「アナと雪の女王(アニメ映画)」

総合得点
66.7
感想・評価
400
棚に入れた
2275
ランキング
2677
★★★★☆ 3.9 (400)
物語
3.5
作画
4.1
声優
3.8
音楽
4.3
キャラ
3.6

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ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ジョン・ラセター(ピクサー&ディズニー)と宮崎駿(スタジオジブリ) -後編-

2013年公開(日本での公開は2014年3月)。
監督はクリス・バック氏、ジェニファー・リー氏
製作総指揮はもちろんジョン・ラセター氏。

今更な説明は必要ない大ヒット作ですね。レリゴーレリゴー♪
さて、本作の評判をチラチラと覗いていくと、
ハンスの豹変ぶりに違和感をという方が結構いるみたいですね。
最近のディズニー映画は実は黒幕は・・・というサプライズを意識しているのでしょうかね。
でも伏線はいっぱいありましたよw
ハンスは王子といえでも13兄弟の末っ子で誰からも相手にされず孤独を抱えている。
ウェーゼルトン公爵の
「城が開かれたことによって悪巧みしている輩がたくさん訪れるだろう」的な台詞。
クリストフの「出会ってすぐに結婚?頭おかしいんじゃないの?」的な台詞。

あと、凍りついたアナを溶かすのは
クリストフのキスじゃなかったのが拍子抜けだったという意見もチラホラと。
あれは、アナが自分の命をも顧みずエルサを救おうとした真実の愛が氷を溶かしたのです。
劇中でも自分よりも相手を優先するのが愛云々みたいな台詞がありましたよね。

歌はよかったけどストーリーが・・・という意見も分からなくはないですけど、
ジョン・ラセター氏をはじめとする制作陣はその辺のこともよく理解していると思いますし、
最低限の伏線(情報)は提示しているんじゃないですかね。
検証した訳じゃないですけどw
それだけジョン・ラセター体制のディズニー映画は、
きっちりかっちり作り込んでいると思っているのでw 贔屓目かもしれませんけどw

でもさ、別にそんな伏線云々抜きにしても単純におもしろくね?
私にとってなんとかの賞を受賞したとか記録的な大ヒットで興行収入がこれだけあったとか
そんなのはどーでもよくて単純におもしろかったかどうか、それがすべてです。
で、私は本作はおもしろかったと思いますよ。

本作のアトラクションパート(映像的快楽)は、
もちろんエルサがノースマウンテンで氷の城を建てるシーンですね。
生まれて初めてありのままの自分を晒せるという解放感と同時に、
自分の殻に閉じこもってしまうという悲劇的なシーンでもある訳ですが、
「レット・イット・ゴー」が流れてあまりの幻想的な光景にただただ目を奪われました。
「これがディズニーのイルミネーションマジックだ!!」と言われているみたいでしたw

やはり、本作もクオリティが極めて高いと思います。
エンターテインメントとしての安定性が抜群です。

私は前回のレビューで後期宮崎駿ジブリ作品は
この安定性が些か欠いているのではないかと指摘しました。
では、子供から大人まで誰もが楽しめる安定性こそが至高なのかといえばそうではなく、
往年の宮崎駿ジブリ作品はそこに留まりません。
本作が素晴らしい作品なのは間違いないですし、
視聴後の満足感も充分に得られたのですが、往年の宮崎駿ジブリ作品と比べると
足りないものがあります。
それは何なのかというと、名作を、さらに超えた名作が持ち合わせているもの、
すなわち、裏テーマの設定です。

ここからは「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」のネタバレも含みます。
ご注意下さい。


{netabare}「魔女の宅急便」で何故最後黒猫ジジはニャーと鳴いたのか?(しゃべれなくなったのか)

映画評論家の町山智浩氏によれば、これはキキがトンボに恋をすることによって
少女から女に成長した為、女になったキキはもはや魔法を使うことができない、
つまり、ジジとしゃべることはもうできないということです。
ユーミンの「やさしさに包まれたら」の歌詞で
「小さい頃は神様がいて 不思議な夢をかなえてくれた」とありますが、
小さい頃「は」魔法が使えるということですね。
トンボを救いたい一心で箒で飛ぶことはできたが、あれは一時的なもの。
「やさしさに包まれたら」の歌詞だと
「おとなになっても 奇蹟はおこるよ」という箇所に該当するわけです。
ちなみにキキが熱でうなされるのは初潮のメタファーだそうです。

一方で、宮崎駿監督が言うには、
「ジジの声は元々キキ自身の声で、キキが成長したためジジの声が必要なくなった」ということです。
お人形さん遊びのような一人遊びだっということですね。

表面上はキキが見知らぬ街で様々な人に出会い、
様々な経験をして成長していく物語なのですが、
そこにはもっと生々しい少女の成長の要素が存在するというのが、
「魔女の宅急便」の裏テーマということですね。


「となりのトトロの都市伝説」

これはとても有名な都市伝説だと思います。
後半のサツキとメイの影がなく、すでにこの二人はこの世にいないのではないか?
だとすると、トトロは死神?
また、サツキとメイというのは、共に5月を表す名前であり、
実際に5月に起こったある事件との関連性があるのでは?
このような流言飛語が飛び交ったわけですが、
このことについては、ジブリの公式コメントでしっかりと否定しています。
とはいえ、元来林や森といった自然が備えている不気味さやおどろおどろしさというのは、
意識して描かれていたようですし、トトロがその象徴であるというのは、
コメントや書籍で明言されているようです。

しかし、結局のところ、
「この作品の裏テーマはこれだ!」なんて言っても、
宮崎駿監督はおそらくそれを否定するでしょうし、
そんなものは視聴者が勝手に想像しているに過ぎません。
それでも、「実はこれは何かのメタファーなのではないか?」
「実はこの描写にはこんな意味があるのではないか?」と
考えずにはいられない作りになっているのです。
ただ単に話が良く出来ているに留まらない、もう一歩先・・・
ここに宮崎駿監督の作家性が確かに存在するのだと思います。
まさに、エンターテインメントとしての安定性と
狂気を孕んだ宮崎駿監督の作家性とのバランスが絶妙なんですね。 
ディズニー作品は確かに素晴らしいですが、往年の宮崎駿ジブリ作品には
やはり及ばない・・・と話を結びたいところなんですけど、
この話、ここで終わりませんw

まだ未視聴なのですが、このレビューで書いてきた
「裏テーマの設定」すら取り込んだディズニー作品があるそうです。
それは、2016年公開の「ズートピア」です。
私の推測が正しければ、この作品は恐ろしい作品になっていると思います。
つまり、本作「アナと雪の女王」に何が足りないのかということを充分に理解した上で、
100年に1人の天才、宮崎駿監督の作家性を徹底的に分析し、
宮崎駿監督にしかできないような話作りの手法をも取り込んでいる可能性があるということです。
もし、そんなことが可能ならば、もう邦画は太刀打ちできないでしょうね。
近いうちに必ず視聴したいと思います。{/netabare}

投稿 : 2017/04/25
閲覧 : 369
サンキュー:

26

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