「カラフル-Colorful(アニメ映画)」

総合得点
64.2
感想・評価
412
棚に入れた
1771
ランキング
3839
★★★★☆ 3.5 (412)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.1
音楽
3.4
キャラ
3.4

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイトルなし

こいつはとんでもない作品だった……。
この作品は小林真君の再起の物語だと思う。ただし、それを小林真としてではなく、小林真ではない【誰か】として描いたことにまず脱帽した。

人はみんな違う面を持っている。カラフルである。カラフルで良いんだ。
そういうメッセージを唱えるのにこれほどの手法はお目にかかったことがない。目から鱗だった。
普通なら苛立つどころか不快感Max確実な真の言動も、真じゃない誰かとして描くことで徹底的にメタとして突き放して映しているのもそうだし、そんなメタの世界を真の世界にシフトさせるのもとんでもなくさりげない。間違いなくプロの犯行。手際が鮮やかだもの。
最後のお説教タイムもなんて嫌味なく、爽やかなんだろうか。もう黙って静かに正座して聞いてしまう勢いだった。

ついでに言うと、真の【生き返り】までの過程も恐ろしく丁寧で秀逸だ。
再起のキッカケはほんとうに些細なものだ。困っている早乙女に声をかけてやった。それだけである。しかし、それだけで充分だったのだ、少なくともキッカケは。
自分からメタを脱却し世界に介入するや、真の見ている世界はまさしく色を変える。不倫をしていた母は真を想う母であり、うだつの上がらない父は懐のデカい父だった。自分を蔑んでいた兄は自分を良い高校に行かせる為に大学受験を先のばす弟想いの兄だった。
早乙女との交流を経ても家族への接し方は変わらない真だったが(そもそも命の充実を実感していないのだから当たり前と言えば当たり前)、ここでついに母の料理に手を伸ばす。ジャンクフードやお菓子とはおさらばだ。

ここで最も良かった点が、真が家族から紹介された高校ではなく、自分が築き上げた友達との友情を優先し、友達と同じ高校に行きたいと宣言した点だ。
ここには早乙女との交流時以上に真の意思がある。大袈裟に言うと自立にも等しい。涙という生の感情をみせながらの告白には思わず拍手しそうになった。立派だぜ、真。

あとあと、真君がそうだったように、家族が違う一面をみせたのも最初から持っていたものが一つのキッカケで表面化しただけでしかないという点も良いよね。真が一度死ななかったら、家族の面々が本作の姿になることは……あったのかもしれないけど、それは当分無かったことだろうから。

ストーリーで僕が惜しいと感じたのは、真がひろかに悟りを示した場面。この時の真は超然としていたのだけど、できればこれ、家族との食事が終わってからにして欲しかった。あの食事のシーンで真=真の信憑性はかなり高まったのだから、人がカラフルであることを無意識で実感した真がここで意識して語った方がグッときたと思う。

しかし、それ以外は概ね素晴らしい出来。
声の方はまぁ難アリだけど、そんなのはキャスティングを見た時点で覚悟してればいい。
とは言いつつも、芸能人の中で一際健闘したのが宮崎あおいさんだ。この人は挙動不審ないじめられっ子を演じてたのだけど、これがもうベラボーに巧い。僕は視聴前にキャスティングを見ていなかったので、「翔子の声優さん巧いなぁ……」と思いながら観ていた。そしたらスタッフロールに宮崎あおいと載っていて「!?」ってなった。おいおい、プロの声優と遜色ねーじゃねーか!

真が自分の正体に気づく過程も大々的に描かれていたワケじゃないにしろ伏線はしっかり散りばめられてるし、やっぱりここも秀逸だった。本音を言えば、翔子の「やっぱり小林君だ」のセリフにハッとするシーンがあっても良いとは思うけど、まぁどっちでもいいや、良い映画だったし。

評価は……初見では序盤から中盤にかけてかなり退屈に感じるだろうからとても良いが妥当かなぁとも思うんだけど、後半のエネルギッシュな展開の数々と作画の良さ(真君がご飯を食べる度に涙目になる母の姿が特にお気に入り)等を考慮して、高評価を贈りたい。

こういうアニメ映画にあるはずのお説教くささがなかったことに驚き。

投稿 : 2015/08/24
閲覧 : 174

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