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「君たちはどう生きるか(アニメ映画)」

総合得点
69.1
感想・評価
55
棚に入れた
240
ランキング
1846
★★★★☆ 3.7 (55)
物語
3.3
作画
4.3
声優
3.4
音楽
3.8
キャラ
3.5

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君たちはどう生きるかの感想・評価はどうでしたか?

バジリコver1.5 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

一周目はアニメーションの凄さに圧倒し続けたい一作

時々、映画を楽しむのには教養や知識が必要と言われる
「映画が作られた歴史的背景」「監督の思想」「低予算で苦労したことを理解し工夫を楽しむ」など…

この映画を全力で味わうならジブリの過去作(駿作)をある程度は見るべきだと思われる

もちろん、シンプルに過去作オマージュ等が楽しめるのも一因であるが……(特にトトロの植物が育つおまじないの動きがそのまま出たのには驚いた。ジブリってこういうことしない印象でした)

というのも宮崎駿が今までいかに分かりやすくメッセージを込めてきたか?を考えると「この映画は理解されたくて作ってない」としか思えなかったからだ

意味深なシーンや理解不能な世界観で観客は置いてきぼりにされるが圧倒的なアニメーションにそんなことも考えることなく楽しめる

可愛いけど不気味さも備えるアオサギ、七人の小人的な年老いているが明朗に見えるお手伝いのお婆さん達、鳥特有のアホ面なのに包丁を構える怖さも備えるペリカン等

絵だけでなく中身もグッと興味を惹くパンチのあるキャラクターでそそられる

個人的に考察するよりも見たままを捉えたほうが楽しめる一作でした

投稿 : 2024/04/10
閲覧 : 22
サンキュー:

2

ネタバレ

ハニワピンコ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

俺はこうだけど、お前らはどう?

満を辞してやってきた巨匠の最新作で、当たりでもハズレでもなんでもいい、宮崎駿の最新作を映画館で見るという体験、しかも概要すらない全くの無情報でお出しされるという体験をしない訳にはいかないという事で、駆け込んだ映画館
本文は、いつもの全編を通じ見終わって自身の感想や思ったことを書き殴る類のものではなく、ストーリーの展開や映画を通じて体験したものや思ったことを含めて書き記す、記録的な側面を持ち記載しているため、文章の前後や段落として読みにくいものになっているかもしれません

最初の水色背景にトトロと一緒にSTUDIO GHIBLIのクレジットを見れただけでも満足ではあった。そして始まった本編は初っ端の戦争の描写から予想の内ではあった監督自身の半自伝的映画なのだろうと、初っ端から印象的な大火とそれに迫っていく緊迫感のある凄まじい演出を見せられた引き付けられたのちに挟まるタイトル。そして場面は一変して田舎の雰囲気。戦争を直接ではなく疎開先での戦争体験だろうかと思ったら、そんな中で現れる、ポスターにも描かれていたトリが登場し、最初はメインにそこまで絡んでくるとは思わず、何かの比喩や。印象的なシーンでの更なる印象付けの演出として見せてくるのかと思っていたこのトリが、中々の曲者で、この作品の印象を180度変えるものへと変貌させた

宮崎駿。歴を探ればあまりに長くなりすぎるのでジブリ(形式的にナウシカも含む)以降について語るが、初期から『風の谷のナウシカ』で見せた重厚なストーリーと自身の哲学を織り交ぜた圧倒的なスケールを持つ超大作として今でも語り継がれる名作であると異論はなく、そしてその後も『もののけ姫』などに代表される、自身の世界観の表し、随所で語られるエピソードから宮崎駿という人物は堅苦しく、ザ・昭和のおじいちゃんというイメージがあるかもしれない。しかし、最後にこの作品で見せてくれたように、やっぱり宮崎駿は子供の頃に読んだような作品にある、そして自作でも『天空の城ラピュタ』や『千と千尋の神隠し』に代表されるようにファンタジー風な冒険活劇と少年少女の物語が今でも好きなおじいちゃんなんだなと
よく語られている児童文学、しかし中身は入口で感じたものとはちょっと違う、ファンタジー世界を通しての成長、そこに自身が見つけてきた哲学と、現代に対するメッセージを多分に含んだ文学。それこそ本人がアニメーションを通じて発信して届けられる世界観であり、本人の最も魅せたいものでは無いかとやはり思う

本作に見られる「地獄」と呼ばれる世界で未知の生物や大人、そして自分と似た境遇あるいは見た目を持つキャラクターとの関わりは、自身の過去の監督作で見たような記憶を蘇らせる印象があった
そこの部分で、やはり宮崎駿という人間の今までを通しても尚、本作で見せてくれるこの世界観の描き方、冒険、成長、そして家族あるいは近しかった人との関係の前後での変化、それをファンタジーという世界を通して見たものを踏まえてラストに落とし切る構成、何回も見てきた上で尚本当に引退作と思われる本作でも見せてきたその意味はやはり、コレこそが宮崎駿ワールドの真髄であり、見せたかったもの、描きたかったもの、宮崎駿という人間はファンタジーと少年少女の冒険が好きなおじいちゃんなのだと改めて最後に教えてくれたなと

そして引退作でそれを見せてくれた意味。それを簡単に「勝手に気持ちよくなっているだけ」という言葉で言い切る現代、それも個人の(というか大衆のそういう風潮)感想として見るから別に勝手だが、自分はそれについて考えてこの作品にケジメをつけたい

作品の概要から監督自身などについて終始語って、結局本編の内容についての感想や全体的な作品の自分の作品としての評価は全く記せていないのでそろそろ入っていこうと思う
前半は疎開先の再婚相手の本拠に引っ越してきた主人公眞人、母を亡くし悲しく複雑な心境、そして印象的なピアノだけの劇伴で見せられるポスターのトリこと、アオサギ。ここまでのキャラ紹介や舞台紹介は結構退屈。まぁ事前情報が無くジャンルも物語の方向性も分からないままだから仕方ない。これもある意味映画体験の一つではあるかな
そしてこのアオサギが喋り、謎に迫るように強いてくる中での警戒心の高まりと、このトリをボスとして印象付ける見せ方、そして迫っていく中でアオサギはただの使いであり、物語はそのアオサギを使わした者に迫るために、「地獄」と呼ばれる場所に送られて行く事になる
「地獄」では最初は主人公と同じで全く何が起こっているのか分からず、説明もない状態に普通はイライラを感じるものなのだが、そこはやはり宮崎駿、そしてジブリの圧倒的なアニメーション力で魅入るように構成されており、ここはアニメーションで世界観を見せるパート(千と千尋なんかでも湯屋で働いてるパートが一番好き)だと解釈し、そして入る説明でやっと理解でき、わからなくても面白い、魅入ることが出来るアニメーションの作りというプロの技を体感できた
そして地獄を巡っていき黒幕と思われる人間の元へ向かう旅筋、アオサギは塔の一戦で、中々に面白いキャラとして好きになるように作られており、それと道を共にする中で関わって行くパートは、最初のアオサギのギャップとの差で魅力的であり、このキャラにハマれたおかげでこの映画をかなり楽しめた
途中囚われ喰われそうになる場面は子供が見たらトラウマになりそうなくらいではあるけれど、ここを子供が乗り越えるという描写で、主人公は大きな成長をしていると示している。そしてそれを見せる場面がナツコとの再会であり、ここの「お母さん」呼びに関しては色々言われており、急だと思うのは確かだと思う。でも、前述した成長を遂げているからこう変化するのは理解はできる範疇の内ではあると思う。でもやっぱり、いわゆるアニメアニメしている物ばかり見ている現代の我々はもっとドラマティックな展開を予想していただろうが、これこそが宮崎駿が描き出してきた、ファンタジー世界でのリアリスティックな人間の成長という反する二つを見せて強調させる見せ方なのではないだろうか
ドラマチックでドラスティックなキャラの変化はそれは作品としての見せ方によるもので、現実ではそんなもん。これをリアルに見せないでどう落としをつければいいのか、コレこそ宮崎駿本人がかねてより言ってきたアニメ文化(細かく言うなら深夜アニメ文化)への意見へのこれだけは曲げられない信条の現れであると思う
そして「地獄」での最終場面。ここの解釈は難しいが、大叔父様が作り上げた世界をその中のキャラクターが壊したのが原因で崩壊するという皮肉な展開に、主人公がなぜ清くないからとその提案を受けなかった理由が描かれていたのかなと思った。そしてこれを何に置き換えて考えるかもきっと自分が思っている事と同じなのだろう

内容についてはこんなところで、大体書きたいことも書けたかな。面白いか否かという簡単な答えでは中々言い表せないとても重厚な作品で、自分の中でこうやって宮崎駿作品や宮崎駿観に言いたい事言い切って一応文字として記すとこが出来て満足した

ここまで公開当時に見て書いたけれど、星での評価をしないという以上、出す意味に懐疑的な思いもありそのまま今の今まで経ってしまったが、21年ぶりのアカデミー賞『長編アニメ賞』受賞という出来事。それを踏まえて交わされた色々な意見や、公開当時に思った事を改めて書きたくなった

結局のところ、公開から様々な物議を醸したその一番の要因はやっぱりタイトルではないだろうか。日本では発表当時にその元となった(実際はタイトルだけ)書籍に関連した予想がなされて、その上でいざ公開されて見たら宮崎駿の生み出したファンタジー世界の冒険という180度違った展開に戸惑いがあったように思われる。対して北米では『The Boy and the Heron(少年とサギ)』というシンプルなタイトルと予告も公開して内容の開示も行いある程度構えた上で公開に至ったので映画評論サイトRotten Tomatoesなどの評価も上々で、公開週では首位になるなど好評ではあった

そしてそのタイトルから日本では変に考察された作品と個人的に認識している
近年急激に注目されるようになった、謎に権威を持っている風な無関係な人間の出す考えに賛同する風潮や、映画紹介系の出す解説動画。一時期話題になった漫画『鬱ごはん』の「映画(ジョーカー)の感想を自分で言語化せずに調べてその中で感性の近い意見を探す」という一コマ。その理由は言語化が面倒だからだそうで、今の時代大体何かしらコンテンツの供給を接種したら共有したくなるが、その為の言語化は面倒だから他人の意見を繋ぎ合わせた物を一応の自分の意見として発表する、そんな人々の支持を集めているのが上記の動画を出す人たちだと思っているが、一昔前は評論家がその役割を担っていたのが今は誰でも簡単に発表できる環境の整いと、一部の極端な見方から評論家自体の権威も無くなった現在、ファスト的に吸収する文化と噛み合ってしまった結果、第一にアクセスする情報元としてかなり幅を利かせてきていると思う。それが今作でも、公開前からタイトルからのポスターから監督本人からアレコレ妄想の域に入るレベルの意見がたくさん再生され、タイトルとポスター一枚だけというプロモーションを破壊するかのような、楽しみを楽しみと思っていない人が多いなと公開前から思っており、いざ公開されて見た後に上記の動画を自身感想の保管とするのではなくそのまま全て吸収し意見が固まっていくというハッキリ言ってつまらない見方をする人が多かった。それも一つの見方ではあるのは確かなのかもしれないが、少なくとも楽しもうとか何かを得ようと思って見ていない、ただの確認作業かの如き見方をする人が増えているかなと、そしてその人々が縋る解説がかなり支持を得ている現状、その被害を受けた作品がこれだと思う

なんでこんなことを思って書いたか、それは結局個人的にこの作品かなり好きで、それが今のコンテンツ消費文化によるこの作品の見られ方に不満を感じたからというのが一番の要因
でもまぁ賞レースの結果自体、自分は『Spider-Man Across The Spider Verse』の方が内容としてはマルチバースの部分での見せ方 そして何より前作の革新的なアニメーションのさらなる洗練という部分と本国での人気から2作目でクリフハンガーの続編ありきを踏まえても本命だったが、『君たちはどう生きるか』の受賞となった。まぁ実際作品自体の評価というよりは、アカデミー会員の宮崎駿リスペクトも踏まえて、“宮崎駿に賞を与えた”という見方は確かにあると思います

本人にとってはまだ意欲はあるらしいが一応年齢的にも最後の最後であろう宮崎駿の監督作品。そこで見せてくれたストーリーから見られた宮崎駿という人間の見せたかったもの。今までたくさんの名作を作り世に送り出して私たちを楽しませてくれた監督。その最後に、その人間の構成してきたものを楽しく伝えてくれるという、自分自身を曝け出す。そんな恥ずかしいし難しい事を最後の最後の集大成的にやり遂げ、多分満足したでしょう

ありがとよ。カントク

投稿 : 2024/03/14
閲覧 : 59
サンキュー:

7

ネタバレ

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

社会は複雑、人の心は尚更

2013年の引退宣言を撤回し、齢80代の宮﨑駿の新作ですが、年齢もあってかメインアニメーターを勤めないで、若手の手練たアニメーターを総結集させて作らせて駿監督は脚本と絵コンテを担当したみたいです。

なので、歴代の宮崎駿監督作品に比べると、作画のパワーは感じられず、冒頭の火災のシーン以外は凡庸なジブリの映画という感じにどうしてもなってしまいます。

しかも脚本もおそらく練ってはいなく、思ったことをそのまま書いている感じでどの作品よりも作品の「純粋」さは伝わってきますが、映画としての完成度は歴代の中でも低いと思われます。

しかし、現代社会の複雑さを描いてる「時代性」と「観察眼」は素晴らしく、「今」の時代の空気感(閉塞感や多様な人間の価値観など)はきちんと捉えられていると思います。

これは褒め言葉ではなく、それだけ日本社会は複雑で多様化し、個人と個人の隔たりが大きくなってしまっている事の表れだと思うので、芸術家として感性は賛同しますが、複雑な心境は変わりありません。

最も最大手の「スタジオジブリ」がこういった作品を作るとなると、世の中の混迷ぶりが浮き彫りになっている気がします。

投稿 : 2024/02/23
閲覧 : 124
サンキュー:

9

さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイトルなし

謎な演出の中に確かなメッセージ性がありました。
それが何のメタファーなのかは分かりません。
エンタメ作品ばかり作ってきた監督が、評価を受けて作りたいものを作れるようになった結果がこれだとするなら、あまりに闇が深い。そこに至った経緯やこの作品で伝えたいことをあれこれ想像するだけで楽しくなります。

投稿 : 2024/01/06
閲覧 : 57
サンキュー:

2

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

面白いと思えそうかどうかの雑な確率判断基準としては…

 すごく良かった……!とは思わなかったですが、まあ、良かったには良かったですし、まあ、人生の最後近くでこの作品作れたら、宮崎さんもまあまあ満足なんではないですかね、ぐらいの穏やかなきもち。
 
 良いと思えそうな人を確率的にざっくり考えると次のような感じかなあ。
 
(1)解釈できない話であっても、ストレスを感じない
(2)今までの宮崎駿作品をほぼ見ており、ナウシカ漫画版も読んでいる
(3)美術表現やアニメの作画表現にそれなり以上に興味がある
(4)芸術映画(ゴダールとか)も多少は見ている
 
 全て当てはまるような人は、概ね反応いいんじゃないですかね。
 特に、一点目は重要だと思っています。本作について「整合的な解釈」を頑張ってひねり出すのを楽しんでいる人も多いので、それはそれでまあ、いいのかなという気もするのですが、「整合的な解釈」の妥当性を担保するものは決して与えられるわけではないので、解釈の妥当性はみたいなのは、そこそこで楽しめるぐらいの鑑賞スタイルみたいなのを保てるかどうかというのは、本作の体験にかなり関わるかなと思っています。
 本作の整合的な解釈を立ち上げようとするのは、絶妙なところがあって、どうしても衒学的なむりやり感が大なり小なり出やすいタイプの「読み解き」系の文章を書かれしまう人もいると思います。
 一方で、「まあ、これは宮崎駿の個人史とそれなりに関わってる側面はなくはないだろうな」と思わざるを得ない部分の多い作品でもあるので、整合的な解釈をしてしまうことが衒学的だとも言い切れないところともあり、そこらへんの絶妙なさじ加減も、本作を語りたいと思う欲望を刺激するところなのかなと思います。
 いずれにせよ、宮崎さんには残りの人生、幸せにすごしてほしいな、というほわっとした気持ちになりました。日本一有名な「やめるめやる詐欺」も無事、また詐欺になることが確定したようですし…
 

投稿 : 2023/12/16
閲覧 : 94
サンキュー:

7

芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

無題

難解など芳しくない前評判を踏まえて見たが物語としてはわりと素直なものに感じられた。
ストーリーはあるし、アニメーションはよく動く。

ナウシカ漫画版の映画化と思えるような展開の部分があり、ナウシカファンとしては楽しかった。

【文学的モチーフ】
偶然か意図的かはわからないが、この作品、文学批評でよく扱われる題材がちょこちょこ顔を出すような気がする。例えば「我ヲ學ブ者ハ死ス」と書かれた、何を守っているのかよくわからないナンセンスな門はあたかも文学批評でよく出るカフカの「掟の門」のようだ。
そして幻想世界で母がヒロインになるというこれも文学批評家の大好きなオイディプス王的展開である。
「掟をやぶる」ということについては、後半他でもしきりに登場する文言である。これはまた、プロップの物語論で登場する、「禁則の違反」という物語において古来から定番とされている事柄である。
創作者の頭の中にうごめく物語の原初のスープをのぞいているかのようだった。

投稿 : 2023/12/13
閲覧 : 24
サンキュー:

1

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

宮崎駿氏の天命か、ジブリからの報奨か

冒頭、久しぶりのトトロの絵に、時代の流れを感じました。
そして、心なし、佇まいがしゃんとなる自分が可笑しく思えました。

10年ぶりを噛みしめるのは、捉えどころのない官能感です。
120分の長座ですが、満喫も堪能も、一期一会として欲張りました。

~  ~  ~

官能というと、何やら妖しげです。

言うなら、根源的な生命の営みに "ブルルッ" と震えてみたり、奇遇な縁に "カヘヘッ" と歓んでみたり。

五感の昂ぶりに浮き沈みする記憶の疼きだったり。
甘やかな陶酔感だったり、色さえ失う極致感だったり。

宮崎氏のペンタッチは、いつだって逞しい想像力と類を見ない表現力で踊っています。
彼の絵コンテは、どんな風にもファンタジーのフィルムに花と宝石をちりばめています。

2013年9月、氏は引退宣言をします。
でも、アニマを形にせずにはいられない職人でもあります。

その10年もの筆まめが本作品です。
ついに日の目に適うクオリティーに仕上げられたということでしょう。

その集大成という触れ込みです。
一見の価値、一考の余地が十二分にあるはずと、居ても立っても居られませんでした。

~  ~  ~

さて、感想です。

「アニメーションにはアニメーションで返したい。」
そう声に出るほどの強い思いに当てられました。

羨望に応えてくれたのは、底なしの想像へのアプローチでした。
憧憬に見てとれるのは、底ぬけの創作へのトリビュートでした。

ここまで求めてこれた・・。
ここから始めていければ・・。

その非凡さで、宮崎氏は地球儀を回していく。
のぼる朝日に刮目し、沈む夕日に目尻を細めるのです。

~  ~  ~

驚いたのは、時空の縛りに囚われないクリエイターとしての気迫と、一期一会にまみえる商才とのイニシアチブコンフリクトが見られたことです。

端的に申し上げれば、10年余の時計の巡りに問いかける宮崎氏のリアリズムに対して、なんの手間もかけない告知と番宣に工夫を入れた鈴木氏のスピリットの衝突です。

この話題性は巷を盛り上げましたね。
衆口一致の第一歩は、うまく踏み出しているように感じました。

とは言え、正直なところ、お二人の歩調に合わせるのは、かなりの骨折りでした。
でも、両者のバトンワークの "妙" は、胸に沁みこむような "種" にもなりました。

~  ~  ~

ストーリーを追うのなら、参考に足る本がいくつかあります。
ただ、私はそれらを読んでいないので、あからさまな情報弱者です。

君たちはどう生きるか?
この問いかけは、わたしは何のために生まれ、何を成し遂げるのか?に反射されます。

ナウシカ、シータ。
あなたたちは、どんな風に乗っていたのでしょう?

さつき、千尋、雫。
あなたたちの瞳には、何が映っていたのでしょう?

生と死、光と影。
大人と子ども、個人と社会。

その構造にうかがえるビジョンは、内心に矛盾を満たしながら、外界との衝突は否めないものです。
もしも、前後左右を見回すのなら、大地に居場所を定め、風に帆を立てねばならないでしょう。

目にそびえ立つ障壁を、どう乗り越えるか。
耳をざわめかせる喧噪と、どう折り合うのか。

主人公たちの気構えに心を寄せながら、愛を打つ試金石に自分を重ねるような小旅行でした。

~  ~  ~

主人公の少年・牧眞人は、宮崎駿氏の生き方をトレースしているようでもあるし、高畑勲氏の生きざまを映しているようにも感じます。

だから、既存の作品を手元に引き寄せながら、一つひとつの演出を論じるもよいでしょう。
あるいは、新境地と割り切って、いわく言い難い思惑やもと酔いしれるスタンスも良きです。

お二人が、畑を深くたがやし、丹念に水を蒔き、たわわに実らせてきた果実の結晶です。
次代につなぐリュックに詰め込んで、さぁ君たちの番だとエールを送っているようです。

~  ~  ~

鳥たちは不思議な存在です。

クリエイティビティに躍動し、自己と集団とをぐいぐいと主張しています。
生きるために蜜を求め、華やかな社交場や煌びやかな勲をずかずかと欲しています。

閉じられた門を開こうとし、高い空へと羽ばたこうともし、逸る気持ちにそれぞれのオープニングを飾ろうとしています。

ついにその塔は形を失せ、力を失ってしまいますが、それでもジブリのマジックを存分に受け取れとばかりのオーラを放ち続けるのでしょう。

鳥たちの羅針盤になり、置き土産となり、止まり木ともなるのならという祈りを、その残滓に潜ませてあるように感じました。



~  ~  ~

過去を省み、未来を鑑み、さて、今日のわたしはどのように過ごしていきましょうか。

斬新なインスピレーションにハミングを楽しんだり、軽やかなミームに囲まれて暮らしを彩ったり。


生きろ。
生きねば。
生きていく。


素晴らしいアニメーションには、素晴らしいアニメーターたちがお返しをしてほしい。

今は、ただそう願うばかりの私です。



おまけ
{netabare}
パンフレットを販売初日に買い求めました。

一読して・・・? 再読して・・・?? 

再々読して・・・???

アニメ本体にも勝る衝撃!!!


絵コンテから始まるという宮崎氏の "原石" なのか
マーケティングにかけるジブリの "新境地" なのか。

とにかく何かものすごい秘密を覗き見たようで、思わずのけぞりました。


今では、その報奨にすっかり畏まっています。
{/netabare}

投稿 : 2023/12/12
閲覧 : 245
サンキュー:

16

ネタバレ

nas さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:----

ジブリのトッピング全部載せみたいな感ある

久々に気合の入ったジブリ映画を見た感ある、トッピング全部載せみたいな。なんか見たことあるよう風景が結構出てくる。アニメーション的な面白さがかなりあって脚本も結構好きなんだけどめちゃくちゃ上手く雰囲気を出せてる「ゲド戦記」、「星を追う子ども」みたいな感じで好きな人はめちゃくちゃ好きなタイプじゃなかろうか。もう一回見たくなるような魅力がある。
タイトルはどういう意味だったんだろと思ったけど俺は好きにやった君たちはどうする的な意味が1番近い気がする

投稿 : 2023/11/18
閲覧 : 44
サンキュー:

2

overnao さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

率直につまらない

考察しないと面白くない系ですね。
エンタメ作品だと思って見に行くと痛い目に遭います。
しかし考察してみても、宮崎パイセンからの説教としか捉えられなかった。

投稿 : 2023/11/15
閲覧 : 105
サンキュー:

1

anikorepon さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

すごい良かったのだが……

すごい良かった。

冒頭から全力の作画を見せつけられて、これぞジブリといった感じ。
ただ、どうしても宮崎駿監督作品として見てしまうので、監督の顔がちらほら見えてしまうのが残念。

「我はアニメ界の王、宮崎駿なり!倒せる者はおらんのか!」
と、言った感じの印象が強くついてしまって、「子供の冒険活劇」という印象がどうしても弱く感じられた。

まあ、印象としてはすごく良かったんだけどね。
だけどね。が、ついてしまうのが残念。

投稿 : 2023/10/14
閲覧 : 43
サンキュー:

1

ネタバレ

メタルジャスティス さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

不思議な作品

面白いか面白く無いかで言ったら、つまらなくはないけどメチャクチャ面白いわけではない。
かといって駄作ではない。
何を見せられたのか?というのが率直な観測。
おそらく、宮崎監督自身の生き様を夢の様な世界観で描いた作品なのだろう。
ストーリーはシンプル。
唐突、と言うよりは不思議。
たぶん、考えるな、感じろといったところでしょうか。
月を指差すようなものだと。

昨今はやれ考察だ、やれ意味がどうだとこねくり回すのが当たり前になった感がありますが、おそらく、そうゆうのは下らないと監督は考えているような気がします。
個人的には、この作品から何かを得たという感覚はあまりありません。
さりとて駄作だつまらんとも思わない。

とりあえず、何が凄いってやはり作画が凄い!
序盤の後妻さんの作画など下手な俳優より素敵な演技をするし、
後半の紙のすだれの様な物がグルグル回っているシーンなど狂気とも言える。
冒頭の火事のシーンの新たな映像表現も凄い。
とはいえ、作画が豪勢故に逆に勿体無くさえ思う。

久石さんの音楽も新たな試みで作曲したそうで、あまり前に出ないシンプルに静かな曲が多い。曲調は久石節だけど、静か、そんな印象。

声優、いやさ俳優陣はいつものジブリセンスなので、悪いわけではないが、本職の声優版を観てみたい。

随所に監督の作品のオマージュらしきシーンが散りばめられて、これが最後の作品になるのだな…と感慨深いものを感じたが、次回作の制作に既に入っているとのこと。
なんやねん笑。

考察は無粋とは思うので監督に直接聞きたい。
終盤のトリの王様の迫るシーンはカリオストロ伯爵ですか?

投稿 : 2023/10/05
閲覧 : 99
サンキュー:

2

ネタバレ

メガマインド さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ジブリ王国崩壊

この作品に関しては正直評価することが難しい作品の一つといえるだろう

公開前は

予告も場面カットも情報も一切なしで、公開前日になっても情報一切なし

当日になってやっと情報がでるというのは前代未聞だ

宮崎駿いままで積み重ねてきた実績とネームバリューがあるから知名度は

ものすごくあるので、確実に人は来るが、ほかの作品で情報一切なしで遮断するのは

大きなリスクだと思う。

スタジオジブリは大きな賭けにでたといっていいだろう。

間違いなく歴史に残る一作だろう

公開前はいろんな妄想が止まらずものすごくわくわくさせてくれた。



そして公開されて一足先に劇場へ駆けつけた。

ちなみにIMAXで音響のいい中鑑賞させていただきました。







ストーリーを自分なりにざっくり説明すると

戦火を逃れた少年眞人は疎開し、亡くなった実のお母さんの妹である夏子と一緒に綺麗な家に住むこととなる。

アオサギという存在に出会い、夏子は消え、手がかりの大叔父の家である塔に向かうことに

夏子を探すために少年は異世界を旅する  



・・・・・という話だ。

間違っていたらすいません!!



最初は火垂るの墓のようなリアリズムの話かと思いきや、千と千尋のような異世界

を旅するファンタジーであった。

アオサギやその世界の登場人物たちと

協力しながら異世界を冒険していく話である

文章でストーリーを語るとわかりやすいのだが

しかし本編映像自体は非常に難解であった。抽象的な表現が多く、理解するのに時間がかかる

いや理解不能だ。だがそれが面白い。

一種のアート映画ともいえる

賛否別れるのは確実だろう。

勝手な解釈だが

でてくるモチーフ小道具生き物キャラ部隊すべてが様々な含みをもたせたいわばメタファーのようなものを感じさせるつくりであった



それは宮崎駿、鈴木敏夫、息子の宮崎吾郎、ジブリスタジオ、ジブリを支えてきたクリエイターたち

、そしてジブリ作品を観続けてきた私たちともとらえられる



物語の後半で13個で積み上げられた積み木がでてくるが

これは宮崎駿がいままで作ったアニメ映画の本数といえる





塔の存在はジブリスタジオ 大叔父の存在も宮崎駿自身だと思う

ジブリ自体もいまや宮崎駿を超えるような作り手がいない状態だ。

宮崎吾郎に関してもそうだが、失礼ながら才能を受け継ぐに足りうる才能

とは言い難い。監督も80歳を超え、長年の相棒、親友だった高畑勲監督も

先立たれてしまい、今度は自分の番かもしれない。

いつ死ぬか分からない思いに悩まされる

残されたジブリスタジオはどうなるのかとても心配だ。

衰退して、なくなるか、企業に買収されて別の会社になっているかもしれない。

それに数十年後数年後に自分の作品は誰の記憶からも忘れ去られる残っている可能性だって怪しい。

衰退の一途を垣間見えてしまう。

宮崎駿も自分がつくりだした世界ジブリというブランドに

大きな功罪を抱えていたのだろうと思える。



そう思った駿氏はこの映画で解答を示したのかもしれない。

この作品を世に送り出せたこと自体宮崎駿にとって

幸せであり奇跡であり希望であったことなんじゃないかな



最後に塔が崩れて異世界から解放されるのもジブリという長い夢から

覚めたともとらえられるし、眞人に掌に一つの積み木が託されたのも

これから巣立っていく若者、若いクリエイターに希望を託したとも思える



もうジブリなんてみてないでしっかり現実をみなさい



自分の人生を全うした老人が今度はジブリによって人生を壊された人たち(全人類すべて)に

自分の人生にしっかり向き合いなさいと言っているみたいだった



作り手としてあるいは人生の主役として我々は自分と向き合わなければいけないだろう





一種の嘆きそれとも喜びか

ジブリのようなアニメなんて作らないで、自分自身を表現した作品をつくりなさい

宮崎吾郎の息子の件もあり、

クリエイターや作り手に向けた遺言ともいえるメッセージかもしれない。

今後宮崎駿を超える才能はるか先、別のところで芽吹くかもしれない。



解釈は人それぞれだろう、それぞれがみて感じたことすべてだ。

この作品が面白いと感じる人もいればつまらないと感じる人もいる

つまらないという人がいても全然わかってないなとはいわない

少なくともこの作品はあらゆる意味で記憶に残る作品となった。

何年後かにはまた評価が変わるかもしれないがここでふせさせてもらう。

投稿 : 2023/09/27
閲覧 : 99
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7

ネタバレ

fuzzy さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6
物語 : 2.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

宮崎監督ファン向け

かなぁ
退屈でした。

冒頭から不思議な塔に乗り込むくらいまで期待をしたけど
あとは消化しないうちに場面や世界がぽんぽん変わる

ジブリ作品の見たことのあるような光景やキャラがぽんぽんでてくるが

今何やってんの?
って場面が次から次へと

っという印象でした。

自分の頭が偏見に満ちてんのかなと
評価をあげてるYouTube観ても
アートだよとか
いやとにかくあの歳でこれを作ったのは凄いとか
お年を召した方が作品作ったのはすごい的な話ばかり。。


アートならもっとすごい作品もあるしなぁ
なんとなく宮崎監督作品パレード
という感じでした

んー私には良さはわかりませんでした。残念

投稿 : 2023/09/22
閲覧 : 82
サンキュー:

5

ネタバレ

gafa1234 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 1.5 作画 : 5.0 声優 : 2.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

俺はどう生きたのか? 宮崎 駿の場合

『風立ちぬ』でカッコよく庵野秀明や視聴者へ未来を託したのに、引退撤回してまで何をしたかったのか? 

それは「老いのせい」と思う他にない。

原作への「スルー」は、鑑賞前から心の準備は出来ていたものの、序盤に主人公が「読んだだけ」で済ますあたりは清々しいほどのバッサリぶり。

「お題」は何でもよかったのだろう。原作は宮崎世代には数ある図書のワンオブゼムでしかないのだから。

作品全体を通して「アニメは子供向けに作るべき」と言いたげに、随所で唐突な形で不思議な絵を差し込んでいた。そのメッセージは良い。

しかし、これも後述する宮崎駿の「癖(へき)」を、アニメの力で正当化する建前で、説教しつつ本音の表出はショートカットする奇妙な前フリでしかない。

作中1番に伝えたかった「母親の死から少女への愛情転嫁」は一般に理解されない価値観を正当化するためのアニメ表現。自己の「癖」の肯定のために回収したシーンが多く、かなり強引と言わざるを得ない。

訂正できない一貫「性」の表出については、大人の観客が黙って映画館を後にしていった反応が全てを物語る。

アニメ業界こぼれ話の飲み屋で叫んでいた宮崎駿の「12才の女の子を本気に好〜」を、それを銀幕に曝け出すことに躊躇いがなくなったのも「老い」だろう。

どんな人間も例外なく老いれば短期記憶は弱くなり、目の前の辻褄合わせがテキトーになるが、巻き込まれたスタッフは大変だったのでは?

序盤の木の棒が異様に細かく粉々に割れるシーンなど、演出上そこまでやる意味あるのか? よく分からない作り込みがシニアの頑固さやワガママなのかもしれない。

そのおかげというとアレだが、過去作品のセルフオマージュの数々についても作り込みは強力で、作品内の絵の強度を上げている。

そうした力技の数々が、作品の狂気性を高めていた。
褒め言葉として狂ってると言おう。

引退を反故にしてシニアになった天才が「今できること」を追求するから、こうなるんだと思った。

一緒に見た自分の子供は「面白かった!」と素朴に言っていたが、少子高齢化時代をどう生きるのか?
宮崎駿の意図とすれ違ってると思うが、深刻である。

もののけ姫を最後に「ボーイミーツガール」は終わっていた。自分にも訪れるであろう老いを考えるのだった。

投稿 : 2023/09/18
閲覧 : 65
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3

kakelu さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9
物語 : 2.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

面白い、面白くない以前に難しすぎて理解しきれないのが本音。

宮崎駿監督の最新作ということで視聴。
面白い、面白くない以前に難しすぎて理解できない。
話にストーリー性が薄く、淡々と進んでいく印象があった。
例えば、『となりのトトロ』もストーリー性は薄いが、田舎での不思議体験ということで年齢問わず引き込まれるものがあるのに対して、今作は引かれる要素がなかった。
主人公も思春期かつ、家族もなかなかの複雑さが原因か、主人公が多くは語らず感情表現も乏しい。
そのため、画面映えがしない。
また、トトロには愛くるしいキャラがいるが、今作はキモイ鳥、キモイ鳥とキモイ鳥のオンパレード。
子供ならトラウマになるんじゃないかな…

情報なしという点は面白かったが、本当にそこぐらいだった。
はっきり言って面白くなかった。
タイトルも何をさして、どの部分を言ってるのか理解できなかった。
(おそらく、じっくり見たり、解説有りきだと深さが分かるのかも知れないが…)

総評として、難しくて面白くなかった。
世界観はジブリらしさがあったが、キモくて可愛くなかった。
魅力的なキャラも少なく、引き込まれなかった。
タイトルの伝えたい部分も気軽に見る程度では分からない難解さ。
前情報なしというのは面白かったが、裏目に出てる気がする。
値上がりしている映画館でわざわざ見る価値はないと思う。

投稿 : 2023/09/02
閲覧 : 98
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12

ネタバレ

ヲリノコトリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 2.5 状態:観終わった

「君たちはどう生きるかという本があるから読んで涙を流せ!」と宮崎おじいちゃんは言った

{netabare}
戦争時中、母ヒサコを火災で失った聡明な少年、マヒト。軍需工場の経営者である父親のショウイチはヒサコの妹、ナツコと再婚することになり、マヒトは不思議な塔の立つ母方の実家へ疎開することになった。


かなり面白かったです。
ストーリー全体の考察は後で書きますが、この映画で特に良かったのは「作画のこだわり」と「音」でした。次点で「ちりばめられた単品のアイデア」も良かったです。
タイトルからメッセージ性の強い作品かと思っていましたが、頭で考えながら見てもそこまで意味はなく、見ている画面と聞こえる音に集中して、次に起きる出来事に身を任せるのが楽しむコツだと思います。

※ちなみに個人的に最近、岡田俊夫のYouTubeにハマっていたので、岡田俊夫の語る宮崎駿像をイメージして考察してしまっているところがあります。



作画のこだわりはさすがでした。
庭に落ちる火の粉とか、重量に合わせて沈みこむ車とか、写実的なサギの仕草。からの、男の顔を飲み込んでサギに戻る描写。大きな魚の腹を捌いてグニュグニュと飛び出る内臓。
張り付く紙とか積み木とか爆発とか派手なもの以外にも、枚挙にいとまがありません。

さらに環境音が良かったです。DVDになったときにあの風の音とか調理場の低いボーっていう音とか入ってるんでしょうか。私の家のスピーカーはあの音を鳴らしてくれるんでしょうか。映画を久しぶりにみたので感動しすぎだったかもしれませんが、心地いい音でした。



さて、評価が割れてるとのことでしたが、低評価をつけている人は「シーンの意味やつながりを分かりやすく教えてほしい人」か「1つの強力なメッセージ性に収束するストーリーを期待していた人」かなぁと思います。

つまりこの作品はわかりやすい道筋がなく、1つの強力なメッセージに収束しません。つまり、ぶっちゃけストーリーが分かりにくいです。

「攻殻機動隊Ghost in the Shell」みたいなカッコいい不親切さです。ポニョもこの感じでした。ナウシカとかラピュタでやってた親切さを「もういいや」ってしたんだ思います。好きに描くから好きに見てねと(笑)


実は「千と千尋の神隠し」もこのくらい不親切なストーリーでしたが、千尋の場合はバカな子供のまま事故的に物語に巻き込まれて、流されるまま物語が進んでいくので、主人公と視聴者が同じ気持ちで「次になにが起きるんだ!?」と思えていてストーリーがすんなり入りました。
対して今回の主人公マヒトは聡明で、初めてみる不思議な現象に対してほとんどの視聴者より先に順応していて、状況を把握しながら自分の次の行動を決めているので、視聴者が置いていかれる可能性が高いです。

まあ、そういう作品なのでしゃーない。
ビール飲みながら金曜ロードショーで見てたら、私も確実にワケわからなくなってました。
途中でトイレ行ったら100パー置いていかれます(笑)


ーーーーーーーーーー

さて、思い出しながらストーリーの細かい考察に移ろうと思います。
まず最初に、この映画で宮崎駿監督が伝えたかったことを一言で表すと…

…という風に考察すると、良くないです。この作品は。

この作品は宮崎駿の描きたい無数のアイデアやアニメーションの集合体であり、ストーリーはそれを接着するためのごはんつぶでしかありません。

世界のつながり~とか、義母と息子の~とか、人が生まれるということは~とか、真の悪者などいない~とかいろいろメッセージはありますが、それらは星のようにちりばめられているだけで、全体をまとめて名前をつけることができません。だから製作陣はこの作品にタイトルをつけたり宣伝することを諦めたのかもしれません(深読み)。


ただ私が個人的に、宮崎駿監督から受け取ったメッセージは、「君たちはどう生きるか、という本があるから読め!そして涙を流せ!」ということです。

あの本はあのシーンで「登場しただけ」であり、内容も語られず、ホントに「シーンを無理やり挿入した」ことがバレバレです。あの本は別に「ぐりとぐら」でもいいはずです。
逆に言えばそれだけあのシーンは重要で、少年が涙を流すことが明らかに美徳的に描かれ、なにか心の変化があって少年は義母を助けにいくことを決めています。

よって宮崎駿監督は視聴者に、この本を読んで感動してほしいのではないでしょうか。おそらくこの映画で解決されない疑問はすべて、この本を読めば描いてあるのだと思います。「ひとつに収束する強力なメッセージ性」も、おそらく。

私も……まあ、うん。気が向いたら読むよ宮崎おじいちゃん。そのうち。たぶん。


ーーーーーーーーーー

さて、本当に一つ一つの考察に移ります。


とりあえず閃いて気持ち良かったのがひとつあるのでそれを書きます。

「我ヲ學ブ者ハ死ス」の墓に入り、キリコに助けられるシーン。キリコの武器はなんであんなものなのかわかりましたか?
短い鞭みたいなもので、先に火がついてました。
別にキリコが持つものは日本刀でも弓でも良かったですよね?
火の残像のアニメーションが描きたかったんだろうというのがひとつですが、キリコがあれを持っているのはなぜか。
もったいぶる意味もないので思い付いたことを書きますと、あれはタバコですよね。棒状で、先に火がついてて、煙の輪っかを作ってますから。

ではなぜあそこでタバコのメタファーを持っているのかって?
キリコがタバコ吸うからですよ。それだけです(笑)あとまあどっかの民族がタバコを魔除けにでも使うんじゃないですかね?しらんけど。

あそこの墓の主は結局謎のままでしたね。もしかしたら君たちはどう生きるかという本(以下、君どう生きる本)に出てくる存在かな?



次に「義母と、聡明だが反抗的な息子らへんの話」をまとめます。
とにかく最初はマヒトがいかに聡明な少年かが示されています。火の粉を見て瞬時に状況を把握し、回りに合わせて行動し、服を着替える冷静さ。

しかし、義母と会うシーンになると毅然と振る舞いながらも絶対に口をきかず、大人から見れば義母を受け入れられていないことはバレバレです。

対して義母の方は「頑張って」います。
後のシーンを踏まえてこの義母に対して「結局は義理の息子を愛せない義母」というレッテルを貼る人が一定数いそうですが、この義母にそのレッテルを貼ってしまったら、世の中のほぼすべての義母がそうなってしまうのでやめた方がいいです。
彼女はすべての義母が当然感じることを感じ、当然すべき行動をしています。
彼女以上を望む人はあまりに無垢過ぎます。

紙のシーンで「大嫌い」と言った言葉を、「つい本音が出た」ととるか「この場から逃がすために強い言葉を使った」ととるか分かれそうですが、私は後者だと思います。
本当に心の底から嫌いなら、紙に絡まって死ぬのをただ見ているべきです。

大嫌いではない。しかし、好ましい存在ではない。しかし好ましくない存在であろうと、蔑ろにしてはならないとわかっている。自分のお腹の息子と対等ではない。対等ではないが、対等に扱うべきであることを分かっている。「悪意」はあるが、現実の行動には一切反映させるつもりはない。自分にはこの子を息子として扱う義務がある。

実は夏子のこの考えが前提で、大伯父と少年の交渉が発生します。
夏子という義母の存在がなければ、マヒトではなくヒミに自分の跡を継がせてしまえばいいからです。有り体に言ってしまえば「夏子がいて現実世界は気まずくてマヒトの居場所はないから、こちらの世界の王になって暮らしてくれ」という交渉です。マヒトにとって「役割と居場所」という明確なメリットを提示した交渉なのです。

しかしマヒトは、7人の小人(婆)の1人の説得で夏子の見舞いに行ったり、君どう生きる本を読んだりしてだんだんと夏子を受け入れることにしたようです。

嫌いだけどそれを言ったらいけない人 → お父さんが好きだから守らないといけない人 → 新しいおかあさんと認識すべき人

とランクアップします。紙のシーンで「夏子おかあさん」と呼んだときには涙が出そうになりました。

でも「母を求める息子」に感動したのではありません。
あの場面で、「夏子おかあさんと呼ぶことによって、義理の親子関係の修復を図るべきだ」と判断した子供の聡明さと健気さに感動したのです。

つまりあのときの「大嫌い」も、「おかあさん」もどちらも本音ではないと私は思います。本音ではないのに言ったから美しいのです。

そして最終的に、マヒトは「義理の息子の自分が行方不明になり、夏子と生まれた子供だけが戻ってくる状況」が父親と夏子の間で火種になる可能性も考慮していたと思います。

マヒトの言った「自分は悪意があるから世界を任せられない」なんていうのは、理由にならないと思うからです。それっぽい理由を言っただけだとおもいます。そもそも大伯父は別に悪意のない清廉潔白な人物ではありません。
悪意の積み木を足してもあの世界はそのようになるだけでしょう。

マヒトは「義理の母とは気まずいが、お互い表面的には仲良くできるし、良い人だということもしっている。家族の調和を考えたときに、気まずくても自分が家族の一員として存在した方がいい」という判断のもと、現実世界に帰ったのだと思います。

そしてラストシーン。マヒトは1人で準備をし、下から呼ばれて出ると、しっかりと義母のそばで大切にされている義理の弟がいる。
扱いはちがう。ちがうが、大切にされていないわけではない。この距離感以上を求めるべきではないし、マヒト自身も望んでいるわけではない。
ハッピーエンドではない。バッドエンドでもない。ただ、現実があるだけ。という終わり方でした。



マヒトの悪意について

自分の頭を石で打つことの唐突さと、でも瞬時に理解できる感じが非常に面白いシーン。

普通男の子は「なんか殴られたけど、俺もやり返して一泡ふかせてやったぜ」というストーリーを持って家に帰るか、もしくは何もなかったことにするのが普通ですが、「相討ちではおおごとにならない。状況を一変させる怪我を負うべきだ」という判断。
さらに、大きな怪我を負いつつその理由を語らないという一連の行動で、自分のメンツを保ちつつ周囲の大人のほうから事の真相に気付くようにしています。

あのシーンはマヒトの聡明さと子供っぽさと悪意をきれいに一撃で表現する良いシーンでした。

・意味もなく気まずい学校にいかなくてすむ
・居住地を変えられる可能性がある
・父と義母の関係悪化の糸口にできる
・おおごとにして今後の攻撃を抑制する
などの狙いがあったと思います。


ーーーーーーーーーー

ここからは残っている疑問をメモ書きします。思い付いたらまた書くかも。
{netabare}
○サギと動物たちについて

・石の世界について

・インコの交渉とはなに?

・鳩じゃね?

・ヒミはなぜ跡継ぎになれなかった?
マヒトがすでに来ている=生まれるのが確定している=ヒミは外に出ないといけない。
で、マヒトの息子は来ていない。
{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2023/08/19
閲覧 : 84
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9

ネタバレ

祇園 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 2.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

タイトルなし

お母さん!!!

投稿 : 2023/08/15
閲覧 : 64
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4

ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

難解、というより開き直って世界観を表現?自分は好き。魔界戦記ディスガイア少し彷彿?

宮崎駿監督による124分の映画。同名の小説とは別内容で冒険ファンタジー系?
太平洋戦争中に坊ちゃんが、神隠し?に遭った叔母と、空襲で死んだけど生きてるかも?な母を探しに謎の塔の異世界に挑む…
※アキバ総研様より転載

【良い点】
独創的な世界観や雰囲気。まさにワンダーランド、予測不能で次はどうなるか終始目が離せず。
主人公の思考や言動も突拍子が無く、次はどう動くんだろう的な興味が持続した。

キャラの掘り下げやストーリーの説明を排する開き直り。
千と千尋をより深化させ、視聴者についてこれる奴だけ付いてこい!的な開き直りあり。
普通ならこれでは自己満足でついていけずつまらない!となりがちだけど、本作は不思議と面白かった。
主人公・眞人(まひと)が順応性凄まじく、ワンダーランドの怪異や唐突な新キャラとの交流に全く動じず超速理解するのでテンポが非常に良い。
視聴者も眞人の行動言動を見て(そういう世界観なんだな?)と受け入れ易かった気がする。
考えるな感じろ!がかなり上手い作品。

非常に難解だったり、戦争中で母が空襲で焼死するなどのハードな舞台な割には、良い意味で空想的で、不快感少なく見られる。
千と千尋などの宮崎駿作品にありがちな説教臭さをあまり感じないというか、思想はあるかもだけど難解で煙に巻かれる感じ故か気にならず。
反戦とか、親子関係とか、こうあるべき!的な明快な主張をあまり感じず。良くも悪くも幻想的な作風。
タイトル通り、どう感じるかを視聴者に丸投げしてくれている。

それでいて宮崎駿特有の死生観や世界観は存分に発揮、むしろ余計な思想臭排してより純粋に見せてくれている。
塔の異世界での生まれる前の魂?的な存在や、それを捕食する鳥、塔の世界の秩序や構築などなど、難解ではあるが何となくの死生観は伝わる。
あの異世界は生前の世界で、時間軸を遡って母や使用人老婆の若い姿と交流して成長する、その構図も良かった。

最初は敵対するが共闘していく鳥のキャラが面白かった。
火の能力者な少女が主人公の母であろう事は分かり易い、少女で母という宮崎駿監督の理想的ヒロイン。
他キャラクターは役割が分かり易く、主人公の理解力もあってか説明不要で印象に残った。

作画は流石で説明不要。

【悪い点】
難解というより、キャラやストーリーを説明する気が一切無いので、ついてこれない視聴者は置いてけぼり。
主人公の思考や行動が唐突だったり、超速理解過ぎたり、共感して見られるタイプではない。
主人公はひたすら脚本に突き動かされている。
交流要素や成長の成果も分かり辛いというか、度外視されている。視聴後、結局何が言いたかったのか分かり辛い。

主人公は、鳥に対してはともかく、大切な母との交流であまり感情が伝わってこないのは非常に物足りない。

良い点とも裏腹だけど、明快に思想やメッセージが伝わる分かり易い作品ではない。
この点もかなり好みが割れそう。

声優陣が素人。
作風には合っているので及第点だけど、本職に対する優位性は微妙。

【総合評価】7~6点
凄く面白かった…かは微妙だけど、開き直った不親切な作りでも魅力的に見せるパワーは流石。
自分の好みとしては、思想や説教臭がきつい千と千尋よりも好き。
良し悪しは別にして、好き。
エヴァ以来の視聴者(君たち)が勝手に考察したり評論してくれ!的なタイプ?評論家肌からは絶賛されそう。
こういう乱暴(良い意味)な作品が許されるのは極一部の実力者、宮崎駿監督は許されると思う。
評価は難しい、自分が無理解なのを承知でとても良い未満の「良い」

比較的近年のアニメとしては2021年の「Sonny Boy」とタイプが近いのかなと。
君たちは…はより開き直ってやりたい表現展開していた、君たち(視聴者)はどう生きる(視聴して感じる)か。

…本作の世界観見て、過去作だと「魔界戦記ディスガイア」11話のプリニーたちを思い出した。
マイナーだけど2006年の魔界戦記ディスガイアは結構良作。

投稿 : 2023/08/09
閲覧 : 90
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9

ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

考察は無力。エロスとタナトスについて感じればいいと思います。

 この作品、ネタバレ禁止、イメージ禁止でしたが、これは戦略というより苦肉の策でしょう。だって、紹介の仕様がないですこんな話。別に悪いというわけでは無いです。まあ、どういう意味かは見た人ならわかると思います。

 1回しか見てないです。それで思ったのはこの作品の考察はすべて役に立たないと思った方がいいです。解答を欲しがっては駄目です。自分で考えるから意味が出ると感じました。なので、これから書くのはたわごとだと思って下さい。

 さて、本作の1つ目にして最大のひっかかりポイントは、ここまで露骨なプライベートなストーリーが映画作品として許されるかどうかという問題です。
 少年が疎開する、父親が飛行機工場を経営しているというのは宮崎駿の子供時代そのままでであることから彼を投影している作品というのはわかります。

 が、あまりにも露骨に散りばめられたジブリ作品要素が沢山あります。王蟲の風防から始まって、トトロの森のトンネル、もののけのコダマ、ナウシカの菌糸、紅の豚の飛行機(船)の列とか庭園のガゼボ、最後の方のカリオストロなどです。多分全作品分あるのでしょう。それはデータベース的な楽しみとして私は嫌いですけどいいとします。が、 {netabare}13の積み木は駄目{/netabare}でしょう。自分の業績をたたえているだけ。本物は俺の作品しかない、と言っているように見えます。

 これは私小説ですらない何かなのではないか?と思ってしまいます。私小説は体験をそのまま描くにしても、少なくとも作品世界の登場人物として描く必要があると思うのです。
 が、本作のこの部分、過去作を連想させる要素は、ジブリ作品を見ていること、宮崎駿という人間を知っていることを強要しているように感じました。もし本作を視聴するのに、外面的な宮崎駿像を知っていないと読み取れないものがあるとすれば、まともな映画作品ではないと思います。
 本人が私小説と言っているわけではないですが、じゃあ、この部分について我々は何を見せられているんだ?という話です。

 これが「宮崎駿物語」とかいう題名で、露骨にそういう話だよと言われているなら分かりますが、本当にこれが劇場用アニメとして許されるのか?という疑問がわきました。

 そして、鳥ですね。どういう文脈でつかわれているか、というと、やはり目だと思います。なにを考えているかわからない不気味な目です。インコが顕著でしたが、インコ=大衆あるいはインコ=ジブリ社員とも見えました。あの塔はどう考えてもジブリを表現していると思います。

 本が沢山あった意味は何かです。ジブリがアーカイブ化したということでしょうか。アオサギは鈴木敏夫氏にしか見えません。少年と最後の老人は両方とも宮崎駿かなあと思いました。


 2つ目。継母と実母の描き方です。これはすごかったですね。テーマとしてはこちらの方が優れていましたが、これが宮崎駿の内面なのかは分かりません。
 冒頭の主人公が寝てしまったときの継母が見せた表情はぞっとしました。あの和洋折衷の屋敷の不思議な感じと描写の美しさ。7人の小人=老婆=妖精のようなイメージ。すべてが高レベルでした。

 夜の自分の知らない両親の顔。妊娠や寝顔や作りものの肉体など、継母から感じるエロスはものすごかったです。手塚のケモナーに対応するのは宮崎氏はロリコンだと思ってましたが、継母=近親相姦的な想いもあったのでしょうか?
 実母と同行した老婆についてです。{netabare}あの老婆が若返った姿などもひどくパワフルな描写でした。あのよぼよぼの老婆の昔を知る意味。実母についてはエロスというより、実母にも若くて可愛い時期があったという、人間の時間経過の不思議な感覚が良く描けていました。その母と胎盤のアナロジーである石室に入るのはエロいですけど。つまり、人間の生まれてから死ぬまでについて、特に家族の年齢について感じる不思議さ、エロさがイメージされました。{/netabare}

 この点をしっかり描けていたので、私小説的な不満が気にならなくなるわけではないですが、ここはさすがジブリという描写でした。もちろん冒頭の火災のシーンはすごかったですが、ちょっと風立ちぬの震災のシーンの焼き直しに感じました。


 3つめ。エロスとタナトス。海のイメージと弱肉強食的な生命の循環、昇天=成仏=生まれ変わりのイメージ。魚の解体と内臓。巨石の墓、地下世界という黄泉的な映像。船は言語的には女性のイメージでもあります。弱ったペリカンに対する視点の切り替えなども印象的でした。
 
 一つ一つの意味性を考察するより、こういったエロスとタナトスを象徴するイメージが見事に描かれていました。これは良かったですね。恐らく神話とか美術作品などから引用したと思われる映像が沢山ありました。私は全部ひろいきれませんでしたが、ここで見せた生死観は素晴らしかったです。

 不思議の国のアリスのようなワンダーランド的な冒険譚と、あの世を旅する神話のようなイメージが見事に融合していました。


 で、最後にタイトルですけど、これはまあ訳わからないですね。別に解説も聞く必要もないです。「君たちはどう生きるか」と宮崎駿が問いかけられて、ジブリを作る=映画に人生を捧げてきた。それが自分にとっての真実だったという話かな、と思っています。正解じゃなくて全然かまいません。

 多分もう1回見れば、それっぽい事を沢山かけると思いますが、やっぱり1回に留めて、上の2番目と3番目のポイントを感じてモヤモヤするのが大事かなと思います。ただ、うーん。もう1回…迷いどころですねえ…

 しかし、この作品は考察すればするほど意味性が出てきてしまい、その分作品を見た意味が希薄になる気がします。

 ただ、そうか。レビューを書いてて気が付きましたが「君たちはどう生きるか」は、「君たちは」ですから人から答えを貰うんじゃなくて自分の体験や感性で考えろ、かもしれません。つまり、宮崎駿氏としては「どう生きるか」は自分で考え続ける事だから、この作品がどういう作品かはそれぞれが感じてくださいという意味かもしれません。
 つまり「どう生きるか」とは考察で教えてもらうな=視点や解答を外部に求めるな、ということかもしれません。

 うん。やっぱり宮崎氏の生い立ちや経歴・家族なんかを分解したり、アニメーターとしての影響とか、過去作その他がどこに反映しているかを見つけても、意味はなさそうです。逆にそれらは反映しているでしょうがそれは宮崎氏の「サイン」でしかない気がします。私小説と取られて仕方がないとは思いますが。

 作画はものすごいですけど、そっちの印象よりストーリーというか視点の切り替えが早いので、そちらに気を取られてどこが凄いのかははっきり覚えていません。

 なお、2週間以上前に見てすぐに書いた他の映画サイトのレビューにはかなり低い点数つけました。が、こうやって時間がたってから考えると印象も変わるし不思議な余韻があるので、文学的な味わいでは優れていたと思います。

 ただ、総合点は2点で十分と思えば、それも正しい気もします。




 

投稿 : 2023/08/06
閲覧 : 263
サンキュー:

14

ネタバレ

タック二階堂 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

宮崎駿の走馬灯。

詳細は略。

や、略も何も、事前の情報はいっさいナシ。イメージイラストのアオサギしかわからない。制作はスタジオジブリ。監督は宮崎駿さんです。言うまでもないですが。

えっと、ネタバレをせずに話せば、これまでの宮崎アニメを彷彿させるシーンが続々と出てきます。まるで、これまでのジブリを回想するかのように。

勝手な自分なりの考察を書きますんで、隠します。
{netabare}
塔にこもって、13個の石を積み上げる役目を果たした大叔父。それを、自分の血筋であるマヒトに継いでほしいと。

宮崎駿監督作品は13本。
血筋の吾郎に継いでほしかったが、残念ながらそれは叶わず…

インコ大王が乱心して、下の世界をぶっ壊す。

鈴木Pが乱心したのは周知の事実のようですね。

ジブリがぶっ壊された後、君たちスタッフ、ジブリが好きな君たちはどう生きるか?
{/netabare}

そんなところでしょうか。
有名アニメYouTuberは本作を「宮崎駿の生前葬」と評しました。確かにそうかもと思うけれども、僕は本作は宮崎駿の走馬灯と受け取りました。

投稿 : 2023/08/05
閲覧 : 164
サンキュー:

7

ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

流石にこれで最後だと思った宮崎駿監督の集大成

(※内容は先日某所で投稿した内容とほぼ同じになります)

私は、あらすじ程度は踏まえないと何も語れないでしょ?との方針の元、
“ネタバレなし”レビューを核心部分はタグで隠した上で投稿しています。

ですが本作は、あらすじはおろか、キャストや、ジャンル等、公開前に事前情報がほとんど伏せられた作品なので、
本レビューは全面的にタグで隠させて頂きます。


レビュー前に、劇場鑑賞した雑感だけ

面白いの?……良作。劇場鑑賞するだけの価値は十分あったと思います。特に作画、音響面。

傑作なの?……自分の中では良作止まり。2023年マイベストアニメ映画も今後、良作公開が続けば本作はベスト10に入れるか微妙な位。
マイベストジブリ映画という観点でも、ほぼ良作以上しかないジブリ作品の中では本作は下位グループ。

オススメなの?……宮崎 駿監督作品が好きならオススメ。が、“国民的アニメ映画”になり得るかは不透明。近作の『ポニョ』や『風立ちぬ』から何かを感じられる方じゃないと厳しいかと。

ここまで事前情報隠した意味あるの?……ある。事前公開設定で苦手かもと“ゼロ話切り”する風潮下では、ジャンルどうなるのか?というワクワク感も貴重なエンタメ体験ではないかと。


以下レビュー。
{netabare}
【物語 4.0点】
一応のジャンルは異世界転生物。神隠し物。
生きづらさを抱える少年・眞人(まひと)が冒険を経て、現世で生きる糧を得る典型的なジュブナイル。

『千と千尋~』ではこっちの世界の場面など数分でしたが、
本作では現世に当たる戦時中の日本での悶々とした少年の葛藤の描写にも多くの尺が取られ、
現実世界で数多く張られた伏線が、ファンタジー世界の動向を左右する際に回収されるプロット構造。
現世と異世界を行き来するカットもあります。

疎開先のお屋敷での淡々とした日常描写が続き退屈する可能性もありますが、
公開前にジャンルなどの基本情報も伏せたことで、どこでファンタジーに転換するのか?
という期待が鑑賞の集中力の源になった面も大いにあり、
その点では「情報がないことがエンタテイメントになる」との鈴木プロデューサーの目論見は外れてはいないと感じました。

事前公開ビジュアルをアオサギに絞ったのも上策。
あの鳥人間?は何者?と誰もが気にしているアオサギに、
ファンタジーへの予兆を集中させるプロデューサーと監督のタッグによる誘導も機能していました。


現実とファンタジーにまたがる世界観には、過去作を思わせる要素も詰っており、
これまでの宮崎駿監督作品の中でも一際、集大成感がある作品でもありました。

ただ、私は嬉しさより、これで本当に最後になるのだろうなとの寂しさの方が上回りました。
作品メッセージも私には、要は本の世界やファンタジーにこもってないで、
現実世界でちゃんと生きなきゃダメだよという既視の説教の再生産にも感じました。

次世代の作り手たちが発信してきた内容と同様のテーマを、
企画段階で同時期に構想しても、6年以上の制作期間を費やす内に、トレンドからは乗り遅れた感。

新しい作品を生み出す役割は、次世代に託されたのだなと思いました。


この種のジュブナイルやテーマが好物であるはずの私が、
鑑賞後モヤモヤしてしまった心理を自己分析すると大体こんな感じでしょうか?

ま、正直、『ポニョ』を越える考察難度に私の頭が付いていけなかったという説が有力
なんですけどねw


【作画 5.0点】
IMAXレーザーにて劇場鑑賞。

作画は手描き重視。
CGはおびただしい数の鳥の大群の処理など補助的に用いられる程度。
(アオサギだけじゃなく、ペリカン、インコと鳥超特盛りですwヒッチコック級のトラウマですw)

日常のちょっとした場面での人体の動きへの宮崎 駿監督の飽くなき探究心は健在。
精密に設計した機械や建物を構築しては壊す趣味も相変わらず。
今回は(※核心的ネタバレ){netabare} 「下の世界」を丸ごと{/netabare} 壊してしまったので、スケール面では過去最大ですね。
これを実現するため背景にまで作画を入れる人員や労力は厭いません。
(原画陣に米林 宏昌監督らが入ってるってどんだけ戦力豪華なのかとw)

ジブリが内部保持し続けた大量の手描きマンパワーは、
近年の新海誠監督作品など、作画カロリー大量消費プロジェクトを回す支援部隊としても重宝してきましたが、
宮崎 駿&高畑 勲両監督がアニメを作るため設立したスタジオジブリが役割を終えた後、
この人的資源を今後も継承活用するのか、新たな技術等で代替するのか、
次代のアニメ業界の割と大きな焦点です。


【キャラ 4.0点】
主人公少年・眞人(まひと)
良家のボンボンですが、怪鳥?を狙撃するため弓矢を自作したり、
女を助けるため弦をつたって壁面をよじ登ったりと、
アシタカ、パズー級の逞しさも垣間見せる少年。

ただメンタル面は梅雨入り真っ只中。
眞人は実母・久子を空襲で亡くした過去を消化しきれず、
新たに義母となる久子の妹・ナツコとも折り合いが付かない。

時は喰えるか、生きられるかの戦時中。
相対的に贅沢なお坊っちゃまの悩みを抱えて、
自分だけ苦しいみたいな面をぶら下げて國民学校に登校しても上手くいくはずもなく。

義母や学校から逃避するように、眞人は、
{netabare} 同学との喧嘩で負った傷の上に、自ら石で側頭部を殴りつけ大怪我をする{/netabare}
という悪意ある自演により部屋と自分の心の扉を閉ざそうとする。

眞人の自己嫌悪の原因にもなっている自身の悪意や嘘。
もはや眞人の傷心に寄り添えるのは実母が遺した『君たちはどう生きるか』などの本の世界くらいしかないのか?

現世と乖離しつつある眞人の心理状態は、
{netabare} かつて本の世界に吸い込まれるように「下の世界」に誘われ、
今は「下の世界」の調律者となっている大叔父様にとっては、
「下の世界」の役割を託せる逸材に映る。{/netabare}

主人公を始め、現実とファンタジーを橋渡す人物像は練り込まれています。


{netabare} 「上の世界」では女中の老婆陣の一人、「下の世界」では命の源“わらわら”を世話する逞しい女性である、{/netabare}
キリコなど、女性や老人が元気なのも如何にも宮崎 駿監督作品。


【声優 3.5点】
主人公・眞人役で初主演を務める18歳の若手俳優・山時 聡真さんを始め、
キャスト陣は俳優・タレント・歌手・モデルで固める。

集大成として、木村 拓哉さんを特別出演させるなど、過去作のキャストの名も見られますが、
過去のジブリ出演声優も含めて、アニメ声優をメインから外す近年の方針は徹底して変わらず。

出演タレントのTV番組での宣伝など、事前の話題作りをやらなかった本作でこのキャスティング。
晩年の宮崎 駿監督の声優軽視を越えた声優無視の意図が私にはサッパリ分かりません。

この辺りを少し追記すると、
宮崎駿監督自身は木村 拓哉さんの演技を純粋に必要として起用したのでしょうが、
私には過去作のキャストも起用して大団円の流れだと思ったのに、
声優はあくまで外すなんて、キムタク出すなら田中 真弓さんや高山 みなみさんも出せよムキー!となった感じ。
独りよがりな要望でしたね。スンマセン。

ただ、例えばナウシカ役の島本 須美さんにナツコを演じさせたら、
俗世は汚れているけど、私は汚れた世界で生きていくといった感じで、
コミック版『ナウシカ』とシンクロして粋なキャスティングになったのでは?
と欲が出たりします。



主演の山時さんなど発声は卒がなかった印象。
怪鳥?アオサギ役を怪演した菅田 将暉さんの濁声には独特の味わいがありました。

ただ炎の魔法少女・ヒミちゃんには歌手・あいみょんではなく、
“ちゃんとした声優”で萌えたかったですw


【音楽 4.5点】
劇伴担当は久石 譲氏が定番のピアノとストリングスを提供。

ですが「下の世界」へ旅立つ前の日常シーン等ではBGMは多用せず、
時に無音の中で、異音を鳴らして、ファンタジー世界へ誘う違和感を演出。
IMAXの恩恵は、作画だけでなく音響、特に効果音の面で強く実感しました。


ED主題歌は米津 玄師さんの「地球儀」
4年前にスタッフ側から打診され、監督からコンテを渡されて練り上げたバラード。
節々に、作品を捉えたワードは感じましたが、
何分、事前情報が少なすぎたので、私は作品も本曲もまだ咀嚼し切れていません。{/netabare}

投稿 : 2023/08/05
閲覧 : 174
サンキュー:

12

カラタチ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/05/08
閲覧 : 0

てぃら さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9
物語 : 2.0 作画 : 4.5 声優 : 2.0 音楽 : 4.5 キャラ : 1.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/04/13
閲覧 : 1

クラーリィ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/04/05
閲覧 : 2

|箱| さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7
物語 : 1.5 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/03/24
閲覧 : 3

Ricky さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/02/27
閲覧 : 9

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/02/22
閲覧 : 5

ニキータフルチショフ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/01/23
閲覧 : 4

コゼット さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/01/07
閲覧 : 253

るる さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/01/01
閲覧 : 5
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君たちはどう生きるかのストーリー・あらすじ

宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。
宮崎監督が原作・脚本も務めたオリジナルストーリーとなり、タイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」から借りたものとなっている。(アニメ映画『君たちはどう生きるか』のwikipedia・公式サイト等参照)

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2023年7月14日

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