「四畳半神話大系(TVアニメ動画)」

総合得点
88.7
感想・評価
2930
棚に入れた
13588
ランキング
102
★★★★☆ 4.0 (2930)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

言葉のマシンガンに感服

森見登美彦による同名の小説が原作。
森見氏の作品が映像化されたことも本作が初めてであり、
監督の湯浅政明氏にとっても、小説からのアニメ化を初めて手がけたという作品。
舞台となるのは京都。よく見知った建物や場所が登場するので
綿密なロケハンしてるなぁ~と、個人的にはそれだけでもけっこう楽しかった。

僕は子どもの頃から、勢い良くまくし立てるような口調を聞くと
自動的に聞き流してしまう癖があって、
主人公である「私」の猛烈に早口な語りから始まる冒頭、
あまりの言葉のマシンガンに耳がついていけず、実は二度ほど中断してしまった。
しかし、物語はすごく惹き込まれるし、湯浅監督の作り出す独特のムードが
前から好きだし、途中で投げ出すなんてもったいなさすぎる、と自分に言い聞かせ
ようやく今日なんとか最後まで観終えることができた。
結果、やっぱりこの作品は最後まで観てこその物語だったので諦めずにいて良かった。

というわけで、今にも倒壊しそうな古い下宿アパートに住む
京都大学の3回生である主人公「私」が物語の語り手も務めつつ
ばら色の大学生活を送るはずだった原点である入学当時に戻り、
何通りもの「もしも」なパラレルワールドを繰り広げるこの物語。
果たして、彼は最後に何を見るのか、そして何に気づくのかがポイント。

1話ごとそれぞれに、入ったかもしれなかったサークルに入って活動し
また同じ日に戻るわけだが、微妙にリンクさせながら伏線を散りばめ、
最終的に次々収束していく手法はお見事。
ただ、同じ時間の流れの中、同じ人物がいろいろなパターンで登場し
似ていてどこか違う会話をしながら毎話ごと繰り返していくので
こういうのが苦手な人は飽きてしまうかもしれない。
それにキャラデザなんかも、好みが分かれそうではある。

でもそれぞれのキャラが濃く、アクも強いので、
一度観たら忘れないかもっていう印象深さはかなりのもの。
比較的平凡な学生の典型みたいな雰囲気の主人公より、
妖怪や宇宙人、果ては半魚人なんかに例えられる友人の小津のキャラが
とても興味深かったし、彼がいたからこそ面白いと思えた作品だった。
また、あごが異様に大きな「師匠」こと先輩・樋口は吟遊詩人風で時々良いこと言うし
主人公の一年後輩である明石さんは、地味ながらとても可愛く映る。
そのほかにもいろいろと風変わりな人が数人登場。

最終話を観終えると、主人公が住んでいた四畳半の部屋を
毎話ごともう一度細かく確認したくなってくる。
そして背景や小道具を含む演出が、しっかり意味を成していて
実はけっこう丁寧だったのだと気づかされて驚いた。

学生時代や過去を振り返る時、「もしもあの時~~していたら」っていう疑問や
何らかを仮定した妄想はけっこう誰にでもあることだと思う。
でもこの広い宇宙空間において、そんな個人の空想や悩みや後悔なんて
実はとても小さくて、ましてや誰かのせいにするなんてもってのほかなのかも。
視野をどんどん広げてみると、たいした差じゃないよなと思ったり
途中でいくらか違う流れになっても、結局はなるようになったりする。
なら、素晴らしい人生を送りたいと思ったら何をすべきなのか
なんてことを考えさせてくれる作品だった。

最後に、この作品で何が言いたかったのか以下のように考えてみた。
{netabare}
四畳半というのは、部屋のいろいろなところに手が届きやすく
意外と住み心地が良い空間に思える広さなのかもしれない。
でも、その気楽さに閉じこもっていると視野は狭くなるから
小津のような貪欲さ、ずる賢さ、フットワークの良さを身に着けて
広い視野を持つと世界が変わるよ?ということがまず1つ。

人間はけっこう欲張りだ。
欲を持つことも向上心も決して悪いことではないけれども、
可能性ばかりをあてにすることなく、何者にもなれない自分を思い知り、
現実を見誤るな、ということがもう1つ。
この作品から僕はその2つを受け取った。
たぶんそれは、友情にも恋愛にも同じことが言えるのかもしれない。
{/netabare}

とにかく、「私」のあの早口な言葉のマシンガンには
声優を務めた浅沼晋太郎氏に拍手を送りたい。
そして音楽。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの唄うOPや
やくしまるえつこが唄うEDだけでなく、大島ミチルのOSTがとても良かった。
中でも、個人的には『四畳半とカステラと「私」』というピアノ曲が大のお気に入り。

投稿 : 2013/02/19
閲覧 : 457
サンキュー:

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