「パリピ孔明(TVアニメ動画)」

総合得点
80.4
感想・評価
548
棚に入れた
1758
ランキング
451
★★★★☆ 3.9 (548)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

クソアニメの魔女 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 2.5 作画 : 2.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

話自体はそれなりに良かったけど、この手の話だと他にも腐るほど類型があるから手放しの高評価とまでは行かなかったです。

9話まで観ました。

現代にタイムスリップした諸葛亮孔明が夢を諦めかけている歌手の卵、月見英子に軍師として手を貸し、彼女の夢を目指す上で壁となる数々の苦難に立ち向かい、乗り越えるというものです。
着想はなかなか良い作品なんですが、孔明と英子の活躍を見せる上での二人の描写の匙加減はかなり難しいのでは、と考えさせる一面があります。7話みたいに英子が目立ち過ぎると孔明の影が薄くなるし、序盤みたいに孔明の策を主体にすると英子が孔明におんぶに抱っこになってしまう。
そうならないためには二人の活躍のバランスが重要になるわけですが、この作品はどうにもそこが上手くないように思えますね。
正直、英子だけを主人公にして背後に孔明じゃない敏腕マネージャーを置く、の方が不自由なく英子を活躍させられそうなんですよね。作品全否定ですけど、英子が魅力的なキャラクターなので、孔明のブランドに頼らなくてもそれなりに良いストーリーにはなりそうではあります。
なまじ孔明を主役に据えたせいで英子を迂闊に失敗させられない空気になっていますし、それこそ英子が失敗、挫折なんてことになったら孔明sageになる。下手を打てば偉人を侮辱することになりかねないので、どうしてもできる展開が狭まります。今観てても、そうした懸念があって少々窮屈な視聴感がありますね。

良い点
サクセスストーリーとしては王道を突いているので観やすい。
主人公である英子が内面、外見共に可愛い。EDに出て来るミニキャラのもちっとした感じは特に良いと思いました。
序盤の孔明の策はなかなかに面白いですね。個人的には4話以降の話も3話の展開を上手く弄る形、つまり対バンみたいな形式でやれば最高だった。そうすれば孔明の策と英子の成長をバランス良く両立できたように思える。
主題歌は今期でも最高レベル。演出も含め、どちらかというとEDが好き。シナリオが進むのに比例して歌うキャラが増えるのが良いです。

悪い点
アニメーションはアベレージの高い今期の中では普通の部類。英子は表情の変化を含めて結構動かしてるけど、孔明や他のキャラに対してはあまり力を入れていない印象。
話が進むにつれて英子のマネージャーが孔明である必要が無くなる。特に7話は英子が自力で問題解決に奔走するというテーマ上、孔明の影が薄いので顕著に映った。
ストーリーが王道なのは良い点でもあるが、裏を返せば陳腐とも言えます。孔明という極上の素材を扱う割に、期待を超える展開は今のところ無いです。
上記に示したように、孔明という知名度の高い人物をマネージャーに据えたことによる弊害もあります。

良作と言えば良作なんですが、話が進むにつれて悪い点も目立ちかつ期待を超えない展開が続くので、見た目のインパクトの割に視聴者のツボを押さえただけの優等生的な作品といった印象が強いです。

8話
内容は英子とKABEの自分探し。英子は七海との出会いを、KABEは旧友との再会を経て自分に足りないものを見出していきます。特別悪くはないけど“パリピ孔明”で見たいものかというと……。
正直に言って話の出来は7話以降、そこらの凡作のアイドルアニメとあまり変わらないです。演出とかも別段優れていないのが祟り、画の魅せ方も微妙。良くも悪くもぶっ飛び具合は同じ音楽をテーマにしているヒーラー・ガールの方がそれらしいです。あっちの方が総合的な出来はどうあれ、シナリオの進行に比例してバイブスを上げていっているというか。
パリピ孔明は実際、ヒーラー・ガールよりウケているんでしょうが、見た目に反してちょっと丁寧過ぎるかな。ヒーラーみたいに理屈とかを多少無視して進めてもいいくらい。
観ていて内容には納得はいくけど7話以降テンションはアガらないですね。

9話
これまでの続きに加え、久遠七海の正体が明かされる回。Bパートは七海の過去回想がメインです。

孔明云々にかかわらず、この話はちょっとないです。今までで一番酷い回でした。

このBパートは一見美談なんですが、よくよく見てみると七海がサイコパスにしか見えない構成になっています。
七海が所属する事務所の社長唐沢は作中で敏腕ながら良い噂は聞かないと芳しくない評判なんですが、この話で彼は以前の失敗から反省し、ファンを喜ばせることに特化したビジネスプランにシフトしたと、大体こんな風なことを言っていました。
あくまで彼は所属歌手たちの個性をある程度潰してしまうのを承知しつつも、彼らを売り込むために尽力しているわけです。
ここまで聞くと彼のやり方が完全に正解とは言えないまでも、作中での悪評はそこまで正しくないことを裏付けています。
話の流れとしても、唐沢は七海たちAZALEAの能力を買っており、社長という立場上売り出したいとする多少の下心はあるだろうけど、あくまで彼女たちに足りていない売り出し方を提供しようとしているに過ぎません。それを断ったAZALEAがその後結局売れない沼に嵌ってしまったことが、彼女たちの能力不足を証明しています。
彼のスカウトに対しての七海はというと、最初は楽しく歌いたいから嫌だと言い張り、いざ自分たちの方針ではやっぱり売れないと知るや唐沢に泣きつき、彼のやり方が気に入らないとなったら辞めたいと英子に漏らす始末。もしかしたら意図しているのかもしれませんが、人間的にめちゃくちゃ醜いですよ彼女。
明言はしていませんが、要するに七海は自分らしいやり方を貫いたまま人気になりたいということですよね。自力で売れる実力も無いのにこれでは高望みも良いところで、ここが傲慢に見えて仕方ない。その上特に悪く見えない社長を遠回しに悪人呼ばわりまでするので、わたしとしては七海こそが邪悪に見えています。

悪人が悪人に見えず、魅せるキャラがサイコパスになってしまうという、よくある創作の悪例を見事に体現した回でした。

10話
英子とKABEがそれぞれの壁と決着をつける話。ちょっとありきたりではありましたが、9話よりは良かったです。七海属する事務所の計画も明らかになり、決戦前の重々しい雰囲気が立ち込めていました。

11話
英子たちvsAZALEAその1
孔明のフィッシング詐欺まがいの戦略ってそれ味方サイドのやり方としてどうなの、と思いました。俺ガイルの八幡も生徒会選挙で似たようなことしてましたけど、斜め下のやり方で戦うゆえにダーティな印象を持つ彼と比べるべくも無く、こちらはそういうのが無いので心象が悪いです。勝つために手段を選ばないのが勝負の世界の常ではありますが、もうちょい綺麗なものが見たいと言うのはわがままでしょうか。
良かった点を挙げると個人的には唐沢が七海たちの誇りに対してはリスペクトを持っているという点には痺れました。ファンのためには今更引き下がれないと言う七海の苦悩の描写も上手かったかな。
ラストの孔明の策略でアンチ化した客を英子の歌で黙らせようとする展開は普通に神でしかないですね。

次で最終回ですが、期待半分、不安半分といったところでしょうか。

12話
英子たちvsAZALEAその2
最終回です。予想通りですが、英子が自分の曲である“DREAMER”でアンチ化した観客を黙らせる展開。この展開は普通に良かったですね。
AZALEAが英子に感化されて自分の音楽を取り戻すのも熱い。唐沢についてもAZALEAの才能を見込んでプロデュースしているのが改めて分かりました。AZALEAの才能に唐沢の宣伝力、わたしの見解ですがどちらが欠けてもAZALEAが売れるのは難しかったと思っています。唐沢がプロデュースしなかったらAZALEAは埋もれたままでしょうし、AZALEAに抜きん出た才覚があったからこそ、唐沢はあれだけの人気になるに至った金の卵を見つけたわけです。いわゆる持ちつ持たれつという言葉がぴったりの関係性ですね。

序盤と終盤は普通に高評価でした。ただ、12話まで観た率直な意見として、ラッパーKABE太人があまり本筋に影響を与えていないのが気になりました。彼自身は良キャラなんですが、正直なところ英子のサクセスストーリーという観点では居なくても良いキャラでもあるんですよね。11話のラップは彼の見せ場でしたが、客をアンチ化させるだけなら他の手段はいくらでもあるからラッパーならではの仕事とは言い難かった。特にクライマックスで英子と一緒に歌うわけでもないのは首を傾げました。ほんとお前なんのためにおんねん。
後は自分探し編がアホみたいに長いのも肩透かしでした。結末まで観てから振り返るとアニオリらしいラッパーのシーンはほぼ削って良いまである。話の長さに比例して孔明の影が薄くなるのもあまり良くなかった。孔明がいてこそのパリピ孔明だと思うので、そこは譲れません。

総じて話は他のアイドル作品でもあるありきたりな展開であることを考えると中の上くらいの出来ですかね。程良く一般向けに軽い話になっていてかなり見やすいですが、タイトルから想像できるであろう渋谷でウェーイする孔明を期待すると確実に肩透かしを喰らいます。

投稿 : 2022/06/24
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サンキュー:

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