「NieR:Automata Ver1.1a[ニーアオートマタ](TVアニメ動画)」

総合得点
68.5
感想・評価
150
棚に入れた
569
ランキング
2015
★★★★☆ 3.5 (150)
物語
3.2
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

感情は持たないでください。ヨコオタロウ氏が描く世界が残酷すぎるから…

【本作の紹介】
本作は、アクションRPGゲーム『ニーア オートマタ』(NieR:Automata)のアニメ化作品(2024.1.12加筆修正)。

あらすじは、西暦5012年、突如、人類はエイリアンによる襲撃を受け、彼らが繰り出す兵器「機械生命体」によって月へ退避。退避した人類は、アンドロイド兵士による反抗を開始するものの、戦況は数千年に渡り膠着。この状況を打破するため決戦兵器として新型アンドロイド兵士「ヨルハ機体」が開発され、ヨルハ機体2Bと9Sは、機械生命体との戦いに投入されることとなる。

タイトルに含まれる「Ver1.1a」は、ゲーム内エンディングの種類を表しており、ゲーム内のエンディングとは異なるパターンであることを表している。

他にも、レジスタンスのリーダー・リリィは、舞台・漫画『ヨルハ 真珠湾降下作戦記録』にのみ登場するキャラで、ゲーム内で登場する同じ役割のアネモネと異なっている。また、ゲーム内の本筋と関わらないイベントを知っているとより楽しめる要素が含まれている。

したがって、本作は、ゲームと大筋は同じ流れであるものの一部アニメオリジナル要素が含まれており、ゲームはゲーム、アニメはアニメと割り切れるならという前提条件つきではあるが…、既存のゲームファンも楽しめる内容になっているとは思う。
(ただ、私はゲームのエンディングを知っているし、本作のエンディングまでの経緯には色々と思うところもあって、実は、リアルタイムで観ていた時はどうレビューを書こうか、すごーく悩んだ。
のだけれど、冷静になろうと思って時間を置いてみると(だから今さら投稿している(笑))、ゲームもマルチエンディングだし、ヨコオタロウ氏だし、大筋は変わってないからいいかと思うに至ったことを一応書いておく。)


特にゲーム原作のアニメは、ゲームの膨大な設定があり、それを尺の都合で全部表現できない難点があると思っている。

そこで、情報を補完するため、各話終わりに2Bと9Sの人形劇による「ゆるーい補足説明」がなされている。しかし、「ニーア オートマタ」の前作にあたる『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』を知らないと意味がわからない描写があったり、また、細かい設定を知っていた方が気づくことが多いので、到底その程度の補足では、本作をしゃぶり尽くせない。

もっとも、私は勝手に脳内で設定などが補完されているが、知らなくても楽しめるという意見もあったし、必ずしもしゃぶり尽くす必要もないので、細かいことに気づいてしまう方がかえって視聴の邪魔になってしまうかもしれない。

ただ、伝えたいことは、特にアンドロイドたちの悲惨な運命にまつわる設定については、知っていた方が彼らの境遇をより深く理解できるのは間違いないと思う。


【フルCGゲームのアニメ化】
ゲームが既に美麗なフルCGで描かれ終始映画のように動くため、ゲームの高画質動画と勝負しなければならないA-1Picturesは、作画に相当苦労したと思われる。
特に第1話の流れは、ゲーム序盤とほぼ同じなので見比べることができる。

思ったのは、アニメの作画としては、とても綺麗なのだが…、比較対象が他のアニメではなくゲームであり、特に機械(ロボット)や戦闘シーンにおける爆発の描写については、フルCGのゲームの方がリアリティがある。

なので、フルCGのゲームをアニメ化する意味をちょっと考えてしまった。

もちろん、ストーリーのダイジェスト版という意味もあるだろうが、ゲームの販売はかなり前で販促目的のアニメではないのだろうから、今、あえて「ニーア オートマタ」をアニメ化する意味が必要だろう。

そういう意味では、角ばった機械の描写や爆発は、CGの方がリアルに感じるが、丸みを帯びた人物や人物の繊細な表情や動きは、アニメにまだ一日の長があると感じた。なので、アンドロイドの内面の描写については、アニメの方が良かったと思う。

ただ、本作は、そもそもフルCGのゲームが原作ということもあってか、目や口を覆って表情のわかりにくいアンドロイド(覆われていることに意味があるのだが…)や表情のない機械生命体が中心で、CGと相性がいいものが多く登場する。そのため、アニメにとっては、そもそも分が悪かったとはいえそう。

とはいえ、私がゲームを知っているから、こういう評価になっているのであって、知らない人にとっては、とても綺麗に感じると思う。


【記憶の連続性と人格の同一性(以下、ネタバレ有りの感想)】
{netabare}本作では、人類が作ったアンドロイドとエイリアンが作った機械生命体のどちらも、人になろうとしている。もっとも、機械は人になれるのかという問いは、そもそも人とはなんなのかという問題でもある。

本作のテーマの1つとして、主に記憶の連続性が担保している人格の同一性の問題がある。つまり、我々が我々だと思っている根拠は、生まれた時から記憶が連続していること。

本作のアンドロイドは、データのバックアップさえあれば記憶の継承が可能なため、体を破壊されても、記憶をバンカーと呼ばれる衛星基地に転送して、その記憶を新しい体に移植すれば、復活することができる。
そういう意味では、肉体の死が死ではなくなっている(脳死や心臓が止まっているなどの死亡の定義が異なっている)。

もっとも、2Bは、9Sがバンカーで復活するたびに、わずか数時間の記憶であっても、自分が知っていて9Sが知らない記憶の欠損があることから、目の前にいる9Sが以前の9Sと同じとは思えず、心を痛めている。

仮に数時間前の記憶が戻るとしても、今、目の間にいる9Sはもう戻らないと嘆く2B。

たかが数時間、されど数時間。その数時間に二人の間にかけがえない思い出あったとすれば、その数時間の記憶の消失は、人格の同一性に重大な疑義を与えることになる。

これは、『AIの遺電子』で、ウイルスに汚染されたヒューマノイドが、汚染される前のバックアップしたデータに復帰すると1週間分の記憶を失うことになるため治療を拒み、一旦死ぬことを選択した話にも通じると思うわけです。


【「感情をもたないでください」】
本作の「感情をもたないでください」というフレーズから始まるエンディング。これは、本作のアンドロイドの残酷な運命をよく表現していると思うのです。

本作のアンドロイドは、機械生命体との終わりの見えない戦いに身を投じている。そして、設定を知れば知るほど、本当に救いのない残酷なお話。ヨコオタロウ氏が描く世界は、これでもかっていうくらい絶望に絶望を重ねてくる。
特にA2が参加した『ヨルハ 真珠湾降下作戦記録』は、機械生命体の大群を前にして、達成不可能とも思えるミッションに少数のアンドロイド兵たちが一人また一人と犠牲になっていく。A2がああなっても仕方ないと思えるくらい本当に絶望的。

だから、アンドロイド兵は、感情をもっていると、その救いのなさに絶望して戦闘を続けられなくなる。

そういう意味では、本作のアンドロイド兵の魂の救済というテーマは、極限状態にあえて追い込んだ中での「作られた感動」といえそう。
もっとも、感情を持ってしまったのに死ぬに死ねないアンドロイドには、その絶望から逃れる必然性が生まれているともいえそうです。


【2Bたちに救いはあるのか?】
さて、本作の2Bたちは、人類会議という「神」によって、その存在する意味、つまり、終わり見えない機械生命体との戦いを強いられている。

しかし、アダムとイヴやパスカルなどの機械生命体たちとの交流を通じて、アンドロイド、機械生命体、人間との違いより、その共通点に気づいて、その戦いに疑問を持ち始めている。もっといえば、実は(核心的なネタバレ)、{netabare}人類も侵略してきたエイリアンも既に滅亡しているので、彼らが戦う理由は既にない。ついでにいえば、人類会議的には、スケープゴートにしたくて機械生命体とアンドロイドの中間のヨルハ機体をつくり、ヨルハ機体にそういう認識はないにしても、どっちつかずの存在だからこそ、その疑問に気づいたというのはあるかも。{/netabare}

もっとも、創造主から与えられた戦い(運命)に疑問をもつということは、神から与えられた存在理由、つまり自己の存在理由を否定することになる。
そうなると、絶望しないためにも、自分たちで独自の存在理由を事後的であっても見つけなければならない。

これは、近代において神から予め与えられた運命から逃れ存在自体に理由を与えようとする実存主義と同じなわけですが、アンドロイドが本当の意味で自分のための人生を生きることを選択する瞬間になるとも思うわけです。


さて、本作でオペレーター6Oの「砂漠のバラ」イベントのフラグが立っているので、2期も救いのない話が続くことが予想されるわけですが…、2Bたちはアニオリ展開で救われるのでしょうか。その辺の内面の描写は、アニメの方が表現しやすいのではと期待しておきます。{/netabare}

投稿 : 2024/01/12
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サンキュー:

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