「結城友奈は勇者である(TVアニメ動画)」

総合得点
77.8
感想・評価
1407
棚に入れた
6884
ランキング
582
★★★★☆ 3.7 (1407)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

しゅんこう さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

作り手と読者(視聴者)の関係について

勇者システムで変身した少女たちが侵略者たちと戦う姿を描くバトルファンタジー作品。

最近のアニメの中でも随一といえるくらいに洗練された映像技術、作画はすばらしいの一言。

彩を添えるOPや効果音といった音楽面でも優れた作品でした。

以下はくだらない感想を長々と。暇な方のみご覧ください。
他の人の書いた文章や考えを読むのが好きな方に。

{netabare}
物語を読む(視聴する)際に、まず私たちはそれがどんな作品かなあと大まかなジャンルを知ろうとします。ホラーなのかミステリーなのか、はたまた純文学なのかといった程度のことを、文庫本だったら帯のキャッチコピーや表紙に記載されている簡単なあらすじなどを見て、ふむふむ、こういったお話なのかとある程度予想を立てるわけです。ここでは別に詳しい情報じゃなくていいので、簡単に言えば今日は何を食べようかなと考えているわけです。中にはろくな下準備もせずに飛び込むのが好きという人もいるかと思います。アニメ作品の場合、動画を見るというスタイルではそういう方も少なくないかもしれません。

それで最初から読み始めるわけですが、アニメで言うと第一話から三話くらいの序章にあたる部分です。ここで作り手は作品の登場人物や舞台設定などの、いわゆるお店のメニューを私たちに見せるわけです。うちはこんな感じのお店ですよと。メニューが好みに合えば注文をすることになり、好みの品がなければ店を出る(視聴を中止する)か、他のもので妥協しようとするはずです。この出だしの部分で躓かなければよし、視聴を継続しよう、となるわけで、大体のアニメ作品はまずここに力を入れることになります。

作り手がする工夫に演出と脚本(シリーズ構成も)があります。いかにわかりやすく作品を見せていくかの工夫です。カットや構図だったり、セリフだったり。この作品で言えば1・2話を1時間で放送する、なども大事な工夫といえます。多くの視聴者にもわかりやすく丁寧に紹介していくことが求められています。ありきたりの流れは幅広い読者を獲得するために必要なものです。

ここでもう1つ大切なことがあります。それは作り手側が、読者(視聴者)から担保を預かることです。例えば、ミステリーなら犯人のトリックの謎だったり、主人公とヒロインの関係性だったりです。人によっては作品のテンポや構造、伏線の回収が担保になることも。次も期待して見てもらうための、作り手側が読者(視聴者に)無断でこっそりと行われるものが担保です。良い作品ほどがっちり担保を取り立てて読者を引きつけます。(アニメの世界でも急展開などといって、引き込む手法がありますが、こっそり知らず知らずのうちに行われているものが担保です)

{netabare}
しかし、この担保は人によって様々です。普遍的なテーマから、具体的な趣味嗜好までどれが読者の琴線に触れるか考えるのは作り手の仕事なのですが、アニメ作品はこの辺が少し厳しいところがあります。文庫本などでミステリーを買う人はそのジャンルに最初から興味があることがわかっており、取れる担保も大体決まっているので作り手側も予想しやすいです。

ですが先ほども指摘したように、アニメはそういったお店選びをしていない人でも見ることがあるので(むしろそういった場合が多い気がします)、これが作り手と視聴者の微妙なずれを感じさせる1つの原因となっている気がします。いくら新しい作品が見たいといっても、読者としては自分の好きなものをどこかで期待してしまうものです。全部知らないことだらけでは、担保を上手く取ることが出来ずに、つまらないと感じてしまうことでしょう。

この作品で言えば、勇者システムと少女たちの葛藤が担保の1つになっています。少女たちの人間関係も人によっては気になるところです。

そしてこれも大切なルールだと思っているのですが、読者から取った担保はきちんと返さなければなりません。返し方が十分でない場合は、満足感も小さいものになってしまいます。ミステリーのトリックが破綻しては読者が怒るのと同じです。

アニメの場合は、この自分がとられている担保が何かを理解しておかないと、レビューを書く際や読む際に、一方的なずれを感じてしまい、理由の伝わらないものになってしまうことが予想されます。(すみません。言ってて自分も恥ずかしいのですが)強烈に感じた部分は何なのかよく振り返ってから文章を書いたり読んだりするよう心がけます。上手くするとそれが自分のとられやすい担保なんだとわかるようになるかもしれません。

そんなわけで、ずいぶんと回り道をしましたが、この作品は最初に担保としてとった勇者システムと少女たちの葛藤をどのように返していくかが評価の分かれ道になっていると言えます。
もう少し踏み込んでみると、読み手から取る担保の幅が大きすぎて、返すのが難しい作品だと思います。絶望的な障害が強すぎる設定に対し、世界設定土台部分のスケールが小さいために、担保としては釣り合っていなかった面が映ってしまい、見る人によってはきちんと返されていない、と判断されたように思います。
{/netabare}

私個人的には、ハッピーエンドで本当によかったと思っていますが、もう少しスッキリした説明が欲しかった部分もあります。しかし、人間関係と少女たちの苦悩の部分は良く描かれていて、それが妹を思う姉の気持ち、苦しみから逃れるための親友の気持ち、自分の意思で仲間のために体を張る行為など、普遍的なテーマで担保としては確保しやすく、気が付けば涙を流せるくらい私もがっちりとられていたのだと後になってわかりました。

重い話も含むアニメなので強くお勧めはできませんが、十分楽しめる物語だと思います。

{/netabare}

投稿 : 2015/02/28
閲覧 : 581
サンキュー:

27

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