「ガン×ソード GUN×SWORD(TVアニメ動画)」

総合得点
70.9
感想・評価
609
棚に入れた
3553
ランキング
1419
★★★★☆ 3.8 (609)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.9

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明日は我が身 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

『捨て』ないで『背負う』ことを選んだ男の物語

痛快娯楽復讐劇というこの作品。
谷口悟朗監督が好きなために視聴。

最愛の花嫁を殺され復讐に生きる主人公ヴァンの物語。


正直言うと前半と後半で雰囲気が変わる作品。
もう少し重めのテイストで話が進むのかと思いきや中盤以降はギャグテイストが加わり、違和感を覚えた。
特にエルドラ5やプリシラの追加は、レイとヴァンのような復讐者の物語には馴染めてない気がしました。単体ではキャラとしていいと思いますが、如何せん作風に合ってないキャラを無理やり投入した感が強かった。そして、彼らが仲間に加わってからはヒロインと思われた立ち位置のウェンディの出番やセリフが激減しているのも前半と後半の雰囲気に違和感を与えている一因である。確かにヴァンとの旅の中でウェンディが成長する姿は16話時点で過不足なく書ききっているのだが、ウェンディの細かな心理描写はそれから最終局面までのしばらくの間は描かれないため、その空白が不思議な違和感を生んでいる。実際にはヒロインはヴァンにとっては結局エレナだった、という話なので当然と言えば当然ですが。

谷口作品特有の対比関係に関しては、この作品では『ヴァン』と『カギ爪の男』がそれに当たります。

人間の自由意志も生そのものも否定し、同化することで秩序を求めるカギ爪の男。
ただ復讐のために生き、自分の考えに素直に従うヴァン。
そんなヴァンを通して人間の意志の力は時にこれほどまでに強く、ブレないものなのだ!というメッセージがひしひしと伝わる。
作中を通してヴァンの復讐に対する心情描写はしっかりとかかれていて、見てるこっちまで『エェェェレナァァァァァ』と叫びたくなるほど心を揺さぶられました。それ故、最終回はめちゃくちゃ燃えました!

あとは、主人公と同じく復讐者であるレイについて。彼もまた最後までブレずにカギ爪の男に一泡吹かせた意志の力だけで戦う者です。愛する気持ちがあったがゆえにそれが憎しみに変わる。そんな純粋な感情だけで戦う姿がかっこよかったです。


次に作品のテーマについて。
特に他の復讐劇と違うのが、『復讐する側が肯定されるように作られている点』です。それは、カギ爪が人の生を大切にしない敵であることが原因です。個々の人間に対する死生感もないカギ爪が世界全体を大切にできるはずがない!そんなカギ爪が敵だからこそ個々の想いや死を『背負い』『捨てなかった』ヴァンやレイが正義としてかかれているのだと思いました。

死があるから生がある。なのに軽々しく『あなたの婚約者を生き返らせます』などとヴァンに提案するカギ爪。
それはつまりヴァンの心の中に生きている本当のエレナを殺すことと同義です。ヴァンは16話にて『過去にとらわれ今生きている自分を見ないこと』と、『今を見ながらエレナの死を背負うこと』は違うと気づきました。自分の中にエレナは生きている。だからそれを、エレナが死んだという事実を正面から背負い、それでも前に進もうと決めたんだと思います。ウーに対する『捨てるやつには、俺は倒せねぇ』というセリフも合点がいきます。
※ついでに童貞も捨てない。

悲しいことも全部捨てずに背負って前に進むこと。

これが今作のテーマなので、全てを捨てて作り替えようとしたカギ爪が悪となり得る物語だったんだなと思いました。

そのように『捨てないで背負う』ヴァンとレイが魅力的に書かれていた反面で、敵側であるカギ爪のカリスマ性が描写不足だったことは残念でした。カギ爪を気持ち悪~く書くことはうまく成功していますが、『なぜオリジナルセブンがカギ爪の意見にそこまで同調するのか?』などをオリジナルセブンの過去、カギ爪との出会い、そこでのカギ爪の言葉などを通して描けていたらなお良かったのになぁ、と感じました。そうすることでオリジナルセブンの掘り下げもより深くできたのでなおさらそう感じます。

全体的に『ここをこうしたらもっと面白いのになぁ~』と感じる部分はありましたが、熱い部分はとことん熱いし、しんみりする場面はとことん染みる、そんな感情を上下左右に忙しく揺さぶるタイプのアニメだったのでエンターテイメントとしてはとても面白い作品だったし、個人的にはお気に入り作品のひとつです。

投稿 : 2015/03/24
閲覧 : 307
サンキュー:

15

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