「天気の子(アニメ映画)」

総合得点
84.0
感想・評価
703
棚に入れた
3028
ランキング
298
★★★★☆ 3.9 (703)
物語
3.7
作画
4.5
声優
3.7
音楽
4.0
キャラ
3.7

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ネタバレ

きつねりす さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

これは絶対スクリーンで観るべき作品

それぞれの項目から簡単にレビュー。一言で言うとかなり面白かった。でも基準として「君の名は。」とかの過去作があるので、そこと比較しながらの感想になってます。
<物語>
偶然、奇跡、そういったものを飛び越えるドラマチックな展開は「君の名は。」以上。結構リアル寄りに描いてた「君の名は。」に対して「天気の子」はダイナミックさで上を行くなと思いました。ただ、そのダイナミックさは行動にも表れてて、帆高たちは余裕でアウトなことをしまくってるし(発砲、逃亡、雷でトラック火災とか・・・)モラル的にはよろしくない。でもそこを突っ走ることで帆高の一途な思いというところに光が当たるわけで・・・この辺りが個人的には「賛否両論」といったところに行きつくのかなと思います。
作中、色々な印象的な言葉が出てきて、その度にハッとなりました。文学的名台詞連発の「秒速5センチメートル」に比べるとそれほどの頻度は無いものの、心を打つものがあります。一番はやはり「このままがずっと続けばいい」という意味の「僕たちに何も足さず 何も引かないで欲しい」という言葉。めちゃくちゃ表現が素敵!他にも表現の美しさというよりはかつて日本もそうだったんだよな・・・という「今の子は可哀そう 昔はもっと季節が素敵なものだった」とか、確かにそうだな!という「天気一つで心が左右される」とかが心に刺さりました。
そしてラスト。「世界を大きく変えてしまった」と自分の我儘で世界を狂わせてしまった罪悪感を抱える帆高に、「もともとこの世界は狂ってる」と声をかける大人・須賀の存在はめちゃくちゃ大きかったと思います。ここが帆高の自己完結で終わってたら、映画の伝えたい「やりたいようにやればいい」というメッセージが曖昧になってしまうと思うので、そこではっきりと大人が道を正してやるという構図になるところがポイント高いし、大衆向けになっているなと感じました。でもこれも取りようによっては自暴自棄とも取れるし、ここも賛否両論かと。わずかすぎる望みを見事に回収する締めは前回同様涙ものですね。
<作画>
これはやはりスクリーンで見る作品だなと感じました。雲間から覗く太陽、青空の広がり、刻一刻と色を変える光、夕焼け、振り続ける雨、そびえたつような雲。これこそ映画館の大スクリーンの醍醐味!といわんばかりに広がる美しい世界にやられました。天気を主題にしている時点で新海監督の得意とするところだな、とは感じていたのですが、その想像の何倍も良かったです。そして、東京の風景を形作っている実名の看板や、現実にある商品をそのまま持ってこれるくらいのタイアップがついていることは「リアルさ」に定評のある新海作品にとって追い風だったのでは、と思います。「自然」だけでなく「都会」の没入感まで凄いのか・・・と無敵さを感じずにはいられませんでした。
<声優>
キャラにはまる声、という点でやはり選ばれただけあって十分すぎるキャスティング陣。脇を固めるキャラクターまでしっかりと有名どころを起用している所に意気込みを感じました。個人的に本田翼がかなりハマってて、声優上手だなと思いました。
<音楽>
前作「君の名は。」を超えられなかったと感じたのは唯一この点くらいかと。掴みの「夢灯篭」で一気に引き込み、中盤の「前前前世」、終盤「スパークル」ときて、ラストに「なんでもないや」という組曲のような完璧な流れ。これに比べると歌ものの印象が弱かったふうに感じます。度々流れる「愛にできることはまだあるかい」の完成度に引っ張られていたような印象。でもサントラを聴いただけで「あのシーンか!」とくるくらいに心に染みついている気はします。良いんだけど、前作が強すぎた。
<キャラ>
ここしか書くところが無いのでまず堂々と描きますが、「君の名は。」のキャラが出てくるのは本当にアツい!主要キャラは分かりやすいように書かれてたけど、テッシー・さやちんがちょっと分からなかった・・・のでもう一回見てきます(こうやって2度、3度と見ることになるんだろうな・・・)。「言の葉の庭」の先生が「君の名は。」で先生してたりするのでこれもファンサービスなのかな、と思ったりします。憎い!
サイドキャラクターに関して言うと、終盤少し置き去りにされてる感はありました。でもこの部分は「君の名は。」同様アナザーサイドって形で小説になりそうな予感がしなくもないし、是非そうして欲しい。新海誠作品で多分一番キャラのバリエーションが多いことから、その広げ方を意識している感じは伝わってきました。と同時に、従来のアニメ作品のような「この作品だけで楽しめ!」というスタイルからは変わって来てるなと感じます。ひとつ言わせてもらうと、絶対主人公にとって良くない役だろうなと思ってた須賀が実はめちゃくちゃ主人公思いで、完全に予告編に一杯食わされました。まだまだ見る眼が無いな~。

映画全体で気になったところとしては、ちょっとずつ名作を彷彿とさせるシーンがあったように感じたこと。青空の下線路を走るシーンは「時をかける少女」が、帆高と陽菜が天から降りてゆくシーンは「千と千尋の神隠し」が頭の中で重なりました。名作はやはり同じ道を辿るのか・・・。
個人的名シーンは花火大会を晴れにして見せた夕焼け、からの「自分の意味が見つかったような気がしなくもなくもなくも・・・」とおどけてみせる陽菜に帆高の心が動くシーンと、雲の上に行く直前に暗闇の中透き通る身体を目にした帆高が思いをぶつけるシーン。このシーンは何回も見たい。そしてその思いを胸にまたきっとスクリーンで映画も見るし円盤も買うんだろうな・・・。幸せ。
ただ、こういった幸せ路線ではない作品を描く新海誠にも期待している自分がいて、そこの描き分けを隔年ごとにやってくれるとファンとしてはもっと嬉しいというのも正直な気持ちです。

投稿 : 2019/07/20
閲覧 : 354
サンキュー:

10

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