「冴えない彼女の育てかた(TVアニメ動画)」

総合得点
87.0
感想・評価
2866
棚に入れた
14873
ランキング
171
★★★★☆ 3.9 (2866)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ネタバレ

jethro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

冴えないヒロインが最も冴えているという事実 (そして続編決定という真実)

丸戸さんの脚本、期待の斜め上を行くなかなかの面白さでした。
一瞬、絵に描いたようなラノベ展開かと思いきや
押さえるところは抑える、地に足のついた立体的な人間模様

「なぜギャルゲーの主人公はヘタレでなくてはならないのか?」
そんな素朴な疑問に答えてくれているようなコミカル演出
リアルとはそんなものかも知れません
「ヘタレ」に説得力をもたせるって尋常じゃないと思うのですが
いやいや、それこそが真骨頂でありリアリティなのだと
本作の主人公は体現してくれます。
青春モノって言ったら
スポーツ、熱血、サッカー、野球なんてロジックが浮かんできますが
本作の主人公が駆ける青春はオタク方面にあります。
まさに世代を反映したロジック
そもそも最初から思いを寄せている2人の女性も
たがわずそちら方面・・・

そこに限りなく一般人なヒロインが登場する
うららかな春の日差しと共に現れたこのヒロインに
「設定」と「シチェーション」という主人公にしか理解できない
至極 直感と自己満足に満ちた理由で
「おまえは影が薄いんだよ」と彼女を蔑み
「オレが最高のヒロインにしてやる!!」と言い放つ
そんな彼女の心中はいかに・・・
伏線らしきヒントはいくつか散りばめられてはいるが・・・
本作中に、このヒロイン加藤が、こんなどうしようもない男に対して
何故ここまで故意にするのか、その答えは語られない
それはある意味、まだ完結していない原作の終着点なのかもしれない

それに対して
ハレーム的展開を要した2人のヒロインには
練られたある種リアルな片恋事情が存在する
どんなに礼を尽くしても足りない
そんな特別で色濃い夢を実現化させた中心的人物
それが主人公にあたる訳だ
しかし、それら夢の実現化は主人公が意図したものではなく
しいて言えば「副産物に過ぎない」
天然と熱血にまみれた主人公との間には
ファーストネームでお互いを呼び合う間柄にも拘らず
どこまで行っても交わらない
ある種の「壁がある」
一方のヒロインは、これを「倫理」と呼び
一方のヒロインは「答えのない答え」と表現する

とはいえ主人公はリアルな愛など求めてはいない・・・
(信じていないのかも)
そこには、誰もが納得するシンプルな現実がある

2人には「お前が好きだ、付き合ってくれないか」という
当たり前でありふれた彼からの告白が必要不可欠なのだ

あるいは単純に「既成事実」が必要なだけかもしれない

「近くて満たされているものと満たされていないもの」
(当然、満たされていないものを満たしたいと欲する訳で)
別名、幼馴染は救われないジンクス・・・

2人への思いは、その心情や才能といった内面的なもので
決して外見への関心につながらない
対して加藤に対する関心は形(シチェーション)や容姿といった
外見へのこだわりなのだ。

あれ?なんかおかしくないか?
そう加藤には目立たない、地味というオマケが付いてくる
とはいえ、目立たない、地味というのも外見の一部と、とって見れる
総じてこれを「良く見るとカワイイ」と表現しているのだが・・・

恋愛に発展するには
内面に対する内面への踏み込みが必要だ
しかし2人はそこに踏み込むほど
主人公を理解していない
だから理解しようと足掻くが
本質的に彼女たちにとって大切なものは他に存在するのだ
2人のヒロインにとって主人公とは本業を実行するための
癒しの場であり、アイデアの源
だから欲しい、欲しくて欲しくてたまらない
パートナーとして最高の存在
要するに主人公が攻略対象なのだ
これはギャルゲーの理論の全く逆を行く展開である

では加藤はどうだろう、こうやって考察すると
主人公にとって最も恋愛と縁遠い人物なのではないか?
いやいや
彼女の行動は明らかに主人公の内面をえぐっていっている
{netabare}1泊してまでつきあったギャルゲー
予定を切り上げて帰ってくる旅行
コミケへの参加などなど
その痕跡はきりがない{/netabare}
そしてまた主人公自身にとっても
彼女の存在は不可思議で意味不明な存在であり
「いったいコイツは何者なんだろう?」という
究極的な興味の対象「最も気になるあいつ」な訳だ
そして
主人公にとって彼女はまだ「加藤」であり「恵」ではない
だからこそ
加藤だけが、主人公にとっての攻略対象に成り得るのではなかろうか
この攻略の目的は一体何なのか
本能のおもむく先に何があるのか
主人公自身も知りえない、しかし加藤さんは
彼女自身が思い描く理想を持っているのかもしれない・・・
仮に彼女の愛が本物だとして
彼女の愛の成就には
「彼からの告白」も「既成事実」も必要ないのかもしれない

この構図
一見薄くペラペラなラブコメに感じる本作の吸引力の正体は
この核心的な人間模様にあるのではないでしょうか

気付かぬうちに夢や愛情をバラ撒き散らす主人公
翻弄されるヒロインたち・・・
第三者の俯瞰目線で見守る真のヒロイン加藤
無意識に本能のおもむくまま2次元に突っ走る主人公が
加藤という女性を知るために
ゲーム制作という一世一代のプロジェクトを開始する

ゲーム制作、それは童貞主人公が
不器用ながらも必死にあがいて見せる前戯なのかもしれない

様々な可能性を残して幕を下ろした本作
その深さに思わず唸ってしまった。

そして
続編決定おめでとうございます。
しかし
放送前に原作に走っちゃうだろうなぁ~

(続編決定発表後加筆改訂)

投稿 : 2015/05/04
閲覧 : 361
サンキュー:

19

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