「有頂天家族(TVアニメ動画)」

総合得点
82.3
感想・評価
1676
棚に入れた
8062
ランキング
365
★★★★☆ 3.9 (1676)
物語
4.0
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

面白き 事もなき世を 面白く すみなすものは 心なりけり by高杉晋作

【文量→大盛り・内容→考察系】

【総括】
美しい絵と、しっかりとしたストーリー。多彩なキャラクターに、深いテーマ性。なにをとってもレベルの高い作品だと思います。ただ、好き嫌いが分かれるというか、シンプルな面白味には欠ける作風であることは否定できません。まあ、数話観てみて、合う人はハマれるだろうし、合わない人は最後まで合わないかな。

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
レビュータイトルですが、「所詮この世なんて面白くないんだけど、己の心持ちひとつでいくらでも面白くできるよ」という意味の、高杉晋作の有名な辞世の句です。

OPの歌い出しにも(似た言葉が)使われているし、作品を貫く主題かと(OPは過去作の中ではトップクラスに好き!)。

京都×妖怪 というと、つい色んな妖怪を出して百鬼夜行的にしてしまいがちだが、狸・天狗・人間 にしぼって書ききったところが(それぞれに深く踏み込めて)良かった。

矜持、というか、それぞれの種族が、それぞれの種族たらんとして生きている感じがした(言い方を変えれば諦めているような感じ)。

しかし、それぞれの種族の中ではみ出して生きている、メインキャラの、矢三郎・赤玉先生・弁天。彼らは彼らとして、いつまでも生き方を模索しているようだった。

矢一郎が、矢二郎のことを思い涙するシーンは、(雰囲気に合わせて赤玉ワイン呑みながら観てたこともあるがw)久々に、アニメでウルっときた。

私にも兄弟がいるが、この作品は「家族愛」「兄弟愛」を描くのが上手い。よくある「THE・家族愛」ではなく、もっと深いところで繋がってる感じ。それは例えるなら、東北と九州に別れて住んでいて、普段は年に1、2回くらいしかまともに連絡とっていなけど、ふと、毎朝の天気予報で他の(家族が住んでいる)地域を見てしまうような、そういう感じ。

家族愛とは、無条件の愛、だと思う。

もっと過激な表現を使えば、自分の息子が犯罪者になろうと、世間からどれだけ非難されようと、それでも親兄弟だけは味方でいるような、そういう類いの愛。

それは例えば、下鴨家は勿論のこと、夷川家においてすらそう。(総一郎を殺した)早雲や、ダメダメ兄貴の金閣、銀閣ですら、(恨みつつも)恨みきれない海星とか、「うんうん、だって家族だもんね」と思った。

お気に入りのキャラ(狸)は矢二郎。蛙になった理由も同情できるし、電車で突っ込んだシーンは胸が熱くなった。「井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る」ってところでしたね。

「面白く生きる」とは、「必死に生きる」と同意だと思う。

「バカの壁」で有名な養老孟司さんの娘さんが部屋を散らかしていて、養老孟司さんが、「片付けろ」と注意したら、「どうせいつか散らかるじゃん」と娘さんに言い返されたそう。それに対して養老孟司さんは、「じゃあ人はいつか死ぬんだから、お前も今すぐ死ね」と更に言い返したそうだw 流石。

でも、突き詰めれば人生というのは、そういうものかもしれない。何が有益で何が無益かと問われれば、全てが無益とも言える。どうせ死んじゃうし。

でも、それじゃあつまらない。作品の最後は矢三郎の「みんなが面白く生きられればそれだけで良い」というものだったが、それは座して待ってれば得られるものではない。やはり、「阿呆」になって、自ら何かしら事を起こしていかないとダメなのだ。狸ですら、そうしているのだから。

絵は、流石にPA.WORKSだけあって不思議な魅力アリ。京都には三度ほど行ったことがある。いずれも夏だった。よく京都は「時間が止まったよう」と形容されるが、私は「風が止まったよう」な印象を受けた(暑かった~w)。

なんか、空気とか色んなものが停滞して、定着している感じ。作品を通して、雲が流れてなかったり、木々が揺れていなかったりするのは、偶然だろうか?

さらに、所々、文豪達へのオマージュも感じた。「金曜の忘年会を狸鍋にしたのは谷崎潤一郎」というのは、「谷崎ならやりかねんな」と思った。「食べてしまいたいほど好き」もそう。谷崎の処女作の「刺青」は、刺青を施している最中に苦しむ女性を見て快楽を得る彫り師の男の話であり、その男が、理想の女性を見つけ、拉致して強制的に刺青を施した後に、死へと向かっていく様は、金曜倶楽部の面々、特に布袋に近いものを感じる。「阿呆」という呼び名も芥川っぽいし、そもそも狸の擬人化やそのニヒルな視点も、漱石っぽいっちゃあぽい。

それに、各話の最後に矢三郎がする「独白」は、非常に美しい日本語の流れ(響き)だった。さすが、小説原作、森見登美彦さんだけあるなと感じさせた。

原作では後編があり、アニメ向きの話だと思うけど、続きはないんだろうな。弁天のこととか、色々やり残したことが描かれているんだが(と、この時点では思ってましたw)。

まあ、一期は一期で綺麗にまとまってたし、「家族愛」を全面に出すならこれで良いのかな。1話から最終話まで通し、映画を観ているような気分にしてくれる、良き作品でした(2期視聴開始です)♪
{/netabare}

投稿 : 2017/06/25
閲覧 : 413
サンキュー:

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