「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1995
棚に入れた
9512
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (1995)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

日本の侘び・寂びの文化の象徴か

視聴後の個人的なメモです。
多少見苦しい点も有ると思いますがご了承を宜しくお願いします。

新海誠監督の作品の中では私はこの「言の葉の庭」が最高傑作だと思う。
・今までの作品よりも奥深い心理描写
・丁寧な環境音・劇伴
・光の美しさ
など、どこをとっても今までの新海監督作品の頭一つ上をいく作品であると思う。

物語について
 物語というよりは要所毎の細かい演出についての自分なりの考え
「雪野 百香里のビール」
彼女の登場シーンには基本的に飲み物が共にある場合が多いが、それらはビールとそれ以外を飲んでいるシーンに大きく分けられる。前者はタカオとの初対面のシーン、9月天気が続きタカオと出会う回数が極端に減ったシーンである。後者はタカオと共に時間を共有しているシーン、タカオと頻繁に会い鬱屈とした気持ちになっていないシーンである。これらのことから雪野にとってビールは孤独を象徴するものなのではないかと思われる。もちろん劇中でアルコールとチョコレートが唯一味がする物だとも言ってはいたが、ビールを飲む雪野の表情から察するに孤独を紛らわす道具としても用いられているのではないかと思う。

「傘を持っているか否か」
これはオーディオコメンタリーでも多少触れていたが、雪野とタカオの距離を表す縮図となっているものに傘が有ると思われる。前半のタカオと雪野が並んでいるシーンでタカオは傘をさしてはいないが、雪野はさしているというシーンがあった。前提として、この時点でタカオは雪野が自分の学校の先生であることを知らないが、雪野はタカオのことを教え子では無いにしても、勤め先の生徒だということは知っているはずである。タカオは傘をささずありのままの自分を示し、雪野に自分のパーソナリティをさらけ出しているが、一方で雪野は傘をさし、自分のテリトリーにタカオを入れないことで、あくまで自分は教師であると自らを戒め、タカオとの距離を作為的に作り出していると考えられる。また、これらのことは後半の大雨のシーンからも良く読みとれる。

「秘密の共有」
これは直接的に物語とは関係ない。
双方が共に雨の日に庭園にいることに多少なりとも負い目を感じているが、その秘密を共有できたことで相手の事をただのサボり仲間としてではなく特別な個人として認識して行くようになる。

「まるで世界の秘密そのものみたいに彼女は見える」
この台詞は前半にタカオが雪野に対して感じた台詞であるが、この台詞時点のタカオと雪野の関係は雨の日に双方が負い目を感じつつの逢瀬であり、タカオは雪野に対して恋愛とはまた違う感情を抱いていると思われる。仕事も年齢もまして名前さえも知らない関係だからこそ、タカオは雪野のことは魅力的な存在だと感じてきている。

「今が一番幸せだと思う」
今、こうしてタカオと二人でいることにこの上ない幸福感を覚えている雪野であるが、このシーンのあと雪野はタカオの告白を断る。なぜ断ったのか考えたが、おそらく雪野はタカオが居なくても自分の力で新しい地に踏み出せるようになりたかったのだろうと思う。それはその後の台詞からも読みとれる。
「私はね あの場所で一人で歩けるようになる練習をしてたの 靴が無くても」
靴を作る少年に対して酷く重い言葉であるが、これはつまり自分を支えてくれる存在である靴=タカオがいなくても頑張れる自分に成りたいという決意ともとれる。

声優について
 私はあまり声優については詳しくはないが、この作品の声優は本当に素晴らしかったとおもう。
とくに雪野 百香里役の花澤香奈の演技が作品の雰囲気にマッチしていた。造形としては大人の女性であるが、その内にある弱さを感じさせる声だったと思う。とりわけ、最初の「いいえ」「いいえ」のシーンは感動。同じ台詞でまったく違った表現を感じることが出来た。

作画について
 今までに新海誠監督作品と一番に異なるところは実は作画なのではないかと個人的には思う。背景の反射光をキャラクターにのせ、今までの新海監督作品にあったキャラクターが背景に比べて浮いているという感覚がなく非常に滑らかなタッチで描かれていたように思える。
また、随所に描かれていた水のシーン。
コメンタリーでも言っていたがタカオと雪野が一緒にいるシーンには基本的に湯気や雨などの水に関係した効果的演出がなされている。
ただ、今までの新海作品よりも写実的な演出が多かったきがする。私が新海監督に求めているのは、写実的なアニメーションというよりは、アニメーションだから出来ることを駆使することなので、その点は少し残念である。

音楽について
 劇伴は今までの天門と違い視聴前は不安だったが、KASHIWA Daisuke氏の劇伴も素晴らしく本作品に非常にあっていた。

総合的に
・雪野とタカオの曖昧な関係
・万葉集の引用
・少ない台詞と、独特な台詞回し
などから日本人の侘び・寂びの文化を感じることが出来る作品だと思う。新海誠監督の次回作も非常に楽しみである。

投稿 : 2013/07/11
閲覧 : 205

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