「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
548
棚に入れた
2286
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (548)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

Fanatic さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

単品でも楽しめますが、ユーフォファンなら是非!

北宇治高等学校吹奏楽部所属の鎧塚みぞれと傘木希美が主人公です。
単体としても楽しめますが、原作は武田綾乃さんの「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏学部、波乱の第二楽章」。
つまり、「響け!ユーフォニアム(二期)」のスピンオフのような内容なので、TVシリーズ未見の場合は少し評価を割り引いて下さい。

製作はもちろん、京都アニメーション。
監督はシリーズ通して務められていた石原立也さんではなく、「けいおん」や「聲の形」の山田尚子さん。脚本も、同作でタッグを組んでいた吉田玲子さんです。

他人と関わることが苦手なみぞれ。そして、彼女が唯一拠り所にしている友人が、明るく天真爛漫な希美。
今期放送中の「安達としまむら」に少し雰囲気が似ていますが、あちらは心情描写をモノローグでどんどん開示していくのに対し、こちらは二人の関係性を、何気ない仕草や歩調、表情をフルに使って描き分けています。

手法の違いなのでどちらが良い悪いというわけではありませんが、アニメーションだけで表現する方が感性も必要としますし、スキル的にも高度なものが求められるでしょう。

二人がオーボエとフルートの合奏練習を始める直前、タイミングを合わせるために互いに二、三度目配せをするカットなんかは、本当に目を奪われます。
実写であれば、ディレクターが逐一指示をしなくても、カメラが無意識の仕草もすべてありのままを拾ってくれるでしょうが、アニメではそうはいきません。
何気ない所作、わずかな背景の動き、そのすべてにアニメーターの意思と拘りが込められています。この、細部に至る描写力は、まさに京アニクオリティ。

冒頭の朝練で二人が合奏したのは、コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の中の、オーボエとフルート掛け合いのソロパート。
その曲が、まるで自分たちのようだと無邪気に話す希美でしたが……。
やがて、コンクールや卒業後の進路を巡り、みぞれと希美が抱える葛藤や悩みが徐々に浮き彫りになっていきます。

希美に依存し、自分の演奏者としての可能性よりも希美と一緒に歩んでいくことを優先しようとするみぞれ。
一方、そんなみぞれを愛しく思いながらも、才能の差を感じて徐々に違和感を募らせていく希美。
そんな二人の小さなひっかかりが少しずつ大きくなり、やがて、決定的なすれ違いになろうとしていた時、みぞれは言葉にできない気持ちをオーボエの音に託します。
果たして、こんがらがった二人の気持ちが解きほぐされることはあるのか?

学生生活を共に過ごした友人と、卒業後も同じ人生を歩んでいけることの方がむしろ稀かもしれません。
青春ドラマでは、友人同士の繋がりが強調されることが多いですが、人と人との絆は手を固く握り合ってのみ得られるものではありません。
手を離し、肩を叩いてそれぞれの道へ送り出すことも、時には大切でしょう。

少女たちの若芽のような繊細な心と、そこから芽吹いていく芯の強さを、透明感溢れる映像で紡いだ珠玉の名作です。

投稿 : 2020/10/30
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サンキュー:

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