「ココロコネクト(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
4672
棚に入れた
22223
ランキング
117
★★★★☆ 3.9 (4672)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.7
キャラ
4.0

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ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

気づいた時には面白かったという話

原作のライトノベルは読んでいないが
おススメされたのもあって観てみたら
予想以上に魅入ってしまい
お気に入りの作品となった
人間の内面に切り込む痛切な学園ストーリー

■気づいた時には面白かったという話■
可愛い絵柄とは裏腹に
4つに分けたエピソードから繋げる構成や
心をエグるシリアスな展開は
先が重たくなると分かっていながらも惹かれてしまう。

見所の一つに引きの上手さがあり
次回予告からEDへの入り方は毎回見事。

特に4話から5話にかけての次回予告は
観た直後の話が薄れてしまう程
群を抜いた出来映えである。

●ヒトランダム(1~5話)
1話から掴みは良く
人格入れ替わりを活かした
ドラマティックな展開で完成度は高い。

最初 人格が入れ替わった時は
「ん?今は誰が誰?」状態となるが
すぐに慣れるとはいえ
アニメならではのエフェクトなり
入れ替わった表現が欲しい所。

5話で死を間際にした伊織が
稲葉と入れ替わり太一に

「あぁ 死にたくないなぁ・・・
 もっと 生きていたいなぁ・・・」
 
「太一が・・・好きだって言ってくれたのになぁ・・・」

涙を流し未練をこぼしてしまう場面は
声優さんの熱が入った演技力といい
作中で最も印象に残り胸を締めつける。

●キズランダム(6~10話)
理性に歯止めが効かなくなる欲望解放と
一難去ってまた一難の異常現象だが
人格入れ替わりの時とシリアス具合が違い
文研部メンバーでぶつかり合う重い展開だけれど
こちらも完成度は高い。

心の奥では太一に想いを抱き
同時に文研部5人の関係を壊したくない思いから
伊織と本音で向き合う稲葉に
思わず感情移入してしまう。

唯一気になるのは
太一が崖から落ちたと聞いた時
5話でふうせんかずらが
「善良な一般市民の方にそんなご迷惑を掛ける訳無いですよ」と
既に話している為
太一は無事なんだろうなぁ。って
分かってしまうのが勿体無いかな。

10話ラストで稲葉の想いを受け止めた上で
ハッキリ伊織の事が好きだと告げる太一は潔い。

キスした後 恥ずかしがる稲葉は
一気にヒロインの座へ躍り出て
今後3人の関係も気になる上手い締め方だ。

●カコランダム(11~13話)
3話で纏めてあるので展開が早く駆け足気味。

もう1話足されていたなら
完成度は高くなっていたのかもしれない。

時間退行を物語に活かせていたのは
過去の恋人と決別する青木の話であり
唯のトラウマを克服するには
心情が省かれている感があるので
空手のライバルである三橋さんとの
話はもう一歩踏み込んで欲しかったな。

ED曲「Salvage」が格好良く
今回のエピソードより印象に残るね。

●ミチランダム(14~17話)
重々しく不穏な空気で始まり
最後は綺麗に収まったものの
伊織が抱える心の闇は想像以上に深く
胸が苦しくなる展開だった。

なんだかんだで伊織と太一は
このままの関係を続けていくんだろうな。って観ていたが
感情伝導で気持ちを伝え合い
未熟な恋ではあったが本物の恋でもあった事を認め
お互いのココロを通じて別れる場面は
綺麗過ぎる気もするが悪くない締め方だ。

最後は稲葉を選ぶ展開に
そうくるか!と
良い意味で期待を裏切ってくれ
「俺達は回り道をし過ぎた」と
収まるべき所に収まり
最終回に相応しいハッピーエンドで幕を閉じた。

ED曲「I scream Chocolatl」は
伊織の心情を重ねる様に
エピソードとリンクしてダイレクトに響く。

各エピソード通して一貫しているのは
「自分とは何か?」を問いかけ
最終的にどんな自分であろうと
自分は自分である事を受け入れ
互いに認めながら成長していく。

テーマは「自我の確立」

どの作品にも成長は欠かせない要素だが
【誰もが1度は考える】事に焦点を当てている為
共感出来るかはそれぞれ違いがあるにしろ
覚えのある悩みが今作品の持つ魅力かもしれない。

■なかなか面白いキャラクター達■
登場人物が少ない事でメインキャラクター同士
1対1の組み合わせから内面を掘り下げ
人間関係を細かく描いていたのには驚いた。

●八重樫 太一
主人公にありがちの
ほぼ無条件でヒロイン二人に好かれていて
魅力が無い訳ではないけれど
稲葉が何故彼に想いを寄せる様になったのか
きっかけになった話が欲しいかな。

自己犠牲野郎と言われる通り
自らを犠牲にしてまで
誰かを助けたい気持ちは他人より強い為
稲葉曰くまさに優しい狂い方をしている。

正義感は時としてエゴにもなり得るが
彼の優しさに嘘は無いので
良く出来た男である。

●永瀬 伊織
親の離婚から周囲に合わせ
様々な顔を演じ分けた末
本来の自分を見失った彼女。

普段明るく振舞う
「偽りの永瀬 伊織」と「本当の永瀬 伊織」の間に挟まれ
誰も理解してくれていない事から心を閉ざす。

彼女が抱える心の闇は今作品の本質であり
終わってみれば彼女だけは変わっていない。

トラウマを克服した訳でも
心の闇を乗り越えた訳でもなく
「偽りの永瀬 伊織」も「本当の永瀬 伊織」も
【同じ永瀬 伊織】である事を受け入れ
リセットを選択しただけなのだ。

稲葉に感情移入していた人にとっては
好き嫌いが分かれるのかもしれないけれど
ヒロインとして充分な魅力が備わっている
もう一人の主人公ポジション。

●稲葉 姫子
同じくヒロインで序盤のツンは終盤のデレの布石。

文研部メンバーと出会うまでは
一人でやってきた事から
誰よりも文研部5人の仲を大事にしているのが
キズランダムにおいて伊織との衝突で表面化する。

人間不信の心の闇を抱え
他人とは最低限の距離をとっていたが
裏を返せば傷付くのを恐れる寂しがりや。

物語を通じて最も変わったのは彼女であり
デレばんに変化した時の破壊力は相当なモノで
彼女の魅力にやられた人は多いだろう。

●桐山 唯
男性恐怖症の重いトラウマを抱えるが
あっさりと解決してしまい
克服するまでの描写が少ないので
他二人の女性キャラが濃い為か存在感は薄い。

●青木 義文
終始 唯への恋心を隠さず
能天気で軽く見られがちな彼だが
「伊織ちゃんの身体と死ぬのは伊織ちゃんしかいない」と
口にしたりするなど
文研部の中では現実に正面から向き合えるリアリスト。

異常現象下に置かれてもブレない為
彼の明るさで緊張感が緩和される場面は多く
太一には出来ないやり方で文研部を救っている。

決して主役にはなれないが
欠かせない名脇役である。

■ふうせんかずら=作者?■
作品の評価を分けるであろう存在。

正体が最後まで明かされない事や
二番目の存在など
観ている側に丸投げしている部分が
賛否両論とされるけれど
正体は分からずとも
行動の意味が欲しかったかな。

異常現象を引き起こす理由として
「面白いから」だけでは決め手に欠け
彼?の目的や意図が伝わらない結末は惜しい。

気になっていたのは
ふうせんかずらの言いなりになっている所だ。

文研部メンバーは
何時終わるのか分からない異常現象を
毎回あっさりと受け入れ
現状を乗り切る話しかしていない。

いうなら ふうせんかずら自体を
どうにかしようと考えていないのである。

どうにかしてしまったら終わってしまうのだけれど
物理的な方法で状況を打破出来ないのは
2話で唯が簡単にあしらわれた事でも分かるが
会おうと思って会える存在でないにしろ
弱みを握られていたり
従わざるをえない決定的な状況でない限り
黙って従い続けるのは違和感が残るかな。

「皆さんがやるべき主題はそこじゃない」
「皆さんが思っているよりこちらには出来る事が多い」と

物語をコントロールする姿は
さながら作者の様な存在かもしれないね。

■あとがき■
気がついたら全17話を
あっという間に観終わってしまった。

重くシリアスなストーリーだったが
コメディ要素を合間に挟んでくるので
思ったよりは暗くならなかったね。

気になる所は残るものの
内容の濃さでカバー出来たかな。

贔屓にしている声優さんはいないのだけれど
稲葉 姫子役の沢城みゆきさんは
頭一つ抜けた演技力で作品の質を上げてたね。

音楽面も耳に馴染み
EDの4つとも良曲。

中でもヒトランダムED曲「ココロノカラ」が好きで
演出が長井龍雪と分かり更にお気に入り。

EDに流れた4曲全て
Team.ねこかん[猫]の
アルバム『FW:就職しました。』に
収録されているので
気に入った人は思い出して浸れるかも。

現在発売されているドラマCDは2枚あり
その内『ココロコネクト 夏と水着と暴風雨』は
短編2話が収録されており
文研部メンバーが
ふうせんかずらと出会う前の話なのだけど
日常系を思わせる楽しい雰囲気の中
所々に心の闇を覗かせる一面があったりと
アニメを観た人も楽しめる。

作品外での騒動が話題になっていたので
2期を期待したい所だけど難しいのかな。

OVAでもいいから続きが観たいね。

後日 ミチランダムまで原作を読んでみたが
当然原作の方が細かく描かれていて
省かれてたり違う箇所はあるものの
充分満足出来る作りのアニメ版。

PSPのゲーム版もプレイしたくなるなぁ。

深層心理を扱った学園物では名作アニメ

満足度 ★★★★★★★★★☆ (9)

投稿 : 2014/03/01
閲覧 : 430
サンキュー:

70

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