「色づく世界の明日から(TVアニメ動画)」

総合得点
87.2
感想・評価
1131
棚に入れた
4823
ランキング
159
★★★★☆ 3.9 (1131)
物語
3.7
作画
4.2
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

きつねりす さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ここ何年かでも最高クラスの作画力に裏打ちされた作品

タイトルからして作品のキーワードであり、ストーリー全体においても大きな意味を持つ「色」。それを13話の中でどういう描いていくかということで視覚的な期待は見る前から既に高かったのですが、それを大きく上回るクオリティで驚きました。作画崩壊だ手抜きだといった批判が起こるこのご時世、この作画能力を地上波で発揮し続けた制作陣は本当に凄いと思います。実際に行ってみたくなるロケハンの徹底ぶりは現地民をも唸らせる(一緒に見ていた長崎人がしきりに「あ~〇〇だわ~」と浸っていた)ほど。坂、階段、夜景、市内を路面電車が走る風景など、実際に訪れたくなる描写の細かさがまずいいと思いました。

次に徹底的に写実的な世界観。アニメ特有のデフォルメはほぼ全くと言っていいほど排除されており、その分前述した情景の美しさやその空間の空気を醸し出す背景、表情といったところで表現しようという終始一貫したコンセプトが見て取れました。作中夜のシーンや夕方のシーンもかなり多いのですが、そういったところの影の使い方や光の淡い感じなども印象的に、時にリアルすぎるほど鮮明に描かれていました。そういった力の入れ込みようがあるからこそ、「色のない世界」というのが逆に映えてくるんだろうなと思います。

作品の中で重要な「色」に関するところで言うと、やはり主人公・瞳美が出会う高校の仲間たちが触れている「写真」・そして唯翔の描く「絵」という要素は切っても切れないものであると思います。どちらも「色」があるからこそ成り立つものであり、唯翔も物語の中で「色のない世界なんて想像できない」と話しています。その言葉の通り、あって当たり前のものが無い瞳美に対して「白黒だと受け取る側の想像力が掻き立てられる」と優しく寄り添う唯翔、対してフィルム写真にこだわりを持ち白黒の表現を追い求め続ける将。唯一瞳美に「色」を教えてくれる絵を描ける唯翔と、同じモノクロの世界を切り取ることに惹かれた将・・・軍配がどっちに上がったかという野暮は置いといて、二人が瞳美を思うがゆえに取った行動、どちらも素敵だと思います。

人間模様も良かったです。男3、女4という構図になる以上誰かが辛い思いをするとは分かっていながら、生まれた行き違いなどを曖昧な感じで終わらせず、それぞれが一つずつ踏ん切りを作っているところも名作と思えた点でした。瞳美が戻った後の間柄は{netabare} ラストで語られる「絵本」の中で描かれていたキャラクターそのものと解釈して良いはず。皆収まるべき鞘に収まったという感じか・・・そして琥珀もしっかり相手を見つけてる辺りが隅に置けない。{/netabare}一つ言うならあさぎちゃんマジ強いし可愛いし最高。絶対幸せになって欲しいキャラ堂々の一位です。

印象的だった回は {netabare}6話。ハリネズミのジレンマを語ってからの「優しい距離」という詩的な表現、「絆って少し叩いた方が強くなる」という人生哲学等の深い言葉に加え、唯翔の心象風景に触れる→反発→リターンの流れが最高。初めて現実世界が色づいて見えるという現象が起こった回でもあり、考察が深まるとともに見どころの多い回でありました。{/netabare}

最後、{netabare} 「しあわせ」という感情にトリガーがあったこと、そして瞳美の心象風景に唯翔が触れて思いを確かめ合ったこと・・・この結末への運び方は涙出ました。良かった・・・
でも結果的にこれが今生の別れとなってしまうあたり、やはりリアリティを追求した作品だなと思いました。フィクションに走りすぎない。「魔法」という超現実がありながらも、絵に描いたような奇跡は起こらないという60年の歳月の隔たりを感じた部分でもありました。しかし、これから色を取り戻した瞳美が歩む世界は、きっと何色にもなれるという希望を感じさせる満ち足りた世界になるんだろうと予感させるものがありました。

少し強引すぎる周りに振り回されながらも、最後は自分の足で立ち上がり世界を見つめることが出来るようになった主人公。素晴らしい世界の輝きも、何気ない日々のワンシーンもこの目で見ることが出来る、そしてその両方が色づいて「しあわせ」を感じ取ることが出来たなら・・・おそらくもっと人生が楽しくなるんじゃないかと思えました。{/netabare}

傑作、異論なしです。

投稿 : 2019/05/24
閲覧 : 513
サンキュー:

14

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