退会済のユーザー さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

全てのファンタジーに言える事。

ごく普通の女子高生二人が、見知らぬ異世界に召喚され、国と国との戦乱に巻き込まれながらも奮闘する内容、と言えば確かにそうなんだけど、普通の異世界トリップものとはかなり違う趣向である。

異世界というのは可愛らしい小人の世界なのだけど、戦乱によってドロドロの状態。
そこで村の危機を救うために「魔人」として、何故か女子高生を召還してしまうわけだ。
ただエリとユコの女子高生二人は何の力も無い本当に普通の女子高生。
途中で何か能力が身についたりもしないし、世界のために何か出来るほどの人物でもない。
さっさと現実に戻りたい、異世界の戦争のことなんか分からない、と言った態度。

当然の如く話が全く噛み合わないわけですが、まぁ本来異世界に放り込まれたら、そういうリアクションが自然なのですよ、はい。
物語が進む中でその世界の住人のドラマが濃厚に幾重にも展開されるわけですが、結局主人公二人は外部の人間であり、そのドラマとは一定の距離を置いた存在として描かれる。
「魔人」として利用されるのを良しとするか、自分たちがどうするべきか、その過程における微妙な心の揺れがとてもよく表現されている。
世界観などには全く魅力を感じないし、主人公補正で何とかなる話でもないわけなんだけど
どのキャラクターも人物像がしっかりしているのか、やりとりを見てるだけでも面白いものである。

で、一番面白いのはファンタジーを否定しているところであろうと思う。
もちろん完全否定はしてないんだけど、私たちに何か出来ることあるの？と。
ただ無力の存在であればまだ良いんだけど、「魔人」として扱われることによってどんどん事態は悪化していくので（笑）主人公二人はフラストレーションが溜まっていく。

そしてヤケクソの最終回で爆発（笑）
彼女たち二人の現実世界における生活はほとんど明かされないのだけど、
作中における台詞全ては現実世界における不満であって、それを叫び倒すことで物語は終わる。
小人たちの世界の物語は完結せずに終わってしまいますが、それでいいと私は思います。
世にある全てのファンタジーに反発するような内容でもあるし、そこがまた魅力だと思うわけで。

話は少し重いしヤマ場に欠けますが、とても面白い作品です。
ファンタジーが好きな人にもファンタジーを敬遠している人も見て欲しい隠れた名作。