岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
この国の未来を創るのは誰か
劇場版完結編。小説版も併せて読了。
本作はあがりを決め込んだ上の世代と、その世代によって搾取され、踊らされている若い世代の立ち位置を、ニートや王様という存在を用いて意欲的に表現した。また日本に漂う独特の閉塞感、いわゆる目に見えない空気と闘う、滝沢という一人の青年を、彼に惹かれた女の子の視点から描いている。
滝沢朗は、魅力的で謎に満ちた不思議な人物である。今私たちはこの瞬間も、この閉塞感漂う世の中から脱却するため、彼のようなヒーローを待ち望んでいるのではないか。いわば彼は私たちにとって一筋の希望の光なのだ。ではこの国の未来を創るのは、彼なのだろうか?いや
「この国の未来を創るのは、良くも悪くもやっぱり、私たちなのではないか。」
と、改めて考えさせられた一作だった。社会や世界は劇的には変わらない、100億のセレソンゲームでもそうなのだから、現実の社会では言わずもがなである。それでも作品を見終えて、落胆や絶望感よりもむしろ、何とも表現しがたいわずかな希望を感じた。それはもしかしたら希望であってほしいという、自分から自分に対する励ましなのかもしれない。
それでも自分が感じたこの気持ちを無駄にしたくない。この気持ちが無駄であってほしくない、と素直にそう思う。
謎の多いセレソンゲームも一応の決着を見て、いくばくかの余韻を残すラストになっている。物語は頭脳戦というよりもパワーゲームになってしまった感や、滝沢の出生の秘密など、物語の方向性が変わってしまった気もする。それでもなんとか一つの作品を描き切ったという点は評価したい。ただ劇場版を2作で描かなかった物語かといえば、少々の疑問も感じる。特に劇場版に関しては賛否両論は避けられないだろう。
それでも本作が私にとって大きな影響を与えたことは事実であり、これからもそれは変わらないと思う。非常に多くのメッセージが散りばめられた意欲作であり、今後のたくさんの人に見てもらいたい作品である。
Noblesse Oblige... 今後の私たちがよりよい救世主たらんことを。