「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1994
棚に入れた
9500
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (1994)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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cross さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

心情描写、風景描写、音楽面、どれも圧倒的クオリティーを誇る傑作。ドラマに近い感覚でアニメとしてのエンターテイメント性は希薄、万人受けは難しいかも?【総合評価:95点】

2013年5月31日より日本全国で、そして香港と台湾でも同時公開されたアニメーション映画。
『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』 等の代表作で知られる新海誠が監督を務め、2011年公開の『星を追う子ども』から2年ぶり、6作目となる監督作品。
今までの作品でも恋を描く作品はありましたが、『恋の物語』と監督自身が銘打ったのはこの作品が初めてだそうです。
あまりにリアル過ぎる心情描写や風景描写の追求から、アニメと言うより本当にドラマを観ているような感覚です。
なので、アニメとしてのエンターテイメント性は希薄、その点において好き嫌いは出てしまうかもしれません。
まぁ、個人的にはエンターテイメント性なんて気にも止まらないぐらい引き込まれてしまいました。
視聴を終えたばかりなのですが、まだ感動の余韻が抜けません。
105点満点の計算法で着けている総合評価の点数、遂に100点越えの作品の登場しちゃいました。


靴職人を目指す高校生の秋月孝雄、雨の日の1限は授業をサボリ、庭園で靴のデザインを考えている。
そんなある日、仕事をサボって昼間からビールを飲んでいる女性、雪野百香里に出会い、彼女は万葉集の短歌 『雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ』を言い残して去っていった。
この日から、約束こそないものの、二人の雨の日だけの交流が始まった。
雨の日の交流を重ねるにつれ、孝雄は自身の夢を雪野に語り、「上手く歩けなくなった」と遠い目で語っていた彼女の為に靴を作る事にする。
梅雨が明け、雨が降ることがなくなり暫くの間2人は逢わなくなっていたある日、孝雄は雪野の正体を知ることとなる……

まぁ、こう言った背景の物語です。


15歳の秋月孝雄と27歳の雪野百香里
明確な夢こそ持っているものの、15歳の子供でしかなく小さな世界でしか生きていない自分が社会と言う大きな世界で生きる雪野への想いが不相応と感じながらも夢をより現実に近付けて少しでも大人へとなろうと苦悩する姿
そして、実は始めて会った時から孝雄と自分の立場を知っていた雪野も、自らの抱える問題に対し孝雄との交流が心の救いになっていた事に気付く。
互いが互いの立場を認識した後にそれぞれの想いを伝えるラストは感動でした。

そして、入野自由、花澤香菜
二人の主人公を演じている声優も非常に豪華で素晴らしい演技でした。
特に個人的に好きな声優の一人である花澤香菜
普段可愛らしい少女を演じることが多い彼女が演じた大人の女性、普段の可愛いらしい声の中にも確りと大人の落ち着きを込めていて聞き惚れてしまいました。


この作品は46分と言う映画としても短い時間ですが、無駄な時間はないと言えるぐらい、全てのシーンが二人の心情を丁寧に表現する為に費やされています。
二人の主人公の心情描写が46分と言う短い時間にも関わらず、十分に伝わってきて、非常に心を打つ作品で完成度は抜群だと言えるでしょう。

二人の主人公の繊細な心情描写、これだけでも抜群に楽しめる作品ですが、この作品は非常にレベルの高い心情描写の他にもうひとつの見応えがあります。
それは作画、特に風景描写の緻密さと美しさは正直、過去に視聴したアニメの中でもトップクラスでした。
そもそも、風景描写の緻密さと美しさは新海誠監督の作品の大きな特徴ではありますが、過去の作品と比べても頭ひとつ抜き出た完璧な出来栄えだったと思います。
物語の構成上、雨のシーンがかなりの割合を占める作品とあり、特に雨のシーンの力の入り具合は尋常ではありません。
毎回変わる雨の強弱、それに伴う雨音や風の音、そして光の具合、全てが実写かと思えるぐらいにリアルで逆に冒頭のシーンは戸惑いすら感じてしまいました。

繊細な心情描写、圧倒的な風景描写の緻密さと美しさ。
そこに加えてエンディングテーマの『Rain』も良い曲でした。
同監督の作品、『秒速5センチメートル』の『One more time, One more chance』のラストを髣髴とさせます。
この物語に抜群にマッチしている歌詞に素晴らしい映像がマッチングし、最後の最後で更にこの作品の完成度を一段階跳ね上げていると言っても良いと思います。

近づき遠ざかる二人の心の距離を描く繊細な心情描写
実写かと見間違うほどの緻密さと美しさを持つ風景描写
物語の縮図と言っても良い位マッチした歌詞の『Rain』によるエンディング
圧倒的なクオリティーを誇る透明感のある恋の物語ですが、万人にオススメするには、やはりドラマに近い感覚になる作品ですので、アニメとしてのエンターテイメント性が希薄と言う点のみが気になるところ。
個人的にはそれがマイナスに働く事はなかったのですが、万人の需要がそこにあるとも思えない。
しかし、自分としては本当に素晴らしいと思う作品でしたので、未視聴の方、是非とも一度視聴してみて下さい!!



余談ではありますが、メディアファクトリー刊『ダ・ヴィンチ』8月号より小説版の連載が開始される予定だそうです。
執筆は新海誠自身が担当、代表作でもある『秒速5センチメートル』の小説も映画では語られていないシーンは勿論、映画で描かれたシーンもより深い心情描写で描かれていました。
映画の後に読んでも楽しめる小説で、今回も小説版で更に深くこの物語を描いてくれると思いますので、この作品を見た方も小説版を読んでみてはいかがでしょうか?

投稿 : 2013/10/31
閲覧 : 746
サンキュー:

75

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