「喰霊-零-(TVアニメ動画)」

総合得点
88.6
感想・評価
4583
棚に入れた
20585
ランキング
103
★★★★☆ 4.0 (4583)
物語
4.1
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

Fanatic さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9
物語 : 1.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 1.5 状態:観終わった

期待して観たのですが……凡百の退魔バトル(,Ծ‸Ծ,)?

原作未読、アニメ版のみの視聴。

あにこれ初め、各アニメサイトでも概ね評価が高かったので期待して視聴したのですが……。
正直、この作品がなぜここまで高評価なのか、まったく理解できませんでした。
全体的にネガティブな内容となるため、本作を好きな方はご容赦下さい。

時期が前後しますが、制作AIC×監督あおきえいさん×シリーズ構成高山カツヒコさんは「アルドノア・ゼロ」と同様の布陣ですね。

■原作:瀬川はじめ 『月刊少年エース』(2005年12月号 - 2010年3月号)
■制作:
 asread. 「みなみけ(おかわり&おかえり)」「未来日記」他
 AICスピリッツ 「デート・ア・ライブ」「アルドノア・ゼロ」「はがない」他
■監督:あおきえい 「アルドノア・ゼロ」「空の境界」他
■シリーズ構成:高山カツヒコ 「サクラダリセット」「アルドノア・ゼロ」「未来日記」他
■キャラデザ:堀内修 「フルメタル・パニック」「ハヤテのごとく!」他

以下、疑問点を明記する上でもネタバレ全開になってます。ネタバレが視聴感にかなり影響する構成なので、未見の方はご注意ください。
(個人的には、多少ネタバレしてたくらいの方が素直に評価できた気もしますが……)

{netabare} この作品のもっとも特徴的な部分として、多くの方が初話のインパクトを挙げておられますし、私も内容に関する予備知識なく観始めたので驚きました。
……というより、戸惑ったという感想の方が正確かもしれませんが、グロもゴアも平気ですし、あの段階では確かに、物語の先へ対する興味も惹かれました。
ただ、全話通して振り返ると、私の感情ゲージの揺れはそこがピークでした。

結局のところ本作は、環境省の超自然災害対策室のメンバーによる退魔バトルと、それに平行して描かれる黄泉と神楽の前日譚で、初話は視点を環境省ではなく防衛省に変えているだけ。
正直、プロット自体は1クールの半分もあれば充分な内容です。

初話での防衛省の惨状が、その後何らかの伏線として利用されているような構成であれば評価も変わったと思いますが、終盤で使われているのは二話の環境省側の描写だけ。それも、伏線と呼べるほど捻った回収をされるわけではありません。
結局、初話の防衛省については完全に出落ち扱い。
丸々一話使ってサプライズを演出しただけで、本編にはほとんど関係のない内容でした。

よくある手法として、ミスリード的な仕掛けでもあるのかと思ってましたが(冒頭で闇堕ちした黄泉を見せておいて、本編終盤で、実はその黄泉も偽者だった……みたいな)、まあ、今から思えば、原作の内容上それもあり得なかったんでしょうね。

初話の出来は良かったですし、2008年の作品とは思えないほど作画も美麗。
でも、結局は出落ちの為だけの三十分だったと分かり、「ほんとにそれだけ!?」という逆の意味でのサプライズはありました。
結局、作画も初話でパワーを使い切ったのか、中盤以降はクオリティも凡庸に(悪いとは言いませんが)

キャラデザも微妙でした。
なんか、下唇が出張ったような影のつけ方で、スタッフ的には関係なさそうですが「あまんちゅ!」の一期の描き方とそっくりでした。

残りは黄泉と神楽の前日譚となりますが、ここでも特に拾うべきところはあまりありませんでした。
一、二話で現在の黄泉と神楽の関係を出していますから、視聴者にとって黄泉の闇堕ちは既定路線(ネタバレ状態)であり、興味の対象は自然と黄泉が闇堕ちをした原因にフォーカスされます。
が、この点について共感できないのが致命的でした。

黄泉が三途河に敗れた結果、満身創痍となり声も片目も失います。
婚約者も失い(少なくとも黄泉はそう思った)、義父殺害の責任も負わされて跡目争いにも脱落する……確かに、とても過酷な運命ではあります。

でも、それは、これまでずっと戦ってきた悪霊の力を受け入れてまで、人間であることを捨てるほどの絶望なのでしょうか?
家督についてはもともと自分が生まれた家ではないし、婚約者の真意についてもあの段階では黄泉の想像でしかありません(実際、彼女の思い込みでしたし)。
満身創痍で声も出ないと言っても、同じような障害を抱えた人は他にもいますし、親身になって接してくれる神楽の存在もあります。
これだけの描写で、闇落ちの理由付けとして本当に十分だったのでしょうか?

「ベルセルク(鷹の団編)」で、同じようなストーリーラインが描かれています。
一年間拷問を受け続け、舌も、手足の腱も切られ、体は骨と皮だけになり、人前で仮面を外すことも憚られる相貌に変わり果てたグリフィス。
私は、あの作品を読みながら、闇の力を受け入れてでももう一度美しく猛々しいグリフィスの姿が見たいと思ったものでした。
グリフィスの絶望感、人間に対する憎悪は、闇落ちしても仕方がないという共感を読者や視聴者に与えるに十分なものでした。

しかし、本作程度の描写でメインヒロインに闇堕ちさせるのは、個人的には軽すぎると感じました。
三途河が黄泉を倒した後に何もせずに立ち去ったのは、目的を考えれば甘過ぎですし、もっと残酷な、視聴者が思わず目を逸らすような境遇を背負わせる必要があったと思います。
私だって、そんな場面を観たいわけではありません。
でも、そう思わせるような場面を見せなければ(あるいは、あったと想像させなければ)、人間を捨て、人間に仇なす存在となる説得力がないのです。
視聴者が黄泉の闇落ちを望み、その選択に共感して初めて、黄泉と神楽の対峙に必然性を感じることができるのだと思います。

初話で、防衛省のモブキャラに対しては平気で凄惨な最期を描いているのに、メインキャラに対しては手緩い描写しかできないと言うのでは拍子抜けです。
せっかくインパクトのあるシーンを冒頭に持ってきたのに、終盤にそれと釣り合いの取れるイベントや描写を用意できていないせいで、鑑後感はなんだか尻すぼみに終わってしまった印象を拭えません。

また、黄泉が闇落ちしたあとの意識の所在についても疑問があります。
殺生石に操られていた上での行動として描かれていますが、前半で無双を誇っていたヒロインの顛末としては余りにも情けないです。
人間であることを捨てるに値する絶望を描いた上で、殺生石の影響を受けつつも行動主体はあくまでも黄泉にするべきではないでしょうか。
その上で、進むべき道を違えた者同士の信念の激突として描いた方が「愛する者を、愛を信じて殺せるか」というキャッチに合っていたと思います。
(その場合、冥のエピソードについても整合性が取れるよう改変する必要はありますが)

2話のやりとりを見た時点では、黄泉は神楽を愛していると同時に、嫉妬や妬みと言った意識も心の奥底に抱いていて、闇落ちによって負の感情が溢れ出ている……言うような展開を想像していました。
その辺りの微妙な心情の機微が二人の前日譚を通して語られるものとばかり思ってましたが、実際はそんな複雑な心理描写はなく、黄泉は殺生石に操られて人が変わるだけ。

心神喪失による情状配慮を視聴者に求めるための設定だと思いますが、操られている黄泉を倒すだけでは「愛する者」ではなく単なる「カテゴリーA」を退治しただけであり、ヒロインを弁護する手法としては陳腐と言わざるを得ません。
中途半端な黄泉の描写のせいで、殺生石が黄泉にとっての「救い」や「決断」ではなく、ただの「逃避」や「敗北」にしか映りません。
本当にこのテーマでキャラの心情を抉っていくのであれば、もっと黄泉を徹底的に過酷な状況に突き落とす覚悟が必要だったと思います。
よく欝展開と評されているようですが、黄泉の顛末を考えると、個人的にはまったく欝度が足りないと感じました。

最後まで観て改めて振り返ってみると、結局は凡百の退魔バトル物だったな、という感想。
それだけなら普通の評価としたのですが、薄い内容を盛り上げるために初話に劇薬を投与し、それが、黄泉の闇落ちというメインテーマにまったく機能していないことが、個人的にはかなり印象を悪くしてしまいました。{/netabare}

かなりネガティブな感想になりましたが、OP、EDは良曲でした。
特に、神楽役の茅原実里さんが歌う「Paradise Lost」は、一昔前の歌謡曲のようなノリの良い曲で、私にしては珍しく、全部飛ばさずに聴いていました。
(因みに、ED「夢の足音が聞こえる」は、黄泉役の水原薫さん)

評価やランキングを見る限り、私の感想はかなりマイノリティーだと思うので、こんな見方をした人もいるのかぁ、くらいに聞き流して頂ければ幸いです(〃_ _)

投稿 : 2020/12/15
閲覧 : 442
サンキュー:

9

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