「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(アニメ映画)」

総合得点
86.7
感想・評価
1955
棚に入れた
9926
ランキング
183
★★★★★ 4.2 (1955)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

かしろん さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

何に対する叛逆なのかという曲解と2回目を見てを追加

感想とあらすじが入り混じったネタバレ全開で。
曲解、こじつけ、ひねくれを追加してみました。
2回目を見ての感想も追加してみました。

{netabare}
311の影響で放送そのものが危ぶまれたTVシリーズ。
9話放送から約2ヶ月後、10話から12話の一挙放送という形での放送となった。
これを見終えた直後、親友よりメールが入る。
「非常に満足な出来なんだが、ラスト、コネクト後のCパートってどんな解釈をした?」
と。
私の解釈はこうだった。
「ビルから飛び降りた時のほむらの翼の色は白だった。
これがラストではまどか世界色に変わってた。=まどか世界へ近付いたってことだと思う。声も聞こえてるし。
で、魔獣へ跳びかかって行ってブラックアウト。ほむらが居た場所からハラリとまどかから受け継いだリボンが落ちて終わり。
ってことは、オーラスで描いたのはほむらの最後であり、まどかによるほむらの魂の救済だと思うよ。
エンドレスに戦い続けたほむらにも綺麗にその最後が訪れ、まどかのもとに導かれたっていう。
9話まで実に面白い展開で楽しませてくれた物語が、10話で頂点へと達し、ラスト2話でものの見事に綺麗に締めてくれた。
あぁ、素晴らしい作品を有難う!」

で、後日、映画化の話を聞いて
「あれだけ完璧に締めておいて何をやるんだよ。蛇足になるんじゃねぇの」
等と思っていての本作品。


ざっくり書いてしまうと、12話Cパートを非常に詳しく描いた物語だった。
大体の構成は3部だ。

まず、第1部。
いきなりのナイトメア戦に呆気に取られる。な、なんなの、これ。
その後、TV1話や劇場版前編冒頭と同じような流れでグッっと心を鷲掴み。劇場版前編ではルミナスが流れた同タイミングで新OPカラフルが流れだす。この辺で「あぁ、やられた、俺」などとワケの分からない敗北宣言をする。
杏子が見滝原中学でまどかさやかと同じクラスだったり、そこに転校してくるほむら共々すでに魔法少女だったり、戦う敵が魔獣ではなくナイトメアだったり、マミと5人揃ってピュエラマギ・ホーリークインテッドだったり、ベベというかシャルロットを使役してたりと、魔法少女してんなぁ、という、非常に明るい話。

そして第2部。
いやいや、なんかこの世界はおかしいだろ、と気付きだしたほむらが杏子とともに秘密を探りだす。この二人が組になってなんかするってもの珍しい気もするが、TVでも共同戦線を持ちかけてたか。
結果的にこの世界は誰かが創りだした異空間、まどかの願いによっていなくなったはずの魔女の結界内であり、何故か魔女がいるのだほむらは気付く。
そして誰が創りだした結界なのかを探りだすわけだが、ここから魔法少女同士のバトルが始まる。
まぁ~、絶好調のマミとほむらのバトルが面白いこと。BGMや互いの腹を探りあいながらも息をつかせぬ激しい近接戦はフェイトゼロを思い出した。
そして意味有りげな台詞をいうさやか。TV版では魔法少女の過酷な運命をトレースする良い材料になってたわけだが、今回は事情通なストーリーの進行役。TVではほむらが事情通でさやかが翻弄されてたわけだからこういう対比は見てて楽しい。鋭い剣先でほむらのマジカルシールドのギアを噛ますとか格好良いねぇ。
で、結果的に、この魔女結界は謎を探っていたほむら自身のものであり、魔法少女と魔女の関係性をほむらから聞いたインキュベーターがほむらを外的要因を受けない遮断フィールド内に閉じ込めて、魔法少女が魔女化するのとまどかが円環の理としてお迎えにくるのを実験観察してたってことだった。
第一部の世界が魔女結界内と判明した時点で「あぁ、ほむらの結界だろうな」とは読めるんだが、読んでから振り返ると実に切ないものがある。実に明るく皆が魔法少女モノらしく戦うあの世界。いつもニコニコ笑ってるまどかと一緒に入れるあの世界こそがほむらの理想郷なわけだ。確かにTV版10話2周目での魔法少女となったほむらの浮かれっぷりを考えると、実にらしい世界として描かれていることが分かる。
あぁ、ほむらもああいうキャピキャピしたのがやりたかったのね。
で、まどかの円環の理パワーを我が物にしようとするインキュベーターに対し、ほむらはまだソウルジェム内での出来事で実態魔女化してない段階だからマミや杏子に自分を倒してくれるよう願う。さやかがオクタヴィアを使役してたり今までに出てきた魔女たちが総動員。Kalafinaの歌をBGMとしてラストバトルっぽく実に派手で面白い。
なんだかんだあって、インキュベーターの作った遮断フィールドを破壊して円環の理のお導き。イマイチ、この辺の記憶が曖昧。インキュベーターの観察をどう逃れて遮断フィールドの破壊に至ったのか。記憶が曖昧な全ての原因はこの後の展開のせいだよ、全く。
お導きがひかりふるの元ネタをBGMとして感動的な場面として描かれる。思わずホロリときそうになるのをグッと我慢。あぁ、よかったねぇ、ほむら。まどかの導きだよ。
と思ったその時、シナリオが牙を剥くのだった。

そして第3部。
そうだよ。マミさんの時もそうだっただろう。明るく希望に満ちている時こそ墜とし時なんだよ。
このまま導きによって浄化されるかと思ったほむらがカッと目を見開きまどかの腕を掴む。
なんだよ、ほむら、なにしやがんだよ。俺の感動しかけた心を返せよ。
自ら神と化し世界の塗替えを行ったまどかに対し、自らの溜まりきった汚れを利用して魔女を超えた存在の悪魔となり世界の最塗替えを行い円環の理からまどかの人格のみを引き剥がす。
ほむらが愛と語るその思いの強さに、感情のエネルギー利用は危険過ぎる、と撤退をしようとするインキュベーターをも支配下におくほむら。
そして塗り替えられた世界。
魔法少女としての力は残しながらもこれまでの記憶を無くし、普通の中学生として過ごすマミと杏子。
記憶を残し、ほむらに対峙するも記憶が薄れていくと宣告されるさやか。
これまでのの記憶を無くし、見滝原に転校生としてくるまどか。
極僅かにまどかに残る円環の理としての記憶。これが今後ほむらとまどかの関係にどう影響を与えるのか。それは誰にも分からない。
fin、終わり、終劇。

結末への持って行き方に関しては非常に王道。
世界を滅ぼしてでも一人への愛を貫く、ってのはセカイ系と呼ばれる作品の常套手段で、直近ではヱヴァ破からQにかけての流れもそう。だからコレ見て「エヴァじゃねーか」というのはちょいと違う。「エヴァでもあったネタだね」が正解。

持っていた結末の世界が決して誰かが不幸になってるわけでもないってのはエグい。
まどかの円環の理への決断は、みんなと離れ離れになるのは寂しく悲しく辛いけれども自分にしかやれないことがあるならそれをやる、という強さの結果だとほむらは知って、円環の理からまどかの人格のみを切り離しているだ。おかげでまた皆と過ごすことが出来るようになっている。
マミも杏子も普通の中学生として学校に通っているし、円環の理のカバン持ちまで努めた故に記憶を持ち越しているさやかも記憶が薄れていっていつかは普通の中学生として過ごしていくことになるんだろう。
また、キュウべぇがおり、円環の理があるってことは魔法少女システムは健在であり、多分敵は魔獣で効率悪いエネルギー回収を行っているんだろう。
見ているこちらからすれば
「ほむらがサイコって強制的に自分の都合の良い世界に書き換えやがった。まどかは献身的にみんなのために世界を変えたのに、なんと自己中心的で酷い娘。だが、そこが良い」
となるんだが、劇中の人々は決して不幸になってないというこのギャップ。
いやぁ、エグいよ、エグすぎるよ。


はてさて、見てから約一週間経って、お目汚しついでの曲解。
余りに酷いのでさらなるネタバレタグを。アホだな、と笑って頂けたなら幸い。
{netabare}
今回の物語だが、魔法少女まどか☆マギカを如何に作り、その結果としてどうなったのか、を映像化したのかな、とか思ってしまった。
つまりは、既存の魔法少女モノアニメに対する叛逆を描いているのでは、と。


この劇場版が3部構成なのは上記の通り。

まず、第1部で、これまでの魔法少女モノとかどういうものなのか、の検証と結果。よって、ベッタベタな魔法少女モノが出来上がった。

第2部で、いやいや、本当に魔法少女モノってこんなので良いの?こんな甘ったるい理想ばかりを描くものが本当に良いの?いくらなんでも都合良すぎじゃない?と疑問を抱きだし、新しい魔法少女モノを模索しだす。
その過程で「先人たちが築いてきた今までのフォーマットを壊す必要があるのか」「あれはあぁいう世界だから良いのであって、そこにキツさやエグさを入れる必要はないんじゃないのか?」などの苦悩と同時に、それでも新しい何かを作りたい、生み出したい、波乱をおこしたい、って希望や野望を抱いていくわけだ。
で、典型的魔法少女から叛逆した魔法少女まどか☆マギカという作品が生まれる。

で、その結果どうなったのか、栄光と苦悩を描いたのが第3部。
誰も不幸になってないし、中には過去作の寄せ集めだとか批判をする人もいるけれど、まぁ、皆が楽しい面白いと喜んでくれている。
でも、魔法少女の苦悩や過酷さを描くという新しいフォーマットを作ってしまったという功罪。
まどかという大ヒット作を持ってしまったが故の苦悩。TVシリーズ制作から3年経ってもまだまどかという作品に縛られる喜びや苦しみ。
魔法少女モノというアニメジャンルを新しい世界にしてしまったアニメ界や自分たちが今後がどうなるのか。
それは、これからのことだから、誰にも分からない。


この流れをエンターテインメント性の高い映像表現として発表したのでは、とか思えてきたのだ。
幻影などの追従作品が出てきているが、はてさて、今後のアニメ界に期待と希望を持っていたいですね。{/netabare}

2回目を見ての感想。一回目で気づけよってツッコミはご勘弁・・・{netabare}
まず、OPの映像が楽しかった。これ、劇場版の内容を約1分30秒にまとめてるんじゃ、と思ったのだ。
大体の流れは
みんななかよく遊園地で遊んでいる、が微妙に一歩引いたところにいるほむら。そんなほむらの手を取るまどか。この辺が第一部から第二部のほむら魔女化まで。
サビのみんなが楽しそうに踊っている中央で絶望に打ちひしがれるほむら。この辺が対ほむ魔女戦。
最後の荒廃した大地で一人でいるほむら。この辺はほむら悪魔化以降。
うん、綺麗に劇場版をトレースしてるわ。


次に思ったのが「TV版10話見返してから新編見たほうが楽しめるかも」だ。

まず、まどかの決意の仕方。10話1周目でのワルプルギス戦でのほむらとまどかの会話。ほむらは「死んじゃうよ、無理だよ、逃げても仕方ないよ」とまどかを説得するんだが、まどかは「私は魔法少女だから」とワルプルギスに立ち向かっていく。新編でほむらがいうまどかの性格が非常に分かりやすく描かれてるシーン。それがどんなに辛く寂しく悲しい結果になろうとも、自分にやれることがあるならそれをやれてしまう強さ。まどかが決意の裏でどんなことを思っているのか受け止めやすくなると思う。

次に、ほむらの結界世界でのあれこれ。
10話ではなかなかにギスギスした人間関係が描かれているわけだが、結界世界では和気藹々。ピュエラマギ・ホーリークインテッドである。
さらにほむら自身の扱われ方。10話でのほむらの扱われ方は「時間停止ねぇ、まぁ、使い方次第ね(マミさん談)」「爆弾とか勘弁してくれないかなぁ、なんど巻き込まれそうになったか(さやか談)」など散々である。ところがぎっちょんこの新編。「攻撃を何倍にも圧縮してくれるのよ(マミさん談)」「実力派証明済みだし大歓迎(杏さや談)」と諸手を上げての大歓迎っぷりである。あぁ、こういうのを望んでいたのか、ほむら。切ないねぇ、泣けてくるねぇ。


そして新編で株価急上昇なのがさやか。
魔法少女の過酷な運命を綺麗にトレースして人間に磨きがかかりました。
物語の転がし役は勿論のこと、魔女になったほむらにも「嫌いにならないであげて。あれで一番つらいのは本人だから」と弁護してあげてます。流石経験者、言葉の重みが違います。
また。ほむらの妄想世界と知りながらほむら好みの役を演じきってます。上に書いたのもそうですが、魔法少女としてのほむらを綺麗に受け止めてあげてます。
故に最後に裏切られてブチ切れてますが。


魔力の回復手段の話。
TVでは事ある毎にソウルジェムが穢れを貯めていき、魔女を倒すと得ることが出来るグリーフシードによって穢れの浄化をさせるという手段をもって魔力の回復をしていました。
劇場版でのほむらの結界内では、ナイトメアを食べ物に変換して、それをベベが食べることで消化させ、その消化物に希望を添えてあげることで悪夢を良い夢として昇華させ、その昇華時の光を浴びることで魔力回復、というふうに変わりました・・・消化で昇華、槍でやり直しに近いダジャレですな。
同族殺しの末に穢れを浄化していかなければならないのと違って、徳をなすことで魔法少女としての力を維持できる。
ほむらのささやかな願いの一環なのかもですね。


はてさて、2回目みてちょいと考えてみたいことメモ
・なんでさやかはラズベリーなのか
・君の銀の庭が終わってからのシーン
なにか浮かんだら、また追加です。{/netabare}


物語:魔法少女モノとして見てみたかったものからラストまで実にお見事。ケチを付ける隙間がない。

作画:TV版では引き画などで残念な部分もあったが、さすが劇場版になると気合の入りが違う。劇団イヌカレー世界もパワーアップしてて良い。

声優:斎藤千和が実力を存分に発揮。その他メンバーもTV版に引き続き申し分無し。

音楽:コネクト、ルミナスと続くOPカラフル。劇中歌及びEDのKalafinaの曲。良い。ただただ良い。
劇中BGMも良い。

キャラ:非常に良いんだが、新キャラが弱い。
{/netabare}

「映画化決定」と聞いた時にどんな蛇足だよ、などと思ってしまったことを詫びたい。
素晴らしいエンターテインメントを有難う。
だが、もうコレ以上はいらない。
今度こそ、蛇足になりそうだから。

追記
名古屋109が混んでそうなときはベイシティが狙い目。
27日日曜日昼間でも空いてましたぜ。

投稿 : 2013/11/18
閲覧 : 420
サンキュー:

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