「冴えない彼女の育てかた(TVアニメ動画)」

総合得点
87.0
感想・評価
2866
棚に入れた
14872
ランキング
171
★★★★☆ 3.9 (2866)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ネタバレ

りょう さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

人生がバレるアニメ

■主人公について

・安芸倫也 私立豊ヶ崎学園学校の三大有名人の一人

この主人公をネガティブにとるかポジティブにとるかで、
その人の人生が明らかになる、極めてリトマス試験紙的アニメです。
なお、Fate / Stay Nightの主人公衛宮士郎はこれよりは
圧倒的に難易度が低い、リトマス試験紙的アニメです。

・能力について

{netabare} 朝5時起きの新聞配達含む2つのアルバイト掛け持ち(のち1つ追加)、
月に10万を超える高1としては高額な収入をおそらくほとんど二次元に投資、
得た情報を下記のごとき、高速で良質なレビューとしてブログにて提供、
「アニメなら最終回放映後24時間以内、ラノベなら発売三日以内、
 ゲームなら1週間以内ちゃんとネタバレ有り無しを分けて誰が見
 ても楽しく役に立つ情報を発信するのが俺の使命だ。」
https://twitter.com/charlesdoccoake/status/812571383771361280

結果、彼は大手ブロガーとしてその関連では著名なサイト運営者となっている。
http://elbowroom.web.fc2.com/2015/1/revue/saenai02.html

それにとどまらず、そのブログの影響力は、特に話題作でもなかった、
霞詩子「恋するメトロノーム」の人気に火を着け、
『前の作品だって、私の力で売れたわけじゃないし…』
『だって、恋するメトロノームが売れたのだって、倫理くんのおかげだし』
http://kimiua.lolipop.jp/saenai.htm
このシリーズをベストセラーにしてしまうほど(無論潜在力はあったにせよ)。

出版社より、同作家のインタビューを依頼されるようなこともある。
彼は高2にして、既に商業レベルに足を突っ込んでいるのである。

まとめれば、彼は自ら稼いだ金と自らの労力を、二次元分野の情報産業に、
真摯に投資し続け、結果多くのブログファンを獲得した努力家であり、
またその努力を価値と評価に結びつける能力をもしっかり持った人物である。
主人公が努力なしで強大な力を得て、異性キャラたちの尊敬を受けたわけではない。
彼が冒頭無理やり著名クリエイターを仲間に出来るのは、無論ベースとなる、
彼に対して存在していた恋愛感情もあるが、その一方でこういう背景もあるのだ。
ビジネス的にはこれを「巻き込む力」といい、人事評価上注目するポイントだ。
一方、信念と無関係に生きてきた人は、このような主人公を、あたかも、
ストーカー気質とか言いたくなるのだろうが、自分の人生への自己紹介だ。

企画書が当初極めて劣悪であったのは、そもそもその経験が全く無いから。
私だって30代はじめに生まれて初めて事業計画をつくった時はひどかった(笑)。

視野については、極めて狭い、というか三次元が全く見えていない。
これが40代を過ぎていれば、これを減点する評価もできようが、
16~7で真摯に二次元に打ち込み、その分野の大人を超える結果を出す、
「集中と選択」を苛烈に実行する彼を、誰が無能と呼べよう。
ガキが吼えてるというような感想を持つ方もおられるようだが、
私はむしろ、将来稀有なリーダーシップを持つ人物に成長すると確信できる。

なお、私はこの主人公、ちっとも好きではないし、共感もしない。
一方、評価は極めて高い、優秀な部下に接するような感覚だ。


・魅力について

非常に誤解されていると思われるが、彼は極めて魅力的である。
ひとつには、(アニメは高2からだが)高1にして既に著名ブログ管理人。
オタクであることを隠すどころか友人に布教して趣味にさせる始末。
オタクというのは、ステータス上ネガティブ以外のなんでもないのだが、
そこから全くダメージを受けないほどの「結果」を出しているということだ。
むしろ、布教は全校レベルで行ってきたことが明らかになっており、
『1年の学園祭でアニメ上映会を行った際は、学校から上映の許可を取る
 ために、毎日のように職員室に通い、教頭ともやりあって注目を集めた』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B4%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84%E5%BD%BC%E5%A5%B3%E3%81%AE

%E8%82%B2%E3%81%A6%E3%81%8B%E3%81%9F#.E4.B8.BB.E8.A6.81.E4.BA.BA.E7.89.A9

ただのオタクがこのような公的行動力や他人との積極的な関わりをするだろうか。
彼はオタクが持つ本来の悪習を全く持たない、行動様式が極めて非オタク的人物だ。
そしてこのような行動力の背景にあるのが、揺るぎない信念「二次元は素晴らしい」。
リアルな恋愛に疎い人にはわかりづらいかもしえないが、信念のある人間は魅力的だ。
その真摯さ、情熱、純粋さ、それが表出する行動力、表情、精神の強さ。
そして彼の場合結果まで数多く(上記)出している、彼が女性にモテないほうがおかしい。
ヒロイン達は主人公にときめくのが何故かわからない人は、逆説的であるが、
三次元で実際モテている「特にイケメンじゃない」人物の特徴をもう一度おさらいすべし。
どのような分野でも、信念を持ち情熱にあふれ、多少強引でも結果を出しているはず。
ギャルゲー好きの男がモテないなどというステレオタイプな人間には決して理解できない、
「信念をもって成し遂げるもの」の魅力が、主人公にはあふれている。
ちなみに、エロ同人作家やラノベ作家がギャルゲー好きに抵抗ないだろうこととは別の話だ。

その上、彼は、実は造形的にもイケメンに描かれている。そもそも作者は当初から、
この主人公を凡庸な学生が、○○をきっかけに大化けする系に描いていない。
例えば僕だけがいない街の主人公など登場当初は、冴えない感満載だったが、
物語の進展につれ、次第に能力も容姿も魅力を発揮していく、このタイプの作品は多い。
一方この作品は、主人公にはそのような成長フラグが基本的にほとんど無い。
ここまで述べてきた能力面もそうだが、普通に美形なのは理解できるだろう。
つまり、成長して化けるタイプではなく、当初から魅力的な人物としての設定。
無論、企画書?や、その他普通に成長する姿は描かれているが、当たり前の人間レベル。
結果この話は、主人公の成長という、ストーリー上の麻薬を潔く捨てている。

2話で加藤が、喫茶店の外の霞ヶ丘詩羽・澤村スペンサー英梨々を見て、
「それはともかく安芸くん」「安芸くんてさ、もしかして学校一の美少女と
 付き合ってたりする?」「それも二人も」と唐突に「思う」のは、
それが特段不可思議なことではない、と思えるような「設定上の」安芸倫也からだ。
これがブサメンやキモオタなら、このような発想は一瞬でも頭をよぎらないだろう。

逆に、この世にこんなハイスペックなヲタクはいない!という声があり、
ある程度は同意できるものの、中川翔子が男で彼女のお父さんに似た性格だったら、
わりとこういうタイプになっているように思え、さほど無理は感じない。

なお蛇足ではあるが、霞ヶ丘詩羽については、主人公は事実上の作家としての恩人であり、
それは上記販促についての恩だけでなく、彼女の執筆のモチベーションそのものだった。
私からすれば、好きにならない方がおかしいほどの環境であるし、澤村スペンサー英梨々は、
説明不要なほどに、幼少からの恋愛が作中で描かれている。魅力とは無関係に、
彼女たちが主人公に恋する動機は、ふんだんにあふれているのである。
加藤恵については、後述する淡い憧れが、実際の魅力に接し現実の「恋」へと転換した。
出会いのシーンの再現の頃、既に加藤恵は主人公に、明らかに恋愛感情がある。


■その他キャラクターについて

主要キャラの性格がテンプレすぎるなどという、理解しがたい声が散見されるが、
加藤恵のようなキャラを私は寡聞にして知らない。また、私には、この作品とは、
そもそもギャルゲーのパロディーであり、そこに異次元界のな異質物を突っ込むことで、
そのパロディーをより際立たせる目的をもって創作されていると見ている。
そのために、異質物以外のキャラクターは、必要以上にテンプレ化が合理的だ。
この点多くのレビュアーが、この設定が故意であることを見抜いてらっしゃる。
この二次元の真髄のような世界に、多少脚色はしたもののリアルな三次元を与え、
かつその三次元を「没個性」と設定した上でかつ、その異次元住民をヒロインにする。
なんという、巧妙かつ恐ろしい罠だろうか。なぜなら、この二次元において、
三次元的な存在は、それだけで極めて鮮烈な個性なのである、見事としか言えない。
案の定、三次元を元から対象としていない、主人公に似た性格の方以外は、
軒並みこの没個性ヒロインのファンとなっている。しかも、このヒロイン、
主人公が捨て去った成長物語を、密かに担っている、しかも「オタク界」尺度で!
当初当然の如く、ギャルゲーもラノベも無関心だった加藤恵は、それらに接し、
それらを楽しみ、そして主人公を励まし、スクリプトの勉強を始め、
あげく他の方がおっしゃる「推進力」にまでなった。この、果てしなく深い設定と、
限りなく密やかな媚薬に、多くの視聴者の心が反応したのだと私は思う。


■ストーリー上不自然と言われる点について

このストーリーの不自然な点ということで、のっけから加藤恵が主人公の家に来る点とか、
高校生が一緒にホテルで泊まっている点について批判が見られるが反論してみたい。
そもそも、加藤恵のような、地味な女子は、派手な男子に多少の羨望を抱いている。
世の中にある凡百の少女漫画がおうおうにしてそのようなストーリーであることが、
その事実を雄弁に物語っているだろう。たまたま、その目立ち方がオタク方向だっただけだ。
主人公は美形で行動力に富み、学校の教頭にも屈せず自らの意思を通し希望を実現する。
結果、千人以上いるであろう中で「三大有名人」である。確実に、憧れはあっただろう。
「オタク方向だからダメ」というのは、主人公がオタクの悪癖を持っていないことから、
否定の理由にはならない、無論「イメージで生理的に無理」ではなかったというご都合はあるが。
ましてや、同じクラスの三大有名人が三次元に興味が無い旨公言しているのは大きい。
同じクラスである、当然に、彼がそのようなことを大声で普段から述べていると思われる。
何について大きいか、それは「自分」や「他人」についての言い訳要素としてである。

そもそも、加藤は何故ほぼ初会話で喫茶店についていったのか、その後主人公の家に行ったのか。
あげく、主人公の家に泊まったりするのか。それがわからない人は、あまりに恋愛経験に乏しい。
あれは、憧れの男の子に誘われて嬉しいのである。まだ恋とはいえない、淡い憧れ。
それでも、自分のような地味なコが、全校レベルの有名人に誘われるという僥倖。
一方で、初めてまともに会話した男の子の家に行くのは、常識的な抵抗感がある。
それを、「安芸くんは二次元にしか興味がないから」と、自分に簡単に言い訳できるのだ。
女性というのは、常に行動に言い訳を求める生き物である。その点、実に都合がいい。

一方、高校生がホテル云々であるが、私は高校時代軽く30回以上ラブホテルに泊まっている。
相手はもちろん女子高生である。というか、私の高校の同級生では、私同様なのが多かった。
これをもって、ストーリーにダメ出しするのは、ちと、、、、、アレである。
なお、そもそもあのエピソードは、むしろ私が作戦として利用した「終電後の遠隔地」だ。
女性サイドに親からの単独宿泊を許される信用があり、そして主人公については、
むしろ女性の方が招き入れている状態で何が問題なのだろう。{/netabare}


■音楽について

エンディングの「カラフル。」をこの作品を通して計12回見たように思うのだが、
イントロとあの導入部のアニメが入ってきた瞬間に、心を打たれたような気分になったのが、
多分4回ほどある。この現象は、過去「君に届け」Season1初期にしか味わったことがなかった。
結果、同曲が収録されている沢井美空のアルバムを購入したほどである。
一方オープニングの「君色シグナル」は、2話目以降イントロから感激してしまう。

今シーズン2も視聴しているが、残念ながら今回は、そのような感動は曲には無い。

投稿 : 2021/06/16
閲覧 : 490
サンキュー:

6

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