「ゾイド ジェネシス(TVアニメ動画)」

総合得点
61.8
感想・評価
52
棚に入れた
323
ランキング
5109
★★★★☆ 3.6 (52)
物語
3.7
作画
3.3
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

平成以降では稀有な、大河戦記の傑作。酷評されがちだけど不朽の名作

ゾイドシリース第4弾で全50話。
高度な文明が滅んだ数千年後を舞台に、村の少年だった主人公が、侵略国家へのレジスタンスとして成長していく。

【良い点】
全50話の長編で、世界観やキャラの成長、戦略や兵站を軽視しない骨太な戦記を描き切った。
全編に渡り丁寧で誠実な脚本を積み上げていく完成度の高さ。
80年代ロボットアニメにはいくつかあるが、00年代の数十話規模でこのレベルの作品は殆ど無い。
(ガンダムのシードや00は作品としては素晴らしいんだけど、戦記としての完成度はイマイチ)

数千年前の高度文明が滅び素朴な生活している世界観を、序盤に主人公ルージの村の風俗や風習で描く。
主人公の旅立ちから、敵のディガルドに侵略された街々を見る事で、決意が固まる過程が丁寧。
特に前半12~14話ディガルドに支配される街での圧政エピソードが秀逸。
ルージが当初の旅の目的であるジェネレーター修理を一旦保留しディガルド討伐する方針を、故郷の村人に説明&謝罪しに行く21話みたいなエピソードも、本作らしい誠実さ。
普通のアニメではこういうエピソードは大抵省かれる。
他にもギダ藩復興を望むズーリの街の人々の厭戦と向き合い説得するなど、こういうエピソードを丁寧に積み上げていくのが実に誠実。
全編通しての誠実なエピソードの積み重ねが最後まで活きている。

ゾイドの燃料レッケルやネッケルを生むジェネレーター、ディガルドのバイオゾイドが強い理由などの設定も上手い。
序盤から終始丁寧に設定を開示していき飽きさせない。
話の流れとしては放浪しながらのレジスタンス活動で、80年代ロボットアニメに多かった作風。
ソラノヒトやディガルドの秘密など、縦軸も全編通して無駄が無い。
SFとして見ても、高度な古代文明を背景にして上位文明の関与などを少しずつ開示していき面白い。
(たぶん、機甲界ガリアンが前例か?)

敵のディガルドが無能ではなく、物量だけでなく戦略戦術全てで上手な強さを前半通して見せつけ、ディガルド討伐軍が烏合の衆で中々勝てない苦しい展開からの、成長していく主人公が引っ張っていき結束していく流れも良かった。
シリーズでも異端な戦略や兵站重視の作劇、最終決戦直前でも後方支援に回ったキャラたちが美味しい料理作る描写など。

主人公ルージ君の指導者としての成長ぶりも凄い。
逸材だけど、周囲の大人たちやミィの支え、各エピソードで積み上げた体験があり説得力がある。
憎しみで戦うのではない高潔な信念も、序盤から積み上げた経験がちゃんと活きている。
共に戦う仲間たちとの信頼関係も、長編を活かした説得力。
ディガルドも悪のボス・ジーン以外は軒並み有能だったり、無能な上位者ソラシティ幹部たちも彼女らなりに役目を全うするなど、捨てキャラがいない。

最終話のラスボス戦が素晴らしい盛り上がり、シリーズ最高傑作。
敵対してきたディガルド軍人含めて出逢ってきた仲間たち全員の総力戦、圧倒的な力に蹂躙される絶望感からの願いの逆点劇。
尺が足りが詰め込んだ感はあれど見事な最終決戦だった。

キャラ萌え的にもオネショタなコトナさん、勝気な幼女姫ミィの二大ヒロインが可愛かった。
お転婆たけど要所でちゃんと姫様してるミィ、最終話手前の涙のシーンは最高だった。
コトナさんは伊藤静ヒロインで一番好き。

ファンからは女子ふたり差し置いてヒロインと呼ばれるザイリン少将はじめその他キャラも良し。
無駄キャラがおらず、キャラ描画が上手い。

作画はシリース最低なのは否めないものの、ミィとコトナさんはシリーズ随一の可愛さ。
作画崩壊は多いが要所の見せ場はちゃんと描けている。
作画評価は客観的には低評価なのを承知で贔屓目に4点。

楽曲はBGMがシリーズ最高峰。OP「夜鷹の夢」が名曲(ステルス戦闘機のパイロット視点の反戦歌な模様)、
萌えEDは賛否あるもふたりが可愛いので自分はアリ寄りのアリ。
声優陣はミィのこやまきみこ氏が最高だった。

【悪い点】
作画水準は残念ながらシリーズ最低。
制作体制が厳しかったらしく、作画崩壊が頻発。
自分は贔屓目に見ているからか、そんなに気にしないが。

賛否ある萌え電波ED。
シリーズ屈指のシリアス戦記からの、あのEDは確かに戸惑う。

終盤がやや駆け足。フェルミの退場はもう少し余韻が欲しかった。
最終話が物足りずせめてあと1話欲しかった。
…ドラマCDにて補完されている。

【総合評価】9~10点
不遇な不朽の名作。
00年代の最高傑作の一つだと、最近ゾイド公式チャンネルで再視聴して改めて再確認した。
アニメは作画よりも脚本やシリーズ構成が重要な好例だけど、
劣悪な制作環境でこの名作を生みだしてくれたのは奇跡的偉業。
評価はやや迷うが「最高」

【余談】
関連作品としては、1984年の高橋良輔監督の「機甲界ガリアン」の影響があるかなと。
侵略国家に故郷追われて放浪しながらレジスタンス、主人公の成長、上位文明の関与など。
ガリアンのヒムルカに当たるのがジェネシスのロンで、上位文明出身で正体隠して主人公たちに協力、次第に仲間として惹かれていく、終盤上位文明の上層部から罪に問われる等共通点が。
チュルルとミィも性格的に似ている気がしたり。

投稿 : 2024/05/23
閲覧 : 27
サンキュー:

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