「響け!ユーフォニアム2(TVアニメ動画)」

総合得点
89.4
感想・評価
1578
棚に入れた
7087
ランキング
80
★★★★★ 4.3 (1578)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

P_CUP さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

最終回を見終えての総括・・・その前に

どうも賛否が分かれてるらしい11話についてちょっと書いておきたいと思います。
{netabare}
あの墓参りを亡き奥さんへの宣戦布告だとか思ってる人もいらっしゃるようで。
でも、ある点に気が付けば、ものすごく奥が深い話になるんですが。

鍵となるのは「中学時代の麗奈が滝から貰った楽譜」です。
彼はなぜこのとき、トランペットの楽譜などを持っていたのでしょうか?
この時点で彼は吹奏楽の指導者ではありません。それどころか、
奥さんを亡くたショックで音楽から遠ざかってる時期のはずです。
また、彼はトロンボーンが専門です。なら、この楽譜の持ち主は誰なのか?

考えられるのは、亡くなった滝先生の奥さんです。
彼女は、滝の父に指導を受けた、かつての北宇治吹奏楽部員です。
何の楽器を担当していたのか明言はされてませんが、
トランペットだった可能性は充分あると思います。
「教師になって母校を全国に連れて行きたいと病気になってからも言っていた」
そんな話も6話段階で語られています。あの楽譜は、そんな奥さんが、
病気が治って、晴れて母校の指導者となる日が来たら練習に使おう、
そう思って収集していた、あるいは、自ら作曲したものではないでしょうか?

中学生麗奈には、そんな事情は露ほども知らず、
ごく単純に、憧れの滝から貰った楽譜だからと喜んで、
熱心に練習したであろうことは想像に難くありません。
直接指導を受けたこともない滝を1期序盤で「すごい人」と断言してたのは、
この楽譜を練習することで格段に上達できた実感があった故かも知れません。

つまり、滝先生の奥さんは、麗奈にとって間接的に「師」だったのです。
母校の吹奏楽部を指導する夢を果たすことなく亡くなった彼女は、
死して「高坂麗奈」という北宇治きってのソリストを育てたことになります。

久美子から奥さんが亡くなってることを聞き、
滝からも直接話を聞いて、と、しているうちに麗奈も
熱心に練習してきた楽譜の主が誰なのか察しがついたのでしょう。
だから奥さんの墓まで行ったのです、そして、貰った曲を吹いた。
あれは鎮魂や、ましてや宣戦布告なんかじゃなく、師への成果報告なのです。
「貴女のおかげで、こんなに吹けるようになりました」という。

さて、このように解釈して行くと、浮き上がって見えて来るものがあります。
直接の指導があったわけではなく、それどころか面識すら無い者同士が、
楽譜を介して師弟の関係になる・・・そう、あすかと、彼女の父たる進藤正和です。
{/netabare}
一見、孤立して存在してるかのようなエピソードが、
よくよくみると調和していることに気付く、恐ろしいまでに
奥行きのある作品、それがユーフォだと思います。



【1話放映前】
かなりハードル上げめで観に行ったんですが予想以上に大満足でした。
なのでこの時点で一度レビュー書きます。そのくらいテンション上がってますw
とはいえ、放映開始まで結構間がありますからネタバレは避けます。

まず先行上映イベント自体が1時間半も尺を取っていたので
「1話の上映に25分だし、あと1時間以上も何やるんだ?
 また声優陣にゲームでもやらせてお茶を濁すのかな?」
などと思っていたら「第1話は1時間スペシャルです!」というサプライズ。
ただしOPとEDはありませんでした。なお、OP・ED、それにCMが挟まらないことを考慮して
この上映会は放映版とは構成をちょっと変えた特別バージョンだとのこと。
(観に行けた人は特別になれましたねw)

その内容ですが、もうちょっと佳境まで尺を伸ばして、
作画を大画面上映にあわせてちょいとブラッシュアップすれば、
そのまま「劇場版 響け!ユーフォニアム2」として
上映可能じゃないかと思えるくらいの濃厚な50分弱でした。

相変わらず、吹部女子たちの心の揺れをバッチリ芝居で表現してて素晴らしい。
そして1回観ただけだとスルーしてしまう部分に、何かいろいろ潜んでそうな予感もします。
今すぐ、もう1度見直したい気分ですが、残念ながら、それは約1ヶ月のおあずけです・・・

【1話視聴後追記】
{netabare}
待ちに待った1話が放映されました。
先行上映で観たときはOP・EDもCMも無いので構成が違ってましたので
(まあ先行上映バージョンはもう放映されることもないでしょうから)
どこが違うのかネタバレしておきます。
まず、放映版のアバンの雪のシーンが先行上映ではありませんでした。
そしてちょうど真ん中くらいにある、南中のコンクール敗退シーンが
先行上映では冒頭に使われていました。つまり原作2巻と同じ導入です。
なぜ放映版では導入を変えたのかと言うと、冒頭にみぞれと希美を持って来ると、
ユーフォ2全体を「みぞれと希美の物語」だと提示することになるからでしょうね。
先行上映版は1話単体を1本の作品として座りの良い形に組み替えていたとも言えます。

あと、1話に出て来た楽曲の選曲意図について、思ったことを書いておきます。

まず「学園天国」について。チームもなかからコンクールメンバーへのお祝い演奏という扱いですが
歌詞を考えると、これはコンクールメンバーへの宣戦布告とも受け取れます。
なにせ「あいつもこいつもあの席をだた1つ狙っているんだよ」ですからw
吹奏楽コンクールは上位大会でメンバーの追加は出来ませんが、変更なら可能なんです。
もし誰かが練習を怠るようなことがあれば、いつでも取って代わるぞ、と。
そういう含みを持たせての選曲だったのではないでしょうか?
(あと誰がどこを吹くかも変更可能です。つまり香織先輩にもワンチャン・・・)

次に南中のコンクール曲だった「ダッタン人の踊り」について。
原作だと「ダフニスとクロエ」ですが、アニメでは変更されていました。
先行上映のときの石原監督の話では、山田尚子さんの選曲とのことです。
この曲、歌劇「イーゴリ公」の一部なんですが、このイーゴリ公の話を考えると理由が見えてきます。
イーゴリ公はポロヴィッツ人(韃靼人)の侵攻に対抗すべく、遠征を唱えますが、
街の人たちは「日食が起きていて不吉だ」などと言い立てて協力をしてくれません。
それでもなお遠征に赴いたイーゴリ公でしたが、戦いに敗れ捕虜になってしまいます。
作中で使われていた部分は、原曲だと歌詞が付いてますが、これが、
二度と戻れないかも知れない故郷を想い、解放と帰郷を切望する歌なんです。
やる気の無い先輩たちに「真面目にやろう!」と主張しても笛吹けど踊らず、
ついに業を煮やして部を飛び出したものの、吹奏楽への想いを捨てられず、
部に復帰することを切望する希美の姿に重なる部分があると思いませんか?
{/netabare}

【5話まで視聴後追記~なぜ幕を開けたのは希美だったのか?】
{netabare}
いや、5話は凄い回でした。
台詞無しの演奏シーンだけで7分持たせる時点で常軌を逸しています。
アイドルアニメとかのライブシーンなら、歌と踊りで見せることが出来ますが
吹奏楽で、しかも座奏ですからね。よくもやったもんです。さすが木上。

さて、その本番の舞台への幕を開ける役目を果たしたのは復部したばかりの希美でした。
オーディション後からずっと、チームもなかとしてメンバーを支えてきた葉月や夏紀ではなく、希美がおいしい役目を持って行ったことについて、某所で疑問の声が挙がってたのを見かけたのですが、実は「希美が幕を開ける」ことは、非常に意味が深いのです。

ここに至るまでの、北宇治高校吹奏楽部の物語の「軌跡」を辿ると、大元に立っているのは傘木希美です。
彼女が(あすかが言ってたように)旧3年が引退するまで雌伏していれば大量退部騒動自体が起きなかったでしょう。
葵が辞めて行った子らに負い目を感じることもなくなり、彼女がコンクール前に退部することもなかったかも知れません。
また、香織が上級生と下級生の間を取り持つために奔走することがなければ、優子の香織に対する憧憬の念も、ここまで強いものにはなり得ず、ソロ対決が起きなかった可能性すらあります。
無論、希美自身も部に残ってるわけですから、みぞれの問題も顕在化しません。
つまり、ここまでのドラマの数々は、「希美が幕を開けたから起きた」のです。

こう言うと、なんだか希美が諸悪の根源のように思えてきますが、では「幕を開けなかった方が良かったのか」と言えば、それは違うと思います。
確かに様々なトラブルは表面上は発生しなかったかも知れませんが、
その場合、葵は受験との両立という課題を抱えたまま部に残り、
香織は「納得」を得ることなく3年間の部活動を終え、
(しかも、満座の前で白黒付けることないので、ララがバラ撒いた贔屓疑惑だけが残る)
麗奈も「香織や優子の想いを知る」ことで良い方向に変わる機会を得ず、
みぞれも自己評価の低いまま、希美への依存を続けていたはずです。

希美が「幕を開けた」ことで、隠されていたはずの諸問題が連鎖的に顕在化し、
それらを解決・昇華させる過程で、それぞれが成長した結果が、今の北宇治吹奏楽部なのです。
故に「希美が幕を開ける」カットは、これまでの北宇治が歩んだ「軌跡」と「奇跡」を象徴するものだと言えるでしょう。
{/netabare}

投稿 : 2017/01/06
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サンキュー:

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