「純潔のマリア(TVアニメ動画)」

総合得点
70.5
感想・評価
864
棚に入れた
4485
ランキング
1501
★★★★☆ 3.7 (864)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

中世ヨーロッパとキリスト教の哲学入門。綺麗に纏まっている良作です

「もやしもん」で有名な石川雅之先生の漫画が原作。全12話。
中世ヨーロッパ、百年戦争中のフランスを舞台に、戦争が嫌いなので魔法で止めさせようとする魔女マリア(処女)が巻き起こすヒューマンドラマ。
かなりリアルな考証に基づく中世ヨーロッパの描写と、宗教を中心にした価値観の葛藤が見所です。
割とシモネタ上等な作風だったり、ラブコメ要素もあり、適度に明るい雰囲気も親しみ易い。

キリスト教(一神教)に縁が薄い人向けにも、分かり易く色々と考えさせてくれる内容。
全般に綺麗に纏まっている良作です。


{netabare}『物語』
かなりリアルに描写された中世ヨーロッパ世界とファンタジーが魅力です。
一見「戦争反対!なマリアが正義の味方、戦争黙認の教会(キリスト教)が悪!」かとも思える出だしと展開続きますが…。
教会、天上の神(本作は神や天使が実在する世界観)、戦争を嘆く人々、そして戦争を必要とする人々…それぞれの思惑が絡んでいき、一筋縄ではいかない物語になっていきます。
本作の魅力は「基本的に絶対悪は誰も居ない」事かも。
神・天使「天上は人間界の営みを見守るのみ、戦争も人の営みならば介入は許されない」
マリア「私は戦争が嫌い。目の前の戦争は断固阻止する!」
実際、マリアと親しい村人たちの心情の方に共感し易いので、マリアの方が正義に思えるが…

ここで傭兵ガルファ(アニメのオリキャラ)初め、戦争が無いと困る人々の生き様も活き活きと描かれる。
彼らの視点だと、マリアは余計な邪魔者になってしまう。
…昔の価値観を現代の価値観で計ってはなりません。
戦争は無条件に絶対悪!では実際に無い時代もあったワケですので…。

マリアが戦争を一時的に止める→延々と決着つかない→かえって双方の犠牲が増える
であろう事が、現代の視聴者のメタ視点では分かってしまうだけに、無邪気にマリアを支持し難いのです。
ただし、人間個人の行いとしては、間違いなくマリアが善なのは確か。
うーむ、難しいですねぇ。
この矛盾や葛藤を、リアル中世や大迫力の魔法バトルも交えて、分かり易く物語が進んでいきます。
マリアの価値観は舞台となる中世から数百年は進んだ現代的価値観であり、中世価値観とは対立していく。
けれど心情的には現代人の視聴者はマリアを応援したくなる。
けれど中世のマリアに敵対する人々(と神・天使)の考え方も間違って無い事も分かる。
本作は物事を一面的ではなく多面的に、しかも双方に共感出来るように描かれているのが良いです。

※余談
「まおゆう魔王勇者」でも、人間と魔族の戦争が止まない構造的な理由が物語の土台になっており、純潔のマリアに興味が出た人(逆も然り)にも参考までにオススメです。
まおゆうの魔王の方法論が「経済」によって戦争の必要性を無くす
お話なのに対し、純潔のマリアは「価値観・哲学」の側面から切りこんでいるのでは。
その意味で両作品の根は共通しており(一神教と敵対している事も)、両方視聴(あるいは原作読む)事をオススメしたいです。

※余談2
日本の創作物はキリスト教(っぽい一神教)を悪者にする作品多いです。
現在放送中の「アルスラーン戦記」の「イアルダボード教」とか、あからさまに一神教は害悪!という扱い。
しかし…本作「純潔のマリア」は決してキリスト教を悪者にしているワケでは無い事は、本作を最後まで視聴した方ならばお分かり頂けるはず。
大事なのは、色々な価値観を、互いに全否定する事無く、色々と考えてみる事なのではないでしょうか。
(かくいう私は神社と八百万の神々が一番好き)


…さて本作の見所はもう一つ
「リアル中世」です。
人々の生活ぶりや、合戦の描写もリアルで、歴史や戦記が好きな人(私は戦記好き)にとっては非常に見応えありました。
例えば、「剣は切り裂くよりも、叩きつけたり押し潰す武器」とか「弓矢の運用法」とか「騎兵突撃のタイミングや用兵」等々。
漫画や小説やゲームにありがちなフィクションではなく、極力リアルな戦い方しているのは戦記的に素晴らしいです。
行軍に商人や娼婦も同行する等の補給や兵站、略奪シーン等々も、リアル描写で良い感じ。

※更に余談ですが
2014年秋アニメ「魔弾の王と戦姫(ヴァナディース)」のモデルの時代も純潔のマリアと近い「中世のフランス」です。
魔弾の王は合戦に異能用いるファンタジーですが、こちらも中々のリアリティーありました(弓軽視など)
戦記的に、純潔のマリアの方が、更に考証的に上手な印象です。(どっちも好き)


もうひとつの見所はマリアとジョセフの微笑ましいラブコメの波動を感じる!
この二人のラブコメは終始ほほえまーでした♪

シモネタ要素は言葉的にはキツめだけど、描写的にはエロ要素は少ないので、まあシリアスを和ませるのには良かったのでは。

私的に一番胸を打たれたシーンは、ぽっぽちゃんことエゼキエルちゃんが次第にマリアにデレていき、主であるミカエルに涙目で直訴するシーンです。
エゼキエルちゃん…ええ子になったなぁーかわいい!

オリキャラのベルナール神父の価値観の変容も見所でした。
マリアの影響で一気に数百年は先の思想に行きついてしまった!
(理神論という考え方みたいです。詳しくは知らんけど)
欧米の人々は、昔からこういう議論を活発にやってきて、その結果が現在の繁栄に繋がっているのだと思う。
純潔のマリアのような異端?な作品でもちゃんと評価してくれる人々も多い、その包容力の高さが彼らの偉大さです。
対して、思考停止している人々は…中々繁栄出来ないでしょうねぇ(おっと失言かな?)

…さてさて、かなり色々と余計な雑文になってしまいましたが。
総じて
中世と宗教と哲学の議論を分かり易く、かつ適度な娯楽性と後味の良さに纏めた良作です。
シモネタはあまり気にならないですw
ぽっぽちゃんことエゼキエルちゃんかわいい♪
と言ったところです。原作読者ですが、オリジナル要素も良かったと思います。
結論は悪く言うと御都合主義なんですが…あまり重くなり過ぎない娯楽作品としては正解なのでは。


『作画』
リアルな中世や魔法の描写がかなり良く、世界観に引き込んでくれる。
キャラデザも水準以上。
萌えるタイプではないかもだけど、マリアもエゼキエルもアンも可愛いです。

『声優』
マリアの金元寿子さんは、慣れるとハマリ役だったように思える。
気の強さとデレの落差を好演でした。
ル・メ伯爵の島田敏さんも燻し銀。
ジョセフの小野賢章さん、ガルファの小野友樹の小野コンビの熱演も良し。
ベルナールも櫻井孝宏さんも持ち味が光りました。

個人的にMVPは、ぽっぽちゃんの花澤香菜さんですね。
ミカエル様と天への忠誠と、マリアとの板挟みで苦しむ辛い胸のうちを存分に好演。
涙声はぐっと来ました。花澤さんマジ天使(の使い)!

※追記
とってなむさんのレビュー読んで、村娘のアンちゃんが加隈亜衣さんだと気付きました!
加隈亜衣さんといえばWIXOSSの小湊るう子のイメージです♪


『音楽』
OP「Philosophy of Dear World」がしっかりとテーマに沿っている。
ED「ailes」もしっとりと来る。
挿入歌やBGMも良く、音楽面でも安定して良いです。

『キャラ』
マリアは時代にそぐわない理想主義で、下手をすると視聴者から嫌われる恐れがありながらも、きちんと共感出来るキャラクターなのが上手いです。
マリアの周囲の理解者たちのお陰かも。
村人のアンと祖母の素朴な博愛が、マリアを悪者(だと視聴者に思わせない)し、仲間の魔女たちも気持ちの良い存在でした。
ジョセフは本当に好青年でした。終始ラブコメの波動を感じた!
使い魔も可愛いのが本作のほのぼの感に繋がった。

消えゆく古き者もまた、この世界の代表者の一人として存在感あったです。

オリキャラのガルファはエネルギッシュで応援したくなる男でした。
彼が根は悪い男じゃない描き方が、本作に深みを与えている。
娼婦さんも、強いw
ベルナール神父も、まさかの理神論にビックリ。

何気に伯爵が良い人なのも本作の後味良くしています。
キャラクターの描き方が基本性善説的なのが良い。

本作で一番好きなキャラは、ぽっぽちゃんことエゼキエルちゃんで決まりでしょう。
序盤は融通の効かない優等生、でも次第にデレて…
大好きになっていたマリアを命令とはいえ傷つけてしまう哀しみ、花澤さんの好演もあって、グッと胸打たれたです。
ぽっぽちゃん…ええ子や~!{/netabare}

投稿 : 2015/06/17
閲覧 : 463
サンキュー:

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