「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(TVアニメ動画)」

総合得点
89.3
感想・評価
6798
棚に入れた
30622
ランキング
83
★★★★☆ 4.0 (6798)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.3

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ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

「ぼっち」の処世術

アニメーション制作:ブレインズ・ベース
監督:吉村愛、シリーズ構成:菅正太郎、
脚本:待田堂子・菅正太郎・高山カツヒコ、
キャラクターデザイン:進藤優、
音楽:石濱翔、MONACA、原作:渡航

物語シリーズの主人公・阿良々木暦は、
ある時期、意識的に友だちを作らなかった。
なぜなら「人間強度」が下がるから。
つまり友だちという存在がいることで、
相手に合わせたり、慮ったりすることになり、
自分が身につけるべき「本当の強さ」が
損なわれてしまうというのだ。

しかし、この理屈は後付けだと私は思っている。
もちろん、阿良々木暦は信念の人だが、
「人間強度」を言い出した理由は、
もっと単純なことで、ぼっちになった自分を正当化するための
詭弁のようなものではなかっただろうか。
それと同じことがこの作品の比企谷八幡にも言える。
時おり想起する、気に入っていた女子から
すげなくされて、クラスでバカにされたことが、
人と積極的に関わることをやめた原因。
「青春」という名のもとに生まれる
様々な期待感やそれにまつわる欺瞞から逃れるために
正当と思える自分が納得できる理由を作ったのだ。
いわゆる、これは「逃げ」に過ぎない。

そう考えると、八幡の言う「本物」を求めるために、
ぼっちになっているという自己完結の理屈は、
とても滑稽に思えてくる。
集団からはみ出しても信念があるなら構わないのだが、
八幡の場合、その理由はとてもちっぽけなものに思える。

それとは方向性が少し違うのが雪ノ下雪乃。
彼女は、その容姿と明晰な頭脳から、
多くの人から注目される存在。
しかし、男子から好意をもたれることから、
女子の嫉妬を一身に受け、
頻繁に上履きを隠されることになる。
女子の嫌な部分を痛感することで、
歯に衣着せぬ発言に拍車がかかり、
他人を遠ざける孤高の人となった。

雪乃の場合は、持つ者ゆえの苦悩とでもいうべきもの。
それを隠して日々を過ごすこともできたはずなのに、
彼女はそれを選択しない。
自らに嘘をつかない信念を貫き通す「真っ直ぐさ」に
八幡は尊敬の念と同志のような思いを寄せる。
そして、そんなふたりに共感して
憧れたのがギャルの由比ヶ浜結衣だった。
3人は奉仕部という部活で、
人の悩みを聞いて、その解決法を探ることで、
人間的に成長していく。

私はこの作品をそれなりに気に入っていると
思うのだが、未だによく理解できない部分もある。
八幡が「ぼっち」の立場から物事を解決していく
物語手法は、確かに斬新だ。
ただ、この作品をあまりそういう観点ばかりで
観ていると、作品の目指しているものが、
よく分からなくなってしまう。
八幡はいつも斜め下の方向から解決策を講じ、
それによって自分を貶める結果になる。
問題が解決しているため、正しい行動のように
見えるが、釈然としない気持ちになる。

渡航が脚本として参加したアニメ
『クオリディアコード』も
渡氏の原作のところが興味深い。
ここでも妹思いの千種霞という男が登場し、
そのキャラクター像は、八幡とかなり被る上に
リアリティを感じるので、作者自身を投影している
人物像であることは間違いないだろう。
そういう部分は、とてもよくできていると感じる。

ただ、俺ガイルは、細かく観ていくと、
突っ込みどころが多々あるのは確かだ。
例えば、ラストを締める話は、かなり無理がある。
{netabare}そもそも相模が実行委員になる過程や
委員長にまでなって、仕事を投げてしまう部分に説得力がない。
それと、担当教員の平塚が何もしなさすぎる。
どう考えても、もっと前の段階でテコ入れするはずだ。
おそらく、この話は会社の社内プロジェクトを
参考に考案されたのだろう。
その場合に問題になるのは、仕切るのが無能の年長者で、
自分の仕事を振りまくる構図だ。
つまり、給料を多く貰っている上司が大きい役割を
担うことになるが、自分では何もせずに
部下に無理な仕事を押し付けて失敗するパターン。
これは、立場に差のある会社のプロジェクトならではで、
同等の立ち位置の文化祭の実行委員の話としては、
能力のない者が自らトップに立候補して、
大失敗するという展開が、説得力に欠ける。{/netabare}

{netabare}それと、解決法として八幡が嫌われ役になることで、
相模への批判の矛先を逸らし、
やる気を出してもらうという、
今ひとつ納得ができないお話になってしまっている。
八幡の役割は必要だったのか、と感じてしまう。{/netabare}
しかし、キャラクター同士のやり取りや
性格の表現はとても上手く描けていると思う。

1期での物語はいくつもの問題が残っている。
雪乃と姉・陽乃との軋轢、
八幡に好意を寄せる結衣との恋の進展、
交通事故によってつながった3人の関係性など
2期に向けた期待感のようなものは味わえた。

「ぼっち」が主人公になるためには、
「間違える」しかないのか。続きが気になる。
(2020年5月30日初投稿)

投稿 : 2020/12/04
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サンキュー:

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