「無彩限のファントム・ワールド(TVアニメ動画)」

総合得点
75.9
感想・評価
1211
棚に入れた
6631
ランキング
743
★★★★☆ 3.6 (1211)
物語
3.2
作画
3.9
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

空知 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

無難なストーリーで結構楽しめたが、一連の中二病的作品の限界が来ているような気がする

原作未読。

個人的には楽しめましたし、似た傾向の「境界の彼方」「甘城ブリリアントパーク」よりも良作だと感じました。

作画は矢張り京アニならでは。「すごい」という言葉しか見つかりません。表情の描き方が実に上手く、キャラの表情が豊かに変化するので、感情が手に取るように分かります。これに慣れてしまうと、1年前に鑑賞したときには何の違和感もなかった良作の作画が静止画のように感じてしまうほどです。ファントムとの戦いもキビキビした動きです。背景にブルー、イエロー、グリーンを強めに使っていることも印象的でした。

ストーリーは無難に演出されており、そつなくこなしたというか、原作を力技で何とか楽しめるレベルまで引き上げた感があります。笑える部分も結構ありますし、心に響くストーリーもありました。折り返し点から最終話までが特に良かったです。

また、魅力的なキャラデザも京アニならではです。特に、和泉玲奈は今まで京アニにはなかったキャラデザで魅力的でしたし、熊枕久瑠美の前に垂れるツインテールは斬新で、誤解を恐れずに言うと(笑)あんなにかわいい小学生キャラは見たことがありません。川神舞も母性的キャラで、少し気は強いけれど心根の優しい女性で素敵でした。水無瀬小糸は、素直じゃないけれど、本当は寂しがりで、もう少し素直にデレる部分が見たかったかな。そしてルルは天真爛漫でユーモラス。彼女がいたために笑える部分がたくさんありました。また、冒頭で晴彦がウンチクを垂れるとうっとうしいと感じる人もいるでしょうから、その緩衝材を果たしたのがルルです。その存在感は大きかったと思います。

この作品の欠点を一言でいえば、「八方美人になりすぎた」ことです。第1話で胸を強調しすぎたために、期待した人もいるでしょう。しかし、第2話以降、さほどのエロ要素はありませんでした。ああいう釣り方は誉められません。京アニが安易なエロを釣りに使うとどうなるのか、評価に出てしまうような気がしてなりません。京アニはエロを前面に出さず、ブランドを守ったほうが良いと思います。エロ路線などは毎期、いくらでもあるのですから・・。

「境界の彼方」「甘城ブリリアントパーク」と同じような作風が続いているため、若干このジャンルに対し、観る側に飽きがきていることも否めないような気がします。

私自身、ニューサイエンス、トランスパーソナル関連に興味があるので、一条晴彦の冒頭での説明を毎回楽しみに観ていました。第1話で「阿頼耶識」という唯識論の言葉で出たとき、「あ、これは今までの作風とは違うのかも」と期待しました。しかし裏切られました。また、観る人によっては理屈っぽい能書きはいらないと感じた人もいると思います。

第2話で「カントの純粋理性批判」への言及があったとき、「やっぱりこれは単なる中二病作品じゃないのかな!?」と私の胸もふくらみましたが(笑)、内容はそれに伴うものではありませんでした。第7話で「シュレーディンガーの猫」が冒頭で出たときにも、そろそろ本領発揮かと、かすかな期待がありましたが、単なる {netabare}猫耳サービス回{/netabare}。量子力学を冒頭に持ってくるなら、きちんと納得のいくストーリーにしてほしかったというのが私の不満です。つまり、お色気も中途半端で、晴彦が冒頭で紹介する概念に沿った内容かというとそうでもないストーリーでした。

アニメを鑑賞している年齢層もさまざまであり、アニメに求めるものも多様化していると感じます。京アニは、期待のベクトルが多岐多様であることが分かっているからこそ「八方美人」になってしまったのだろうと思います。京アニにはそれができる力があるためやってしまうところが見事なのですが。同時に、テンプレ化した内容から抜け出せないアニメ業界の苦悩も垣間見ることができます。京アニとて然り。

「響け!ユーフォニアム」のような学園モノと、このような作風の二刀流で行くのでしょうが、そろそろ中二病的作品とは違うジャンルに京アニがチャレンジしてくれればとも思うのですが、簡単なことではないでしょうね。

アニメとてビジネスですから大人の視点も必要です。自社レーベルを使うことはビジネス的には大きな意味を持ちますが、KAエスマ文庫は作品数が大手に比べると少ないため、大きなヒット作を産み出し、ビジネス的にも成功するためには、自社レーベルの充実が必要でしょう。


オープニング・アニメーションはテーマ曲("Naked Dive")ともマッチしており、秀逸。私的にはオープニング・アニメーションは絶賛レベルです。このオープニング・アニメーションのためか、OPが更に良い曲に聞こえます。

一条晴彦が {netabare} 孤独な子供時代を送ったという伏線は回収されましたが{/netabare}、川神舞の{netabare}幼児期から今に至る孤独な生活と、彼女の晴彦に対する想いは{/netabare}今作では見送られました。2期に含みを持たせたのかもしれません。2期があるかどうかは分かりませんが・・・。

投稿 : 2016/04/10
閲覧 : 239
サンキュー:

26

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