「アクセルワールド(TVアニメ動画)」

総合得点
85.4
感想・評価
3711
棚に入れた
20008
ランキング
239
★★★★☆ 3.8 (3711)
物語
3.8
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

仮想現実における正と負の側面

 原作は未読。
 設定、展開などは典型的な少年を主人公にした異能力バトルものといった感じで、話の作り
方自体は王道というか、ベタなものが多いが、バトルにおける努力、勇気、根性、工夫や、
キャラ同士の友情、主人公の人間的成長、謎の多い設定、魅力的なヒロインとそのヒロイン達
とのドキドキするようなシチュエーションなど、少年バトルものに必要なものがこれでもかと
いう感じで詰め込まれており、それがきれいにまとめられている。こういった沢山の要素を
まとめきれない他作品が多い中、この作品は凄く上手い。
 また各話の引きも良くて、次回が気になるような締め方をしてくれる。
 話自体は完結に至っていないため、「災禍の鎧」や「加速研究会」など未解決な部分も
あるが、この辺は2期をお楽しみにといったところなのかな。

 バトルなどにおいて、作品内で決められたルールや設定を登場キャラが精神力で凌駕する
ような展開は他作品でもよくあるが、これって一種の逆転的爽快感を得られる反面、ご都合
主義的にもなりがちなもの。
 この作品では、それを単なる気力や精神力で終わらせず、「心意システム」という形で理論
的に説明しているのが面白いなと思った。設定破りのための設定みたいな。

 パッとしない男の子が主人公というパターンは結構あるが、それでも絵はそれなりの容姿
だったりする。しかし、この作品の有田 春雪はかなりデフォルメされたチビデブちゃん。
昔はこういった主人公は結構いたけど、最近では珍しい。まあ、見方によってはプニプニした
可愛らしさは感じられるが。
 おまけに性格も暗くて弱くてといった感じで弱点だらけ。ここまでダメダメだとこの主人公
だけで受け付けない人もいそう。
 逆に言えば、弱点だらけだと成長の余地は相当あるわけで、この冴えない主人公が加速
世界において成長を重ね、人間的にはどんどんカッコ良くなってくるところがよく描かれて
いる。まあ、容姿は変わらんけど(笑)。

 ただ、せっかく人間的成長が描かれたのだから、それが現実世界でどう反映されているのか
見たかった。
 後半において能美 征二によって現実世界でもひどい状態になった際、それまでにない
強さを見せた春雪だが、これはブレイン・バーストに関することゆえの行動で、ブレイン・
バーストとはまったく関係ない日常での成長結果が見たかった。
 とっかかりが現実逃避のような感じでブレイン・バーストにはまっていくのは別にいいの
だが、そのままだと「仮想世界は素晴らしい、現実世界はつまらない」で終わってしまう
みたいで、ちょっと寂しい。

 この春雪とメインヒロインである黒雪姫とは恋愛関係でありつつ、ブレイン・バーストの
親子関係ということで、この二人の絆の強さはよく描かれている。ただ春雪の行動理念は
黒雪姫のためということに集約されていて、かなり依存度が高く、春雪自身の
アイデンティティのようなものがあまり感じられない。
 せっかく人間的成長をしたのだから、もう一歩踏み込んで自身による自身のための
モチベーションみたいなものも欲しかったかも。

 黒雪姫に関しては、一見全てを持っているクールビューティー然としたキャラと思いきや、
そこはまだ中学生、自身の感情などに関してはもろく、幼い。この弱さが可愛げに繋がって
いるんだろうな。
 同じ原作者である川原 礫さんの「ソードアート・オンライン」のアスナもそうだったが、
才色兼備の姉さん女房タイプが、この人の理想タイプなのかなと思ったりした。

 もう一人のヒロインである倉嶋 千百合はサブヒロインという位置付けだが、春雪との
ドキドキするようなシチュエーションは彼女の方が多かったのが面白い。
 彼女は春雪、黛 拓武との3人の友達関係の維持を望んでいるらしいが、春雪に対する態度を
見ていると、それ以上の好意があるように見えてしまう。まあ、肝心の春雪クンに黒雪姫と
いう彼女がいて、元カレの拓武クンは未だ気持ちが衰えておらず、そんな4人が同じ
レギオンに所属しているんじゃあ、動くに動けないだろうけど。
 前述のアスナもそうだが、川原さんの作品って、割と早めに主人公の本命相手を決めちゃう
みたい。これは主人公の一途さをうまく伝えられる反面、主人公に好意を持つ他のヒロイン
キャラの扱いに少々困っている印象もある。

 後半より登場する能美は狡猾さ、いやらしさ、憎たらしさなどよく描かれており、悪役と
しては良くできている。
 後半はほぼ能美関係で話を引っ張るためにかなりイライラが募るが、最終話で完全決着。
溜まった分だけ得られるカタルシスは大きかった。
 この能美にしても根っからの悪というわけでもなく、ブレイン・バーストによって歪んで
いった過程が語られたりするが、この辺はブレイン・バースト、並びに加速世界に関わる
ことの怖さを感じさせる。春雪の変化が正の側面なら、能美の変化は負の側面といった
ところか。
 あと大枠なストーリーでは他のレギオンを倒して、レベル10を目指すというブレイン・
バースト内での天下統一的なものだったが、後半はずっと能美、並びに加速研究会絡みで
あったため、話のスケール感は小さくなってしまった感はある。

 能美というキャラは主人公に倒されることで成立する悪役だが、それ自体で存在感を持つ
敵役が欲しかったかなという思いもあった。スタンダードなキャラで言うと「北斗の拳」の
ラオウや「ジョジョの奇妙な冒険」のディオみたいなやつ。
 こういう一種のライバルキャラがいると、先ほど書いた春雪にとっての黒雪姫以外の
モチベーションになりそうで、話に更に厚みが出そう。
 アッシュ・ローラーはいい人になっちゃったし、拓武クンは仲間になっちゃったからなあ。

投稿 : 2013/02/11
閲覧 : 221
サンキュー:

3

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