「葬送のフリーレン(TVアニメ動画)」

総合得点
86.5
感想・評価
473
棚に入れた
1565
ランキング
192
★★★★★ 4.2 (473)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.2
キャラ
4.2

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ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

原作漫画とそのアニメ化の1つの理想形

山田鐘人(原作)、アベツカサ(作画)による原作漫画は、『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載中(既刊12巻、原作既読)。第14回マンガ大賞、第25回手塚治虫文化賞新生賞、第69回小学館漫画賞受賞。
アニメは、全28話(2023年)。監督は『ぼっち・ざ・ろっく!』の斎藤圭一郎。制作は『オーバーロード』シリーズ、『宇宙よりも遠い場所』などのマッドハウス。放送が日本テレビ系列ということもあり、第1~4話を『金曜ロードショー』で放送(英断!)。
(2024.3.24初投稿、3.27一部推敲)

あらすじは、『ドラゴンクエスト』みたいなRPGのような世界で、勇者一行がダンジョンを全て踏破し宝箱を全部開けないと気が済まないという道中を楽しみ尽くすような旅をして魔王を討伐した後のお話(TVゲーム的に考えると、よくいる攻略タイプではあるけれど、それだけ魔王討伐の旅路を楽しんだといえそう)。
本作の主人公フリーレン(CV.種崎敦美)は、その勇者パーティーの一員でエルフの魔法使いであったが、長命種であるがゆえにその旅路が長い人生のほんのわずかな出来事に過ぎないと思っていたため、勇者ヒンメル(CV.岡本信彦)の死後になって、ようやくそれが掛け替えのないものであったことに気づく。
そこで、フリーレンは、同じ勇者パーティーの人間の僧侶ハイター(CV.東地宏樹)に育てられた人間の魔法使いフェルン(CV.市ノ瀬加那)、同じ勇者パーティーのドワーフの戦士アイゼン(CV.上田燿司)の弟子で人間の戦士シュタルク(CV.小林千晃)と共に、死者の魂と対話できる場所・オレオールの地を目指す新たな旅に出ることに…。


まず、本作は、上でも書いたんですが、ドラクエを全マップ踏破して宝箱も全部開けて完全攻略した後の後日譚っていう表現がピッタリくるTVゲーム的なRPGの世界観があって、でも、その魔王討伐をただ振り返っていくんじゃなくて、人に興味がわいた({netabare}というよりも、「愛」に気づいた{/netabare})ので、そのために過去の旅を振り返る新たな旅に出ますっていう切り口が斬新。


あと、魔族との戦闘シーンがあっても、フリーレンもフェルンもシュタルクも熱血・根性系じゃなくて、淡々とこなしていく。なんだろう…、コツコツレベルあげて準備したり、作戦立てたりしてBOSSレイドをするゲーム攻略に近い印象でしょうか。
例えば、{netabare}フリーレンが魔族を倒すためだけに非効率な魔力の抑制という準備をコツコツしてたり、どうやってコピーレンを倒すか具体的に作戦を立てるところとか。{/netabare}

その空気感がすごく「今っぽい」。今時、気合や根性じゃどうにもならないでしょう、理詰めでやってダメなら仕方ないみたいな冷静で現実的な目線を感じる。その一方で、みんな大好きデンケン爺さんが冷静そうに見えて最終的に「気合じゃあああ」っていう感じが対照的だなあと。

フリーレンを若者に分類していいかは微妙ですが(見た目は若い…)、世代の表現が現代を反映していると思いました(例えば、日本のプロ野球でも、最近は球の回転数・打球速度といった理詰めで、投げ込み・走り込みといった根性論は流行らなくなってますよね。)。


私は原作勢で原作漫画も面白いですが、アニメはまた違った面白さというか、ストーリーを知っていて、なお楽しめる工夫が、全部は気づけないでしょうけれど、たくさんあった({netabare}例えば、シュタルクとフェルンのダンスシーン。あと、戦闘描写は、漫画のコマとコマの間の隙間を埋める感じでより詳しくなって、さらに動画ならではの音と映像の迫力が追加されている。{/netabare})。

昔見てまだレビューしていないお気に入りの作品もありますが、個人的には、音楽も作品に寄り添っていて減点するところがないので({netabare}後半クールのEDはフェルン死後のフリーレンの様子だったんでしょうかね。{/netabare})、あにこれで初めて満点つけました。

原作漫画とそのアニメ化の1つの理想形といえる傑作だったと思います。


【「原作漫画とそのアニメ化の1つの理想形」】
さて、日本だけにとどまらず、世界的な大ヒットとなった本作。

特に放送中に漫画原作者とその映像化作品に関する問題提起があっただけに、その意味においても、本作は原作漫画とそのアニメ化の1つの理想形といえる出来だったと思う。

漫画は無音声の静止画であり、アニメは有音声の動画なので、そもそも表現形態が違う以上、強みや弱みが異なり単純に原作漫画をそのままアニメ化すればいいという関係に本来ない。まして、動画の場合は、尺という制限も出てくる。

また、漫画特有の表現をそのままアニメ化することにも問題が生じる。
例えば、焦った時に汗をかくや、落ち込んだ時などに顔に縦線が入るといった描写は、基本的に漫画を見ない海外の人にとって馴染みがなく理解の難しい表現になる。
他にも、漫画でフキダシ以外に補足的に書き込まれている文字をそのままアニメでも表示するシーンを観ることがあるが、それは、ある意味、漫画のニュアンス的な部分(を仕方なく文字化している)まで動画化することを諦めた表現ともいえる。

さて、本作は、いわゆるアニメオリジナルシーンが多く追加されており、原作漫画をそのままアニメ化していない。巷では、これを「原作改変」という。
もっとも、「改変」とは、「内容を変えて、違ったものにすること」(デジタル大辞泉)という意味であり、本作は、原作漫画の内容を変えていないし、違ったものにもなっていないので、「改変」ではないと個人的に思っている(また、「原作改変」は、ネガティブな文脈で使われることが多いので、本作にふさわしい表現ではないとも思う)。

あくまで本作は、アニメ製作者が原作漫画に寄り添い、原作者が伝えたい内容を上手く忖度して、または、戦闘シーンなどアニメの特性を上手く活かす形で、アニメオリジナルシーンを追加し、原作の内容を変えることなく原作漫画をより面白くアニメ化することに成功した稀有な作品だと思っている。

そして、そのアニメ制作者側のアニメ表現に対する飽くなき探究心が、世界中で大人気となった結果の1つの要因だと思うのです。
(もっとも、あらゆるアニメ作品において、原作漫画を探求するための十分な時間的・資金的余裕があるわけではないのですが…)

投稿 : 2024/03/27
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