「僕らはみんな河合荘(TVアニメ動画)」

総合得点
85.5
感想・評価
2397
棚に入れた
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ランキング
235
★★★★☆ 3.9 (2397)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

文学少女は何を読み、何を考えているのか?

例えば、私たちがアニメ作品を1本完走しようとする場合、1クール12話の作品として、12話×24分=288分=4時間48分 かかります。
同じように、私たちが、150ページ程度の単行本または文庫本を一冊読了するには、人にもよりますが、やはり5時間程度の時間が必要になります(速読ではなく熟読の場合)。

アニメを見る場合、事前に計画を立てて、視聴すべき作品を絞って消化している人が結構多いのではないでしょうか。
そうしないと、自分の思うアニメ視聴の目的(ひと通り今期の代表的作品を押えたい、とか、恋愛アニメあるいは青春アニメの名作を押えたい、とかいった)を達成できませんからね。

同じように、小説を読む人も、その人の目的に合わせて、事前に計画を立てて、作品を絞って消化していっている人が多いのではないかと私は思います。
こちらもそうしないと、限られた期間内に自分の目的を達成できませんからね。

※もちろん、事前に決めたアニメなり小説なりの消化中に、他の人の意見などを参考にして、消化対象の作品を修正していくことは当然ありますけど。

で、私がこのアニメを視聴していて、最初に違和感を持ったのが、ヒロインの律ちゃんの読書傾向が明確になっておらず散漫にしか描かれていないことでした。
高校生や大学生くらいの文学少女や文学少年・青年は、こんな風に散漫に、つまり読書の目的がはっきりしない状態で、小説読みに熱中するとは余り考えられないのではないかと。
勿論、この場合の小説というのは、余暇を楽しく過ごすための娯楽小説とかラノベ(ライト・ノベル)ではなくて、いわゆる純文学系の小説です。
世の文学少年とか文学少女は、自らの社会的経験の不足を痛感しているがゆえに、他人の人生経験なり恋愛経験なりの一部を抽出して描き出したと思われる純文学を先行して読むことで、自らの経験値を(仮想的にせよ)向上させようと懸命に試みている存在ではないか、と。


《律ちゃんは余り文学少女らしく見えない》

このアニメを見終えた後の私の率直な感想として、

(1)宇佐君の性格が非常にくっきりと描出されていることは評価するけれど、
(2)ヒロインの律ちゃんの性格が、私見では結構ブレていて、余り文学少女っぽく見えない

・・・ように感じてしまいました。

これは原作マンガ家の宮原るりさん(女性)が、その代表作『恋愛ラボ』に見るように、おそらく外向的感情型(後述)の人であり、性別は違うけれど宇佐君のように、割と周囲の空気を読むのが得意で自分から積極的に話を合わせたり世話を焼くことが得意なタイプである一方で、本人は読書自体は好きなのかも知れないけれど、上に述べたような典型的な「文学少女」の性格傾向とはズレがあるために、律ちゃんの人物設定が曖昧になってしまった結果ではないかと。

あと、文学少女なり文学少年は、基本的に自分が今本気で読んでいる小説をことに身近な知人に知られることを嫌がります。なぜなら、それは自分の内心の関心事項を知人に曝してしまうことを意味するからです。
そのために、ブックカバーは必携であったり、人前で読む本と個室で読む本を使い分けたりすることはデフォルトだと思いますが、このアニメはその辺が全く抜けていたりします。

※以下、宇佐君や律ちゃんの性格を少し論理的に検討します。


《読書がらみの登場キャラの性格分析》

(1)宇佐君→はっきりとした外向的感情タイプで、そのまま現実世界に居そうな性格である。
(2)律ちゃん→たぶん内向的感覚or直観タイプ(感情タイプではない)、しかし性格が不統一ないしチグハグに見える。
(3)林さん(第10話)→明らかに内向的タイプ。但し感情型ではなく思考型or感覚型。律ちゃんよりもこの子の方がどちらかというと文学少女っぽい。
(4)前村さん(第11-12話に登場)→外向的感覚or直観タイプか。自称「読書好き(恋愛小説)」だけど、たぶん好きなのはハーレクインとか村上由佳の類。つまり読書がファッションになってるタイプ。

※律ちゃんの読書傾向→三島由紀夫(代表作『仮面の告白』『豊穣の海』)、山崎豊子(代表作『大地の子』)を一応、他人向けに挙げているが、西欧系の翻訳小説や、大正期・昭和戦前期の純文学も結構読んでる感じ。

※なお、外向的・内向的あるいは、感情型・思考型etc.の性格分類は、以下のユングの8分類を参考。
==========
http://www.sinritest.com/web/sopsy/character/e-itestk.htm

《ユングの理論  内向・外向説》

類型説としてよく知られているのはユングの内向・外向説である。ユングは人の心的エネルギーが主として自分自身にむかうか、他者にむかうかによって人の性格は大きくわかれると考えた(これはクレッチマーの分裂気質・循環気質の基本対立軸と重なる)。

内向型は自分自身に関心がむかい、内気で思慮深いが、実行力にとぼしく協調性にかけるのが特徴。
外向型は外部の刺激に影響されやすく、情緒の表出が活発で統率力があり、協調性が大であるのが特徴である。

さらにユングは精神活動を思考、感情、感覚、直感の4領域にわけるとともに、各個人はそのうちのいずれかが支配的になると仮定し、これに内向・外向の基本軸を重ねあわせることによって、人の生活態度(性格類型)を、思考的内向、感情的外向など都合8つに区分した。

★4領域
感覚機能・・・・物事を感覚器官を通じてもっとも直接的、具体的に認知する機能。
思考機能・・・・物事を概念化して、論理的に判断して、理解する知的な機能。
感情機能・・・・物事に関して価値づけをする機能。(※つまり場の空気を読んで他人に合わせる機能→宇佐君が典型的)
直感機能・・・・無意識によって知覚をわれわれに伝達する機能。
==========

《まとめ》

以上のように、私個人の感想としては、宇佐君のキャラ設定は秀逸だけれど、律ちゃんのキャラ設定は「文学少女」という意味では失敗気味、ということになります。

ただし、それ以外の点では、いろいろと楽しめる良質なアニメであったと評価しています

投稿 : 2014/07/02
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