「魔女の宅急便(アニメ映画)」

総合得点
89.2
感想・評価
1592
棚に入れた
11135
ランキング
87
★★★★☆ 4.0 (1592)
物語
4.1
作画
4.1
声優
3.8
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

タイトルなし

後に制作されることになる【千と千尋の神隠し】と真逆のような作品。千尋は社会の中で個の自分を見失いそうになるも最終的には自分を確立したのに比べ、本作では主人公であるキキが、個である自分を全である社会に溶け込ませるまでの物語となっている。

自分の故郷を離れてたどり着いた街は、自分の夢見たものとは程遠く、社会を知らない幼い少女は、その幼さゆえに、自分を認めないモノは認めない。
憧れるものはある。しかし、それに手を伸ばしてしまうことは、自分の唯一である取り柄を自ら手放すことに他ならない。そのジレンマが、少女の繊細な心を不安定にさせてしまう。
だけど、その唯一の取り柄さえ活かせないのなら、自分はいったい何なのか。その取り柄のせいで自分の望むものが手に入らないのも、また事実。

すっかり弱り切ってしまった心は、とうとう自分の才能を手放すに至ってしまう。
魔女じゃない、ひとりの少女になってしまったそんな時に励ましてくれたのは、自分がその土地で悪戦苦闘しながらも築き上げてきた、自分だけのコミュニティー。
キャッチコピーにもある〈つらいときもあったけど〉。でも決して、つらいことばかりじゃなかった。自分が魔女としてやってきたことに、意味はあったのだ。

そして、彼女は再び飛ぶ。
母から手渡された箒ではなく、その土地で自分で借りた箒で、自分の持って生まれた才能に任せるのではなく、自分の意思で「とべ」と自らに命じて。

エピローグでジジと言葉を話さずしまいだったのは、キキが街と、街の人々に心を許したという証明なのだろう。(ジジは喋る猫ではなく、あくまでもキキが魔法でジジと話していたに過ぎない)
そして、きっと彼女はもうラジオを聴くこともないのかもしれない。もはや、理想の都会を想像して夢見る必要もないのだから。(エンディングの、ショーウィンドウの靴を眺めてる場面と、笑顔で空を飛ぶ姿が対比的に思える)

ひとつの才能をもった少女が、周囲にその才能を認めてもらえるまでの苦悩と挫折を明るい作風で描いたということで、間口の広い作品と言える。
反面、とくにこれといって盛り上がるような内容ではないので、ドキドキもワクワクもしない。ラピュタとかナウシカが好きな人は、あんまり好みじゃないかも……。
だってこの作品のお話って、要は田舎から上京した女の子が、社会貢献によって充足感を得られるまでに至るお話、というだけのものなのだもの。

が、他のジブリ作品に比べても引っかかるような点はほとんどなく、なにより主人公キキの愛らしさは、大変に魅力的。

投稿 : 2015/07/23
閲覧 : 191

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