「かがみの孤城(アニメ映画)」

総合得点
72.8
感想・評価
110
棚に入れた
318
ランキング
1068
★★★★☆ 3.7 (110)
物語
3.9
作画
3.9
声優
3.4
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

現代的なテーマ、等身大のリアルとファンタジーが上手い。こころちゃんが可愛かった

いじめ等で不登校になった中学生たちが、鏡の向こうの孤城に集い、共に過ごしたり、各々成長していく感じのジュブナイル映画。

【良い点】
現代的な病理であるいじめや不登校を真っ向から描いたテーマ、七人全員の個性や悩みや交流を瑞々しく描く群像劇、異世界を拠点としながら現実に向き合う構図など。
プロットも非常に上手く、七人の群像劇の過程で伏線があり、童話調ファンタジーと思いきやタイムトラベル要素で綺麗に感動させてくる。
スバルとマサムネの交流や、こころと喜多嶋先生の関係など、タイムトラベルSFの王道も抜群に上手い(そういう事だったか!)と驚いた&感動。
ミステリー要素も巧みで飽きさせない。

伏線としては、各キャラの世代ギャップを示唆するちょっとした違和感仕込むのも上手かった。
スバルがイケメンの意味を知らなかったり、アキがポケベル持っているらしいなど。
視聴中じわじわ違和感仕込み、(あれ?もしかして彼らは…)と予想させ、これをきちんと回収してくる。
(Angel Beats!を想起。ユイちゃんがマラドーナファンだったり。終盤、モラトリアム世界崩壊の危機も)

かがみの孤城は、リアルに居場所の無い子供たちの避難場所にしてモラトリアムの異世界で、この点もAngel Beats!と相通じると思った。
また異世界とリアルの関係は、デジモンアドベンチャー02的な要素も。
近年のなろう系に多い、現実か異世界を拠点に少しずつ行動範囲拡張していく、流行の作劇も上手く取り入れつつ、童話ファンタジーと切実な問題を描いた児童文学に昇華させており、非常に上手い作品。

重いテーマに真っ向勝負な割に作風が辛気臭くなり過ぎず、個性的な七人の掛け合いや関係ドラマから清々しく纏めている。
「かがみの孤城」がセーフシェルターの役割果たしつつ、ファンタジーでの学びを現実の成長に生かす理想的な作劇。
一歩間違えれば更生セミナーめいた辛気臭さになりそうなもの、そこを絶妙に回避し、過酷な現実との向き合いや、真相判明からのカタルシスで飽きさせず。
これはストーリーとキャラクターが良い故。

キャラ造形も上手いというか、どの子も現実にいそうなリアルリティーありつつも、良い感じに関係深められる性格なのも良かった。
2時間弱で7人全員魅力あり掛け替えのない仲間、視聴後は誰一人欠けても成立しない物語として印象に残る。

七人全員がコミュニケーション不得手で、当初の無関心やディスコミュニケーションによるぎこちなさがリアル。
そこから徐々に孤城の謎を追うサスペンスの過程でコミュニケーションを取り成長していく。
このもどかしさから徐々に物語に引き込んでいく過程は素晴らしかった。
凡作であれば良くも悪くもスムーズに冒険やミステリーに邁進する所を、本作は呑気に進行、だがそれこそか本作特有の魅力。
焦らなくっていいんだよ的な優しい物語。

監督役?のオオカミさんが示唆する通り、最初からしっかりコミュニケーションを取っていれば容易に解決する問題に中々気付けぬもどかしさ、もどかしいが決して焦らせず、次第に心地良い居場所となっていく孤城での自然体な交流を通して、大切で優しいメッセージが込められている。
これにタイムトラベルミステリーも絡めて、とても分かり易くテーマを描いていた。
自分と向き合う事、誰かに助けを求める事、子供にはその権利がある事、そして大人や社会はどうあるべきか。
ファンタジーでありながら、現実的に納得がいく内容だった。

作画は高水準。
こころちゃんのキャラデザが自分好みで大変可愛い。
なんというか、児童文学寄りの素朴さと、萌えではないが現代アニメ的な洗練のバランスが良い。
こころちゃんの服装が孤城に来る度に変化するおしゃれも良かった。

声優陣は下手ではあるが、等身大の中学生らしくて悪くなかった。
高山みなみ氏の名探偵コナンのパロディーもクスリとする。

楽曲は主題歌が素直にテーマ込めていて良い。

【悪い点】
コンセプト上仕方がないが、イジメや虐待などが題材なので話が重い。

七人の境遇故のコミュニケーションややる気の無さから、スロースターター気味。
アキちゃんが制服着て来た事で話が動き出すまでがもどかしい。

かがみの孤城の描写も、子供たちがアグレッシブに動くタイプではないためか、探索が物足りず。
好意的に見れば、贅沢な過ごし方とも取れるが。

ラブコメ要素はやや物足りず。
また、こころにとって別格な存在だったアキとの交流に関しても、もう少しあざとく見たかった。
2時間弱でキャラ多い割にかなり良く出来た交流劇ではあるが、七人多すぎた感も。

声優陣は作風に合っていて好意的に見たいが、やはり上手いに越したことは無い。
オオカミ様の棒読み嫌いじゃないけれど、東山氏だったらクライマックスでもっと感動したような。

【総合評価】9点
イジメ題材のアニメ映画としては「聲の形」より好み。
この手の作品は苦手だけど、本作は清々しく楽しめた。
異世界を避難場所、交流から成長の場と捉える作劇はかくあるべし的なお手本のような良作。
評価は「とても良い」

投稿 : 2023/01/14
閲覧 : 141
サンキュー:

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