「魔法少女まどか☆マギカ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.9
感想・評価
10569
棚に入れた
37380
ランキング
44
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ほむほむレベルアップのすえに

今やアニメファンのみならず、日本中に知らぬもの無しと思われる程に知名度の高い本作ですが、何度見ても泣けてしまうので、僭越ながらレビュー書かせて頂きます。まどマギ考察の一助になれば幸いです。(2016.6.7追補)

!以下あからさまなネタバレがあります。読む前に必ずテレビシリーズ全12話を御視聴下さい。(出来れば劇場版前編始まりの物語と後編永遠の物語も)

それでは、ほむらちゃんの物語の始まり始まり~
{netabare}
ほむらちゃんは最初はとても弱い子でした。何事にも無力な自分の事を卑下し、悲観的な考えにしがみつき、あまつさえ自分なんか消えてしまっても良いと思う程に心が疲弊した少女だったのです。そんな彼女がまどかに助けられ、ついには魔法少女となり、1度目のタイムリープを経験した後、自分だけが記憶している前世の友情と使命感、強い願いを帯びて、精神面で大きな成長を遂げました。(と言ってもまどかに発したTPO無視の第一声は微笑ましい。)それでも結果的にはこの時間軸では使命を果たせず、再び時間を過去へと遡ってしまいます。その後もほむらちゃんはタイムリープを繰り返し、魔法少女としてのスキルや知識-武器の調達の方法、キュウべえの正体、魔法少女の秘密など-を身に付けていきますが、皮肉にもこれら知識の蓄積が仇となって、他の魔法少女たちからの不信感を招く結果になってしまいます。仲間と比べ認識している情報の量に差ができ過ぎてしまったのです。あたかもメリットとデメリットの上昇率がまるで違う、右肩上がりの2本の曲線グラフなぞる様に、タイムリープを繰り返せば繰り返す程、仲間との心のずれは大きくなり、ほむらちゃんは出口の見えない迷宮の深みに入り込んでしまうのでした。

子供と話す時には子供の目線になって話すという、良識のある大人なら誰もが理解している思いやりをほむらちゃんが持てなかったのは、※1手に入れるべき知識を非常に狭く限定していたので、致し方無い様にも思われますが、時間操作の魔法を認知しているのにも係わらず、ほむらちゃんの言葉に耳を傾けなかった他の魔法少女たちにも落ち度はあったと思います。結果的にはその両方が原因でほむらちゃんはだんだんと孤独になっていきました。この点については個人的にはベテランのマミさんあたりが信じてあげても良かったのではと思われましたが、※2マミさんのまどかに対する保護者的な思いがそれを邪魔していたのかも知れません。

タイムリープの設定そのものについては、本作品においては完全なファンタジー、すなわち魔法である為、他のタイムリープものとの差異は一見無い様に思われます。ですが重大な違いが一つだけあります。ただの人間がほむらちゃんの様に記憶を引き継いだままタイムリープすると原理的に必ず老いるのです。

人の記憶は脳の各所で記録されますが、肉体の改変(シナプスの結合とか)が行われるからこそ知識が蓄積されるものですので、記憶の変化と肉体の変化は同義であるという事が分かります。また公式コメントでは「ほむらちゃんのタイムリープ回数は5回以上1000回未満(ひと月を繰り返すので最大で80年位)」との事ですので、この事からほむらちゃんは仮に1000回タイムリープしても(80年位生きても)中学生の姿のままでいられるという事が示唆されます。(本編ではマミさんが成長しているので、成長出来ない訳ではない。)また本編中ほむらちゃんは魔力によって目を矯正した事があるので、魔法少女は体をパーツ毎に修正(治癒ではなく)出来る事が分かっています。つまり脳以外を修正する事も出来る。脳は肉体と比べて長寿で120年以上は機能するらしいので、タイムリープの回数が1000回未満ならば修正せずとも※3大きな問題は生じない事になります。以上から、魔力の尽きぬ限りほむらちゃんはほぼ好きなだけタイムリープが可能であると言う結論になります。この例と違って、ただの人間が記憶を維持したままのタイムリープを繰り返した場合はどうなるのでしょうか? 1日や2日の短期間なら大した事は有りませんが、上で示した様に1ヶ月や1年という期間を何度も遡るなら、脳と共に肉体が確実に老いていってしまって、いずれは目的を果たせなくなってしまいます。

どんな物語でも人間を人間として描いていないと物語のバランスを破綻させる恐れがあります。純然たるファンタジーなのに、リアルに見せなければならない所はリアルに見せる。こう言った設定の抜け目無さもまどマギの魅力の一つだと私は思います。

殆どほむらちゃんとタイムリープレビューになってしまいましたが、まどかの主役性が薄く、騎士道物語に例えるなら、王女役がまどかで騎士役がほむらちゃんという図式なので、真の主人公であるほむらちゃんの頑張りに惹かれるのは仕方無いと言えば仕方無い事なのかも知れません。

以上あくまでも無数に存在するであろう解釈の一つですので、まどマギの世界観を矮小なものにせしめぬよう、一歩引いた目で読んで頂く事を強く推奨します。


※1:単に精神的に大人になる程に長い時間を生きていないだけかも知れません。それでもミサイル盗んだり、迫撃砲の弾道計算が出来たりする程に勉学を積んだほむらちゃんの努力はスゴい!

※2:さやかはマミさんに心酔しているし、杏子はやっぱりマミさんの味方だし‥。もしほむらちゃんとマミさんの二人が協力していればワルプルギスの夜にも勝てたかも‥? それでも失われたものは戻らないのは辛い。

※3:ほむらちゃんはソウルジェムというマクロな物体を過去に持ち込んでいるので、肉体そのものを過去に送っていると判断。「時をかける少女」のイメージで"タイムリープ"としましたが、シュタインズゲートのタイムリープと区別するならば"タイムトラベル"とか"タイムスリップ"という言葉を用いた方が語弊が無かったかも知れません。

※4:脳が普通に成長する場合、神経ネットワークの発達とともに脳細胞が死んでいくので、大体1400回のタイムリープが限界。脳細胞の死滅を魔力で修正しながら神経ネットワークを発達させる様な器用な事が出来れば、タイムリープ可能な回数はさらに増える。例外的に海馬の脳細胞だけは増殖するらしいが、これはPCのRAMの様に一時記憶しか留められない。
{/netabare}

投稿 : 2016/06/07
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