「ケムリクサ(TVアニメ動画)」

総合得点
76.9
感想・評価
527
棚に入れた
1812
ランキング
650
★★★★☆ 3.6 (527)
物語
3.8
作画
3.3
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

ちゃんもり さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

これがたつきワールドか。

「ケムリクサ」。

何処かで聞いたことがあるような気がするのに、何処にも
意味が存在しない言葉。ただカタカナ5文字で綴られたこの
タイトルは、視聴する前から様々な想像を掻き立てる。
そして可愛らしい少女が薄暗闇に舞う、美しくもどこか不気味さを
感じさせるティザービジュアル。
たつきというアニメーターの真骨頂は、何と言ってもこの
オリジナリティ溢れる世界観と言って良いだろう。

本作を視聴するに至った皆さんの多くは、おそらく
「けものフレンズ」も視聴していることだろうが、
知らない人のために少しだけ紹介しておくと、
「じゃぱりパーク」という名のサファリパーク的な場所に
迷い込んだ「カバンちゃん」という名の幼女が様々な
どうぶつ(幼女)と触れ合いながら自分と同じ「にんげん」を
探して旅をするお話である。
上記の触れ込みだけ聞くとキャラ萌えアニメのように
聞こえるかもしれないが、動物がみんな幼女化していることや
パークにカバンちゃん以外の人間がいないことにも実は
伏線が貼られており、明るくほのぼのとした作品の空気感とは
ある意味ミスマッチな謎解き展開も見どころのひとつだ。
けもフレがただ女体化した動物たちが可愛いだけの
アニメであったなら、当然社会現象にまでなっていないだろうし、
たつき自身の知名度もここまで上がっていなかっただろう。
そこには何と言っても観る者を惹きつけて止まない魅力的な
世界観とキャラメイキングが確かにあったことの証左である。

そして何度も言うが「ケムリクサ」。
私はこのタイトルを初めて見たとき「天才か」と思った。
これは思いつかない。めちゃくちゃカッコイイ。
最近よくある「〇〇が✖️✖️で△△できない」みたいな
もう身も蓋もおまけにセンスの欠片もないタイトルとは雲泥の差だ。

そしてそのタイトルに迸っている類稀なセンスはやはり本作の
世界観に於いてもビシビシ伝わってくる。
けもフレでも漂っていた「ほのぼのしつつも何処か不気味な世界観」は
荒廃した近未来のディストピアを舞台により色濃く描かれる。

生き延びるために水を探し、「ムシ」と呼ばれる外敵と戦う
少女たちがある時ワカバという名の記憶をなくした青年を
拾ってしまったことで物語は始まる。
ケムリクサと呼ばれる様々な色の木の葉を使ってムシを撃退しつつ
ワカバと少女たちは新たな安住の地を求めて旅に出る。
旅の中で、彼らの生い立ちと旅の真の目的が明かされていく。

あらすじとしてはこんなところだろうか。
私個人的にはストーリーとしても十分に及第点をあげられると思う。
3DCGを活用したキャラクターデザインや戦闘シーン、
ボーカロイドを起用したダンサブルなEDはまるで
動画投稿者が作成したMAD映像がそのままプロのクリエイター領域に
達してしまったかのような印象を受ける。
ニコニコ動画やyoutubeでの「お遊び」だと思われていた文化は
今や、今まで誰も作れなかったような新世代の映像芸術にまで
昇華しつつある。時代というものは恐ろしい。

少し謎を残したままな終わり方は気になるところではあるが、
本作のアートフィルム的側面を鑑みるに、全てを説明し切ってしまうよりも
余韻の残る良い幕切れだったと思う。

「良い」「悪い」「おもしろい」「つまらない」
そんなものは観る人によって違う。
クリエイターにとって、何よりも大事なものは個性だ。
たつきという人物が放つ強烈な個性が今後も楽しみである。

投稿 : 2020/03/31
閲覧 : 246
サンキュー:

6

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