「カレイドスター(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
1539
棚に入れた
8192
ランキング
117
★★★★★ 4.1 (1539)
物語
4.4
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ネタバレ

らしたー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ブレない作品は面白い

●基本は少女向けスポ根
 絵柄にしてもキャラどうしのかけあいにしてもそうだが、この作品が低年齢層向けであるという事実は無視してはいけない。
やはりどうしても感性に合わない視聴者もいるだろうし、実際私も慣れるまではしんどかった。
 くわえてスポ根である。もう圧倒的なスポ根。結末は血と汗と涙で勝ち取っていく。言い換えれば、ある種のご都合主義が厳然として存在しているわけで、そこに視聴者との相性の良し悪しは確実に存在する。
 だが特筆すべきは、そこに至るまでの主人公ソラの葛藤や逡巡、自問がきわめて丁寧に描かれているため、結果に至るまでのプロセスが強烈なメッセージとして浮き彫りになってくる点だろう。この緻密さが最大の魅力。

●マンネリをおそれない勇気
 だいたい1~2話でひとつのエピソードが完結し、ソラが苦難をひとつひとつ乗り越える形式となっている。でもってお話の作りとしては先述したようにソラの頑張りとそこから得られる結果に終始しており、脚本の根本にあるのはは、お約束に支配されたマンネリな世界である。
 にもかかわらず、全51話というボリュームを飽きさせずに観させてしまうのは、まったくマンネリズムをおそれていない気迫を感じるから。チャレンジすることの大切さや努力することの価値という普遍的なテーマを表現するのにやりすぎなんてないとばかりに、臆することなくソラの挑戦を描き続けていく。その積み重ねがソラの成長を説得力あるものにし、ラストに向かっての収束感を最大限に引き出していると感じた。
 また、展開の基本こそマンネリズムの支配に委ねている形だが、いっぽうではエピソードのスパイスとして家族や友情などが盛り込まれ、手を変え品をかえて新鮮な視聴を提供する工夫も見逃せない。ブレないテーマとそれを支える脚本力には感心してしまう。

●51話という大ボリュームであること
 見逃してはいけない点として、ソラが「ステージに選ばれし者」であるという設定がある。つまり主人公ソラは凡人ではなく、言い方はどうであれ、類まれな天才を持った少女なのである。天才が人一倍努力して夢を掴み取るサクセスストーリーという、見方によっては凡人には縁のないオハナシだったりもするわけで。
 だからこそ。ソラの才能が周りの人を輝かせるという設定のもと描かれていくサブキャラたちのチャレンジストーリーが一段と際立つ。
 クラウンを目指すアンナ、脚本家へ挑戦するミア、自らのスター性を問い直すメイ、そしてトラピスプレイヤーとして一歩を踏み出すロゼッタ。51話というボリューム的強みを活かして丹念に紡がれていくサイドストーリーが、いつしか物語のひとつの柱となってラストへとつながっていく。ラストの盛り上がりを最高潮にするために51話をどう使っていくか、大変緻密に計算されたシリーズ構成を感じさせる。こういうのってまさに舞台演出と一緒だよなあ。

●レイラとステージの精フール
{netabare} もうひとりのヒロインともいうべきレイラ・ハミルトン。彼女とソラとの関係性の変化が物語のギアチェンジにもなっており、最重要人物のひとりとして描かれているキャラクターである。
 物語中盤で、オフ・ブロードウェイに新天地を求めていたレイラの目に、まだフールが映っているという描写がある。そこから暗示される「レイラがやり残したこと」というのは、大人の視聴者にとってはなんとなく想像がついてしまうものかもしれない。
 実際、最終盤でレイラが天使を育てる悪魔として位置づくわけだが、このときちょっとした不安がよぎった。最後にちゃんと、おそらくはハッピーハッピーな展開になっているであろう最終局面でちゃんとそのシーンを描いてくれるのかどうか、という不安。
 野暮を承知で説明すると、ちゃんとレイラとフールの別れがごまかさずに描かれていてほしいという願いと不安である。結果はご覧のとおり、心配は杞憂に終わったばかりか新しい夢の息吹を感じさせるオマケまでついてくる見事な着地であった。
 この切ないシーンがちゃんと描かれたことで、いずれソラにも同様にその日が訪れることが暗示され、さらにソラのあとに続く者たちが、それぞれに思い描くカレイドスターという夢を紡いでいくのだなという、作品テーマの普遍性が際立ったように思えた。ごまかしのない素晴らしいラストだったように思う。{/netabare}

●総評
 王道ほど難しものはないというのに、よく最後までど真ん中に直球を投げ続けたなあと感心する。そのブレない気迫とそれを支える緻密な脚本技術はたしかに実を結んだのではないだろうか。
 
 多くの方にぜひ見てもらいたい力作。

投稿 : 2013/05/09
閲覧 : 402
サンキュー:

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