「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1993
棚に入れた
9499
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (1993)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

シス子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

お酒に溺れる美女と、一人寂しくお酒を楽しむ喪女。あなたはどちらに救いの手を差し伸べますか? (もちろん"例えば"の話ですよ^^)

6月・・・

静かに水面を打つ雨
音もなく広がる波紋

激しく音をたてて回る列車の車輪

わずかな風に揺れる木の枝

混み合う列車からあわただしく降り立つ人々

喧騒と不規則な人の流れ

そんな流れに逆らうように
立ち止まる少年(主人公:秋月孝雄(あきづきたかお)くん、15歳)
空を見上げふと思う
(子供のころ、空はもっとずっと近かった・・・)

雨の日によく立ち寄る公園

木製の小さな橋は
雨に濡れて鏡のように少年の足元を映し出す

歩を進めていくと
一軒の東屋
その屋根の下で
ビールを片手に佇む一人の女性(雪野百香里(ゆきのゆかり)、27歳、教師、独身)
(っていうか公園の入り口にアルコール持ち込み禁止の看板があったのに^^)

少し驚いたように立ち止まる
一瞬時間が止まったかのように・・・
でも
降り続く雨が静かに時の経つのを告げている

言葉もなく
誘うように
女性は隣の椅子に
少年はごく自然に少し離れてかける

少年がノートに描くのは靴のデザイン

無心に・・・?
でも
ビールを飲む女性が気になるのか
自然に意識がそちらに向いてしまう

足元から椅子
そして顔へと移る視線

華奢な足
椅子に置かれたチョコレート
どこか遠くを見つめるようなうつろな目と
片手に缶ビール・・・

(チョコレートとビールって・・・)
素朴な
でも
15歳の少年には
ませた疑問が頭をよぎる・・・
・・・・・


最初の5分程度のシーン
既に
新海ワールド全開です

この後の
ゆきのが万葉集の短歌を詠むシーンが印象的です

「雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」

最初このシーンを見たときは
"うわ~この子、完全に酔っちゃってるよ^^"
な~んて間抜けなこと思ったりして^^
(わたしが酔っ払ってました~アハハハ~^^!)


新海誠監督の作品を観るのは
「秒速5センチメートル」に次いで2作目です

なんといっても
売りは
抜群のリアリティ

「秒速・・・」のレビューでも書かせていただきましたが
リアルさがハンパない
"画"と"音"

そして
"静"と"動"
"明"と"暗"
"静"と"騒"
"甘い"と"苦い"
さまざまな対比効果による演出

さらに
目や耳で感じるリアル感に加えて
自然と引き込まれていくリアルなストーリーは
否応なくこれまでの自分の生き様をオーバーラップしてしまいます
(私、根が単純なんです)

でも・・・
この作品はなんだか少し違っていました

男女の関係がちょっとばかり

歳の離れた男と女

そして
酒に溺れる女・・・
じゃなくて
ビール("金麦"と"モルツ")

ちょっとだけイレギュラーなシチュエーションが
ちょっとした日常の光景にちょっとしたスパイス的な演出になっています


歳の離れた男女の関係は
歳相応の感覚をストレートに描写するのではなく
観る側に
なぜ?
っていう疑問を与えているように感じます

前述のゆきのが短歌を詠むシーンで

たかおくんの
「どこかでお会いしましたっけ?」
という問いに
「いいえ」
と答えるゆきの

その直後
ゆきのがたかおくんの制服を見て「はっ」っと気付きます

微笑みながら言った
「会ってるかも」という言葉と
短歌を詠み
去っていくゆきの

その微笑の意味は?
なぜ短歌を詠みながらどっか行っちゃうの?
もっとお話が弾むはずなのに・・・
なんて・・・

たかおくんとゆきのの
男性と女性の感覚
あるいは
年代による感覚の違い

微妙な表情の変化や
少しばかり意味深な行動が
観ている側を惑わせてしまいます

遠まわしのお誘いなのか
心をもてあそんでいるのか
(単に酔ってるだけなのか^^)

このシーンでの感性の違いによって
二人の感情に対する
観る側の感覚が少しずつ変わってきます


そして
たかおくんとゆきのを隔てるもの

雨と
ビール

学校をサボるたかおくんを公園に導く雨
公園の東屋を二人の出会いの場所にする雨
そして
二人の素直な気持ちを引き出すための雨

ネガティブなイメージの雨を
二人を繋ぐアイテムに仕上げています

ゆきのの部屋でたかおくんがゆきのに告白した言葉
階段の踊り場で抱き合うたかおくんとゆきの
雨に濡れると
普段より大胆な気持ちになれるんですね~(ちょっとびっくりしました~^^)

リアルな雨の描写も感情表現の演出に一役買ってました

もうひとつはビール
"おとな"のゆきのには心に一時の癒しを与えるもの
"社会人"のゆきのには人間関係を築くツール
でも
ゆきのとたかおくんの間にとってはちがうものになります

おとなのゆきのにはその感覚はわすれてしまったこと
たかおくんを見ていて
ゆきのはふと若いころの自分と
今の自分を比べてしまいます

たかおくんにとっては
ゆきのとの距離がさらに遠くなるような

ゆきのにとっては
たかおくんという若い男の子の感情から心が離れていくような

ビールというアイテムが
"大人"と"未成年"という年齢の壁をより現実的なものにしているんですね


さて・・・


続けて書きたいところですが
あんまり書いてると
個人的に
悔しいのと(過去が)
悲しいので(今が)
涙が止まらなくなってしまうので
ここらへんで・・・
勘弁してください^^!


お話は
新海監督らしい演出で
"GOOD"なのか
"BAD"なのか
観る側にゆだねるような結末

見せたかったのは
二人がどうなったかではなく
どんな気持ちで二人の時間を過ごしたのか

そんなふうに感じました

もしも
続きのお話を作ることが出来るのなら
今度二人が再開するときには
二人にとっていい思い出だったと
思っていて欲しい・・・
それくらい純粋な心を大切にしたくなるお話でした

わたしも"たまには"こんな恋をしてみたい~
もちろん素面で^^


余談で

{netabare}"チョコレート"と"ビール"の組み合わせに疑問をもったたかおくんに
未成年なのに味がわかるんかい!?ってツッコミを入れてしまいました
わたしには"金麦"と"モルツ"の組み合わせのほうがもっと疑問ですよ~まったく(怒
(細かいことを言えば"金麦"は「第3のビール」です!利きビールでもするの?)

そんなことより
お話では
ゆきのの患っている障害の関係もあると思いますが
甘いものとの組み合わせって意外といけるんですよ

例えば・・・
ビールに「モンブラン」とか
ビールに「カステラ」とか
チューハイに「おはぎ」とか
チューハイに「アイスクリーム」とか(ハーゲンダッツラムレーズンがオススメ)
焼酎に「黒糖」とか(これが結構いける!)
焼酎に「ガリガリ君」(これフロートにするといける!)
なんて組み合わせも
・・・・・・・・・・^^
"ゲテモノ"とか
"胸焼けしそう"
なんて言わないで^^!

皆さんもお試しあれ^^(未成年はだめよ!)

ちなみに
ビールは「ア○ヒスーパードライ」
チューハイは「SU○TORY-196℃ストロングゼロドライ」
焼酎は「三○酒類いいちこ25度」(もちろんロックで!)で楽しんでます~^^{/netabare}

投稿 : 2013/09/03
閲覧 : 489
サンキュー:

38

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