「SSSS.GRIDMAN(TVアニメ動画)」

総合得点
84.7
感想・評価
988
棚に入れた
3978
ランキング
274
★★★★☆ 3.8 (988)
物語
3.6
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

紙一重。それは、つまり、「心」の持ちよう一つだと言うことです。

私は、怪獣やロボットアニメは、あまり見ないのですが、この作品は面白かったです。
正直、巨大ロボット作品では、エヴァ以来に衝撃を受けた作品かもしれません。
と、言いつつ、怪獣やロボット、バトルは、どちらかと言うと二の次。
私は、闇落ちしたヒロインが心を開いていくと言う展開が非常に面白かったです。


■えげつない
{netabare}
怪獣の攻撃がこれ以上ないと言うぐらい、えげつないです。
多くの一般人が焼かれ、踏みつけられて、殺されます。
直接的な描写は無いものの、それが容易に想像できてしまうぐらいのえげつなさです。
特撮ものでは、よく怪獣が街中であばれていますが、こう言うことだったんですね。
とても怖いなと思いました。
{/netabare}


■「ビューティフル・ドリーマー」
{netabare}
桃色がかった紫色の髪で、この物語のキーとなるヒロインが「新条アカネ」です。
こういう髪の色で裏表があるキャラが出てくると身構えてしまいますね。
「ハピシュガ」の「松坂さとう」、「未来日記」の「我妻由乃」、
「citrus」の「水沢まつり」・・・。
内に秘めたどす黒いものを笑顔と可愛い声で隠す二面性は、かなり怖いです。
でも、こういうキャラって最終的には、憎めない終わり方をします。

アカネは、才色兼備、才貌両全、クラスで大人気の美人です。
この物語では、アカネが自分の夢をかなえられる理想の世界を作ろうとします。
はたしてこのビューティフル・ドリーマーはどんな世界を「夢・想」したのでしょう?
「ビューティフル・ドリーマー」って、はて?、どこかで聞いたなと思った方は鋭い。
この物語の世界観は、そんな既視感はあるものの非常に面白かったです。
{/netabare}


■入れ子(二重)構造
{netabare}
この作品が面白いところは、入れ子(二重)構造になっていたところです。

最終回のサブタイトルは、「覚醒」です。
表面的には、グリッドマンが本来の姿に覚醒する意味だと思います。
でも、最後に女子高生が目を覚ます実写のシーンで出てきます。
「覚醒」とは、目が覚めることなので、実際はこちらの意味でした。

この物語の舞台は、アカネが作り出した言わば夢の世界でした。
そのアカネが夢から覚めることが目的となってきました。
しかし、最後のシーンによりアカネ自身も夢の中の人物だったことが分かります。
怪獣がいる世界は、夢の中のさらに夢の中のお話だったと言うことになります。
つまり、入れ子(二重)構造となっていたと言うことです。

ちなみに、第1話のサブタイトルも同じく「覚・醒」です。
しかし、文字の間に「・」が入っています。
2話以降のサブタイトルにも「・」が入っています。
しかし、最終話だけ、「覚醒」となり、間に「・」入っていません。
これにより、夢の中の話か現実かを区別していたのだと思います。

「夢オチ」と言ってしまえば、身も蓋もないのですが・・・。
それでも、面白い脚本だったなと思いました。
{/netabare}


■「怪獣」とは何でしょう?
{netabare}
「獣」はいいとして、問題は、「怪」です。
「怪」とつくものは、怪獣の他には、妖怪、怪奇現象、怪異、怪物・・・。
これらのものは、実際に存在するわけではないものばかりです。
妖怪は実際にはいませんし、ただの自然現象なのに怪奇とつけてみたりします。
それらは、すべて人の「心」の弱さが生み出したものです。

この物語の「怪獣」もそんな人の「心」が生み出したものでした。
だからこの作品はとても面白いです。
ただの怪獣ものでは、ここまでは面白くないでしょう。

この物語は、最初からダークな雰囲気を漂わせて、ストーリーに引き込みます。
それは、人の「心」の弱い部分に触れてくるからです。
つまり、得体の知れないものへの恐怖心を掻き立てるのです。
そして、この世界観が明かされたとき、それが「うわぁ」と最高潮に達します。
自分が何者かも分からず、ここがどんなところかも分からず普通に生きている人々。
しかし、それがあることをきっかけに気づいていく。
王道ではありますが、とても面白い展開です。
こういう物語は好きです。

「怪」獣とは、人の「心」の弱い部分が生み出した人ならざるものである怪物です。
逆に言えば、正しい人の「心」を持ちさすれば、怪獣ではなくなります。
ですので、アカネが怪獣になったのも、アンチが怪獣でなくなったのもうなずけます。
{/netabare}


■紙一重
{netabare}
エヴァと使徒は、紙一重でした。
人の強い「心」の象徴がグリッドマンなら、人の弱い「心」の象徴が怪獣なら、
グリッドマンも怪獣も紙一重の存在です。
そして、人の善も悪も、幸も不幸も、ぜーんぶ、紙一重。
結局、もとは同じでどちらに転ぶかと言うだけのことです。

アカネが閉じこもった自分の世界も、アカネが夢見た外の世界も紙一重。
世界は1つなのに、そこに線引きをしてしまったのは、アカネ自身。
外の世界に飛び出すにも自分の気持ち1つ。
それをするかしないかによって、幸にも不幸にもなる紙一重さ。

アカネは、最後、自分の部屋のドアを開けました。
それは、自分の世界の象徴である部屋と外の世界とを隔てているドアです。
ドアを開ければ、それこそ内と外に境目は無いはずなのに・・・。
そこに一線を引いていたのは、アカネ自身です。
最後、その一線を越えるためにアカネは、「自分の意志」が必要だと言いました。
夢から覚めて現実に戻った瞬間です。
そう考えると、夢と現実もまた紙一重なのです。
夢から覚めるのも、夢を見続けるのも結局自分の意志なのですから・・・。

ただ、それを分かっていても、実際に実行に移すことは難しいです。
それが人の「心」です。
そんな人の「心」の弱さの象徴が怪獣なのです。

もし、自分の殻に閉じこもってしまって出てこられない人。
つまり、怪獣が自分の「心」に住んでいる人。
そんな怪獣をやっつけてくれるヒーローが現れたらどんなに心強いでしょう。
この物語では、それは、「友達」だと言います。
自分一人で考えるのではなく、だれかを必要とすればよいのだと言います。

もう一人のヒロイン「宝多六花」が最後にアカネに言いました。
「私たちを頼ってほしい、信じてほしい、そのための関係だから」と。

最後にアカネも気づきます。
「みんな私の友達」だと言うことに。

今、目の前にいる人、それを「友達」とみるか、「他人」とみるかは紙一重です。
それは、つまり、「心」の持ちよう一つだと言うことです。
だから、「信じて」みることをしてほしいのだとこの物語では言っています。
{/netabare}


■まとめ

子供向け怪獣ロボットアニメと見せかけておいて、重くてシリアスな物語でした。
私は、ロボットやバトル自体には、あまり興味は沸きませんでした。
しかし、この世界観と、このミステリー感は、とても面白かったです。

投稿 : 2022/07/20
閲覧 : 262
サンキュー:

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