「現実主義勇者の王国再建記(TVアニメ動画)」

総合得点
69.1
感想・評価
288
棚に入れた
977
ランキング
1845
★★★★☆ 3.3 (288)
物語
3.3
作画
3.1
声優
3.4
音楽
3.2
キャラ
3.3

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

戦わない勇者が異世界で何を成すのか?...。

2021年 原作 どぜう丸(ラノベ) 制作 J.C.STAFF。1~2期 全24話。視聴済み。原作未読。異世界召喚・転生作品。

【まえがき】
本作を簡潔にレビューしている方々は凄いなぁ...と感心する。私はかなり手こずった...。
この物語は非常に多数のキャラが登場し、それらの背景・心理・意図など細かく説明したい!感がとても強く、それが面白みに直結していないのだ...。
でも、長編小説を読み終えた時の満足感的視点で観ると、優れた作品だと言える。

視聴を進めるにつれ、石ノ森章太郎著 漫画 日本経済入門、世界経済入門を彷彿とさせ、作中ではマキャベリ論、三国志 曹操論・兵法論などが用いられる。

例えば、絵画モナリザは観る者の視点によって様々な美観、解釈や謎・発見がある様に、本作は読み解く面白さを好む方向けだろう。

主人公最強!感は無く…エンタメ・ファンタジー要素他、テンションアップポイントは少なめですし...。

リアルと符合させた多数の描写を「なる程」と思うか「ウザっ!」と感じるか、それが視聴継続の分かれ目です。

家族・友人・仲間そして平和とは…。私達は何のため、誰のために生き、行動しているのか…。自己実現・共存・共生の意味を紐解くメッセージ性の強い作品です。少し目先を変えた作品をお探しの方にはお勧めです。

【本編・ストーリー展開など】
本編冒頭。育ての親である祖父が「わしが婆さんの所に逝けば、お前は1人になってしまう…。一也。家族をつくりなさい。その家族を何があっても守り抜きなさい。そうすれば必ず最後には良い人生だったと思えるだろう…」本作の根幹を成す導入です。

OPは登場するキャラ描写も良いし、楽曲の歌詞(歌唱 水瀬いのりさん)からも物語のテーマが垣間見えます。

舞台は異世界 超大陸ランディア内 エルフリーデン王国。グラン・ケイオス帝国に次ぐ人類国。
時代は魔物の出現により人類存亡の危機から共闘する中、主人公 相馬一也(ソーマ。大学入学前の18歳。地方公務員を目指していた。家族思いで爽やかな青年)が儀式により現代から突然召喚・転移される。

召喚理由が「戦争支援金の替わりの身の代金的役割」と聞かされ「借金のかたに娘を売るような真似をすると?!勇者なのに?」驚き、戸惑い、憤るソーマ…。
国王アルベルトと側近との会話からソーマが温厚、聡明な若者と描写されるが、いきなり富国強兵、国力強化、財政見直しを語っちゃうの?!…。

対して国王の情けなさっぷりが…。
実は2期ラストで、王妃アイシャが闇魔法の使い手で、この物語を着地させます...。全てはそこに至る布石なのです…。

国王、側近らと方策を議論した後、新たな国王に任命!?更に皇女リーシア・エルフリーデンとの婚約が発表され、ソーマ…はぁ!?
王国改革・再建物語が開幕します。

知らせを受け、憤慨するリーシアは、書類に埋もれ執務にゲンナリ中のソーマと対面する。ソーマは戦争支援金がいるならっと、国宝を売り払っており、リーシアさんお怒り!だが…ちゃんと分類し優先順位を付けている事に「あらっ…この人出来る人?」的好感を抱く。それにしても…先の事前会議…3日のレクチャーで王国が抱える問題を看破し、財務官僚級の頭脳・経験値を備えた18歳の青年かぁ…。すげ~設定だなぁ…と。^ ^;

・リーシア・アルフリーデン(前アルベルト王・妻エリシャ夫妻の娘。ソーマの婚約者。後の嫁。当初17歳。ソーマの心の支えであり、後の一夫多妻問題?のリーダー。陸軍大将ゲオルグ・カーマインに師事・尊敬している。氷魔法の使い手。剣豪)

この世界は、不思議な生き物たちの力と魔法が日常で、魔法で何でも出来ちゃうため、科学・技術力は発展していない。
ソーマも召喚時点で魔力を付与されており、後に物体を遠隔操作する闇属性魔法を発現する。ソウマは「リビング・ポルターガイスツ」と命名し、執務や戦闘における傀儡(くぐつ)利用など、独立した意識を持たせ、複数の物事を並行して行える多彩な固有スキルとして描写される。

前半は、王国の財務改革、産業改革(主に食物自給率を上げるための農業や1次産業)に取り組む物語で、王国の抱える第1の問題としてソーマが詳細を語る。
合間にリーシアが次第にソーマに好意抱きはじめ、様々な場面で表情豊かに、少し恥じらったり清らかに描かれ、肩の力を抜いてくれる。

改革が上手くはこばず、施策を進めるのに有能な人材が必要とするも、国民の識字率が低い事を知らされ「読み書きだけで人材の善し悪しが決まる訳では無いのに人口の7割りが採用試験を受けられないなんて!」とし、王国全土から広く人材を募集する。「才あれば用いる」と。
それは王国建国以来初の試みであり、ソーマに人を惹きつける魅力あるキャラだと表現される。そして本作で主要な役割を担うキャラ達の登場となる。採用式典の模様は宝珠放送(TV放送的魔法)により、国民に伝えられる。

・アイーシャ・ウドガルド(ソーマの護衛、軍事担当。ダークエルフ。風魔法の使い手。剣豪。後の第2正妃。熱く真っ直ぐな性格)
報奨の代わりにと、自分が住まう森の再生を願い出る。ソーマは間伐の知識を授ける。

・ジュナ・ドーマ(企画・広報・総務担当。ローレライの末裔。王国海軍隊長の側近。海軍特殊部隊リーダー。戦闘・諜報もすご腕。後の第1側妃。歌姫。水系統魔法の使い手。美貌。スタイル抜群)
スマホで日本の楽曲を聴かせると音として理解し、素晴らしい歌声を披露。国民の人気者となる。

・ポンチョ・パナコッタ(食料問題・農林担当。大食漢の人間族。世界中を食べ歩き、食に対する知識・探究心からソーマに大歓迎され、イシズカの氏を与えられる。後も食糧関連等で活躍する。彼が採用されるならと他の国民の原動力となる)

・ハクヤ・クオンミン(ソーマの参謀。宰相担当。人間族。知識量・知力・胆力を備えた軍師的役割。ソーマがポンチョを採用した事を高く評価し仕える事を決める。戦略・戦術に長け、様々な施策をソーマと共に推進する。ソーマのお目付け役でもある)

・トモエ・イヌイ(生物・運輸・医療・食等多方面で活躍。妖狼族の難民。あらゆる生き物の声を聴き、話せる特殊能力者。とても賢い。唯一魔族と会話した事から、最重要人物として前王夫妻の養子となり丁重な扱いを受ける。幼女系・獣人の特徴で耳と尾の動きが可愛い癒しキャラ。当初10歳)

魔物と魔族の違い、魔族に対し共闘する人類も必ずしも協調していないと語られる。トモエの能力は、魔族と意思疎通が可能なら人類が魔族と手を組む策謀をめぐらし、共闘路線が根底から覆る可能性をはらむ脅威で、人類・他種族間の差別と亀裂を産む最大の問題とされる。
トモエの立ち位置を巡るコミカルな描写と、リーシアがトモエを妹に出来る事を喜ぶシーンで和める。

日常描写。ソーマ、縫い物も出来るの?!
異性に頓着ないの?設定。

ポンチョが世界を周り各地の食材を集め、それを食糧不足を解消する施策として「王様のブリンチ放送」を通して説明される。
食べ慣れない食材を口にする各キャラのコミカルな描写と、人類がどの様に「食」を探求してきたか理解出来る工夫されたシーンに頷ける。味噌や醤油とされる調味料も、その作り方等の紹介から食文化への造詣表現が深い。でも、現代人はイナゴの佃煮を故郷の味として愛するかぁ…wスライムも食材か!ソーマ料理も出来の!?。女子力ハンパねぇ!


間話。
前王から引き続き優秀な宰相として尽くしてきたマルクスに代わり、ハクヤが後継となる。ハクヤの勧めで、リーシアと初デートするソーマだが、護衛役として女性のアイーシャが同行することに...。リーシアのふくれっ面...w
アイーシャも当初の女傑的凛々しさからイメチェン?し、がっかりダークエルフとなる描写も微笑ましい。ジュナを含めた此処で、女性陣から一夫多妻制の説明がされ、それは最大8人!?までと...。婚約者のリーシアが「正直面白くは無いけれど...」と言い「1週間に1度は独占できる」との心理描写にクスッと...。8人に囲まれるハーレムを想像するソーマ...。
「ダメなのです!絶対にダメなのです!」ハル!って...。なになに?

王国の軍事力(陸・海・空)の背景・それを司る獣人族と人間族の関係、近隣諸国との国交がハクヤにより示される。軍部内の不穏な動きがジュナ経営のカフェに居合わせた

・カエデ(禁軍 国王直轄軍所属の魔道士。妖狐族。後に禁軍 近衛騎士団参謀としてハルバードの上官になる)

・ハルバート(陸軍 特殊降下部隊長。人間族。カエデの幼なじみで後に恋仲に。ソーマへの非礼により父親にボコられ謝罪に来る。後に禁軍に転属)

の痴話喧嘩?により明かされる。
ソーマはハルバードに問う「もし内乱になった際、幼なじみであるカエデを敵として剣を向けられるのか?」そしてこの物語のテーマが語られる。「何を望み、それは何のため、誰のためなのか?」と...。地味目な描写だが本作を理解するのに大切なシーン。

後の物語で内乱の中心となる領主は、

・ゲオルグ・カーマイン(陸軍大将。ライオン顔の獣人族。前王アルベルトとは幼い頃から親友。歴戦の名将であり、リーシアに尊敬されている。ソーマが不正を理由に資産を没収し追放した貴族を匿い、結果、内乱の中心人物として悪役に。しかし、それには理由があった...ラストで明かされる)

・エクセル・ウォルター(海軍大将。蛟龍族。ジュナの上官。蒼の海姫の異名を持つ水系魔法の使い手。美貌の持ち主で若く見えるが500歳を超えている。子孫も多く男性経験豊富。ジュナを密偵としてソーマに送り込んだ強かな面もあるが、内乱時はソーマに仕え、総大将として活躍する)

・カストール・バルガス(空軍大将。赤い半竜人ドラゴニュート族。熱血漢で己の信念を曲げず、内乱ではソーマと敵対する。ワイバーン騎兵航空団を率いる。妻はエクセルの娘。)

「リビングポルターガイスツ」による傀儡、着ぐるみの旦那の能力紹介的に、ダンジョン探索シーンが描かれる。以後、着ぐるみ旦那は随所で登場・活躍する。(旦那は喋れない)

ソーマが文官に向けた激励は...(長いので割愛)。褒賞が5日の休日と城内の酒蔵の酒1本って...まんまブラックじゃね?労働基準作れよ...。で、湾岸都市開発計画がはじまる。

視察に出向いたソーマはルドウィン(王国 近衛騎士団長。古くから仕え、ソーマにとっても優秀な副官)から、進捗が思わしくないと聞かされる。それは近隣部族の者が、建設予定地に手をつけると海神様の祟があると恐れているからだと。調べから、それは地震による津波(天災・災害)だと解り、予定地を変更する。それは防災に優れた都市開発を目指し、合わせて国民への災害対策を示すものと描写される。

8話。カエデの指揮のもと流通網を築くための道路工事が進められる。食料をはじめ、物資の流通向上は、物の価格を安価・安定させる。しかし、アイーシャの部族が大規模な土砂災害により被害が発生したと知らせが入る。
ソーマは道路工事従事者を災害救助に向かわせる。災害救助は時間との戦い。立地による救助の難しさが仔細に描写されるが、ソーマはリビングポルターガイスツの能力を活かし、複数のネズミの傀儡を操り、救助に役立てる。
ソーマの語りは、人類が自らの都合で自然に手を出す事で、その反動がある事に対する警告だ。人間が快適に過ごす為の開発が環境バランスを崩していると告げており、ソーマ自身、災害対策に目が向いていなかったと悔やむ描写がズシンっと響く...。

三公がソーマに敵対するか否か...の視点に移り、王国内の意思統一が図られないのを反乱とみなし、三公鎮圧に踏み切る。
リーシアが師と仰ぎ、尊敬して仕えたカーマイン公に、断髪をもって相対する覚悟を示すシーンには胸が痛む。

この混乱に乗じ、隣国アミドニア皇国が仕掛けて...ついに戦争となる。

ここまでの流れは比較的良好と言えるが後半が...。

隣国アミドニア皇国と内乱による戦争描写が中心だがダレが目立つ。台詞に対し作画の手抜き感が残念...。本作は勇者が戦う物語では無い...にしてもだ。
カエデの獣人癒しっぽさが救いかなぁ...。通常シーンの描写は綺麗だが...。

1期の落とし所、2期への布石を想定し、諸々詰め込み過ぎで急ぎ、雑なのが残念...。

何とか物語が成立しているのは、リーシアを中心とするソーマへの信頼と仲間の絆、カーマイン公の本心、バルガス公の忠義心、実はそれを承知の上で討伐を決断したソーマの心理の描写だろう。

内乱終結シーンで、カーマイン公はソーマと戦闘せず、自ら隷属の首輪を付け降伏する。
カーマイン公の本心...内乱の動機が明かされる...。それは...見てね...。悪くない設定だ。
そして、12話(1期最終話)のラスト、アミドニア国民に、宝珠放送を通じて語りかけるソーマの台詞「歌を自由に歌える国が良い国だと思わないか?」何とか着陸させたかぁ...と...。2期に続く...。

【あとがき】
本来、論説や長編小説として描かれるであろう難解な内容を2期 24話で良く纏めたものだと感心は出来る。メーセージも理解出来る。良い作品だとも思うが...やはり、アニメ作品は「あ~面白かった!」と満足できるものを選びたい。2期レビューは諸氏にお任せする。はぁ...疲れた...。

投稿 : 2022/07/28
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