「人間不信の冒険者たちが世界を救うようです(TVアニメ動画)」

総合得点
59.4
感想・評価
146
棚に入れた
498
ランキング
6125
★★★☆☆ 2.8 (146)
物語
2.6
作画
2.6
声優
3.0
音楽
2.9
キャラ
2.9

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.5 作画 : 2.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

なろう終わってなかった

『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』(にんげんふしんのぼうけんしゃたちがせかいをすくうようです)は、富士伸太による日本のライトノベル。『小説家になろう』にて2019年1月13日から連載。
2023年1月から3月までTOKYO MXほかで放送された(wikipedia)

昨今のアニメ化される「なろう」原作って大体似たり寄ったりですよね。男性向け女性向けの差はあれど、概ね無双、ハーレム、ざまあ、悪役令嬢、婚約破棄、溺愛などなどといった既視感ある要素がちりばめられているものがほとんどだったりします。ではこういうのを作者が本当に書きたいかというと必ずしもそういうわけではないのだと思います。

では何故そんなことになるのかというと、読んでもらわないことには始まらないからです。勿論なかには自分の書きたいことだけを書いてる人もいるでしょうが、注目を集めるためには流行りの要素を埋め込むのが手っ取り早いわけです。さらに書籍化にあたってはタイトルすら変更されることもあるようです。最初は暗喩などに基づく抽象的なタイトルをつけていたとしても、直喩どころか内容そのまんまのタイトルに書き替えられたりします。例えば『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』のような。(本作は元からこのタイトルのようですが。)

本作はよくある「なろう」もののように見えて一つ大きな特徴がありました。それは、登場人物のほとんどが「人間不信」となるに至るバックグラウンドがあるというテーマに沿っているのです。「なろう」のファンタジー系でこういうのってちょっと記憶にないですよね。探せばあるのかもしれませんが、大半は形成された世界観の中で無双、ハーレム、ざまあ……といった要素を消化するだけ。それどころかド直球なタイトルの世界が描かれるのは序盤だけで、それ以降は全然違う話になっていくということも多々あります。これは何故かというと、作者が面白い(売れる)と思った設定やシーンありきの作り方をしているからです。つまりタイトルに言い表されるテーマを軸として物語を形成しているのではなく、それはあくまで売りの一つでしかないわけなので出オチっぽくなっていったりするのだと思います。(だからその後の展開は全然違うものになりがちで「タイトル詐欺」などと呼ばれる作品も出てくるわけです)

本作のこの「人間不信」というのも、せいぜい仲間が集まるための取っ掛かりに過ぎないと思ってました。実際「サバイバーズ」の面々の人間不信への陥り方と言えば、追放、婚約破棄、冤罪、裏切りといった実にありがちなものばかりで、ようするにそれがやりたかっただけなのだろうと思ってました。

ところが視聴を進めていくと「サバイバーズ」の面々ばかりか敵役にも「人間不信」に至るバックグラウンドがちゃんと用意されていました。そればかりか、正ヒロインだと目されていたアイドルのアゲートにヒモ男がくっついているという衝撃展開。しかもこれを単なるNTRとして消費しているのではなくごく普通に一人の人間の人生として描いている、このような「なろう」ものは(男性向けとしては)かなり珍しいんじゃないかと思います。

終わってなかったのはこの作品そのものではなくこの作品をアニメ化になるまで支えた支持者、読者の方だと思います。正直、ファンタジーものとして観たらそれほど完成度の高い設定、物語ではないと感じます。アニメの作画も低品質ですし、一作品としてはお世辞にも出来の良い方とは言えないかもしれません。

ですが個人的に、このような作品であってもアニメ化にまでこぎつけることが出来たことそのものが評価されるべきなんじゃないかと思いました。
キャラも良いですよね。良家に産まれながら婚約破棄を受け出奔、ギャンブルにはまり煙(おそらく煙草)をふかしまくるほどにやさぐれたティアーナ。村人相手にめっちゃくちゃ良い顔振り撒いていたのに少女の狂言一つで完全に信用をなくし投獄された挙句大人の女にだだハマる元神官のゼム、そして何より我らがアイドルのアゲートちゃん。カジノで見た時には最初同一人物だとは思ってませんでした。何でこんな似たキャラ描写にしたんだろうと思ったらまさかの本人。リアルタイムでは一体どのようなリアクションが巻き起こったのでしょうね。というか完全にニックとニアミスしてる筈ですよね。男がいることがわかったらドルヲタとしての彼はどう振舞ったのでしょうか……むしろそこが見たかったような。
そんな主人公のニックは元カノであるクロディーヌに結果的に復讐を果たした形となりましたが、面白いのは彼女なんかよりモブ敵だと思われたレオンの方が色々ドラマがあって最後まで登場し続けたことですよね。いや、正直こんな引っ張るようなキャラだとは思いませんでした。(余談ですが、この人名前が「レオ」ンな割には虎系ですよね?w)
ただ、竜人族のカランのエピソードはちょっと矛盾がありますよね。過去に騙されたことはともかく途中まで楽しそうに食べ歩きしてたわけなんですからあんな暗い顔で後のサバイバーズの面々と卓を囲むことなんかなかったでしょうに。

全体を通して作品としてはあまり評価しづらい内容でしたが、このような作品がちゃんと世に出る土壌が残っているという点自体が高評価。

投稿 : 2023/11/27
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