「東京喰種√A(TVアニメ動画)」

総合得点
75.4
感想・評価
1512
棚に入れた
8630
ランキング
791
★★★★☆ 3.7 (1512)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

jethro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:今観てる

それでも心は触れ合わずにいられない

人がむやみやたらに意味なく殺されていく作品は好きではありません
ストーリー展開は必要最低限であれば良いと思っています。
物語構築に於いて最も重要なのはメンタリティの整合性ではないでしょうか

序章にあたる第1期は一般的な言い方をすると
「猟奇的アクションドラマ」でした。
ニシキと貴未のエピソードを除いて
特筆すべき点はありませんでした。
悪い言い方かもしれませんが
「よくまぁ、飽きずに、この手の作品作るなぁ」という感想

そして始まった今期、物語は一転します。
物語どころか、作画も・・・一変
原作を離れ別ルートに
つまりオリジナルストーリー
しかも、原作者自らの発案によるもの・・・

なかなか興味深い発想と展開なのですが
正直、カネキくんがアオギリに行ってしまう理由づけは弱いと思います。
もっと別の方法も模索出来たはずと思わせる余地が残っている
これを潰さなくては
どうしても別ルートに行かなければならない理由づけが弱い

しかしながら
先に述べた通り、私は物語に於いて最も重要なものは
メンタリティの表現だと思っています。

カネキくんを「あんてぃく」の連中と対極に置く
これにより、いままで薄ぼんやりとしていた
戦いとは別の感情を剥き出しにする
これこそが、原作者の方のネライであり
本作のテーマなのではないでしょうか

全てを視聴し終えてハッキリ分かりました
微妙なストーリーの不整合など、塵みたいなものです。
息と鼓動と感情
語る材料ってそれだけで十分なんだなって
本気で思わせてくれました。

話数が進むごとに溢れるキャラクターの魅力
交錯する無数の過去と現在
コーヒー一杯の温もりが涙を誘い出します。
董香とカネキくん、亜門とアキラ、篠原とジューゾー
あんてぃくのマスター・・・と
一点の隙間なくぎっしりとキャンバスが塗りつぶされていく
そして
人とグール、エサと捕食者という奇異なる関係性が
痛みとともにえぐり出される

人間ってなんなのか?
そんなシンプルで複雑な疑問が浮かび
「ああ、そういうことか」と感じる
見終わった後の・・・ため息
そんな奥深さと、柔らかさと
気がつくとこぼれている涙

作画も音楽もとにかく何もかも感情的表現へと注がれる作風は
絶対的な商業主義のアニメ制作現場に於いて
本気でクリエイター冥利に尽きたのではないかと想像します。
その結果としてTVアニメとは思えないような
商業作品とは思えないような
素晴らしい最終回を視聴出来た事に感激しました。

{netabare}
7話の
あんてぃくを出てくるカネキくんのフカンのカット
木に引っかかった風船は
まだ思いを残しているカネキくんのよう、
心のどこかが引っかかっているのかも・・・

帰宅の人ごみ
人の流れに逆らわない方向で走り抜けていく董香
映像の表現としては人波に逆らうように走った方が
それっぽく見えるのですが
あえて、董香というキャラクターを象徴するように
人の流れに逆らわない走りを映像にしているところが
とても素敵でした。

歩道橋の上
音楽が止まる・・・
動くものが車だけになった二人だけの世界
やがて風音のSEも消える・・・
二人のやり取りの終盤から流れ出すボーカル曲
気付かぬうちに歩道橋の下は
テールランプと大渋滞
それは満たされた二人の心のようで・・・

8話
コーヒーが好きになりそう
コーヒーの香りや味わい
そんな事が感じられる
痛みと優しさに満ちた一編

9話
交錯する感情
半端な日常への愛おしみ
遺言
死を前提にした生き方
否定も拒否も無意味

「お前はデカ過ぎる」
亜門のネクタイを引っ張るアキラ
近づく唇
それはアキラにとっての告白?
それは遺言?
亜門は否定し拒否する
・・・死ぬことが許されなかった・・・
「君らしいな、実に君らしい」

放り投げた紙飛行機
あてどもない夜間飛行
しかしそれが、ある方向性を指し示す。

最終回

一切排除されるバトルシーン

歩く、前進する
前へ前へ
カメラは亡骸となった
ヒデを抱えるカネキくんの歩きを正面から捉えていきます。
これは
宣伝ポスターのメインヴィジュアルの映像です。
約2分間にも及ぶ長い長いワンカット
カネキくんの穏やかで優しい表情だけが生を感じさせる
心が引きちぎられる
この湧き上がるものは何なのか
シンクロする曲が琴線に触れる
教えてよ、教えてよ

メインビジュアルのシーツに包まれた謎の人物は
ヒデくんだった
これは一体何を意味しているのでしょう
ヒデくんはカネキくんにとって
人間であった頃の親友
そして唯一、人間でなくなっても親友でいてくれた
人間でした。
それはカネキくんにとって唯一の人間としての証だったのかもしれません
ここに本作の重要なテーマ「普遍的な愛」が謳われています。
どんなことがあっても変わる事のない真の思い
それは、相手がどんなに変わり果ててしまっても
信じられる事、愛せる事
カネキくんの歩みの一歩一歩が
そんな思いを踏みしめているようです。

{/netabare}

最高の脚本と、至高の演出に拍手!!

(最終回視聴後加筆改訂)

投稿 : 2015/04/12
閲覧 : 317
サンキュー:

14

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