す作品でした。
特にジット団は、レコンギスタのタイトル回収となる行動をするのでラスボス枠になるのではと思いきや、謎展開で退場というのも変わりなしです。
ただ、ベルリとマスクが一騎打ちする追加カットはとても良かった。
やっぱりなんで戦っているのかよく分からなかったですが楽しめました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 1

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
劇場版『Gのレコンギスタ Ⅴ』「死線を越えて」(アニメ映画)

2022年8月5日
★★★★☆ 3.4 (7)
39人が棚に入れました
地球帰還〈レコンギスタ〉の果て、待ち受ける未来とは。

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ブラックな意味でも大団円

Gのレコンギスタ劇場版最終章。
陣営が出揃い、戦いの舞台が宇宙から地球へ。
ドレッド艦隊の残存部隊、レコンギスタを望むジット団とキャピタル・アーミィのマスク陣営、アメリアの艦隊と、ベルリたちメガファウナが入り交じります。
謎の怒りでとにかくベルリを許せないマスクと、マスクのためにベルリに死んでほしいマニィ、マスクにマニィを譲ってしまいイライラが止まらないバララという迷惑軍団が、よりによって手段と目的入れ替わってそうなジット団と手を組んで暴れまわります。
ぶっちゃけたところこいつらが戦いの元凶なのではと思わないではなかったです。
始まりはアメリアとキャピタルの対立ですが、アーミィという暴走部隊の登場でキャピタル・ガードとアメリア、メガファウナはなんだか仲良しになっちゃってますしね。

劇場公開は第4部とほぼ同時に連続公開となった第5部ですが、内容はほとんど戦闘です。
ストーリーや状況説明は完了しており、その結末を語るのが第5部ですね。
ただ、4部までの感想の通り、そもそも戦いの理由がよく分からず、ラストもなんかきれいに終わったのですが納得いったかというと難しいところがあります。
見どころはあり、バララがユグドラシルでドレッド艦隊相手に大暴れするシーンや、天才クリムの地上戦など、戦闘シーンメインですが名シーンは多数ありました。
ストーリーはともかく、見ていて飽きはなく、この愛憎入り交じる個人的な感情を大義と混同し戦争する感じは、富野ガンダムの醍醐味だと思います。
放映版はもっとですが、劇場版もガンダム上級者向けで、本作からガンダム見始めてはいけないと思いました。
本作に、そもそも新しい世代の子供に見てほしいという願いが込められているのが皮肉な気がしますが、もし本作から初めてガンダムを視聴してはまれたら素質は十分ですね。

死者が大勢出ましたが、最終的にメインキャラはほぼ生き残って、続く人生を謳歌しているのも違和感を感じます。
何気に大団円で終わっていて、楽しそうな笑い声で終幕となります。
一方で、生き残っていると都合の悪そうなキャラは大体死んでるのがうまいと思いました。
こいつ生き残ってたら戦争の火種を起こしそうだな、と思えるキャラから死んでる感じがするので、ブラックな意味でも大団円な気がします。

劇場版もテレビ放映版も全話観るとそれなりに時間がかかりますが、個人的には劇場版の方が比較的見やすくておすすめです。
どちらもストーリーはほぼ変わらないですが、視聴時には理解力、あるいは、理解を放棄するのが大事のような気がします。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀 第二章(アニメ映画)

2022年10月28日
★★★★★ 4.2 (5)
38人が棚に入れました
田中芳樹による人気長編SF小説「銀河英雄伝説」を、Production I.G制作で新たにアニメ化する「銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)」。ファーストシーズン「邂逅」(第1~12話)、セカンドシーズン「星乱」(第13~24話)、サードシーズン「激突」(第25~36話)に続くフォースシーズン全12話(第37~48話)を3章に分けて上映する「銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀」の第2章。

銀河帝国のわずか7歳の皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世が、フェザーンの手引きにより宮殿に侵入した門閥貴族派の残党ランズベルク伯アルフレットと元帝国軍大佐レオポルド・シューマッハによって誘拐された。一行はフェザーンで同志と合流して自由惑星同盟へ亡命し、同盟政府の支援を受けて銀河帝国正統政府の樹立を宣言する。皇帝の誘拐計画を事前に知りながら、あえて見逃していた宰相ラインハルトは、計画通り皇帝救出を大義名分に自由惑星同盟への進攻を宣言する。

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀 第三章(アニメ映画)

2022年11月25日
★★★★☆ 3.8 (7)
35人が棚に入れました
田中芳樹による人気長編SF小説「銀河英雄伝説」を、Production I.G制作で新たにアニメ化する「銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)」。ファーストシーズン「邂逅」(第1~12話)、セカンドシーズン「星乱」(第13~24話)、サードシーズン「激突」(第25~36話)に続くフォースシーズン全12話(第37~48話)を3章に分けて上映する「銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀」の第3章。

自由惑星同盟への進攻を計画するラインハルトは、イゼルローン回廊ではなくフェザーン回廊を通って敵地に向かうことを考えていた。同じ頃、フェザーン駐在武官に着任するために旅立ったユリアンは、立ち寄った首都ハイネセンでビュコックを訪ね、ヤンの親書を渡す。そこには、ラインハルトの作戦を予測した上で、帝国軍のフェザーン回廊通過を防ぐための策も記されていた。そしてついに、ラインハルトによる大規模進攻作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」が開始される。

まあ君 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

映像の進化

星乱から策謀まで一気に観ました.
原作小説を読破し旧作アニメも全て観ている立場としては,リメイクの新版が始まった当初は,最後までは無理だろうし,あの豪華だった声優陣には及ばないだろうと思っていました.
いざ観始めると,声優さん達が,失礼な言い方ですが,思いのほか頑張っていて好印象.個性を押し出すというよりは,さりげなく淡々と演じられていて,旧作に負けていないと思います.
ストーリーも,若干端折り気味なのかも知れませんが,要所をおさえつつ,ラグナロク作戦まで来ました.ここまできたら,どれだけ時間がかかってもいいので,是非最後まで行ってほしいです.
それと戦闘シーンの映像も相当進化しているように思います.

続編が待ち遠しいです.

投稿 : 2024/06/01
♥ : 0

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
バズ・ライトイヤー(アニメ映画)

2022年7月1日
★★★★☆ 3.7 (4)
33人が棚に入れました
世界で最も有名なスペース・レンジャー〈バズ・ライトイヤー〉誕生の秘密を描く─「トイ・ストーリー」シリーズのディズニー&ピクサーが贈る最新作

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

おもちゃより男前、勇敢なスペース・レンジャー

 吹替版、字幕版見たです。帰還途中の数千人をのせた宇宙船で、バズが目覚め未確認の星に着陸し調査したです。危険な星だとわかり、脱出を試みるも、失敗してしまうです。
星から出られなくなり、新しい燃料を作り成功させるため、バズはテスト飛行を繰り返すです。しかし、バズにとっての4分はこの星の4年に相当し仲間がついにはいなくなり、状況も変わっていってしまうです。出会いもあり協力し、絶望的な状況の中解決策?を目の辺りにするです。その時バズは、何を決断するのか?本当の帰還が何なのか?命がけで仲間を大切にする、バズの真実を見せてくれたお話だったです。

 結構面白いお話で、私は好きです。テスト飛行に時間を消費してしまうリスクを知っても、なお任務を遂行するバズの姿がカッコよかったし、そのテスト飛行超高速の作画映像が、印象的だったです。
 また出会いによってともに行動する仲間が失敗を繰り返ししまいには、とんでもない失態をして絶望的になったです。これらを見ていると、「ふざけるな!」という気持ちにもなったです。
 予測不能の展開が多く、このあとから形勢を逆転につながる仲間の機転が、HAPPY ENDへと誘っていき凄かったです。展開展開が、特に後半ハラハラ、ドキドキ終盤まで盛り上がったです。
 任務を成功できたかできないか?結局わからないけど、仲間たちと新しい任務へ向かう姿が良かったです。「無限の彼方に!」だったです。
 ただ、一番最後の描写は謎で、何を意味しているのか?「私、気になります!」だったです。字幕、吹替ともに甲乙つけ難く、どちらも良かったです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 1

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
SING/シング:ネクストステージ(アニメ映画)

2022年3月18日
★★★★★ 4.1 (7)
31人が棚に入れました
コアラのバスター・ムーンが運営するニュー・ムーン・シアターは連日満席で、ブタのロジータとグンター、ヤマアラシのアッシュ、ゾウのミーナら出演者は大人気。地元で成功を収めながらも、バスターには聖地クリスタル・タワー・シアターで新しいショーを披露するという夢があった。そのためにはクリスタル・エンターテイメント社のジミーのオーディションに合格しなければならなかった。

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
私ときどきレッサーパンダ(アニメ映画)

2022年3月11日
★★★★☆ 3.3 (8)
24人が棚に入れました
本作の主人公メイは伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、母親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの女の子。

母親の前ではいつも“マジメで頑張り屋”のメイですが、実はアイドルや流行りの音楽も大好きで、恋をしたり、友達とハメを外して遊んだり、やりたいことがたくさん。
そんな彼女は、ある出来事をきっかけに本当の自分を見失い、感情をコントロールできなくなってしまいます。
悩み込んだまま眠りについたメイが翌朝に目を覚ますと…レッサーパンダの姿になってしまったのです。

なぜメイはレッサーパンダになってしまうのか?そこに隠されたメイも知らない驚きの秘密とは…。

ありのままの自分を受け入れてくれる友人。
メイを愛しているのに、その思いがうまく伝わらずお互いの心がすれ違う母親。
様々な人との関係を通してメイが見つけた、本当の自分とは――

Mi-24 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

全体的にあっさりしている

中国依存ディズニーのアニメ映画。
舞台はカナダのトロント。勿論、主人公は中華街の華僑・華人だ。

作品内に五人組のイケメンアイドルグループが出てくるが、凶悪犯罪事件を起こした『児童性加害組織“ジャニーズ”』を思い出す。


作品は標準的なギャグコメディ。
娘の教育に干渉する母親が「純粋な悪」ではなく、母の想いも描いているのは良かった。

見たのは日本語版だが、作品内の文字表示が英語に字幕ではなく、きちんと日本語で書かれているのは凄かった。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 0

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
ミニオンズ フィーバー(アニメ映画)

2022年7月15日
★★★★☆ 3.9 (5)
23人が棚に入れました
ユニバーサル・スタジオ×イルミネーション・スタジオが生んだ人気キャラクターのミニオンを主役に描く長編劇場アニメ「ミニオンズ」の第2弾。最強最悪のボスに仕えることを生きがいとするミニオンたちが、なぜ怪盗グルーをボスに選んだのか、そしてグルーはどのようにして月を盗むほどの大悪党になったのか、その謎が明らかにされる。1970年代、ミニオンたちはミニボスとして崇拝する11歳の少年グルーのもとで日々悪事を働いていたが、ある日、グルーが何者かにさらわれてしまう。ミニオンのケビン、スチュアート、ボブは、グルーを救出するため奔走し、その過程でカンフーの達人マスター・チャウと出会う。ケビンたちはマスター・チャウに弟子入りを志願するが、その先にはさらなる険しい道が続いていた。監督は前作「ミニオンズ」や「怪盗グルーのミニオン大脱走」も手がけたカイル・バルダ。声の出演はグルー役のスティーブ・カレルほか。日本語吹き替え版も笑福亭鶴瓶がグルー役を引き続き担当し、市村正親、尾野真千子、渡辺直美、田中真弓、速水奨、大塚明夫、立木文彦、宮野真守、鈴木拡樹ら豪華俳優・声優陣が集った。

pikotan さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

声優選びに成功

洋画の吹き替えと言えば、その時に売れている若手俳優や芸人を使って台無しになるケースが多いですが、本作に出演した市村正親さん、尾野真千子さんは流石の演技力でした。
また、マスター・チャウのCVを務めた渡辺直美さんは、演技力は市村さんや尾野さんに及ばないものの、キャラクターと渡辺さんの見た目がそっくりだったので、声がキャラに溶け込んでいた点が良かったですね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!(アニメ映画)

2022年9月23日
★★★★☆ 3.9 (4)
23人が棚に入れました
みんなー!あたし、和実なごみゆい!食たべるの大好だいすき中学ちゅうがく2年生ねんせい!
あたしたちの住すむおいしーなタウンに、「お子こさまランチのテーマパーク<ドリーミア>」が突然現とつぜんあらわれたんだ!
あそび放題ほうだい、たべ放題ほうだいなんだって!
わあー!はらペコった~!みんなで行いってみよー!♪
デリシャスマイル~!なアトラクションがたくさん♡
コメコメたちは、園長えんちょうのケットシーさんにお子こさまランチをごちそうしてもらったみたい。みんなで楽たのしくあそんでいたんだけど…、
ええ!?大変たいへん!!マリちゃんがぬいぐるみになっちゃった!?
<ドリーミア>にはなにかヒミツがあるの…!?
お子こさまランチみたいに、想おもいをあつめたらコメコメが奇跡きせきを起おこしちゃう!?

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
映画 バクテン!!(アニメ映画)

2022年7月2日
★★★★☆ 3.8 (5)
16人が棚に入れました
テレビアニメ「バクテン!!」の映画版。2021年4~6月に放送されたテレビシリーズの続編となり、「アオ高男子新体操部」の部員6人による最後の挑戦を描き出す。通称「アオ高」こと私立蒼秀館高等学校の男子新体操部で出会い、いつしかチームとして一丸となった個性豊かな6人の部員たち。それぞれの思いを胸に抱えながら青春の全てを懸けて駆け抜ける彼らは、次の舞台となるインターハイへ向けて動き出す。

pikotan さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

完結編

テレビ版の続きです。
本作で物語が完結するので、テレビ版を観た人はこちらの視聴もお勧めします。
良かった点は何と言っても「作画」で、リアルを超える躍動感が伝わってきて、見応えがありました。
物語は青春部活動作品として王道の流れで、新体操に興味が無くても楽しめると思います。
ただし、他の映画評価サイトの感想では「泣けた」という書き込みがチラホラ見受けられましたが、私の場合は「泣ける」までは至らなかったですね。
人によっては学生時代に部活動を行っていた自分の姿とオーバーラップして、思わず涙が…なんて人もいるのでしょう。
総合的に見て、良質な作品に思えました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界(アニメ映画)

2022年11月23日
★★★★☆ 3.5 (6)
15人が棚に入れました
想像を超える奇跡の物語と、魔法のように美しい映像によって、数々の驚きと感動を贈り続けてきたディズニー・アニメーション・スタジオ。その最新作は、まるでアトラクションに乗っているかのようなスケール感あふれる壮大な冒険と、かけがえのない家族の絆を描いた、アクション・アドベンチャー超大作『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』。

まだ誰も見たことのない“不思議な”世界への壮大な冒険を描いたアクション・アドベンチャー
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

家族や多様性のアップデートを試みたメイドインディズニーな冒険譚

【物語 4.0点】
世界観は王道。しかし脚本は捻っており先読みは困難。
どう着地させるか?という興味が鑑賞の原動力になる。

高い山々に囲まれた国の状況打開のため外の世界に冒険に!
導入は、壁に囲まれ慣れた深夜アニメ視聴者にとっては陳腐とすら感じます。
ところが冒頭、主人公が旅の途中で{netabare}電気エネルギーを蓄えた植物を持ち帰り故郷に産業革命が起こる。
僅か四半世紀で馬車→浮遊電気自動車へ。{/netabare}
この件で、読めなくなっていく。

最後は常識が覆される系のドンデン返し。
事態に対する受容度によって、主人公たちの間で正義とヒール、上策と下策が二転三転するドタバタ感は勧善懲悪とは一線を画す。
そしてそれは本作が盛り込んだ家族、多様性、環境問題といった社会テーマの深化にも寄与。
異なる視点や価値観への寛容性を啓発したいという作品志向とも合致。
「この結末は、あなたの世界も変える」というキャッチコピーもまんざら嘘でもない。

私は(※核心的ネタバレ){netabare}『はたらく細胞』や『ミクロの決死圏』{/netabare}が好物なので美味しく頂けました。


【作画 4.5点】
61作目のディズニー長編アニメ。100周年記念作。

「ディズニー史上最も奇妙な世界」を自称。
スクリーンに某大穴探窟作品にも引けを取らない驚異の地下世界(何故か上ではなく下行きましたw)が広がる。
出血表現がないので刺激は弱いですが、主人公たちが複数回死にかける程度には危険な冒険です。

洋画ではしばしば、過剰にドロドロ、ネバネバ、ゼリー状あとは触手などが氾濫することがあります。
本作はそれらをさらに濃縮した感じ。

再現された生態系は奇抜であるだけでなく、自然、生態系全体が伏線。
回収時のカタルシスは、作画、背景による部分も大きいです。


人物のデフォルメは各パーツが丸くてデカい伝統のディズニー。
一方で肌はモチ肌に進化。ゼリー状のムニュムニュ感も進化w


急発展した中世風社会を再現した街並も○。
ファンタジー世界に好物の空中挺とか飛ばしてくれれば私は満足なのです。


【キャラ 3.5点】
ポリコレの最前線。変容する家族と多様性。

主人公・サーチャー・クレイド……偉大な冒険家の父を疎ましく思い、父と生別後は農業に勤しむ。息子には農家を継がせたいがウザがられる。
息子・イーサン・クレイド……農業より祖父のような冒険家に憧れる少年。
父・イェーガー・クレイド……家族も顧みず未知の冒険にのめり込む困った爺さん。

各々の人生観が衝突し合う親子3代の関係性。
家族だから無条件で理解し合い、助け合う物という価値観に一石を投じる。
冒険家のイェーガー父さんが残した熱い想いなんて、子のサーチャーは知ったこっちゃないんですw

白人系のサーチャーは当たり前に黒人系の妻・メリディアンと熱いキスを交わす。
飼い犬・レジェンドは“三本足”。

そして、息子・イーサンには告白したい“片想い”の“彼”がいる。
LGBTが抵抗なく受け入れられる時代に育まれたイーサンは、
常識がひっくり返っても柔軟に受け入れる感性が養われているという進歩的価値観の信奉。
一応、意味のあるLGBTではありました。
ですが、タダでさえ赤字の本作。
同性愛をタブー視するイスラム諸国の興行を捨ててまで、LGBTをねじ込む必要があったかと言えば私は疑問です。

ただポリコレはポリコレでも、本作は、親子3代の口論を通じて、
異なる価値観に戸惑う人間の意見を聞く耳があるだけ、
まだポリコレアレルギーの私でも発症せずに見ることができました。

多様性を謳いながら、異質な存在に怯える人間を古いと切り捨て、伝統を土足で踏み荒らすポリコレは独善的な自己矛盾。
ですが、本作は、変化を恐れるのも分かると譲歩した上で語る所を見るに、
拙速な進歩により分断を深めてしまうリベラルの課題を自覚はできているらしい。

でも、まぁ結局、寛容でもポリコレはポリコレ。
中間選挙でトランプ前大統領が推す候補に投じたファミリー何かには唾棄されるんだろうなとw
解決途上の社会課題を内包した割り切れない登場人物たちは、
有意義な思索の種ではありましたが、明快なアニメキャラではなかったかなと。


【声優 3.5点】
※日本語吹替版を劇場鑑賞

主人公・サーチャー役には原田 泰造さん。アニメ、吹替初挑戦で可もなく不可もなく。
息子・イーサン役には元・子役の鈴木 福さんが声変わり後も無難な少年ボイスを提供。

アフレコ経験不足の俳優陣中心の体制を、流石のじっちゃんボイスで引き締めたのがイェーガー役の大塚 明夫さん。
茶風林さんの円熟のナレーションと共に吹替の骨格となる。


【音楽 4.0点】
劇伴担当はヘンリー・ジャックマン氏。
勇壮な金管で冒険心を高揚させる王道構成。
あとはワルツでリズムに変化を付ける。管弦楽で効果音を兼任するディズニーの伝統芸。
時折、遊び心も交える手腕も手慣れた物。

ミュージカル要素はメインフレーズともなった男声テノールのクレイド家の紹介曲のみ。
ミュージカル苦手な方も鑑賞可。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
アンネ・フランクと旅する日記 (アニメ映画)

2022年3月11日
★★★★★ 4.1 (6)
15人が棚に入れました
現代のオランダ・アムステルダム。激しい嵐の夜、博物館に保管されているオリジナル版「アンネの日記」に異変が起きた。突然、文字がクルクルと動き始めて、キティーが姿を現したのだ!時空を飛び越えたことに気づかないキティーだったが、日記を開くと過去へさかのぼってアンネと再会を果たし、日記から手を離すとそこは現代の風景が広がっていた。目の前から消えてしまったアンネを探して、キティーは街を奔走する……。

ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

アンネを求めて数千里

 数十年後、博物館(アンネ・フランクの家)の展示物(アンネの日記)から生まれた少女キティーが、記憶を頼りに知り合った少年ペーターとアンネの軌跡をたどるお話だったです。

 ナチスから身を潜め、家族と共に住んでいた少女アンネが、書いた日記世界的に有名な「アンネの日記」を基にした設定です。
 キティーが何なのかは、有名な事実であるです。最初は触れられない幽霊のような存在だったです。ある時、見て触れることのできるたりもしたです。  
 元々、文字でしかない実在しなかった存在だったです。今具現化させ物語にしてしまうとは、今まであってもいい設定だったのに考えも私にはつかなかったです。日記と距離をとっていないと姿が保てないというのも、キティーであることを物語っていたです。

 アンネを求めて表にでるけど、数十年たっているから景色も変わっているです。
{netabare} 一方で場面が変わり、アンネが家族で初めて家族と隠れ家に来たあたり、日記をプレゼントされたとき、アンネのの過ごした日々とキティーがリンクするです。アンネがキティーと語るさまは、二重人格を思い起こしたです。
 博物館でスリしてた少年に見かけたキティーは、街で損所ペーターに接触したことから物語が進むのです。キティーと日記の関係も気づき、二人で旅に出るけど、{/netabare}日記の窃盗犯として追われる身としてアンネを探す旅にです。ここら辺が、一番面白くなるかもです。

 アンネのことも当然知ることになるわけだけど、それとは別の問題に直面することになるのです。そこで、キティーのはどうするのか?クライマックスになるのです。キティーの運命や、ペーターの想いは切ないかったです。

 吹替が存在しなく、外人声優さんが英語で話すだけの字幕世界は、キャラに結構リンクしていたようで良かったです。ペーターもキティーが人間でないと分かっていながら、あそこまで思いを抱き協力する姿が不思議、人知を越した感情に見えたです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

計測不能 37 2022年度アニメランキング37位
シチリアを征服したクマ王国の物語(アニメ映画)

2022年1月14日
★★★★☆ 3.6 (6)
14人が棚に入れました
旅芸人のジェデオンとアルメリーナは、山越えの途中で吹雪に見舞われ、洞窟で暖を取ることに。すると穴の奥から、侵入者の声で冬眠から起こされた老クマが現れる。ジェデオンは食べられては大変と、古くから伝わる「シチリアを征服したクマ王国の物語」を語りはじめる。
 遠い昔のこと。山奥に平和なクマの王国があった。ある日、クマの王レオンスが魚の取り方を教えていた時、息子トニオがいなくなってしまう。悲しみに暮れ、逆座を動こうとしないレオンスに、長老テオフィルが人間の暮らすシチリアに行けばトニオが見つかるかもしれないと進言する。するとレオンスは、クマの群れを引き連れてシチリアを目指して出発する。

camuson さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

印象度:65

2019年公開のイタリア・フランスのアニメ映画。
amazonレンタル(48h;500円)で見ました。

原作のイタリア人作家による童話は未読です。


人間との共存を望むクマ族の王様によって、
平和的に統治されることになったシチリア。
当初は人間との共存もうまくいってるようであったが・・・

という話を、劇中物語として前半は紙芝居芸人の男と娘に語らせ、
後半はクマ族のみが知る真相として語らせています。

劇中物語として語る手法自体はとりわけ珍しいものではないのでしょうが、
ストーリーテリングのメリハリ、
そして、語る者が異なれば、物語も異なるという可能性を明示した点で、
とても効果的に機能していると思いました。


アートスタイルが興味深いですね。
語り部の男と娘は、二次元的なキャラクターなのですが、
クマはデフォルメされたあからさまな3Dポリゴンです。

背景も大きくデフォルメされていて、
遠景は二次元的な書割的な感じなのですが、
ここにクマや人間の兵隊など郡体を成すオブジェクトが3Dで配置されると、
遠近感が強く感じられ、空間の広大さが感じられます。
すべて二次元の手書きだと出ない空間の感覚だなと思いました。



老若男女が見て、それなりに楽しめる作品で、
完成度が高い作品だと思います。

ただ、何か大きく心動かされるということがあまりないのと、
中学二年生がみて、心躍るような内容は一切ないのと、

現代人である以上、現代社会を映す鏡になってるかどうかが
興味対象となるところですが、それがあまり感じられず、
結果として刺さるものがなかったかなと。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

クマは森でなく山からやってくる

 雪の中をさまよって洞窟に入った語り部のおじさんと女の子が、クマと遭遇したです。クマに驚くものの何故か?「シチリアを征服したクマ」のお話を大きな紙芝居を使って話していくお話だったです。クマ相手に話を盛り上げ、女の子が楽器を鳴らしたりするところも面白いです。

 親子水入らずで川遊びをしていたクマ王のレオニンスと息子トニオだったです。レオニンスは夢中で、知らずのうちに行方不明になったトニオだったです。何が起こったのか?訳も分からず落ち込むレオニンスだったです。
 数カ月後トニオを求めてレオニンスが、仲間を引き連れ人間の街に行くお話です。そこでクマ達が、どうなるのか?だったです。言葉も喋り、知恵を絞ったり、踊ったり服を着たり人と変わらないクマが面白いです。

{netabare} 話は進み、トニオに出会うことはできて、めでたしとは行かないです。
 いっときクマと人間の共存する世界が誕生するけど、そうは行かないところも見どころです。
 人と変わらないクマは一部どうなっていくのか?、まさに人間のような振る舞いに慣れてしまう有様が、興味深いです。その結末、そしてレオニンス、トニオが何に気づくのか?最後の最後で決心したことは、{/netabare}やや寂しいながらも納得の行くものだったです。

 語り部、女の子、クマもどうなったのか?見に行ってのお楽しみになるのです。
 海外独特に色彩もよく、特徴的なアニメらしい作画もいい感じです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

Mi-24 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5

心が老化しそうな、カビ臭いアニメ

老人が淡々と語る昔話。
一応話しの山場はあるが、高揚がなく平坦。

日本のアニメでは余り見ないタイプなので物珍しさはあるが、退屈な作品だ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 0
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