「ヴィンランド・サガ(TVアニメ動画)」

総合得点
79.8
感想・評価
417
棚に入れた
1623
ランキング
475
★★★★☆ 3.9 (417)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

歴史の黄昏

11世紀の北欧等を舞台に、ヴァイキングたちの生き様を描いた
同名コミック(未読)のアニメ化作品。


【物語 4.5点】
重厚。本当の戦士とは何か?戦場に本当の戦士はいないのか?
大人から子供への説教で終わらせるのではなく、
少年主人公の半生を通じて、様々な登場人物たちの視点も交えて、
テーマを{netabare}クヌート殿下のシチュー{/netabare}(※極秘事項)の如く
ジックリ煮込んで味わわせていく“壮大な序章”。

戦場に没入するだけでなく、適宜、戦場から離れた所から進捗を確認する演出も◎

例:{netabare}"不信心”故、ヴァイキング兵団の暴虐から生き残ってしまった村娘が"憧憬”する彼らの悪逆非道ぶり。
 
・負傷したトルフィンが、村の母娘に介抱されたエピソードでの、少年兵の人間性残存と損壊具合の確認。
 
・ボコられ収監されたトルフィンが、レイフに故郷帰還を説得されるエピソードでの……以下同文。{/netabare}


【作画 4.5点】
濃密。エロは自主規制されたそうですが、グロは部位欠損含めて容赦なく攻撃的。

人物描写は、闘気が漲るだけでなく、表情で腹の内を垣間見せるハイレベル。
トールズの達観したような澄んだ瞳、アシェラッドの色々と諦観したようなくすんだ瞳、
戦場で何時までも場違いなトルフィンの面構え……。
顔面で伏線を張ることができる男達が魅せる腹の探り合いが、シナリオをさらに重厚化。

そんな彼らも、世界の中では、ちっぽけな存在に過ぎないことを思い出させてくれる、
うねる波など、背景の壮大な自然描写も好評。


【声優 4.5点】
奥深い。濃口のキャラを好演するだけでなく、
各々、人生訓やビジョンを披露する際の語り口も巧妙。
“演技”を飛ばす際の口車など、油断したら視聴者も巻き込まれるレベル。


【音楽 4.0点】
劇伴には突出した名曲はないものの、弦楽が狂気にも追随する等、戦場、心情描写を好アシスト。
OPは前後期共に男性ロックでぶちまけた狂乱する戦場で先制パンチを喰らわせ、
EDは前後期共に女性バラードで鎮魂するように締めくくる様式美。


【キャラ 4.5点】
濃厚。登場人物が戦場でちゃんと狂っていく点もポイント高し。
(戦場で変わらないのは元々戦闘狂だったトルケルさん位?)
戦でキャラがイカれて、ついでに物語までイカれた……何て事例も多い中、
しっかりイカれて、物語の深化に寄与した非凡なキャラ立てを評価。


【感想】
古今東西、歴史や神話は、完全なる神々の黄金時代から、
不完全な人間の時代、そして終末へと向かう、下り坂プロットが主流。
人類は自然を加工して発展できる唯一の存在、
発展段階論に基づき、進歩していく等という、
思い上がった歴史観の方がむしろ例外的……。

そんな歴史学観を抱く私にとって、本作は中世の話ですが、
心身に余裕のある時を選んで視聴した“終末アニメ”枠でした。

特にアシェラッドによる“歴史の授業”は心に刺さりました。
古代ローマの時代から、奪い、殺し合い、そんな歴史すらも忘れて、金の亡者に成り下がり、
本能の赴くまま戦う、知性なき畜生たちの最終戦争(ラグナロク)へと転がり落ちて行く……。

これでは、古代の科学や教養を捨てて、信じる者だけが終末後に救われると吹聴する宗教に
すがり付く人々が欧州を覆い尽すのも当然というものです。
もっとも、本作の“終末世界”では、
十字架の神通力すらも、酒の力等を前に?綻びを見せているようですが……。


最終話のアシェラッドも……(※核心的なネタバレ)

{netabare}自分はケルト人の英傑の末裔で、ブリタニアの正統な支配者で、
サクソン人やデーン人などクソ喰らえ……とか、
そんな“使命”すらも実はどうでもよくなっていて、
トルフィンの復讐でヴァルハラに送られるなら本望だったということなのでしょうか?

それすらも祖国ウェールズの安寧と引き換えにして叶えられず……。
哀しみがズッシリと伝わって来る乱心の“怪演”でした。{/netabare}

投稿 : 2020/01/23
閲覧 : 459
サンキュー:

36

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