「機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2(TVアニメ動画)」

総合得点
72.6
感想・評価
273
棚に入れた
902
ランキング
1092
★★★★☆ 3.6 (273)
物語
3.4
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

螺旋常連からくり剣豪 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6
物語 : 1.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 1.0 状態:観終わった

ただの雰囲気アニメ。細かいことを考えないで見るなら……

21話まで視聴。
水星の魔女の2クール目。ガンダムシリーズは今のところあまりまともには見てないんですが、話題になっているのでとりあえず視聴しています。
この作品はガンダムではない他のロボットものと比べてもとにかく各要素がとっ散らかってる。企業間の腹の探り合い、学園での名声をかけた決闘、ガンドアーム技術の医療転用のために会社設立、アーシアンとスペーシアンの対立構図etc……1クール目はこれらにまつわる伏線をばら撒くのに終始しており、最後はファンからフレッシュトマトと呼ばれる衝撃的な展開で幕を閉じました。
この2クール目はスレッタやミオリネ関連の謎がある程度明かされてきましたが、新しい謎も増えてますます複雑化。ぶっちゃけテンポがものすごく悪いです。分割2クールのペースじゃない。
フレッシュトマト以降、スレッタとミオリネがずっと離れ離れなのもあり、二人の物語も停滞気味に。すれ違いを描くにしても顔合わせないと話が始まらないから早く合流して欲しい。自分としてはグエル好きだけど彼に1話丸々使ってる場合じゃないだろ。
1クール目より人間味が増したけど、ここまで来てなおスレッタがまだまだよく分からないキャラなのもあって主人公として物語を牽引できてないのも停滞感を与える要因になっていると思える。行動力のあるミオリネが基本受身がちな彼女を引っ張るのは必須だろうに、何話も引っぺがしてどうするんだ。
1話しか無いグエルを主役に据えた話の方が何話も使っている主人公よりも面白いと思えてしまうのはっきり言って異様と言わざるを得ないです。
話の中心になると思った会社設立はちょっと出しただけで2クール目では放置。言い出しっぺかつ会社のリーダーであるミオリネがいないとまともに動かせない話だし、ミオリネを学園から出した挙句本格化した戦争要素のせいであっさり形骸化するなら何話も割いてまで入れる話じゃないです。
他にもスレッタと因縁を深められそうなライバルキャラをあっさり死なせたりとか、作品の魅力になりそうな部分を率先して切り捨てていく辺り、期待感はすでに粉微塵になりつつあります。
この作品の問題点は各要素を用意したのは良いものの、それらが全部そっぽを向いているせいで点と点が繋がっていかないところにあると思います。

21話まで
20話で主要な敵勢力の一つであるシャディクたちがグエルに負けて捕縛されたので、多分2クールで畳むのだと思います。
やはり懸念通り、1クールゆったりやり過ぎた反動で詰め込み過ぎなように思います。
1クール目であれだけアピールしていたガンドアームの医療転用の要素はほぼ活かせておらず、2クール目だとずっと空気な挙句ミオリネを絶望させるためだけの出汁にされる始末。最終回でペトラを助けるために使われるくらいの活躍はしそうですが、それだけならあまり要らない要素じゃないでしょうか。
エラン5号関連も思わせぶりに引っ張った結果、5号の行動を不自然にしています。ノレア、ニカと一緒にいたエランはスレッタに対してやっていたのと似たような、どこか裏を匂わせる接し方だったのですが、ノレアと心を通わせていく中で唐突に熱血キャラに。しかしながらその過程を鮮明にする彼の心理描写に関して深掘りはしませんでした。最初は精々情緒不安定なノレアに興味を持つ程度だったですが、ノレアが学園で暴走する前後、彼はいきなり好青年みたいになりノレアに寄り添おうとします。ここら辺は描写が歯抜けみたいになっていて行間を読まないと把握が難しいです。彼がノレアを気に掛ける気持ちは理解できなくはないですが、もう少し描写が欲しかったです。
ノレアは最終的に戦死し、そのショックで5号は学園から飛び出すのですが、21話では何の描写も無しにしれっとスレッタたちの輪に加わり、引っ張りに引っ張った4号の話をあっさりみんなに話してしまいます。ここら辺はこれまで以上に描写が足りなくて理解不能でした。
グエルの弟であるラウダがミオリネを恨む理由も謎。ミオリネが直接ラウダに恨まれることをした描写は無く、会社同士の対立のスケールまで膨らませたとしてもラウダとミオリネの間には何の因縁も無いから説得力が無い。
ラウダが恨む対象として適当なのは父殺しをしたグエル、その遠因となるソフィやシャディク、グエルを変えるきっかけを作り、その後ガンダムが絡む騒動の中心人物になっていったスレッタ、ペトラを瀕死にしたノレアなど。ラウダが闇堕ちしたタイミングですでに戦死しているソフィ、ノレア、彼が恨みを抱くことができないであろう兄グエルはともかく、毛嫌いしていた描写があるスレッタや、ジェターク社と敵対する立場にあり、父殺しの件から因縁もあるシャディク辺りは絡みが無いミオリネよりもラウダのヘイトを集めているだろうし、どうしてもミオリネを彼が殺そうとする展開にしたいにしても、スレッタに向けたヘイトがミオリネにまで及ぶ形にした方が自然。
脚本的にはおそらくグエルvsラウダをやりたいんだろうけど、話の流れと前述のことを踏まえるとラウダと戦うのはスレッタの方が適任だし、グエルをどうしても捩じ込みたいならスレッタと共闘する形の方が十分まともなものにできるはず。この辺りは今後の展開次第なところがありますが、不安は拭えません。
スレッタが主人公なのに2クール目の後半から空気に近かったりするのも気になりましたが、この点はようやく兆しが見えてきたので最終決戦での活躍に期待したいです。

23話まで
22話はミオリネとスレッタの仲直りの話。
スレッタはミオリネの元に行こうとしたのをグエルに止められ、決闘を申し込まれました。決闘はガンダムファーストをオマージュしたフェンシング。この決闘については賛否両論あるみたいだけどそもそもホルダーを賭けた決闘なんて今しなくて良くね。これだとスレッタの価値がホルダーというたかが肩書きに詰まってるみたいになっちゃうし、そこはグエルへの説得でスレッタの強い意思を示すみたいな流れの方が良かった気がする。ホルダーを賭けた決闘なんて後回しで良いし、全部が終わった後成長したスレッタとグエルのモビルスーツ戦を見せた方が絵的に映えそうなもんだけど。
戦いに勝ったスレッタは傷心のミオリネを説得。その後ミオリネが立ち直るのは良いんだけど一回突き放しておいて謝らないのは酷くない?いくらスレッタを想ってのことだとしても傷つけたのは事実だし、謝罪は要ると思うのですが。
23話はプロスペラ勢力との決戦。
グエルとラウダの戦い要らないと思ったのわたしだけでしょうか。ただのお涙頂戴で本筋のクワイエット・ゼロの話と関係無いやん。グエルとラウダの関係性の掘り下げも唐突かつ今更過ぎる。そんなのもっと前から提示しとけ。
結局ラウダの動機は意味不明だし、そもそもこれまでずっと本筋に絡まず空気だった奴をクライマックスにシュバルゼッテに乗せて表舞台に登場させても盛り上がらないと思うんですが。これはラウダが好きとか嫌いとか論じる以前の問題。
ミオリネが解こうとしたパスワードも失敗のペナルティであるパスワードロックの機能が無いのが謎。奇しくもマイホームヒーローでも金庫を開けるためにパスワードを入れるという似たような展開があったけど、あっちは失敗した時ロックされるペナルティがありました。なんで現代より文明的に技術力がはるかに上なガンダム世界のセキュリティの方がしょぼいんだよ。他にも警備がかなり手薄だったり警備ロボとハンドガンのみでやり合えたりと、ご都合主義にしてもクワイエット・ゼロのセキュリティにまつわるこれらの点は質が悪過ぎる。
フェンシング同様ファーストをオマージュしたであろうコロニーレーザーはこの作品においては完全に出来の悪いデウスエクス・マキナ。とりあえずインパクトあるから出しとけ感。扱いがこの手の大量破壊兵器の中では群を抜いて雑だからシナリオのチープさを増やしただけになってる。
他にも学生の扱いが雑だとかスレッタ言うて目立ってないとか言いたいことはありますが、キリが無いのであとは最終回を見て最終的な評価をします。

最終回を見ました。
纏め方だけ良い風に見せてて草。お前そんな高尚な物語してないだろ。描写が歯抜けだから感動できないんだが?
高評価してる人には悪いですが視聴者側が諸々の矛盾や違和感をライブ感で誤魔化したとしてもこれを良作判定にするには個人的には無理がある。主題歌や作画は高品質な面を評価したとして、雑なストーリーも真面目に評価するとクソアニメまで行かなくても精々凡作レベル。
まずキャラクター関連。この作品はキャラクターが多過ぎ。そのせいでスレッタやミオリネ、エランなどの重要キャラに割かれる尺が少なくなって描写不足に拍車をかけてしまっている。特に地球寮のキャラはあんなに要らない。2クール目で会社要素が形骸化した時点で明確な役割を持っていた地球寮のキャラがニカ、アルしかいない。あとギリギリ許容できるのはアーシアン、スペーシアンの対立問題において声が大きかったチュチュくらい。他のキャラはモブでも展開的には大差無い。まあチュチュたちも最後は空気だったけど。シャディクのハーレムも中身空っぽな嫌味なキャラだらけでヘイト溜めてただけだし半分くらいで良かったと思う。
次にスレッタ、エランやノレアの心理描写を始めとして説明が足りてない。あってもセリフによる説明ばかりでアニメ的に優しくない。特にシャディクの話とかめちゃくちゃ大事なのに終始セリフだけで全くノれないんだが。その割に主軸にはなれないグエルやラウダの話にはやたら尺を割く始末。セリフだけなら小説とか漫画の方が分かりやすいし、アニメならではの映像表現で見せて欲しかった。ただでさえ複雑な設定や用語が入り乱れてるんだし、そこら辺はもっと工夫できたと思う。
プロットは2クールでまとめるには複雑過ぎ。要らない要素も多い。
テーマの一つであるガンダムの呪いは大仰な響きの割にはなんかずっと乗ってたら死んじゃうよみたいな陳腐な設定に終わってる。呪いに向き合ったりとかそんなノリはありません。
ガンドアーム医療はなんか適当に予想してたペトラの治療に使われるんじゃねってのが見事に当たって草生えた。え、医療要素これだけかよ。この程度じゃ1クール目で会社の話引っ張った意味無いでしょ。
アーシアンとスペーシアンの対立は結局ご都合的に全部解決しないのは良かったけど、ミオリネがあらかじめベネリットの株全部売っぱらって寄付しましたってのは力技過ぎる。最初にはやっていた対談とかの積み重ねは?人と人の繋がりを努力して結んでいくのはこうした対立を描く上では大事なのでは?金の力で全部解決しようとか文豪のフランシスかよ。いや、元々愛妻家な上に自分の金が絡む部分においては雇った部下を決して使い捨てにしない面があったりとか、後に人の情を重んじるようになった辺りフランシスの方がはるかに魅力的なまであるけど。最後まで親父におんぶに抱っこだった辺り、ミオリネは結局デリングを乗り越えられなかったと思う。
スレッタは20話辺りの空気ポジよりは遥かにマシだけど、最終決戦でもいまいちな活躍だった気がする。どもりがちな上に終盤まで自我が薄かったキャラなのもあってなんか主人公っぽくないのもこの空気感を後押ししていた。最終決戦で乗っていたキャリバーンもモビルスーツとしてはカラーリングがユニコーンガンダムとかと被る上に武装とかの特徴が乏しいからチート級の強さを見せていたエアリアルと比べると地味さが否めない。

このようにキャラクター面は基本悪いところしか無いんだけど、プロスペラが最後まで変に改心しなかったのは悪役として一貫していて良かったと思う。最後はスレッタや亡くなった人たちの想いに気圧されて諦めたって〆は好き。
最終回もライブ感だけならそこそこ見られるとは思う。

見て後悔とまでは行かないけど、バズり最優先の脚本など、あんまり良い印象は持てなかった作品でした。

投稿 : 2023/07/04
閲覧 : 314
サンキュー:

12

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