「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-(TVアニメ動画)」

総合得点
75.7
感想・評価
404
棚に入れた
1698
ランキング
764
★★★★☆ 3.7 (404)
物語
3.4
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿  -魔眼蒐集列車 Grace note- レビュー

Introduction
公式サイトより引用
「Fate/Zero」において、征服王イスカンダルとともに第四次聖杯戦争を駆け抜けた少年ウェイバー・ベルベット。
時を経て少年はロード・エルメロイの名を受け継ぎ、「ロード・エルメロイⅡ世」として、魔術師たちの総本山・時計塔で魔術と神秘に満ちた様々な事件に立ち向かう―――。

原作・三田誠によって描かれる正統かつ至高の魔術ミステリーが待望のアニメ化。人気エピソード「魔眼蒐集列車レール・ツェッペリン」と、そこへ至るアニメオリジナルエピソードで構成される。
アニメーション制作は「アルドノア・ゼロ」「Re:CREATORS」などを手がけ、緻密なフィルムと色彩の美しさに定評のあるTROYCAが担当。監督は「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」で監督デビューし、同じく監督作の「やがて君になる」でも美しい画面づくりで海外からも高い評価を得ている若手演出家・加藤誠が手がける。さらに「Fate/Zero」の監督を務めたあおきえいがスーパーバイザーとして作品世界の構築に加わり、音楽は「Fate/Zero」「魔法少女まどか☆マギカ」などを手がける梶浦由記が担当、イギリス・ロンドンを中心に描かれる本作の世界を彩る。

これまで謎に包まれていたTYPE-MOON世界の根幹『魔術世界』を舞台に繰り広げられる、神秘と幻想、魔術と謎の交錯する物語、開演。
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さて、この作品はFateシリーズのスピンオフ作品であり、ファン向けの作品となっています。
主人公ウェイバーや登場人物に関しては、「Fate/zero」の物語を知っていなければ、どのような因果を負っているのか、理解できないところがあるでしょう。
また、メインストーリーを理解するためには必要はないですが「Fate/apocrypha」の登場人物も出るため、初めてFateシリーズを見る方にはお勧めできませんかもしれません。

それでもこの作品を、ミステリというジャンルから入るような方もいらっしゃるかもしれませんが・・・。

さて、私の今回の視点としては、この作品をミステリとして見たときどのような事が言えるか?です。

私がまず最初に最も気になった点、それはウェイバーが「Why done it? 」というミステリ用語を、多用することです。これが、今回のウェイバーの決め台詞、というか、口癖のように設定されています。

私がこの決め台詞にどういう印象を抱いたか。それは、これを口に出すことでウェイバーの人間性が垣間見えてくる、という事です。

まず、「Why done it? 」、これが、今作品の中ではミステリ用語であり、世間一般的なイメージでもミステリ用語である事は知られていると思います。
ミステリーにおける事件については、5W1Hという聞いたことのあるような単語の指す設定がしっかりしている事が多いですよね。このWhy~はそのWの一つです。

what(対象)やwho(犯人)、where(場所)、when(時間)Why(動機)How(方法)は、犯人の仕掛けたトリックによって偽装、隠蔽されているという、ミステリ的な要素も確かに感じました。

魔術という要素が入ったことで、その魔術を視聴者に説明する時間、というのも確かにあったと思います。
今作における魔術、はミステリにおける偽装、隠蔽を行うトリックにもちいられます。
魔術という物の仕組みや、成り立ちが、20分余り、または2~3話構成の40分60分の中で説明されているのか、トリックとなる魔術を解くカギが、ウェイバーが謎を解く前に、提示されていたのか?提示されていなければ、視聴者が知らない法則によって解決される、作者の後出しじゃんけんミステリになってしまいます。
その辺が、この作品のファンタジーミステリーとしての評価基準になると思います。
私は、魔術によるトリックが説明されている部分を多少読み取ることが出来たので、恐らく、トリックを解く鍵はそれぞれの話で提示されていたのでしょうと考え、それほど悪くない作品だと思っています。ただ、私はファンでも何でもないので再視聴して確認するようなハマり具合でもないため、どこに提示されていたかの種明かし(推理のピースをどこで拾ったかの回想)は欲しかったかなと感じています。これを書いている間に、ウェイバーが推理のピースをどこかで拾ったという描写を入れる事、視聴者に関連する魔術の成り立ちを物語に差し込んでおくことは不可能ではないなと感じました。


話を「Why」に戻します。なぜウェイバーは動機にこだわったのか。誰々を〇〇の理由で殺したかったから殺した。これは殺害の動機ですが、トリックが介在するミステリーの場合、何故犯行を隠蔽したか?という動機が存在します。殺害の動機は物事を排除する向きがありますが隠蔽の動機は物事を継続させようとする向きが有ります。
犯人は自分が犯人であることを隠したい、事件を隠したいという、隠蔽の動機であることが多い。しかし、それは、犯人が明らかになった状態で、トリックが明らかになっていない場合、犯人がトリックで隠蔽したい物は、別の物である事になります。
そこに自己保身以上に大切な隠したいものがある、という情緒的な意味で、ミステリにおいてはしばしばwhyは重要な評価基準になるわけです。
しかし、作品の物語内に存在するウェイバーにとって、ミステリとして面白いからwhyから入る、ではなく、whyを知ることで、トリックが効率的に解けるという理由がなくてはいけません。もしくは、こだわりがあるか、です。私個人としては1クールを使って彼がなぜwhyをこだわっていたか、征服王と彼の物語においてその謎を解くカギがあったと思っています。

さて、客観的に、その「Why~?」を口癖にしてしまうことについて、私は彼の性格が出ていると思います。ミステリ用語である「Why~?」を口に出してしまうことによって、探偵になり切れない読者、というイメージを感じました。常に基本に従って謎を解くという、彼の性格がよく出ている。その口癖は、スタイリッシュなように見えて、実は実直で泥臭い。そういう探偵像ですね。


さて、まとめです。
アクションシーンなどは、Fate/zeroなどに比べれば、それは言うまでもないのですが、しかし、Why done it? にこだわりを持って謎を解くカッコ悪いが真面目な探偵、情緒的な心理描写等、見所は確かにあったと思います。
スピンオフ作品なのでニッチな需要に応えた作品ではあると思いますが、私的にミステリ、ファンタジーミステリへの理解を深める上で参考になったと感じました。

投稿 : 2020/03/20
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サンキュー:

30

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