「コクリコ坂から(アニメ映画)」

総合得点
66.2
感想・評価
561
棚に入れた
2843
ランキング
2902
★★★★☆ 3.6 (561)
物語
3.5
作画
4.0
声優
3.3
音楽
3.7
キャラ
3.5

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

「上を向いて歩こう」見えてくるのは澄み渡った空と君がくれた信号旗…

初めて宮崎吾朗監督の作品を観ましたが思ってたよりはよく出来ていたという印象。
まぁ原作の存在する作品なので純粋に監督業に専念することが出来たのかもしれませんね。
脚本を父親である宮崎駿氏が担当し原作内容に手を加え映画オリジナルの設定もいくつかあります。
でもいつか宮崎駿監督のように原作から手掛けて名作を生み出してほしいと思います。

この「コクリコ坂から」という作品は簡単に説明すると
戦後の少女と少年の淡い恋心を描いた純愛物語です。
昭和版「耳をすませば」とでも言いましょうか。

物語は松崎海という少女と風間俊という少年の関係性をメインに描写していきます。
海はすごく可愛らしい女の子。コクリコはフランス語で「ヒナゲシ」を意味するのですが
ヒナゲシの花言葉の中に「乙女らしさ」というのがあります。
海はまさにそんな感じで買い物から食事の準備に掃除洗濯までやり、
今風で言えば女子力の高い乙女というやつです。
何でジブリの女の子ってこんなに男受けしそうな子ばかりなのか(笑)
カレーのお肉がなくて弟と妹に買い物を頼んでみるけど断られたら、
そそくさと自分で買い物に行くところとかも好印象、しつこくないw
なんかメルってあだ名で呼ばれてたけど作中で詳しい説明とかはありません。
海をフランス語に訳した「ラ・メール」からきてるらしいです。

風間俊は部室棟取り壊しに強く抗議するメンバーの一人
同じく抗議メンバーで生徒会長でもある水沼と仲が良く、
この二人が率先して行動することが多い。

上記の二人は抗議活動を経てお互い惹かれあいますが
実は生き別れになった兄妹だったことが判明し苦悩します。
俊がこの事実に最初気がつき海に伝えますが
その時「やすいメロドラマみたいだろ」って言うんですよね。
正直、僕は「たしかに…」と思ってしまいました。
まぁ当事者ですら思ったことだし許してくださいな。
でも昭和38年の人物が「やすいメロドラマ」という言い回しを使うのは変な感じ。

「古くなったから壊すと言うなら、
君達の頭こそ打ち砕け!
古いものを壊すことは
過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか?
人が生きて死んでいった記憶を
ないがしろにするということじゃないのか?
新しいものばかりに飛びついて
歴史を顧みない君達に未来などあるか!
少数者の意見を聞こうとしない君達に
民主主義を語る資格はない!!」

上のセリフは集会で風間くんが言った口上ですが
風間くんの名言だと思います。
先人たちがつくりあげてきた思想や伝統を
重んじてる風間くんの気持ちがこもったセリフだよね。

この作品は終始淡々としてる印象が強いので
人によっては退屈とバッサリ切り捨てるでしょう。
特に序盤から中盤はその傾向が強いと思います。
初めて海が部室棟を訪れたときに文化部の生徒が多数登場しますが
シーン的にはガヤガヤ喋ってて盛り上がってる風にはなってるんですが
実際は盛り上がってなく淡々としてるんです。
なんかキャラクターの一人芝居を見せられてる印象で
好き勝手やってるので喋ってる内容がスッと入ってきません。
序盤ということもあって世界観を把握してもいなかったので
若干置いてきぼりでした。
終盤も盛り上がりのようなものはありませんが
クライマックスに向けてこの作品らしい動き方をしてるので
結構良かったと思います。

終盤で海が風間に想いを伝えるシーンは良かった。

「わたし、わたしね…わたしが毎日毎日旗をあげて
お父さんを呼んでいたから
お父さんが自分の代わりに風間さんをおくってくれたんだと思うことにしたの」

「わたし…風間さんが好き!」

「血がつながっていても…例え兄妹でも…ずーっと好き…」

この告白シーンは風間視点でのカットになり、
海が自分より少しだけ背の高い風間を見上げながら
想いを伝えるシーンなんですよね。
挿入歌に「上を向いて歩こう」が使用されており、
まさに上を向いて風間の目を見てしっかり告白できた名シーンではないでしょうか。
ちなみに物語の舞台の1963年は「上を向いて歩こう」が日本をはじめ海外でもヒットし、
一大ムーブメントを巻き起こしていた時代でもあります。

そして最後の5分で語られる真実…
海と風間くんは兄妹ではありませんでした。
澤村、小野寺、立花という親友同士の男たちがいて、
海は澤村の子供です、風間俊は立花の子供らしいです。
唯一生きている小野寺から語られました。
ここからが少しややこしいのですが立花の死を切欠に
当時赤ん坊だった風間俊を海の父親である澤村が引き取り、
後に親交のあった風間家に手渡されたというお話です。
つまり血のつながりは全くない…素直に受け止めればそうなりますが
実際どうだったのか、本当のところは?という疑問がなくもありません。
というのも風間俊はどちらかというと立花よりも澤村に似てるような気がするんですよね。
海も澤村に似てることを認めるシーンがあります、しかもその後号泣。
海が何を想って泣いたのか考察してみても面白いかもしれません。
プラスな考え方もできるけどマイナスな考え方も出来てしまう作品でした。
しかし視聴後は清涼感のあるさっぱりした気持ちになれ後味は良いです。

海は亡くなった父親のために毎朝旗をあげ続けていましたが、
信号旗というのは専門知識なしではさっぱりな設定ですよね。
ちなみに海があげていた信号旗の意味は「航海の安全を祈る」です。
それに対して風間くんは信号旗で「ありがとう」と返事をしていたわけです。
おそらく風間くんが海に興味をもったのは信号旗が切欠。
海があげていた旗を父親の船の上から風間くんは見上げていたわけです。
今まで父親のために旗をあげていた海ですが
最後の旗は風間くんにあげたものだと思います。

「上を向いて歩こう」
幸せは雲の上に…
幸せは空の上に…
見えてくるのは澄み渡った空と君がくれた信号旗…

【B+78点】

投稿 : 2014/04/14
閲覧 : 270
サンキュー:

6

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