無毒蠍 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
「イヴの時間」という人間とアンドロイドが区別なく過ごすという謎ルールの喫茶店を通じてお互いの理解を深めていくヒューマンドロイドドラマ。
劇場版イヴの時間はオリジナルを再編集し追加シーンを加えたものらしいです。
ロボット、いわゆるアンドロイドと呼ばれる存在が実用化され、
人間に使役されている近未来っぽいお話。
この作品は主にサミィという人型女性アンドロイドを所持する
向坂リクオという少年と人型アンドロイドを所持しない
真崎マサカズという少年二人の視点、価値観から物語をながめていきます。
リクオはこの時代では一番多いタイプ?
他の人同様アンドロイドを便利な道具としてあつかってはいるが、
特にこれと言って酷いあつかいをしているわけでもない。
「道具」を大切に扱っているという感じ。
マサカズはこの時代では今時珍しいアンドロイドを所持していない家庭。
父親が倫理委員会の人間でロボットと人間の共存に異議を唱えている。
人型アンドロイドはいないが
テックスという名前の旧型アンドロイドは所持していて
かつては家族以上に信頼し良好な関係を築いていたが
父親が自分以上にロボットを信頼し頼るマサカズの姿を見て、
絶対喋るなという命令をテックスにしてそれ以来喋らなくなった…
その一件以来マサカズはロボットに対しドライな感情を抱くようになり、
人間とロボットが区別なく過ごしている「イヴの時間」の存在に
苛立ちながらも昔の自分を取り戻していく。
イヴという言葉の由来通りロボットだって「呼吸」してるし「生きてる」
それらをリクオとマサカズの視点から理解していく物語な気がしました。
サミィのマスターであるリクオはサミィの行動記録に不信感を抱き、
彼女がいったいどこで何をしてるのか調べることにします。
リクオとしてはマスターという立場上、命令にない行動をされるのは
不安でしかないんですよね、
この時のリクオからしたら「道具」というイメージが強いわけだし
勝手な行動をされると怖いわけです。
彼女の行動記録をたどって行きついたのが
「イヴの時間」という謎の喫茶店。
ナギという綺麗なお姉さんがウェイトレスをしているお店で
人間とロボット区別なく過ごすという奇妙なルールがあり
リクオとマサカズもそのルールにのっとり喫茶店で過ごしていくんです。
人間はもちろんアンドロイドもやってくる不思議なお店…
アンドロイドは頭の上にリングが存在し、
そのリングの有無によって人間との区別がつくらしいのですが
人間とかアンドロイドとかの認識をなくさせるための措置か
お店にやってくるアンドロイドはリングをしていないのです。
もうどこからどう見ても人間。現にリクオとマサカズも
全然見分けがつかなくなっていて人間だと思ったらアンドロイド、
アンドロイドだと思ったら人間みたいな状態で軽く混乱。
喫茶店ではリングはつけないという設定は物語的に重要な設定で、
人間とロボットの違いなど何もないに等しいという事なんだと思います。
そういった中で最初は「変」という思いが頭を埋め尽くしていたリクオですが
喫茶店で客と触れ合ううちにアンドロイドが人間のことを
理解してくれようとしてることに気がつきます。
その優しさに気がついたときリクオは思うのです。
まるで人間みたいだと…
二人は喫茶店で時に楽しく時には反目しあいながら過ごしていきます。
比較的リクオはアンドロイドに歩み寄る姿勢を見せますが、
マサカズのアンドロイドに関する感情は根が深く喫茶店に来ることもなくなります。
人とアンドロイドが楽しそうに会話して理解を深めている姿に
昔の自分とテックスを重ね合わせていたのでしょうか。
今思えばマサカズとテックスの関係性は理想的だったかもしれません。
マスターがアンドロイドに命令するのは当たり前ですが
テックスは幼いマサカズに助言したりお願いしたりしてました。
主従関係というよりは対等なパートナーという感じだったのですが
その関係を疎ましく思った父親がテックスから言葉を奪いました。
こういうのは本当に大切に思ってたからこそなんだろうね。
ペットが死んだらもう買いたくないみたいな感じなのかな…
それだったら僕も経験ある。
この物語のテーマはまだ序章にすぎません。
人がアンドロイドを本当の意味で理解できたとき、
「イヴの時間」のような区別ない時代がくるのかもね。
この作品で飲まれているコーヒー「イヴレンド」
イヴレンドとは「命あるものを混合」する、
共存の意味がこめられてたのかもしれません。
『Are you enjoying the time of EVE ?』
【B+78点】