「バンパイアハンターD(アニメ映画)」

総合得点
73.2
感想・評価
167
棚に入れた
1071
ランキング
1015
★★★★☆ 4.0 (167)
物語
4.0
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

セメント さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

飛べ、飛ぶのよ

30年以上前に刊行されて今尚も連載中の超巨編、菊地秀行先生の「吸血鬼ハンターD」を原作としています。
2度アニメ化されていて、原作1巻をベースとしたOVA版が1985年に、3巻をベースとした劇場版が2001年に公開されてます。
それも劇場版は国内で公開する以前にアメリカで先行公開していて、製作段階から向こう側の意見を多く取り入れるなど海外展開ありきの戦略を取っています。
その分海外では大人気な反面、日本の知名度が低いようにも見受けられます。


<物語>
冒頭のシーンでいきなり宇宙に浮かぶ謎の施設(夜の都)が映って、中世ヨーロッパな世界観から鑑みて驚く方も多かったのではないでしょうか。
実は"1万年と2千年"後の未来のお話なんですよね、本作って。
なので超科学の産物も次々と出てきますし、大気圏外にも簡単に行けます。
"貴族"と呼ばれる吸血鬼に支配されていた人類が抵抗し始めて、陥落させつつある時代にあって、ゴシック大好きな吸血鬼達の趣味の名残が風景に反映されているだけに過ぎません。
冒頭で登場した夜の都は、驚く勿れ吸血鬼が建設した侵略宇宙人との戦いの拠点なんです。
タイトルからは想像もつかないでしょうが、しっかり"未来SF"してるんです。

<作画>
芦田豊雄監督のOVA版も決して悪いわけではないですが、川尻善昭監督の本作がそれこそ抜きんでていますね。
原作者の菊地先生も納得の出来栄えということで、その凄さが伝わるんじゃないかと思います。
外連味に満ち足りた迫力の画面作りが成されていて、人知を超えた映像を見ているような気分に酔いしれます。
流石はセルアニメ最後の生き残りにして最上の到達点とも言われるだけの技術の水位があります。

<声優>
OVA版ではDの声が塩沢兼人さんだったのが、田中秀幸さんになっていますね。
お亡くなりになられた次の年だったので、残念ではありますが致し方ないです。
田中秀幸さんもこれまた渋い演技でバッチリDに合っていたと思います。
左手の永井一郎さんは続投で、後は新キャラですね。
マイエル役の山寺宏一さん、レイラ役の林原めぐみさんを始め、出演されている声優全員豪華です。

<音楽>
音楽はイタリア人のマルコ・ダンブロシオさんが担当、壮大なオーケストラのサウンドで聞き応えがあります。
主題歌のDo As Infinityが歌う「遠くまで」はどうでしょう、ちょっと浮いてますね。
OVA版は小室哲哉さんが担当していて、そっちも趣深くて好きなんですが、サントラはプレミア付いてて手が出ないです。
「Twinkle Night」に「組曲Vampire Hunter D」が収録されてて、こちらは安いですけど。

<キャラ>
物語の本筋は人間と吸血鬼との愛の逃避行でしょう。
マイエル一人を乗せてどこまでも飛び行くロケットを見た時の物悲しさといったらありません。
マイエルもシャーロットも描写が増し増しで、激動たる運命を歩む主人公とヒロインのように映りました。
これではDが蚊帳の外のように思えていけませんが、何しろ寡黙で自分を出さないので悪しからず。
とはいってもDの不動の信念も確と感じられて、プロローグの小粋な計らいが活きてくるんですけどね。
マーカス兄弟は噛ませ犬かと思わせて獅子奮迅の活躍を見せます。
特に幽体離脱して破壊光線を繰り出すグローヴは、妹想いの優しい兄に変わっていて驚愕ですよね。
レイラも人間味が溢れんばかりに描かれていましたね、吸血鬼を親の仇と憎みながらD達に触れて揺らぎ、ラストシーンでは打ち上げの成功を祈願するまでに至ってますからね。
キャラクターに関しては短い間に色濃く味付けが出来ていて感心するばかりです。


西洋文学におけるバンパイア像を取り入れつつ、独自の解釈で和製ファンタジーに埋め込んでいった本作は、「HELLSING」や「BLOOD」など昨今の作品に多大なる影響を残しています。
吸血鬼ものの主流として抑えておきたいところですね、紛れもなく見ておくべきアニメの一つでしょう。

投稿 : 2016/12/02
閲覧 : 380
サンキュー:

7

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