蒼い星 さんの感想・評価

3.2
物語 : 3.0 作画 : 2.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態：観終わった

ヤサシイセカイ？

【概要】

アニメーション制作：MAHO FILM
2020年10月4日 - 12月20日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載している改訂版のweb小説を準拠とした、
ホビージャパン社のHJノベルスから刊行されているRoyによるライトノベル。
原作イラストは、りりんらが担当し、
コミカライズ版はマンガ雑誌アプリ『マンガUP!』にて、
漫画家の蘭々による連載が継続中。

監督は、柳瀬雄之。

【あらすじ】

日本のブラック企業に勤めるシステムエンジニアの竹林竜馬は39歳であるが、
厳つい顔の上に苦労人のためか見た目が実年齢より10歳老けて見える。
刀鍛冶の父親と優しい母親の一人息子であったが、
自分の仕事と趣味にのめり込んで家庭を顧みない父親からの愛情はなく、
その父親から殴られるなど異常に厳しく鍛えられて武術の心得があり、
その後も長年の肉体の鍛錬を怠らずに筋骨隆々。

竜馬が中学3年のときに心臓発作で父親があっけなく逝ってしまって、
資産をたいして残してなかったことから、持ち家を売らざるを得なくなり、
母はパートを始めて竜馬もバイトしながらの勤労学生で大学卒業。
ところが、コンビニ強盗を半殺しにしたとかで、
新卒で入った会社も退職せざるをえなくなり不運続きの人生。
バイトしながらの再就職も難航して、かろうじての再就職先がブラック企業。
きつい仕事でも真面目に働くが、母も亡くなり独身のまま40代手前になった竜馬は、
夜遅く帰宅してからのアニメやゲームなどのオタク趣味が癒やし。

寝てる間のくしゃみで頭を打っての脳内出血が原因であっけなく死亡した竜馬は、
三柱の柱に導かれて魔法のある異世界セイルフォールに転移を勧められる。
地球側の魂を異世界に送ると地球の世界で使われて無くて有り余っている魔力を、
魔力が枯渇し始めているセイルフォールに一緒に送ることができるらしい。

神様からの特典で大きな魔力量と全属性魔法が与えられた竜馬。
彼は生来、真面目な努力家であることから神達に好意的に扱われていて、
異世界で気の向くままに好きなように生きるように言われて、
異世界のリフォール王国付近に、8歳の子供の姿で転移させられたのだった。
森でスライムをテイムしながら3年間を一人で過ごしたリョウマは、
怪我人を治療したことから、家族のように大切な人たちと出会うことになるのだった。

【感想】

「魔法（MAHO）」のようなコンテンツを創り続ける制作会社

↑サービス終了したマイナビの新卒募集の会社概要に書かれていた言葉ですが、
視聴者に夢を与えられるようなアニメを作りたいということでしょうか？

この作品をアニメを見てると、前世ではブラック企業で恵まれなかったけど、
新しい人生ではジャミール公爵家や街の人達など、みんな優しくていい人たちばかりで、
神様チートでスライムを使役して仕事も人間関係もみんな上手く行って、
すごいすごい！リョウマくんすごーい！と褒められ続けてぼかぁ幸せだなあ！！
な、ぬるーいアニメにしか見えなくて徹底したストレスフリー化。

漫画版を読むと、この異世界でも戦争の存在がセリフで仄めかされていますし、
貧困や特権意識による差別や犯罪者などが普通に存在していて決して優しい世界ではない。
リョウマは良縁に恵まれたに過ぎないということ。
リョウマも度々、悪堕ちしたごろつき冒険者など悪い大人と対峙して、
その悪人に堕ちてしまった心の弱い大人達を見て、
前世で楽しくないことがあっても決して曲がったことをしなかった自分を思い出す。
アニメではストレスフリーに邪魔な話の流れがまるごとカットされたり、
話のつながりとして外せない部分は2期で後回し。

あらすじに書いた、リョウマの39歳までの人生がアニメの1期では、
息子の目から見ても理解不能だった父親の存在ごと語られてないですし、
そこはリョウマの人格形成の説明として重要なのに省略しちゃうのか？

漫画版で見ると、上司が最低ながらもアニメと違って男女問わずに普通に同僚と仲が良いですし、
ささやかながらそれなりに楽しんで生きていたのですがアニメだと単純に酷い前世でしか無く、
自己中心的で家庭を顧みないな父親の死で経済的に苦しくなって、
それでも苦境にめげずに頑張って真っ当に生きてたのに、
理不尽な人生の終わり方をしたが狂ってしまった主人公が異世界で子供時代から生き直す話のはずが、

そこを描かずに、アニメでの描き方だと単にオジサンがつらい現実から逃げこむように、
楽園のような異世界に子供として転生して、大人たちから常に称賛されてるだけの話に見えてしまって、
このアニメを見て癒やされる人がいるならば、
自分の人生を振り返って主人公に感情移入してるのではないか？
弱者男性の慰みの“夢”物語に終わっていることにもやもやっとした気持ちになりました。

また、おっさん顔化する前の中学・高校時代の前世竜馬がそこそこイケメンだったり、
努力の甲斐あってスペック・人格ともに優れてる人物なのに、
なんで39歳まで独身のままなのかな？とアニメを見る限り意味不明なのですが、

不幸になるように地球の神に運勢を操られていて、本人のせいじゃなかったりで、
原作や漫画で表現したい話がアニメでは片方の側面でしか語られてないかな？
というところで、アニメの内容はやや劣るかなと思いました。

ヒロイン幼女のエリアリアお嬢様はアニメなりに可愛くは描かれていましたが、
小説や漫画のほうがずっと美少女で、アニメでは動かしやすい作画にするためか、
どっちにも似せる気が全くないキャラデザでありますし、
馬が動いているシーンでは足の運びが生物のそれでなくて機械みたいだったり、
楽器を演奏するシーンでは運指が描かれてなかったり、止め絵だったりで、
自分たちのスペックでそれなりには頑張ってるものの、
アニメーターの能力に合わせた作画があまりよろしくないアニメですよね。

アニメを見た評価としては、

①漫画版はそこそこ好きだけどアニメはイマイチかなあ？
②ヤサシイセカイ？にするために色々削ぎ落とされてたぬるま湯では色々足りてない。

原作をアニメ向きに加工するにはありがちなことなのでしょうけど、
もうちょっと作画や演出の良い会社でアニメ化してほしかったですね。
無いものねだりかもしれませんが！


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。