「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟(アニメ映画)」

総合得点
61.8
感想・評価
61
棚に入れた
232
ランキング
5102
★★★★☆ 3.7 (61)
物語
3.5
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.6

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

彗星が出てこない彗星帝国篇

初日に映画館にて観賞、かなり微妙な気分になった。可も無く不可も無く中途半端で不完全燃焼だ。

オープニングの「宇宙戦艦ヤマト」のストリングスアレンジは良い感じだ。TVシリーズ本編のダイジェスト映像も一見の価値あり。しかし映画本編は捻った映像表現が多い割りに斬新さや感動が少ない。有っても無くてもどちらでも構わない番外編といえばそれまでなんでろうけど2時間近い映画なんだから単独でも映えるものが見たかった・・・

ヤマトがイスカンダルからの帰路に彗星帝国の艦隊と接触、ガミラス残存艦隊と共に戦闘に突入するというストーリー。彗星本体が出てこないので彗星帝国のあの圧倒的な強さと不気味なカッコよさが半減。しかもこの彗星帝国軍のモデルが古代中国になっているから驚く。これじゃスター・トレックのクリンゴンだよ。しかもサーべラー丞相って・・・諸葛孔明や曹操猛徳の肩書きじゃないか!!!  未登場のズォーダー大帝はさながら漢王朝の皇帝ですか。ちなみに前作の彗星帝国は明らかにアメリカだ。主力艦隊は第7艦隊でハルゼー提督とくる。都市帝国はニューヨーク軍港だ。小沢一郎が「日本のシーレーンは第7艦隊に頼りきりじゃいかんだろ」とコメントしていたっけ。


ヤマト艦内の雰囲気は相変わらず軽い。チャラチャラしたヤサ男と萌えキャラがノンビリやっている。まあ2199だし覚悟はしてたけど。今回の主役は桐生美影、ということで全編アイマス声のオンパレードと女体を舐めるようなフェチっぽいカメラワークの連続だ。こうなるだろうと覚悟はしていたけどいざ見せ付けられると「ヤマトにそんなもん求めてねーよ、そういうのが見たいんならギャルゲー原作アニメで間に合ってるよ」と糾弾したくなる。相変わらず女性キャラの増やし方と使い方が下品。

TV本編ではスター・トレックDS9とボイジャーのパクリが顕著だったが今回はスター・トレック劇場版1のパクリが目立つ。空洞惑星での戦闘や閉鎖空間のシーンはエンタープライズが機械生命体に捕われるシーンにそっくりだ。出渕監督、発想が安直だね。その後閉鎖空間を舞台にTVシリーズの「魔女はささやく」の続編が展開する。コミック「永遠のジュラ」やヤマトⅢのファンタム星や「さらば」のテレザート星や999のメーテルの実家のシーンを連想させる展開が続く。なんか松本零士の猿真似で痛々しい。ガンダムUCで福井晴敏が富野由悠季の猿真似していたのに似ている。またこの閉鎖空間から抜け出す為にヤマトとガミラスが協力するがこれもイマイチ盛り上がりに欠ける。現代的な博愛精神で何処がどうって訳じゃないが薄っぺらい。TV本編ではデスラーをヤリ玉に上げたが「真に倒すべきは独裁者と差別的な社会体制」という描写は40年前の「コン・バトラーV」「ダイモス」「ボルテス5」の3部作に敵わない。敵味方を超えた団結がとてもじゃないけとカタルシスが弱い。とにかく脚本が弱い。出渕裕という人、長浜忠夫、富野由悠季、押井守なんかの元を渡り歩いたけどこの人独自、この人ならでは、というカラーが全く無い。この人独自の魅力が無いわけだ。だったら前作のトレスに徹すればいいのだろうが結局どっちつかずの中途半端だ。

艦隊戦のシーンはGOOD。彗星帝国の艦隊は昔と変わらずかっこいい。メダルーザ級戦艦の火炎直撃砲とヤマト、ガミラスの連携プレーは素直に燃える。でもあのBGMが流れるとアンドロメダの姿が浮かんできて少し寂しいけど。彗星帝国の艦船は駆逐艦、高速中型空母、ミサイル艦、デスバテーター艦上攻撃機が登場。大型空母やスペース・サブや戦艦も登場して欲しかったけど。ヤマトの波動砲は塞がれている代わりにアルカディア号を思わせる戦い方を見せてくれる。「わが青春のアルカディア」みたいにアンカーを敵艦に打ち込む戦法はニヤリとさせられる。ここに来て古代の艦長代理も成長が感じられてとても良い。

地球残留組として土方艦長と斉藤始が登場、でも本編には関係なし。彗星帝国の本体は放置。アクエリアスの存在は仄めかされたまま。終わっても続けてもいいような幕切れでどーすんだか。

平原綾香の主題歌も微妙。まあ水樹奈々も微妙だったけど。宮川、羽田、阿久の3者が全員あの世なのが痛い。作品自体が時間切れだ。

西崎義展、石黒昇、芦田豊雄、小松原一男、市川崑、金田伊功、富山敬、仲村秀生、納谷悟朗、青野武、広川太一郎、小林修、永井一郎、寺島幹夫、曽我部和行etc・・・長いことゴタゴタやってる間にこれだけの関係者が寿命で亡くなった。結局実製作はかつての派閥闘争とは無関係の第三者で最終的に金を儲けるのは西崎二世。エンドロールの「著作権管理・西崎彰司」の文字にウンザリした。挙句の果てにアテツケよろしく(C)西崎義展とくる。もう西崎一家の名前は見たくないんだけど。一回版権問題をチャラにして松本にもやらせてみればいい。その上で客に判断させてそれでもダメなら諦めもつくしモヤモヤ感やコレジャナイ感も無くなるのに・・・


話は逸れるがヤマトやアニメに限らず近年の戦争映画は劣化が著しい。最新CGを使った「永遠の0」よりも昭和28年製作のモノクロ、ミニチュア特撮の「さらばラバウル」の方が迫力がある。「男たちの大和」よりも「連合艦隊」の方が映画として良質だし「山本五十六」に至っては役所広司版より大河内伝次郎版の方が面白いという有様だ。これらに共通しているのはナショナリズムやら愛国心の描写が右翼的とぶったたかれるので再現不能になってしまったのだろう。ヤマトは何所まで行っても戦艦大和なのでやはり再現不能。TV本編ではデスラーの愛国心も無ければヤマトクルーによる「決戦前の水杯」も無し。明治や昭和を思わせる描写はカット。ヤマトである意義が感じられない。むしろファンタジーながらも明治の精神論を再現した「進撃の巨人」の方が遥かに大和魂を感じる。「宇宙戦艦ヤマト」という作品そのものが時代の変化に対応不能なのだろう。


リメイクアニメでは「セーラームーンC」がアラサーの同窓会と開き直った作り方で潔い。

素直に良かったと思えることはプラモデル。ナスカ高速中型空母が2199規格でモデル化された。この調子でメダルーザやミサイル艦なんかもモデル化して欲しいものだ。映画の帰りに高速中型空母を買って帰った。プラモデルで松本ヤマトを脳内補完するとしよう。

投稿 : 2014/12/07
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サンキュー:

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