「魔法少女まどか☆マギカ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.9
感想・評価
10571
棚に入れた
37398
ランキング
45

ほーきんす さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

【ネタバレ有】 評価が非常に難しい作品!

 ※長くなったが良い評価が出来たと思うので最後まで読んでみて下さい。 

 タイトル通り、評価が非常に難しい作品だと思う。
  ①このアニメをどのタイミングで見たか
  ②今までどんなアニメを見てきたか
  ③自分はどういったタイプのアニメが好きか
などによって全然違った受け止め方をすると思う。
 
 具体的に言うと、例えば①の場合、リアルタイムでこのアニメを見ていた人達は、先の見えない展開やネットでの話題性などから、いろいろな予想を立てつつも裏切られる展開にハラハラ、ドキドキしながら見れたと思うし、ましてや最終回があれだから、終わった後に、何とも言えない喪(そう)失感や、あるいは高揚感みたいなものもあったかもしれない…。
 しかし、自分みたいに放送終了してしばらくしてから、アニメサイトなどの評価の高さを見て、面白そうだなと思って見た人からすると、ハードルを上げすぎた感、評価が高すぎる感が否めない…。確かにこのサイトの評価の成分にもあるように、「鬱展開」と言えば鬱展開だし、「超展開」や「神演出」「泣ける」といった成分も間違ってはいないと思う。けれど、他の鬱アニメと言われるアニメを見た後は、少なくとも何日かは、そのアニメやキャラのことが頭から離れなかったり、ついまたそのアニメや良かったシーンを見てしまう…なんてことはしょっちゅうあった。けれど今終わってすぐこの感想を書いているのに、このアニメにはそれがない。つまり自分にとってこのアニメは鬱アニメではなかった(鬱アニメだとは思うが、鬱要素が他の鬱アニメと呼ばれる作品より弱い)ということだ。
 
 また、「超展開」や「衝撃の展開」と言うが、ある程度アニメを見てきた人や、アニメでなくても映画や小説などで先を想像したり予想したりしてきた人なら、暁美ほむらが何らかの事情をしっており、QBが何らかの事情を隠していると考えるのが普通で、暁美ほむらが善の側のキャラだということも想像できる。
 どんな願いでも叶えられるなんてものの代償は、それと同価かそれ以上でなくてはならないのであって(鋼錬が一番説得力があり納得できる)、魔法少女になった子達には死以上の結末が待っていると推測するのが残念ながらセオリー。また、主人公たちが「魔法少女」で、かつ倒すべき敵が「魔女」であることから、魔法少女たちこそが魔女になりうる原型だと容易に想像できる。(あくまでセオリー通りにいけばの話であって、逆にそうでなかった場合こそ、「衝撃の展開」だと思え、また、そのアニメにハマる理由の一つになる)
 
 また、このアニメの『最初の衝撃』である「巴マミの死」は、(恐らくアニメを見ながらそのフラグに気付いていた人も少なくはないと思うが)、あの死によって、このアニメがただの魔法少女モノではなく、よりハードな、今までとは全く違う、新たなジャンルを開いてくれるのではないかという期待と可能性を生んだ。
 結果として言えば、このアニメは、よりハードでSF的要素を兼ねそなえた作品となり、今までの魔法少女モノとの差別化に成功したと思う。

 『第二の衝撃』といえば、まどかがさやかを助けようとして、何故か(母親の助言が原因だとも思えるが)さやかのソウルジェムを投げ捨て、その結果さやかは生命活動を停止する…シーンだと思う。このことにより、ほむら以外の魔法少女たち(まどか含む)は、すでに肉体がただその体(てい)を成しているだけであって、願いを叶える代わりに魂がソウルジェムに収められており、ソウルジェムが壊されれば死ぬということを知らされる。
 ここでも腑に落ちないというか、共感できないところがあって、この事実を知って主人公たちは激怒したり悲しんだりするわけだが、残念ながら共感できない。それは、さやかが言っていた「(恭介くんに)こんな体で抱きしめてなんて言えない、キスしてなんて言えない…(涙)」ということに共感出来ない訳ではない。その感情は、例えば何らかの理由で外見上に傷を負ったり、また精神的に罪悪感のようなものを背負ってしまった人たちが、「こんな私じゃ、○○君に好きになってもらえない…」と言う感情に近いものだと思うし、ましてや年頃の女の子ならなおさらだと思う…。
 が、そこではなく、どんな願いも叶えてもらうという、その願いの重さ、その願いの代償の重さを測り違えている(測り違えるという日本語は無いかも知れないが、履き違えるとはちょっと違うと思ったのであえて)ところにある。主人公が「そんなのあんまりだよ、(願いと代償が)全然釣り合ってないよ」的なことを言うシーンがあったが、「QBにケーキを頼みましょう、魔法少女になったお祝いに…」(マミの冗談)ならまだしも、現在の医療技術では絶対に治らない怪我を治す(これはただ手を動かせるようになるという意味ではない。恭介にとってはヴァイオリンを弾けることこそが人生であり、自分の人生全てがヴァイオリンと言っても過言ではないのであるから、その怪我が他の体のどこでもなく手であるということが大きい)というさやかの願い(本当は恭介を助けたのが自分であると、恭介に分かってもらいたいという願いも含まれているみたいだったが…)や、きょうこの願いも、どうしようもない、魔法にでも頼らなければ普通は叶えられない願いなのであるから、その代償は、この時点で彼女たちが思っているほど安くも軽くもない。

 もう一つ否定的な意見を書かせてもらうと、このサイトの良いところは「成分タグ」にあると思う。
 総合得点は管理人さんが様々な要素からその得点を出しているので純粋なその作品の面白さとは少し違っていると思うし、☆で表す評価は、本当に考えて考えて評価している人はまれであって、なんとなくフィーリング的なもので評価している人がいる以上、完全には信用できない。
 しかし、「成分タグ」は本当にそのアニメを見て感じたことを一言で表していて納得できるところが多い。
 そのなかで疑問に思ったのが、このアニメの成分タグに「もっと評価されないべき」が含まれていない(含まれていても少ない)ところだ。「もっと評価されないべき」とは言い換えれば、「このアニメは観る人を選ぶ」ということであって、「Guilty Crown」や「Fate/Zero」などがまさにそれだろう。はっきり言って高く評価されすぎである。前者は、後半からの展開や作画・音楽の良さに、後者は、前作からのファンによるところが大きすぎる。物語やその他の完成度から見れば、他の高評価の作品とは明らかに差がある。この作品も同じである。

 ここまで聞いていると何故、評価がどちらかと言えば良い部類に含まれる☆4.2なのかと思うかもしれないが、そこが評価が難しい理由の一つでもある。
 まず間違いないところから言わせてもらうと、OPの「コネクト」は素晴らしい。この曲はアニメを観る前から知っていたが、アニメを観終わった後聞くと、なおのことこの曲の良さが分かる。
 次に作画だが、おそらくこのアニメを観ていない、避けている人たちの理由がこの絵だろう。蒼樹うめさんらしいタレ目でいかにも魔法少女という画風や、シャフトらしい他のアニメ会社の作品とは一線を画している演出は、苦手な人はとことん苦手な絵だと思う…。が、自分はこの絵は気に入っている。あくまで観終わった後の感想だが、この作品の絵はこれでいいと改めて思える。(例えばもしこの作品をP.A.WORKSが手掛けていればどうだろうか…、ん~、いやちょっと見てみたいぞ?)
 他にも声優やキャラだが、これは好みは人それぞれなのであまり深くは語らないが、キャラについて言わせてもらうと、自分たちの周りの世界だけがこの世界の普通・標準だと思っている、典型的な甘ちゃんの考えが気に入らなかった(過去形)(さやかはそれに気付いているようなことを言っているが(屋上のシーン)、それは恭介の怪我によっての考え方の変化によるところが大きいと思われる)。
 ここで釘を刺しておきたいが、あくまで現実に投影している訳ではない。現実にもしこのキャラがいれば、現実としてこのセリフを言ったとすれば…、などと考えるのは、可愛らしいというか子供じみているというか…、それは別の場所でやってほしい。あくまでこの作品を、相対的に他のアニメ作品と比べているのであって、評価を数字で表すということはそういうことだと思う。
 
 なのでここが肝となるわけだが…、この作品自体をみたとき、面白かったし楽しめた。それは間違いないと思う。数多くあるアニメ作品の中でも全然完成度の高い作品だと思う。
 しかし相対的にこのアニメを評価したとき、感動するかどうかでいえば「あの花」や「STEINS;GATE」などには足元にも及ばず、鬱展開でいえば、物語設定が似ている「ぼくらの」のようなどうしようもない無力さを感じるわけでもない。12話なので仕方がないが、設定の描写もいまいちで、宇宙のエネルギー問題を解決するために「魔法少女」というものを作ったのに、QBが叶えることが出来る願いの幅が釣り合っていない。
 作画の演出もシャフトの代表作に比べると、弱い版物語シリーズと思われても仕方ないと思う。それでいてキャラの絵がこれだからファンを選ぶ。
 音楽は上記のとおり最高。

 しかしあくまでそれは終盤までの話である。このアニメの評価の良さの大部分が、この最終回にあるといってもいい!(ここまで否定してきた分、語気を強めて言わせてもらおう!)
 終盤まで観ていて、とくに主人公の「なんで~なの?」「どうして~なの?」という無知さが心底イライラした。しかし、最終回のまどかの願い、まどかが背負った代償の、想像だに出来ないほどの重みを考えると、これまでのまどかに対する評価や考え方が一変する!
 まどかの願いである、「過去、現在、未来、全宇宙に存在する全ての魔女を生まれる前に自分の手で消し去ること」、この願いの本質こそが、彼女の一見ただの無知にも見える純粋さ、自分のための願いが浮かばない彼女の、他人を思いやれる優しさの表れなのであって、ある意味、最高の主人公の形なのではないかと思う。
 その願いによって「願いの代償に、死ぬか魔女になるしかない」という魔法少女の過酷な運命は解かれ、まどかは人としての存在を失い、ほむら以外の全ての人々の記憶から忘れ去られる。この話の良いところは、まどかの願いの後も、新たに構築された世界ではまだ、魔獣と呼ばれる存在とほむら達、魔法少女は戦っており、QB自身も「どういう理屈で~なのか分からない」という旨のセリフを言っているところにあると思う。
 前述で、物語の設定について「エネルギー問題と叶えられる願いの大きさが釣り合わない」というようなことを言ったが、SF的要素を取り入れようと、他の作品とは一線を画そうと、まずなによりこれは「魔法少女作品」なのであって、深い描写や設定は、実は誰にも分からない、というほうが、いかにもなのであってそれで良いんだと思う。

 だからこそこの作品は面白くて実に評価が難しい作品なのである。(終)

投稿 : 2013/07/09
閲覧 : 353
サンキュー:

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